【インタビュー】シンガーズハイ、飛躍へ加速するEP完成「自分たちですら次が読めないから、このバンドは面白い」
シンガーズハイに強烈な追い風が吹いている。煽情的ロックサウンドを身にまとった2022年リリースのシングル「ノールス」のMVは、430万再生を超えて(※5月中旬現在)なおも上昇中だ。さらに、躍進のミニアルバム『Melody』の好評を受けて2月リリースのシングル「Kid」は、皮肉と自虐に満ちた超攻撃メッセージで再び衝撃を与えた。
◆シンガーズハイ 動画 / 画像
1曲入魂のスタンスでエポックメイキングな楽曲を出し続けるバンドは今、さらなる大きな飛躍へ向けた猛烈な加速の中にいる。「Kid」も収録した5曲入り最新EP『DOG』がその証拠だ。内山ショート(G, Vo)、ほりたいが(G)、みつ(B)、りゅーいち(Dr)に話を訊いた。
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■音楽に対してごちゃごちゃ言わなくていい
■もっと純粋に楽しんだらいいんじゃないの?
──「ノールス」がロングヒットして、ミニアルバム『Melody』が出て、さらに「Kid」がヒットしてという、去年からいい流れでここまで来てますよね。5月の大型連休には、<JAPAN JAM 2023>や<VIVA LA ROCK 2023>など大型春フェスにも初めて出演しましたけど、どんな景色が見えましたか。
内山:ライブハウスの対バンイベントとは別ものというか、それよりもさらに、ほかのバンドさん目当てで来たであろう、いろんなバンドTシャツを着てる人を巻き込んでステージを作るという感覚がより強かったんで。純粋に、どんどん広がっていく感じがめちゃくちゃ楽しいなって思えましたね。
──プレッシャーよりも楽しさが大きかったと。
内山:そうですね。緊張は、びっくりするほどしなかったです。ついて来てくれるスタッフもいつもの人たちだったし。あとはお客さんが百戦錬磨というか、フェス慣れしてる人が多かったんで、フロアの温かさが…いや、いつもの人たちが温かくないというわけではないんですけど、慣れ度が違ってて、向こうが“盛り上げたろ”っていう気持ちで来てくれてたんで。
みつ:あとは、初めてのフェスだったんで、晴れ舞台を観に来ようという過保護なファンたちが、いっぱい来てくれて見守ってくれてたから、それもデカかったかなと。
▲内山ショート(G, Vo)
──過保護な(笑)、でもそれは頼もしい。という一連の流れを経て、満を持してリリースされるのが最新EP『DOG』ということになるわけですけど。どんな作品になってますか。
みつ:EPという形でCDを出すのは初めてなんですけど、今までにミニアルバムを2枚出してて、ここでEPを出すことになって。サブスクは4曲でフィジカル(CD)は5曲なんで、初見の人は4曲しか聴かないかもしれないですけど、EPにしたことによって1曲1曲の重みというか、キャラクターが今までよりも大事になってるというか。1曲1曲によってうちの印象が、初めて聴く人たちにもダイレクトに伝わるというか。だからこそ、バラバラな曲が集まって、それを盤にできて、このタイミングで世に発信できたのは、バンドにとってすごくいいタイミングだなと思いますね。
りゅーいち:いろんなパターンの曲が入っていて聴き飽きないですよね。ただレコーディングまでの日数が短かった曲もあったんで、ちゃんと叩けるかな?という不安もあったりしたんですけど。
──それってどの曲ですか。
りゅーいち:「Soft」と「Kid」は、ライブでもやってないし、いざ録るとなったらどういう感じなのかな?って。
内山:バンドの最初の頃はライブをやりながら、だんだんと曲が暖まっていくというか、最初に作ったものとは違う形になっていくという過程があったんですけど、今後やっていくことは、そういう過程をとらない形のものが多くなる気がして。という意味では、慣れてないかもしれないし、新鮮なのかもしれないし。
りゅーいち:そうだね。
ほり:フィジカルとしては3作目で、自分の好きなようにギターを弾いてるということもあるんですけど。『Melody』の時の「ノールス」や「すべて」はオクターヴでハモったりとか、そういうフレーズを使うことが多くなって。『DOG』はそれをわかりやすく昇華させたというか、ハモリをもっとうまく使えるようになったと思います。たとえば「Soft」だと三度上と三度下を行ったり来たりしてて、自分の引き出しの出どころは変わらないんですけど、より自分らしく落とし込めたのかな、と思います。
りゅーいち:相変わらず今回も弾き倒してるよね、ギター。
──まずは何と言っても1曲目の「Kid」。サウンドも言葉も超攻撃的で、何回聴いてもすごい曲だなって思いますけど、これってもともとシングル用に作ってたんですか。
内山:というか、僕が曲を作るのが遅くて、いつもデモの残弾がない状態なので。常に作らなきゃと思っていたところに、“面白いことができそうな曲ができたぞ”というのがあって、シングルにするとしたらこれかなと。「ノールス」が徐々に反響が出始めてたんで、ビートに重きを置いた曲を作ることに自信が持てたということもあったし、“今かな”というタイミングでしたね。
──「Kid」はすごい曲ですよ。言いっぱなし。攻撃しっぱなし。
内山:投げつけて終わり(笑)。歌詞を書いたばっかりの時に、「これ大丈夫かな。怒られないかな」って。メンバーに見せたんですけど…。
ほり:「メロディがいいから大丈夫じゃない?」って。歌詞どうこうというよりは、結局メロディが良くて、歌詞と譜面割りがちゃんと合ってるから、聴いてて気持ちいいので「いいんじゃない?」って言ったんですけど。
▲りゅーいち(Dr)
──そもそも、「Kid」を書こうと思った動機は何だったんですか。
内山:動機は特にないんですけど…たまたまその時にきっかけがあったというわけではなくて、わりと常日頃、音楽が好きな人ほど、自分にとって正しい音楽の形があって、それに当てはまらないものに対して攻撃的になる人が多いのかなって思ったんですね。もともと自分も、周りの音楽に対してそういうことを思ってるタイプの人間だったんですけど、「ノールス」のおかげでいろんな人の目に留まるようになって、理不尽と言うか、音楽をちゃんと見てもらえてないな、ということもけっこう出始めている気がして。多くの人の目に留まることは、前提としていいことなんで、気に入らない人が出てくることはもちろん当たり前のことだとは思うんだけど、“何かモヤモヤするな”と。でも自分もおそらく、耳に入って来る音楽に対してそういう言い方をしてきたかもしれないと思ったんで、そういう考え方の改めということもありましたし。
──はい。なるほど。
内山:「Kid」の歌詞の内容としては、Aメロとかヴァースの部分に入ってる悪口を、サビで全部否定するという形になってるんですね。最終的には、“音楽に対してごちゃごちゃ言わなくていい、もっと純粋に楽しんだらいいんじゃないの?”ということが言いたかった曲にはなってます。
──流行りの曲の薄っぺらさと、それを聴いてる人の浅さを、強烈に皮肉る曲ですよね。一個一個の言葉の力が強すぎるから、ちゃんと真意を読み取れるかどうか、リスナー次第だとは思います。
内山:でも、ニルヴァーナの「イン・ブルーム」という曲も、“どいつもこいつも歌の意味なんてわかってないだろ”みたいなことを歌ってるですよね。それを知ってちょっと嬉しいというか、僕もここまで言っていいのかわからない気持ちがあったんですけど、ちょうどその頃にニルヴァーナの曲を知って、「カートもこういうこと書いてるんだから大丈夫か」って(笑)。
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