【ライヴレポート】LUNA SEA、<THE BEST OF LUNA SEA「Day2 -A Show for You-」>「ずっと忘れられない2日間になったね」

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LUNA SEAが5月27日と28日、東京・武蔵野の森 総合スポーツプラザ メインアリーナ2DAYS公演を開催した。約3年3ヵ月ぶりの声出し解禁にして、自身初の会場を舞台に2日間にわたって実施されたライヴに付けられたタイトルは、<THE BEST OF LUNA SEA 2023>。LUNA SEAの名曲たちを一緒に歌ってほしい、長年のファンであれ久しぶりであれ初参加であれ、誰もが楽しめるように…そんな想いからだろうか。直近のライヴが<黒服限定GIG 2022 LUNACY>というディープなコンセプトだったことを思うと、その両面を持っているのがLUNA SEAなのだと改めて実感する。タイトルどおり、シングルベスト盤のようなきらびやかなセットリストだった初日<A Rosy Show>とはまた違う“ベスト”を記録した2日目<A Show for You>のレポートをお送りする。

◆LUNA SEA 画像

暗転した会場に、バックステージを歩くメンバーのリアルタイム映像が流れた。ロックスター然としたオーラと緊張感が画面越しに伝わり、一気に心を掴まれる。恒例の“気合入れ”まで映ったところで、歴代シングル曲をマッシュアップした音源をバックに、SUGIZO(G)、INORAN(G)、RYUICHI(Vo)がステージに現れた。3人きりのステージを見守っていると、始まったのは「LOVE SONG」。終幕前のラストシングルという重要な1曲で、REBOOT後は数回しか披露されていないレア曲だ。かなり予想外のオープニングだが、“ラララ”のコーラスパートがあるこの曲は、声出し解禁ライヴにこそ相応しい。J(B)、続いて真矢(Dr)が参加して温かいグルーヴで包み込んだあと、コーラスパートでは一旦演奏を止めてオーディエンスの歌声に聴き入るメンバー。終幕時の切実さや、“一人きりじゃない”と歌う歌詞も相まって、早くも感動的なシーンが広がっていった。

エモーショナルなムードを自ら吹き飛ばすように、2曲目の「PRECIOUS...」から一気にヒートアップ。ドラム前に4人が並んで歓声を浴びるという光景が懐かしく、胸が熱くなった。


「2023年5月28日、武蔵野の森。みんな、会いたかったぜ!!」と言いながらサングラスを取り、RYUICHIがクールにキメてみせる。大歓声に目を細めつつ、「みんなの声を聴かせてくれよ!」と叫んで「STORM」になだれ込んだ。タイトルどおり嵐が吹き荒れるようなバンドサウンドで攻め立て、続いても大ヒットシングル「DESIRE」へ。ライヴ定番曲ではあるが、観客の声というエネルギーを充填し、よりパワフルに会場を揺らしている。

そしてここで2日間通して初の、REBOOT後のシングル(と言ってもリリースは10年前)「Thoughts」を投下。疾走感に満ちたスリリングな展開と、ドローン撮影による立体的な映像がシンクロし、新しい刺激を演出していた。さらに、今度は30年前に飛び、「IN MY DREAM (WITH SHIVER)」の色褪せないキャッチーさとシンガロングを堪能。LEDEヴィジョンにミュージックビデオが流れ、30年前のメンバーと共演するさまも新鮮だ。時代を軽々と超え、それぞれが経験したLUNA SEAとの出会い、LUNA SEAとの思い出に触れながら新しい景色を紡いでいく。<A Show for You>が示すのは、そんな意味なのかもしれない。

とはいえ、意表を突く要素も必ず盛り込んで来るのがLUNA SEA。初日は「INTO THE SUN」で沸かせた一方、今夜披露されたのは「I for you」のカップリング曲「WITH」だ。Jの印象的なベースフレーズにINORANのアコギが重なり、ハンドマイクで歌うRYUICHIのフェイクが悲壮感を掻き立てる。リリース当時、名ラブソングの裏に硬質でダークなサウンドの曲が収録されていたことに驚いたものだが、その世界観はLUNA SEAのカップリング曲ならでは。背景には荘厳なステンドグラスが映り、まるで教会の中で歌っているかのようなムードに飲み込まれた。



その後、SUGIZOの美しいバイオリンの音色が響き渡り、ステージにRYUICHI、SUGIZO、INORANの3人が残る。一瞬の静寂を挟んで、INORANのギターから「THE BEYOND」がアコーステックバージョンで奏でられた。観客が身につけたグッズの“LUNA SEAライト”がオレンジ色に光り、宇宙空間さながらの浮遊感に包まれる。初日とはまったく違う展開で、前半戦を終えた。

真矢によるドラムソロもサプライズで幕を開けた。初日は真矢を中心に4人囃子と共演するものだったが、今日はなんと、真矢自ら囃子方として参加。着物を羽織って太鼓を担当し、かけ声を含めて見事な演奏を繰り広げた。炎の明りに照らされ、お囃子だけが響く空間は、薪能そのものの緊張感だった。その静謐を打ち破るようにデジタルビートが流れ、お囃子とユニゾンしてから真矢が満を持してドラム台へ。ど派手なドラムソロで魅了し、特大のコール&レスポンスを起こして「やっぱライヴの主役はおまえたちの熱い想いだぜ! LUNA SEAの第6のメンバー、おまえら最高にカッコいいぞ!」と笑顔を見せた。

その熱を引き継ぎ、サイレンのような赤い照明に染まったステージに飛び出してきたのは、もちろんJ。ドライヴ感溢れるベースソロでぐいぐい牽引し、真矢に負けじとコール&レスポンスを巻き起こす。会場を見渡しながら「それぞれのペースで、それぞれのスピードで、燃え上がってくれ!!」と告げ、温まり切ったところでメンバー全員が集結。「1, 2, 3, 4!」というJのカウントで「TONIGHT」に突入した。



ライヴ後半に入り、熱狂はさらに加速。SUGIZOのスペーシーなギターが空間を染め上げる「宇宙の詩 〜Higher and Higher〜」から、不朽のキラーチューン「TRUE BLUE」「ROSIER」を畳みかけ、どんどん一体感を生み出していった。オーディエンスの歌声を求めつつ、自身も鬼気迫る歌を届けるRYUICHIの気迫が凄まじい。手術を経ての復帰後、リミットを超えようとする彼の想いはより強くなっているように思う。どこまでも強くなり続けるヴォーカリストだ。

ミラーボールが輝く中、RYUICHIが「この曲で出逢った人も多いと思う」と語り、本編ラストに「I for you」が贈られた。珍しくRYUICHIが歌いながら花道に出向くシーンも。歌詞がスクリーンに表示され、オーディエンスとRYUICHIの歌声が重なるのが美しい。珠玉のメロディで愛を分かち合い、本編を締め括った。

アンコールを待つ間、手拍子とともに観客が歌う“♪Happy Birthday LUNA SEA”が会場に響く。LUNA SEAのライヴでは、こうして歌でメンバーを迎えることがよくあった。当時のような大合唱とはいかなかったものの、その慣習が忘れられていなかったことが嬉しい。ステージに登場したメンバーも、感極まった表情で感謝を口にしていた。

「俺たち、帰るべき場所に戻ってきたよね。次のナンバーは、俺たちだけじゃなくて、みんなと一緒に歌いたくて作った曲だから。やっとみんなと一緒に歌える日が来たこと、一緒にトンネルを抜けたこと、本当に嬉しく思ってます」──RYUICHI

ギターを携えたRYUICHIがそう語り、贈られたのは「Make a Vow」だった。コロナ禍に入った2020年4月、不安が渦巻く中で急遽リリースされたのが同曲だ。ヴィジョンには当時、動画を通してみんなで歌うべく募集されたリスナーの映像が映し出された。今やリモート画面も懐かしく感じるほどだけれど、これがたった3年前であることに驚く。ステイホームやライヴの延期、無観客ライヴ、収容率50%の着席ライヴ…さまざまな状況を乗り越えてきた時間は、3年間とは思えないほど長かった。しかし、その先に今日がある。RYUICHIの歌声とギターが優しく寄り添い、諦めずに歩み続けたLUNA SEAとSLAVEたちの想いを讃えていた。


RYUICHI自ら「On Vocal!」と煽ってスタートしたメンバー紹介。「なんにも言うことはねえっす、みんな完璧っす」と語尾で笑いを取ったあと、「ずっと忘れられない、10年20年、色褪せない2日間になったね。どうもありがとう! 愛してます」と語りかけた。RYUICHIに耳打ちし、「INORANが “愛してる”って。“最高だ!”って。“燃えてる”って!」とRYUICHIが代弁したINORANのMCを経て、3人それぞれが今の素直な想いを口にしていく。

「みんなと一緒に超えた闇、その先に、今日こんなに感動的な「Make a vow」がありました。コロナはなくなりません、ずっといます。もちろん自分たちの命を守りながら生活をするべきだけど、そこにとらわれすぎてがんじがらめになってもつまらないし。その中でどうやって音楽をやっていくか、エンタメができるのか、みんなと繋がれるのか…これからも一緒に模索しながら歩んでいきましょう。まだまだ俺たちはさらに先に、未来に向かって走りたいので、ぜひその種をみなさんと一緒に蒔いていけたら嬉しいです」──SUGIZO

「約3年ぶりに声出しライヴができて、本当に…最高だよね。エンターテイメントの世界はいろいろ我慢しなくちゃいけないことがたくさんあって、みんなも、もっとも大事なものを守ろうとしていろんな我慢したじゃん。でも、ここに辿りついたよね。みんなのおかげです。3年間、イライラすることもムカつくことも山ほどあったけど、嫌なことばっかりでもなかった気がするんだよね。みんなと絆を確かめられたし。より強固な絆を、俺たちは作れたんじゃないかなと思ってます。それにさ、こんなことがなければ、俺、ビオレママにもなれなかったし(笑)」──J

「今回のライヴに対していろんな意見があったこと、メンバーも運営側も把握してます。一人ひとりいろんな考え方があるし、どんな行動で勝ち取って今日を迎えたか、それぞれあると思うんですけど。共通点がひとつだけあって。それは、みんなLUNA SEAがいちばん大事だから、自分の感じ取ったこと、想いを伝えてくれたんだと思う。だから、SUGIZOが(昨日のライヴで)言った“新生LUNA SEA”には、いろんな考え方がある。俺たち5人がまとめて、みんなにいい景色を観てもらうから。頼むから、ずっとずっとずっとついてきてくれよな!」──真矢

RYUICHIが「もういっちょ盛り上がっていこうか!」と煽り、「BELIEVE」からラストスパートが開始。アグレッシヴなサウンドとシンガロングで駆け抜け、「おまえら全員でかかってこい!」という言葉を号令に、「WISH」に繋いでいく。オーディエンスが「I WISH!」と叫んでジャンプし、きらきらと銀テープが舞い落ちる…完全体の「WISH」にようやく出会えた感動がこみ上げた。客電がつき、明るくなった会場に銀テープがきらめく景色が眩しい。しかし、観客の歌声が少し届きにくかったのか、RYUICHIが急にマイクを放りだし、ステージを降りて客席へ、という事態に。ハプニングに動揺が走るも、それは彼が観客の声を求め、もっと近くで聴きたいと思ったからこそだろう。自身も声を振り絞って渾身の歌で返す姿に、この一瞬にすべてを懸ける揺るぎない情熱が漲っていた。


そして、ライヴの終演間近のタイミングで、特大のサプライズが用意されていた。RYUICHIの「明日は5月29日。みんなにとっても、俺たち5人にとっても大切な記念日だよね」という言葉から、なんと結成日である5月29日にスペシャルライヴを開催することが告知されたのだ。ただでさえザワつく会場に、さらに場所が“目黒鹿鳴館”であることが告げられると、悲鳴に近い声があがる。目黒鹿鳴館は、初期LUNA SEAと縁の深い老舗ライヴハウスだ。のちに発表された内容では、ファンクラブから抽選で選ばれた150名が参加できるほか、YouTubeで全世界に配信されるとのこと。本稿が公開される頃にライヴは終了しているはずだが、一体どんなステージになったのだろうか。

まだ動揺が広がりつつも、終演の時は訪れる。「たくさんの物語がこの曲から始まりました」というRYUICHIの言葉とともにラストを飾ったのは、「LOVELESS」だった。1曲目に演奏される印象が高いからこそ、この先に続く、たしかな未来を暗示するようなポジティヴィティを持って響き渡る。SUGIZOがトリプルネックギターで奏でるロングトーンやアルペジオに彩られ、メモリアルなライヴは幕を閉じた。

RYUICHIが「ベストライヴという、俺たちの大切なものを込めた挑戦」と語っていたように、名曲を惜しみなく揃えつつ、サプライズ要素も盛り込んで“らしさ”を発揮したLUNA SEA。直球の王道と、ひねくれたインディーズ魂を持ち合わせているのは、それこそ目黒鹿鳴館に立っていた頃から変わらない。“大切なもの”の一つである“観客の声”を取り戻し、LUNA SEAは新たな時代のその先へ、突き進んでいく。

取材・文◎後藤寛子
撮影◎田辺佳子


■<THE BEST OF LUNA SEA 2023「Day2 -A Show for You-」>5月28日(日)@東京・武蔵野の森総合スポーツプラザ メインアリーナ SETLIST

01. LOVE SONG
02. PRECIOUS...
03. STORM
04. DESIRE
05. Thoughts
06. IN MY DREAM (WITH SHIVER)
07. WITH
08. THE BEYOND 〜Acoustic Version〜
〜Drum Solo〜
〜Bass Solo〜
09. TONIGHT
10. 宇宙の詩 ~Higher and Higher~
11. TRUE BLUE
12. ROSIER
13. I for You
encore
14. Make a vow
15. BELIEVE
16. WISH
17. LOVELESS

■<THE BEST OF LUNA SEA 2023「Day1 -A Rosy Show-」>5月27日(土)@東京・武蔵野の森総合スポーツプラザ メインアリーナ SETLIST

01. ROSIER
02. TONIGHT
03. TRUE BLUE
04. END OF SORROW
05. SHINE
06. IN SILENCE
07. gravity
08. RAIN 〜Acoustic Version〜
〜Drum Solo〜
〜Bass Solo〜
09. INTO THE SUN
10. STORM
11. DESIRE
12. JESUS
13. BELIEVE
encore
14. I for You
15. Déjàvu
16. WISH
17. Crazy About You

■<LUNA SEA DUAL ARENA TOUR 2023>


【神奈川】
10月07日(土) Kアリーナ横浜
 <MOTHER OF LOVE, MOTHER OF HATE>
 open16:30 / start18:00
10月08日(日) Kアリーナ横浜
 <UN ENDING STYLE>
 open15:30 / start17:00
【福岡】
11月04日(土) マリンメッセ福岡B館
 <MOTHER OF LOVE, MOTHER OF HATE>
 open17:00 / start18:00
11月05日(日) マリンメッセ福岡B館
 <UN ENDING STYLE>
 open16:00 / start17:00
【宮城】
12月02日(土) ゼビオアリーナ仙台
 <MOTHER OF LOVE, MOTHER OF HATE>
 open17:00 / start18:00
12月03日(日) ゼビオアリーナ仙台
 <UN ENDING STYLE>
 open16:00 / start17:00
【愛知】
12月16日(土) 日本ガイシホール
 <MOTHER OF LOVE, MOTHER OF HATE>
 open17:00 / start18:00
12月17日(日) 日本ガイシホール
 <UN ENDING STYLE>
 open16:00 / start17:00
【大阪】
12月30日(土) 大阪城ホール
 <MOTHER OF LOVE, MOTHER OF HATE>
 open18:00 / start19:00
12月31日(日) 大阪城ホール
 <UN ENDING STYLE -COUNTDOWN SPECIAL->
 open21:00 / start22:00

▼チケット
オフィシャルファンクラブ「SLAVE」先行受付
受付開始:5/31(水)15:00より
※これからのご入会でもお申込みいただけます。

■『MOTHER』『STYLE』

▼4thアルバム『MOTHER』
1994年10月26日リリース。代表曲「ROSIER」や、自身初のオリコン初登場1位シングル「TRUE BLUE」が収録されるなど、LUNA SEAの存在をこの世に知らしめた出世作。翌1995年12月23日には自身初の東京ドーム公演を即日ソールドアウト(5万人動員)。
▼TOUR<MOTHER OF LOVE, MOTHER OF HATE>
アルバム『MOTHER』を携えて行われた全国ホールツアー
※1995年3月スタート
※全国27カ所31公演(総動員数:63,000人)

▼5thアルバム『STYLE』
1996年4月22日リリース。アルバム『MOTHER』に続く本作は、「DESIRE」「END OF SORROW」などオリコンシングルチャート初登場1位楽曲を収録。アルバムとしては初のオリコン初登場1位を獲得した。
▼TOUR<UN ENDING STYLE>
アルバム『STYLE』を携えて行われた全国アリーナ&ホールツアー
※1996年7月スタート(全国アリーナツアー<UN ENDING STYLE>)
※全国9カ所16公演(総動員数:120,000人)
※1996年10月スタート(全国ホールツアー<UN ENDING STYLE -TO RISE->)
※全国28カ所28公演(総動員数:58,000人)

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