【インタビュー前編】アメノイロ。、日常を描くサウンドと迸るバンドヒストリー「寺見の作る音楽をもっといろんな人に届けたい」

■みんなで暮らしているから
■メンバーに気持ちを助けられました

──安田さんがメンバーになる前、アメノイロ。の曲や音をどう感じていたんですか？

安田：めちゃくちゃ好きだったんです。対バン相手の曲をずっと聴くってことはあまりなかったけど、アメノイロ。の曲は普段聴きするほどで。新しい音源もできたら送ってくれて、全部を熱心に聴いてたから。くだらない話ですけど、自分が乗っていたクルマが発する音と流れてきたアメノイロ。の曲のBPMが一緒で。寺見と僕が乗っていた車の車種が一緒だったんですよ。

寺見：ウインカーのね、カチカチって音のBPMが（笑）。

安田：そう、それが曲のBPMと一緒だった。


──そのまま歌詞のストーリーになりそうな実話ですよ。

安田：なりますかね（笑）。

寺見：「俺のココア(ダイハツのミラココア)のBPMと一緒だよ」ってLINEが来て、俺もココアだよって返したから（笑）。

本多：僕は、そういうやり取りがあったことすら知らなかったですけどね（笑）。寺見と(安田)拓生は前から仲良くしてたけど、僕は拓生とはほぼ交流なくて。

安田：全然しゃべったことなかったんです。

本多：だからスタジオに入ったときに「ああ、キミか」みたいな（笑）。

安田：そう、他人行儀な“キミ”扱い（笑）。

本多：でもすごく仲良くなって、今は拓生とのリズム隊で最高のグルーヴを作ってます。

──上京して、天下獲るぞってなったはいいけど、ちょうどコロナ禍に突入した時期だったでしょ？

寺見：上京したはいいものの、ライブやイベント予定が全部なくなっちゃって。バンドとしてのモチベーションを上げるために、制作しながら、それプラス何をしようかって。スタジオに入るにしても、ライブが決まってないと、やっぱりモチベーションも上がらないし。でもメンバーと一緒に暮らしていて、毎日、顔を合わせるので。

──今もなお、メンバー全員で一緒に暮らしているんですか？

寺見：はい。

安田：俺もメンバーになってから、みんなが住んでいる一軒家に仲間入りして、全員で共同生活ですよ。

──おもしろそう。

寺見：コロナ禍で活動もできなくなり、けっこう落ち込むかなと思ったけど、みんなで暮らしているから、メンバーに気持ちを助けられましたね。


──そうやって日頃から一緒だと、人間的なノリも分かるし、お互いの理解も深め合えるし、それが音楽にもいい作用を生むと思います。

寺見：無意識でそうなってるかもしれないですね。それで上京した2020年の秋口ぐらいに、イベントがあまりにもないから、自分たちで企画イベントをやろうって決めたんです。人が来てくれるのか？ドキドキしましたね、やっぱり。でもあのときは入場者数制限にも助けられて、いい感じにハコが埋まって。そうやって東京での活動をスタートさせたら、徐々にライブスケジュールも決まっていったんです。

──実際にそのあたりからアメノイロ。というバンド名をよく耳にするようになりましたから。

寺見：上京して良かったと思いますね（笑）。

──音楽は、作り手が置かれている環境や状況、周りの風景や匂いなどもフィードバックされるものだと思うんですよ。それに広島で暮らしていたときと、東京に来てからでは、感じるものも見るものも、時間の経つ速さも違うと思います。

寺見：移動手段が、広島のときは車で、東京に来てからは電車と歩きになったんで。ココアじゃなくなっちゃって、私鉄になっちゃったんですよ（笑）。それも関係しているのか分からないですけど、曲のテンポがゆっくりしたものが自然に増えたんです。広島のときはギターロックというか、速めの曲もけっこう多くて。

──ココアに乗ったスピード狂で（笑）。

寺見：カッ飛ばしてたかもしれないです（笑）。でも上京してからは歩くテンポのような曲が増えた気がします。

──寺見さんの作る楽曲の大ファンでもある本多さんと安田さんは、そういった変化に気づいていました？

本多：すごく感じていました。歌い方もそうだし。広島にいたころは歌い方もけっこう尖っているなって感じで。アルバムジャケットも、寺見がアイデアを出しているんですけど、使いたがるフォントも今とは違ったり。上京してからは、色合いとか使いたがるフォントも丸くなったなっていう。

寺見：そんな変化まで気づいていたとは…ちょっと恥ずかしくなる（笑）。

──2023年5月にリリースするミニアルバム『風吹く窓辺が見守る朝に』の詳しい話はインタビュー後編でうかがうとして、5月度 D-PUSH!アーティストとしてミニアルバム収録曲「ダイアリー」がカラオケに入ります。どうやったらこの曲を気持ちよく歌えるか、アドバイスをいただけますか？

寺見：メロディが滑らかに動くんですね、ウネウネと。音程の上下が意外に速いんです。歌詞の一文字ごとをハッキリ発音する意識で歌うと、メロディがより立って、言葉も飛ぶかなと思います。

安田：確かにメロディはうねるよね。そのメロディーを聴いているだけでも心地よいので、ベースはどっしりと支えるという感じで弾いています。

本多：ドラムもそうですね。繊細な曲なので、AメロとBメロのハイハットの刻みは、機械的な質感よりもあえて生のニュアンスを出したりしました。

寺見：メロディを活かすためのアレンジも聴きどころなので、バンドサウンドを感じながら、ぜひ歌っていただきたいです。

取材・文◎長谷川幸信




◆インタビュー【１】へ戻る