【インタビュー】FANTASTIC◇CIRCUS、転生から原点回帰へ「ようやく過去の自分を愛せるようになった」

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■自分のルーツはここにあったんだなって
■同時に“変わってないな”って思いました


──当時のFANATIC♢CRISISは非常に早いペースでシングルを発売していて、しかも、ほとんどの曲にタイアップがついていました。その頃の曲と改めて向き合って、再発見したこともあると思いますが、どんな姿勢でリテイクベストアルバム『TENSEISM BEST SINGLES【1997-2000】』制作に臨んだのでしょうか?

SHUN.:大前提として決まっていたのは余計なアレンジや奇をてらったことはしないで、なるべくみんなの思い出に残っているままの曲を、令和版として今の音に変換して届けられたらなって。掘り起こす作業はなかなか大変でしたけどね。“当時、どうやって弾いてたかな?”とか。僕の場合はあえて当時のギターを使わずに今まで使ったことがないギターで弾いたんですが、新しい挑戦もありつつ、過去をできるだけトレースできたらと思って取り組みました。

──当時、リアルタイムで聴いていた方々の思い出を崩さないように?

SHUN.:そうです。僕自身、中学の時に聴いていた曲がリメイクされて全く違うヴァージョンになっていたら、思い出が蘇ってこないんです。なので、なるべく原曲に忠実に。

石月:僕は当時と今では歌い方が全く違うので、ライブを思い出しながらレコーディングしました。例えば「LIFE」という曲の歌詞の最後は“果てしない未来へ、続け。”なんですが、当時の音源は“果てしない未来へ”で終わっているんです。ライブでは“続け。”と歌っていたので、ワンフレーズ加えています。kazuyaは「今の歌のほうが聴きやすいし、明るくなった」と言ってくれているんですが、確かにクセは減ったかもしれないですね。今は緩急をつけたり、“こういうふうに歌いたい”と思ったことを反映できるようになりましたけど、当時はどう歌ったらいいか模索しながら、1曲1曲必死でレコーディングしてましたからね。


──「LIFE」以外に歌詞を変えた曲はありますか?

kazuya:「火の鳥」もそうだよね。

石月:そう。オリジナル音源は“erase me...”で終わっているんですけど、リテイクした「火の鳥」の最後は“Don’t erase me...”にしました。ライブで歌っていたというより、メッセージとして入れたんです。“僕を消してくれ”だったのが“僕を消さないでくれ”って。

kazuya:僕はリテイクするに当たっては、解散してからいろんなことを経験して知識量も増えたので、メロディとコードがぶつかっている箇所を取り除きつつ、オリジナル音源のフレージングをイメージできる感じにアレンジしました。当時、わざと音がぶつかるようにした曲もあったんですけど、今、聴くと引っかかる部分もあるので、それを整頓するためにコードを再構築して、それでいてギターの音は“FANATIC♢CRISISってこういうバンドだったよね”って思えるものにしました。今のバンド(THE MICRO HEAD 4N'S)ではゴツイ音を作って弾いてるんですけど、あえて極力歪みを落としたクリーントーンで、コードがちゃんと響くことが大事だなって。シンセにも共通したことが言えるんですけど、僕がいちばん意識したのは歌がよく聴こえるようにということ。昔はエゴというか、自己表現欲求が強かったですからね。さっき努も言ってましたけど、僕は今の努の歌い方のほうが好きなので、とにかく歌がもっと届くようなサウンドにしてあげたいと思いました。

──ギターのみならず、シンセの音も今の石月さんの歌を活かす音色を選んだんですね。

kazuya:和声だったり、音の並びだったり、些細なことですけどね。そういう作業を自宅で3ヵ月ぐらいやっていた気がします。

石月:締め切りギリギリまで頑張ってましたね。

kazuya:やっぱり自分たちがしっくりこないと世に出せないので。

──特に原曲とアレンジが変化した曲というと?

kazuya:どの曲もちょいちょい違ってるんですけど、作家視点でいうと1曲目の「SUPER SOUL」ですかね。散らばっていたものをまとめたんですが、もともと、ずーっと転調している曲なんです。今回のレコーディングは昔の自分との対話のような作業だったので、“こんなに転調させて、めちゃめちゃイキってたね。kazuyaくん、頑張ってたね”って(笑)。そういう曲に当時、努がメロディをつけたのもすごいなって。

石月:確かにデビューシングル「SUPER SOUL」は東京に出てきて、みんなでシェアしてひとつ屋根の下に住んでいる中、MTR(マルチトラックレコーダー)を使ってオーバーダビングして作ってたなって。意気込みが半端なかったですね。

kazuya:「火の鳥」は、今の僕が作っている曲のような転調の仕方をしているんです。あまり知識がなかった頃から“こういう展開が気持ちいい”っていう感覚を持っていたんだなって。自分探しプラス今の自分の実力を試すような感覚というか、過去と未来が繋がる感じがして面白かったですね。当時は僕もSHUN.もイキってるから、2人ともフレーズを弾いていたりするんですよ。コードが鳴ってなくても成立していたバンドだったので。でも、今回はどちらかがバッキングにまわろうねって。そういう意味でも綺麗に整頓しました。

SHUN.:僕は当時、ESPのSHUN.モデルとか、レスポール系を使うことが多かったんですけど、もうちょっとジャキっとした音がいいなと思ったので、今まで使ったことがなかったテレキャスターを弾いてみました。特に「7[SEVEN]」はそういう音のイメージだなと思ったし、メロディアスな曲であればあるほどテレキャスで弾くほうが今っぽいと思ったので、あえてレスポールは使いませんでした。個人的に大変だったのは「心に花を 心に棘を」。さっきkazuyaくんが言っていたように、音楽理論上、コードをきちんと整頓したので、サビで僕は前と違うコードを弾いているんです。正直、今この場を借りて言いますけど、ツアー中はちょいちょい昔のコードで弾いています(笑)。

kazuya:ははは。

SHUN.:やっぱり昔のコードのほうが身体に馴染んでいるので。

kazuya:確かにレコーディングの時も「前の方がしっくりくる」ってブーブー言ってましたね(笑)。


▲kazuya(G)

──激しいナンバー「Behind」や「DEFECT LOVER COMPLEX」に関してはどんなアプローチを?

SHUN.:「Behind」も整頓しましたね。

──整理整頓はリテイクのキーワードなんですね。

kazuya:さっき話に出た「印象が明るくなった」というのは、濁りがないからなんですよ。水に絵具を落とすよりも、綺麗な水のままのほうがいいんじゃないかなって。そのほうが歌が際立つので。

SHUN.:あとメインフレーズは変えられないですよね。「DEFECT LOVER COMPLEX」も細かく言うと、音がぶつかっている箇所があるんですけど、そのままのほうがロックだし、カッコいいからあえて変えなかったですね。

石月:全体的に当時聴いていた人がリテイクを聴いても、昔のテイストが損なわれないようにしましたね。SHUN.が言ったように、今の音や機材でレコーディングするわけだから、聴き比べたらかなり違うんですけど、聴感では“あの頃を思い出すよね”っていう感覚になれることがすごく大事だなって。

──FANTASTIC◇CIRCUSの曲はリズムも変化していくし、転調も多く、シンプルというわけではないのにメロディと歌が強い曲が多い。リテイクが今の骨太なサウンドになっているのも印象的でした。

石月:ありがとうございます。

──歌詞にもきっと再発見がありましたよね?

石月:ありました。歌詞は自分の基礎だし、教科書ですね。今も角度は違えど歌っていることは一緒なんですよ。FANATIC♢CRISISを解散して、10年前にソロで再始動したんですが、仲間がいる集合体を離れてひとりになって改めて学ぶことがたくさんあったんですけど、改めて自分のルーツはここにあったんだなって。同時に“変わってないな”って思いましたね。

──リテイクベストを聴いたファンのリアクションも返ってきていますよね?

kazuya:どうなんでしょう。好意的な感想が多い印象はありますけどね。例えば10代の時に聴いて好きになった人は、曲がその人の肥やしになったわけだから、リテイクすると「昔の曲のほうがいい」って言われることがほとんどだと思うんですけど、受け入れられている感じがしてありがたいですね。

SHUN.:それとサブスクで聴けるのが嬉しいという声も多いですね。ネット上で聴ける昔のFANATIC♢CRISIS時代の楽曲は公式ではないものが多いので、クリアな音でPCやスマホで聴けて嬉しいという声はけっこう聞きます。

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