【インタビュー】Petit Brabancon、ミヤが語るEP『Automata』「このメンツってやれることが幅広い」

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■ハードコアとかパンクっぽい感じ
■というのが似合うバンド


──機材も当時のものを使ったんですか?

ミヤ:JC-160(ローランド製/生産終了)っていうアンプで。社長(ミヤの所属事務所MAVERICKの大石征裕氏)が「D'ERLANGERのために買った」っていうアンプなんですけど。倉庫に転がっていたから俺が勝手に持ってきて使ったんですよ。

──へえ……

ミヤ:で、大石さんがレコーディングに遊びに来て、「これ、どうした?!」「俺が勝手にパクって使ってます」って答えたら、「これは俺が最初に買ったアンプだ」みたいなことを言い出して。すごく喜んでました(笑)。

──へえー(笑)。

ミヤ:うちの社長が'80年代後半に買ったアンプを使って、2023年に俺が新譜を出すっていう、なかなかエモーショナルな感じです。

──いや、エモいっていうか、面白いですね。'60年代から'80年代から'90年代から2020年代から、そこで全部繋がっているということですよね。

ミヤ:そういうことになりますね。たぶんそれを感じてるのは俺だけだと思うけど(笑)。


──非常に貴重なお話をありがとうございます。でもそういう音楽を、他ならぬPetit Brabanconでやろうと思った理由って何なんですか?

ミヤ:やっぱりPetit Brabanconはハードコアとかパンクっぽい感じというのが似合うバンドで。当時のそういうGSって、今の生半可なパンクなんかよりよっぽどパンクなんですよ。もっと純粋なハードコアっていうか。嘘がない感じがする。

──ふむ。

ミヤ:で、「そういう人たちが、わかりやすいシングル曲を作ってよ」ってレーベルに言われてイヤイヤ作った曲、みたいなイメージ(笑)。

──はははは! 面白いですね。この曲を持ってって、メンバーの方々の反応はどうだったんですか?

ミヤ:「面白いね」って、みんな言っていましたね。yukihiroさんは「すぐにやりたい」って言ってくれました。あとはお客さんとかリスナーの人たちとか、このテイストを聴いて、“おやおや?”ってなると思うんですよ。“おやおや? なんかこれ、聴いたことがある、この匂い、なんか知ってる!”みたいな。

──うんうん。

ミヤ:それを曲が始まった瞬間のワンフレーズで感じさせるにはどうしたものかと思って、機材に頼ったんです。フレーズももちろんその頃っぽいものなんですけど、音色も含めて、“この辺まで再現してみたらちょっと面白いかな”というか。今のデジタル技術で当時の音をレコ―ディングするとめちゃくちゃ良くて。なんだろう、蘇ってくる感じ、記憶が。

──空気感が蘇ってくる。

ミヤ:私の音楽、青春の頃に聴いていた音楽が蘇ってきちゃう感じ、あるじゃないですか。あの感じ、匂いを、最初から感じさせたいなと思って。いろいろ試行錯誤しました。

──要するに、昔の音をそのまま再現するだけだったらただのレトロになってしまうけれど、それを2023年の音楽として聴かせるためにはどうすればいいのかっていうことですね。

ミヤ:そうですね。レトロなことを再現するための曲ではないので。匂いを感じさせたいということですね。マネスキン(MÅNESKIN)を聴いていて感じるものと同じものを感じてもらいたいという。


──あぁ、なるほどね。その昔っぽい匂いみたいなものを今に生かすために、どういう風な工夫をされましたか?

ミヤ:自分ができることとしては、とりあえずメロディは「自分のメロディでお願いしたい」っていう話を京さんにして。今回はほとんど俺のメロなんですけど、一ヵ所だけ京さんのメロディを使った部分がサビの中にあります。それですごいドラマチックになったんです。一ヵ所だけメロディを変えてきたんです、京さんが。

──それで曲がグっと良くなったという手応えがあったわけですね。

ミヤ:そうですね、アレンジ的にも良くなったし。あとは、普段京さんがあまり使わないような音域のキーなんですよ。使いそうで使わない。低くも高くもない。そこはちょっとトライしてみたかったポイントではあります。そういうことも含めて「面白い」って言ってくれたのかもしれないですね。

──なるほど。

ミヤ:ただyukihiroさんも含め、みんな共通で影響を受けた音楽があって、そうした影響をそれぞれのメンバーが的確に落とし込めるバンドなので、面白いかなと思いますよ。

──曲を作っても自分の意図をすぐに察してくれて、反応してくれる。やり甲斐がありますよね。

ミヤ:楽しいですね。それを楽しんで“やろうよ”ってなれるバンドなのは良かったなって思います。イヤって言われなくて良かったですよ(笑)。


──「Miserable」は最初からある曲だったという話ですけど、今回音源にするにあたってどういうことに注意されたんですか?

ミヤ:基本は1年以上前にレコーディングしたテイクなんですけど、ライヴでやっている最新型とはギャップがあったので、細かいところを若干録り直したりしました、歌も。でも基本的には当時のままですね。ライヴでやっている最新型よりさらに今回の音源のほうが歌が多いです、はい。

──最初の頃と比べると「バンドも変わってきている」ということを今おっしゃいましたけど、何が一番変わってきているんですか?

ミヤ:うーん…手探りでやっていた部分? 手探りでやっているけど、このメンツだからなんとかできちゃっていたっていうのが、これ(「Miserable」)のレコーディング時なんですよね。でも今だと、“こういう曲だったらこう来るよね”っていうのが、なんとなくメンバー間で意思の疎通ができている感じ。だから“この演奏、今だったらこうはならないよね”っていう部分もけっこうあって。ただそれは初期の頃のレコーディングの良いところでもあるので、そのまま残しつつ。録り直すことも一回、考えたりもしましたが、そのままにすることにしました。

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