【コラム】アイドルでもないガールクラッシュでもない。新たなアプローチで斬り込むガールズグループ・24emotions
今年3月にデビューしたばかりの5人組ガールズグループ「24emotions(読み:トゥエンティーフォーエモーションズ)」、通称・にーよんが、なにやら面白いことになっている。
◆ミュージックビデオ
まず、24emotionsのユニークなところは、サウンドプロデューサーの鮫島巧が手掛けているグループだという点だろう。彼は、長年GACKTのブレーンとしてサウンドメイクから音楽活動までをトータルで支えてきたほか、SUGIZOやT.M.Revolutionなどのアーティストの作品にかかわってきたトップクリエイターだ。
その鮫島自らが、2022年9月に立ち上げた「アクシーエンターテイメント」でレッスン候補生を広く募り、数百名のなかから選りすぐられたのが、アメイズド・ハルナ、スーパーハッピー・サクラ、セレニティー・クルミ、クリティカル・サキ、ピースフル・ユラの5人で、事務所にとって、記念すべき第一弾アーティストとしての期待を一身に集めてデビューしたのが、24emotionsなのだ。
とはいえ、よほどの音楽ファンでなければ、サウンドプロデューサーを起点にガールズグループを応援しようとは考えないだろう。つまり、言ってしまえば、24emotionsはまだまだデビューしたての無名グループである。
にもかかわらず、8月29日に、デビューしてから僅か半年で、渋谷WWW X (収容数:650人)での初ワンマンライブ<24emotions 圧倒的逆境を乗り越えろ! ~初ワンマンライブで奇跡おこせミラコー~>を開催。そればかりか、2024年1月26日にZepp YOKOHAMA公演(収容数:2150人)を行うことも発表している。8月のワンマンライブのタイトルではないが、かなりの無茶ぶりではないだろうか……。
そんな心配をよそに、2nd シングル「ふぁびゅらす」は、リリースした初週にYouTubeのMV再生回数が15万回を超え、堅調に滑り出した。6月24日には、1stデジタルアルバム『Time 2 Shine 4 Us』をリリースし、同時期に3rd シングル「Miracle Mirror」も公開。そのタイミングで、それまで踏襲してきたジャパニーズアイドルグループ路線では王道の、色分けされたキュートな衣装を脱ぎ捨すて、クールなかっこよさを身に纏った。そのMVは55万回再生と、国内外にファンを拡充している。
さすが、大物アーティストからAKB48まで、幅広く手がけてきた鮫島らしい成功への軌跡──かと思いきや、鮫島当人は「最初はまったく鳴かず飛ばず。難攻不落のRPGをはじめてしまったような気分でした。どうしたら刺さるかまるで分からないまま走り出した感覚で、本当に目の前が真っ暗になりましたね」と、笑いながら当時を振り返る。
ただ、「創り上げているものに対しては絶対の自信を持っている」と力強く語る鮫島。というのも、「アクシーエンターテイメント」を協働で運営するプロデューサーの横田大地は、鮫島と同様にGACKTやTRFといったトップアーティストをはじめ、SUPER☆GiRLSなども手がけてきた辣腕だ。また、同じく協働するDEMII KAMIMURAもコリオグラファーとして多数のアーティストの振り付けを手がけるほか、ダンスカンパニーとのコラボレーションからアートワークのプロデュースまでを手がけている俊才である。
そうした、シーンのトップクリエイターが、ゼロイチで生み出しているのが24emotionsなのである。彼らが一丸となって手がけるクリエイティビティの高さも手伝って、彼女たちの認知は確実に高まっている。事実、4thシングル「mia mia」のMVは、リリースから約1か月で70万回再生を突破したばかりだ。この映像作品で、大勢のダンサーを従えた彼女たちの切れのあるダンスパフォーマンスや、自信たっぷりの堂々とした表情からは、世界を席捲するいわゆるガールズクラッシュにも通じるものを感じる人もいるだろう。だが、そうしたフォロワーにとどまらないのが、24emotionsの真の面白さだ。サウンド1つとっても、そのこだわりやクリエイティブに対する熱量は尋常ではないことが分かる。
「長年、様々な音楽を手がけてきて、僕自身の音楽が女性グループとの相性が良いことを感じていました。世界的にブレイクするK-POPやUSのサウンドの良い点と、J-POPにしかない独自のキャッチ―さやメロディを活かしながら、単にかっこいいだけではないオリジナルの世界観を築くつもりです。僕らは、ゆるいエンタメを作るつもりなんかないんですよ」
「だから、コードのテンション感1つとっても、キャッチ―でありながら一筋縄ではいかないものを計算しつくして創ります。1曲のために何曲も試作を重ねるため、通常であれば1日に数曲作れることもあるものを、“にーよん”の曲は完成するまでに1週間はかかりますね」(鮫島氏、以下同)
だが、そもそも彼らが求める高い要求にメンバーが応えられなければ作品を形にすることはできない。5人はレッスン候補生時代から、毎日のようにヴォーカルレッスンやダンスレッスン、アスリートのようなフィジカルトレーニングをこなし、さらに厳しい食事管理まで行ってきたのだという。彼女たちが発表する映像作品ごとに洗練されていくのは、そうしたひたむきな努力とストイックさの賜物なのだ。
レッスンで涙をこらえるほど厳しく指導されることもあるといい、当人たちには苦しさも感じるだろう。しかし、デビュー間もないガールズグループが、ここまでしっかり基礎を学べることはそう少ない。今後の彼女たちのパフォーマンスを支える、大きな財産となっていくことは間違いないだろう。
彼女たちが支持されているのは、前述のようなプロ意識の高さと同時に、日本のアイドルならではの距離の近さもある。走り出したばかりのアイドルたちが、自分たちを売り込むのは人海戦術に他ならない。そのため日夜、フライヤー配りにいそしんでいるという。
「SNSのフォロワーを一人でも増やし、ライブに足を運んでいただくために、街に出てフライヤー配りを毎日行っています。時には罵声を浴びせられることもありながら、声をかけた方にその場でMVを見ていただき、フォローしてもらうなど涙ぐましい努力をしてます。そうした日本のアイドル文化である、良い意味での泥臭さも“にーよん”は身に着けているんです。先日も、アイドル系のライターさんが、『街中で彼女たちからチラシをもらったことがある』と言っていましたね(笑)。MVでは、一流のメイクアップアーティストやスタイリストが関わり、完成されたビジュアルを創り上げます。上質のサウンドとともに、映像制作の手がける作品は高いレベルのものですから、街で出会う彼女たちとのギャップもまた、魅力として捉えていただけるのではないでしょうか」
最近では、そうした彼女たちのドキュメントをTikTokにアップし、その様子もバズり始めているそうだ。様々なアプローチで好奇心を刺激してくる24emotionsの5人のメンバーを、鮫島はこう評している。
▲アメイズド・ハルナ
デビュー経験者で、グループに入る前はダンスのインストラクターをしていた。ポテンシャルが高くオールラウンダー。自分をしっかり持っており、それがときにかたくなさにつながってしまう。負けず嫌いな性格がうまく生かさせれば、もっと化けられる逸材。
▲スーパーハッピー・サクラ
グループにおける歌の軸となる存在。ダンスは全くの未経験だったが、努力でくらいついてきている。グループ一番の高学歴で英語やドイツ語を操り、海外進出する際のキーパーソンでもある。頑張りがときに空回りすることもあるが、そこがまた魅力でもある。
▲セレニティー・クルミ
ムードメーカー的存在。結成当初はメンバーではなかったが、成長したい気持ちは人一倍強く、スタッフ受けも非常に良い。それを高く買い、メンバーに昇格。コンプレックスを力に替えられる強さがあり、この半年ですべてが飛躍的に伸びた。
▲クリティカル・サキ
一番の小柄ながらに身体はシックスパックでバキバキ。歌やダンスがどこか1つ飛びぬけているというわけではないが、持ち前の明るいキャラクター、トーク力など成長が期待できる。メンバーでも一番のフォトジェニックだと思う。
▲ピースフル・ユラ
この春、高校を卒業したばかりで、磨けば輝く原石のような存在。クラシックバレエを習っていたため、ダンスの基礎力があり踊りに品がある。妹的な立ち位置だが、次第にメンバーとも打ち解けてきていて良いキャラクターになった。
こうした些細な魅力を備えた彼女たちの地道な頑張りと、MVの再生回数の伸びから想像するに、8月29日のワンマンライブはきっと盛況となるだろう。
既存のアイドルマナーに倣わない異色な方法論を取る、異質な存在ゆえに、はじめは苦労が多かったのだろうが、だからこそ新しい歴史を刻めるのではないかという期待も膨らむ。
「ただ人気のアイドルグループを作るのではなく、クリエイティブ的にハイレベルなダンスと音楽性を持って、我々はアジア圏を巻き込むようなムーブメントを創りたいのです」
その目標は、今はまだ大きすぎるようにも感じられるが、ガレージからスティーブ・ジョブズがアップルを始めたように、世の中を動かすのは最初、小さく見える異端だったりするのかもしれない。24emotionsがこの先なにを魅せるのか。彼女たちが繰り広げ、連れて行ってくれる世界がどんなものなのか、今から注視しておいて損はなさそうだ。
文◎橘川有子
ライブ情報
2023年8月29日(火)
渋谷WWW X
OPEN / START:18:00 / 19:00
・スタンディング(VIP):¥12,000(税込)
※ドリンク代別・入場整理番号付き
※特典付き(前方エリア・当日のリハーサル観覧(一部)・終演後、ミート&グリートあり)
・スタンディング(一般):¥5,500(税込)
※ドリンク代別・入場整理番号付き
詳細:https://sogotokyo.com/live_information/detail/1042
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