【インタビュー】⼼之助、EP『SCARLET』で多彩な作風発揮「リアルであるのは、ずっと大事にしている」

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2016年にソロ名義での活動をスタートさせて以降、着々とリスナーからの熱い支持を集め続けている心之助。TikTok週間楽曲ランキング6週連続1位となった「Blue Spring」、4週連続1位となった「雲の上」など、SNS、インターネットを通じた楽曲の広がり方がものすごい。最新作となるEP『SCARLET』も、魅力がさらに幅広い層に伝わるきっかけに繋がりそうだ。

◆心之助 動画 / 画像

人生のリアルを刻んでいる楽曲の数々は、多くの人々の日常と重なり得る。多彩な作風が発揮された今作について心之助が語るインタビュー。同席したサウンドプロデューサー・ES-PLANTの言葉も交えてお届けする。


▲『SCARLET』ジャケット

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■自分の生き方、恋愛、仲間が
■描きたい大きなテーマ


──今作の全体像に関して、何か感じていることはありますか?

⼼之助:今までのEPは誰か思い浮かぶ人がいて、その人のために書くみたいなことが多かったんですけど、今回は自分のために書いた曲が多いんですよね。初心に還って自分のために音楽を作ったEPになっていると思います。

──実体験を曲にするというのは、以前から変わらないところですよね?

⼼之助:そうですね。リアルであるのは、ずっと大事にしていることなので。

──「恋愛」と「生き方」が描きたいテーマとして大きいのかなと今作を聴いて感じたんですが、どのように思いますか?

⼼之助:まさにそうですね。自分の生き方、恋愛、仲間が、描きたい大きなテーマになっています。

──1曲目の「存在証明の歌」は、MVも公開されていますが、まさに生き方を描いていますね。

⼼之助:はい。この曲は、MVと曲がセットになっている感じです。「俺が音楽を選んだんじゃない。音楽が俺を選んだんだ」っていう、それくらいの音楽に対する気持ちを込めています。導かれるように始めた感覚があるくらい、音楽は僕の人生にとってなくてはならないものなので。



──《挑戦こそが成功へのライセンス》《芸術に失敗なんて無い》《⾵当たりが強いほどに 追い⾵に変える⼒ここに》《否定する奴が増えりゃ増えるほどに 磨きがかかってるオリジナリティ》とか、インパクトの強いフレーズを連発しているのが気持ちいいです。

⼼之助:この曲は僕という人間を知って欲しい気持ちも入っています。僕のことをまだよく知らない人にも、歩んできた道のりを知って欲しかったので。

──ご自身のことをダイレクトに歌詞にするのも⼼之助さんのスタイルですよね?プロポーズを曲にしたこともあったじゃないですか。

⼼之助:プロポーズに関しては、「My Vision」のMVですね(笑)。ちょっと恥ずかしかったですけど。



──「存在証明の歌」も、どういう人生を辿ってきて、どういう気持ちで音楽をやっているのかが、とてもよくわかる曲です。

⼼之助:《100のBadより1のGoodの為に歌う》っていうフレーズがあるんですけど、それが音楽をやる上で一番大事にしていることなんです。自分の座右の銘みたいなものを入れつつ、改めて初心に還るような気持ちでした。

ES-PLANT:この曲のMVは、⼼之助の最初のMVを撮った監督さんたちに久々にお願いしたんです。最初のチームで完成させたかったので。

⼼之助:「太陽と空」のMVを撮ってくださった方々なんですよね。ES-PLANTもゼロから一緒にやってきた仲間です。

──⼼之助さんが音楽を始めた動機として「言葉を書きたい」というのが大きい旨を前にお聞きしたんですが、ご自身の言葉を託せる音を作ってくれる相棒がES-PLANTさんということですね?

⼼之助:はい。音の部分は彼を頼りにしています。僕、小学生の頃からポエムを書いていて、そういうのが自然と生活の中にあるんですよね。おふくろに「俺、ポエムを書いてるんだよ」って中学生くらいの頃に言ったことがあるんですけど、「ポエムならお母さんも書いてるよ」って見せられて、これは遺伝だなって思いました(笑)。僕は気持ちを伝えるのが苦手なタイプで、文字で書くことで自己完結できる感じが昔からあったんです。

──言葉にすることによって、「自分はこんなことを思っているんだ?」って客観視できる感じもあるんじゃないですか?

⼼之助:そうですね。文字にしたものを後になって見ると、その時に戻れたりもしますし。今の自分の気持ちを文字にして残すのって、手紙みたいな感覚もありますね。

──「存在証明の歌」を書いて、自分自身のことを再確認できた感じもあります?

⼼之助:はい。「前を向いて生きてこう」って思えました。

──⼼之助さんの音楽のサウンド面に関しては、オートチューンを多用しているのも独特だと感じているんですが。

ES-PLANT:10年くらい前からこういうスタイルなんですよ。

⼼之助:オートチューンが流行る前からやっています。オートチューンとの声の相性は、すごく良いと思います。オートチューンをかけることによって哀愁が増すというか。

ES-PLANT:⼼之助は声の揺らし方とか、オートチューンを使うテクニックも、すごくあるんです。

──「サヨナラロンリネス」も、そのスタイルが発揮されていますね。この曲は、音楽に対するラブソングのように感じました。

⼼之助:まさにそうです。音楽との出会いを歌っているので。僕は中学生の頃に19(読み方:ジューク)が好きになって、人生で初めてライブに行ったのが19の武道館だったんです。「あの紙ヒコーキ くもり空わって」の曲中で、お客さんたちが紙ヒコーキに自分の夢を書いて飛ばしたんですけど、僕は「歌手になりたい」って書きました。それが今に繋がっているんですよね。そういう体験も歌詞にしています。

──音楽を志した経緯が、とてもよくわかる歌詞です。

⼼之助:中学の体育館で歌ったのが僕の最初のステージだったので、《19の健司になりたくて》って書いているんですけど、実はその時に歌ったのはコブクロの「轍-わだち-」です(笑)。


──意外な事実(笑)。

⼼之助:はい。でも、コブクロにすると歌詞がごちゃごちゃするので、こうなりました……という裏話でした(笑)。

──(笑)。もともとはアコースティックデュオがお好きだったんですか?

⼼之助:そうですね。中3の終わりくらいにDragon Ashが好きになって、高校に入ってからはそういう音楽性のバンドもやりました。自分の青春時代に聴いていた音楽は、今でも自分の曲に反映されていると思います。僕が作る曲はJ-POPに寄るところがあるので、そこにES-PLANTが今のヒップホップで流行っているビートを取り入れてくれるんです。それによって新しいものになっているのかなと思います。

──少年時代は、ギターを弾いて歌っていたんですよね?

⼼之助:はい。ギターが上手かったわけではないんですけど。自分で曲を作った時は、ちゃんとした譜面ではなくて、自分なりの形でコードを書いていましたね。

ES-PLANT:⼼之助のデモは、コードがないままメロディを乗せたりもしているんですよ。ドラムしか入っていないのにメロディや歌詞を書いて、僕に送ってくるんです。「コードがないのに、よくメロディ書いて展開をつけられるな」と、いつも思っています。

⼼之助:メロディを作りながら、どのコードなのかわかっていないんですよ。

──鼻歌で作ったメロディをもとにしてサウンドプロデューサーにアレンジをしてもらうのはよくありますけど、ドラム+歌ってかなりレアですよね?

ES-PLANT:はい。ドラムが入っているので、構成はちゃんとできているんですよ。

⼼之助:ただBPMを合わせるためにドラムを付けているんです。

──つまりドラムはクリックの役割?

⼼之助:はい。作り方は変わっているのかも(笑)。

ES-PLANT:僕もいろんなアーティストさんとやってきましたけど、こういうのは初めてですよ。

──「サヨナラロンリネス」で描かれているような音楽人生の中で、こういう感性が育まれていったんでしょうね。

⼼之助:そうなんだと思います。

──この曲の歌詞の中に出てくる《グッバイサヨナラロンリネス》は、音楽に対する「寂しい想いはさせないよ」という愛の言葉として受け止めたんですけど。

⼼之助:……はい。

ES-PLANT:そうなの? 音楽と出会えて、孤独とさよならできたっていうことだよね?

⼼之助:そっちです(笑)。僕はもともと1人で遊ぶのが好きだったんですけど、音楽と出会ったことで孤独じゃなくなったんです。でも、今言っていただいたような解釈も面白いですね。聴いてくださる人それぞれの受け止め方でいいと思います。

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