【インタビュー】Cö shu Nie、<何もしたくない>と歌う「no future」に色濃い人間味「救いや安心に繋がるんじゃないか」

ポスト


■ 本当にそばにいてくれる、一緒の感情で歌ってくれているような優しさ

──タイトルはどんな思いを込めましたか。アルバムに向けた第1弾で「未来なんてない」という。

松本:この楽曲で、このテンション感で、「no future」っていうタイトルはエッジ効いてて、おおってなる。

中村:このタイトルだけはちょっと変えたくなくて。

──ジャズマスターというと、やっぱりグランジやオルタナティヴロックを連想しますし、このタイトルからは、セックス・ピストルズ〜ニルヴァーナという系譜も感じます。

中村:そうですよね。正直、時代性みたいなものもすごく意識して書いてて。ふと、私、10年後、どうなってるんだろう、みたいに思うことがあって。目に見えて手詰まりになっていく世の中で、とくに若い世代が、どうやって命を繋いでいけるのかも想像できないような状態になっていってる。そうじゃない捉え方もできる曲なので、あんまり表だって言うつもりはなかったんですけど、若い世代に対しての曲でもあるし、日常の曲でもありますね。



──歌詞には関西弁が出ちゃってますよね。

中村:ふふふふ。あれはほんとうに「あ、もう駄目や」と思って、「もう駄目や」って言ったやつを採用してて。

松本:デモの段階の「駄目や」をそのまま使って。歌詞を見せてもらって思うのは、監督は、寄り添ってくれるなっていうことですよね。本当にそばにいてくれるというか、一緒の感情で歌ってくれているような優しさをすごい感じましたね。何もしたくない、けど、やっていこうぜ!じゃない。何もしたくない、こういう日もあるよね、私もあるよ、みたいな。最後の展開はちょっとハラハラしたりはするんですけど、やっぱ監督らしさがすごく出た歌詞やと思いますね。

中村:そういう心を抱きしめたい、みたいなところが根源的にあって。

松本:それが空白を埋めたいというところにも繋がるのかな。同じ感覚を持ってないと寄り添えないっていうのもありますし。

──これまでよりも距離の近い中村未来が出てきてますよね。より人間味が出てきてるのはどうしてですかね。出していいという判断ですか?

中村:むしろ出すべきなんじゃないかなっていうところかもしれないですね。今までは、自分でMVを見ても、ちょっと遠い存在っぽさがあるなと感じてて。生きてる人間としての私の人となりや日常的に思うことが見えづらかったのかもしれない。でも、本気なんですよ。本気で、あれがリアルだし。でも、生きるとか死ぬとかということについて、メッセージをもらうことも多くて。本当にね、どうしようもない環境にいる人ってやっぱいるんですよね。自分が小さい頃もそうだったし。そういう人に「頑張って」とは簡単には言えない。でも、<また10年後も会いたい>(「青春にして已む」)ということを書いてるように、生きてて、また再会したいし。苦しくて、いなくなってしまうのはやっぱり悲しいじゃないですか。だから、どんな状況であっても……これも簡単に言えることじゃないけど、心持ちと表現みたいなところで、何とか乗り越えることもできるんじゃないか。ただただ頑張れ頑張れって言われたって他人事やし、そういうとこじゃなくって、もっと自分の苦しみも出していこうっていう。でも、その表現を<イエエエエエ>って言ってるみたいにちょっとライトにするっていうところで……。

──捉え方によっては<学校休みたい イエエエエエ>を切り取ってTik Tokに投稿することもできますよね。一方で空虚さで絶望に沈んでく感もあるので、複雑ではありますけど。

中村:複雑ですね。複雑ですけど、笑い飛ばすってすごい大事なことだと思ってて。その状況をライトに受け取るって大事やと思うんですよね、「全然だめじゃん。あはははは」って笑っちゃう感じですね。この曲自体には、いろんなものが混ざってて。そういう自分の人間性も含めて、やっぱり告白していくっていうところが……おこがましいけど、救いや安心みたいなものに、私を好きでいてくれる人には特に繋がるんじゃないかなと思って。だからこそ、表現するのがちょっと恥ずかしかったり、情けなかったりするところも、ちゃんと人間として表現するべきなんじゃないかなと思っての、今です。

──曲としては、最後まで<何もしたくない 何も意味ない>で終わってますよね。

中村:すごく悩みました、この曲。最後の最後まで、どう終わらせるかみたいなところも悩んだけど、やっぱありのままを出すべきだなと思ったんで。やっていこうぜ!みたいなところはない。ただ、今回、MVの脚本をやらせていただいたんですけど、自分と世界の乖離みたいなものを描きたくて。自分はソファーでポテチを食べながら寝そべってるけど、周りの世界はどんどん早く動いてく。ひと部屋で完結するMVなんですけど、時計が速く進んでいるとか、自分が世界に置いていかれてすごく孤独を感じるというか。結局、人って生まれるも死んでいくも1人やから。普段は「孤独を愛す」や「孤独によって育てられるもの」を書くんですけど、今回は、どうしようもない焦りとか、孤独感をしっかり書きたくて。だから、映像でもそういう表現にしました。ただ、周りの状況がいろいろ変わっていくのを描いてはいるんですけど、その1日が経って朝になって、次の日にちゃんと進んでいく。時間が進んでいくっていうのはちゃんと描いてますね。

松本:本人以外の時間は進んでるから、部屋に蜘蛛の巣が張ってて。一つの部屋で完結するMVは今までなかったし、時間に取り残されていくというのは、映像としての面白味があるんじゃないかなとは思いますし。あと、監督は今回、眼鏡かけてたりして、見たことのないビジュアルもあります。そういう抜け感もね、曲の中でのラフさっていうか、近さっていうのもちょっと表現できてるんじゃないかなと思います。

中村:普段、家で眼鏡をかけてるんでね。今回も綺麗に撮っていただきました。

松本:そういうところもありつつ、アルバム制作が発表されてるから、その謎解き要素もあるんですよ。ヒントも楽しめるし、それも見てほしいなと思いますね。

◆インタビュー(4)へ
この記事をポスト

この記事の関連情報