【インタビュー】Rest of Childhood、<10代無料ライヴ>開催に踏み切った本当の理由「大人が責任取らないでどうするんだ」
■10代学生の生活は規制だらけだったはず
■だから特に手厚くしてあげたいな
──実際、今回のツアーでHALさんはMC少なめ、矢継ぎ早に曲を演奏していますが、リズム隊から見たHALさんの変化や成長というと?
u:zo:一番感じるのは歌詞で伝えようというところにフォーカスし始めたのかなって。曲でわかってもらえたらMCで説明する必要はないし。
Takuya:そうだね。
u:zo:伝えるべき情報とみんなへの気遣い、ちょっとした会話があれば、あとは音楽だけでいい。そこに全部入っていると思うから。
Takuya:音源で歌詞が聴き取りやすいなら、ライブではもっと届くはずだからね。もともと僕はHALの声質のファンなんですよ。歌詞が届くっていうのも曲の作り方がそもそもフォーク的なので。例えて言うと、あいみょんさんと歌の温度感が似ているというか。
HAL:それ、Rest of Childhoodやっていて不思議に感じるところで、確かにフォークソングみたいなメロディを歌ってるんだよね。
u:zo:まずデモテープがフォークソングですからね。それをどれだけ3人の色にしていくかっていうところから曲が形になっていく。
HAL:自分が好きなバンドは、全然フォークとは違うんだけどね。
u:zo:そういうものだよ。俺もふだんは歪んだベースのロックって聴いてないし。チック・コリアとか聴いてますから。
──アメリカのジャズピアニストですね。
HAL:俺は最近、u:zoから美空ひばりさんのジャズのカバー聴かせてもらった。
u:zo:美空ひばりさんも歌詞がめっちゃ聴き取りやすいからね。エラ・フィッツジェラルド(アメリカのジャズシンガー)のスキャットとか、声が楽器の一部になっている人も大好き。ただ、自国の言葉が一番ダイレクトに伝わるんだよね。
▲u:zo (B&Cho)
──4月8日からスタートする東名阪ツアー<The Terminal Tour '23 追加公演 “CA$H BACK”>は、チケット代が5,000円で、学生証を持ってくると10代は5,000円キャッシュバックなんですよね? これもライブハウスの現状とリンクしているんでしょうか。
Takuya:そうですね。実質無料です。
HAL:前売りチケットが5,000円。当日券が6,000円だから、当日券で入ったら1,000円かかっちゃうんだけどね。でもね、無料ライブじゃないよ。前売り券を買って会場に来たらお金が返ってくるわけだから。
──一度チケットを購入するという行為が重要。学生証持っていけばタダで入れるってことではないと。
Takuya:そう。その場合は当日券になるし。
HAL:このアイデアは、前回のBARKSのインタビューが終わった後、Takuyaが言い始めたことから生まれたんだよ。
Takuya:チケット代が高くなっていく現在、若い人たちがライブハウスに来づらくなってるんじゃないかなって。そんなとき、TV番組で『子ども食堂』の取り組みを知ったんです。例えば大人がカレーライスのチケットを2枚分買って、使わない1枚を壁に貼って帰るんです。そうすると、お金を持ってない子どもが、貼ってあるそのチケットを使って食べてもいいというシステム。お金のある大人はそこで社会貢献ができるし、貧困に苦しんでいる家庭の人とかは食堂で無料で食べてお皿を洗ったり、手伝いができる。
──素晴らしいシステムですね。
Takuya:自分たちも年齢を重ねて、今、大人の側だしね。このニュースを見た時に“その発想、素敵やな”って思ったことが、今回のキャッシュバック企画に繋がったんです。今は貧富の差がどんどん広がってきているし、物価が上がっているのに賃金は上がらない。そうなると精神的にもひもじくなるんですよ。音楽は解放できる娯楽のひとつなのに、それさえままならないのは悲しいですよね。
u:zo:ちゃんと働いている人までが節約しなければいけなかったり、削ったりしないといけない。それっておかしいですよね。それまでと同じ時間、同じ労力で働いている人たちが、今は節約しないと生きていけないなんて。豊かさから掛け離れているのが現状で。僕には先進国に芸術がなくなったら恥ずかしいという想いがすごくあるんですけど、そういう事態が起き始めているなって。
▲Takuya (Dr&Cho)
──日本経済の状況が生活の豊かさを奪っている。
Takuya:だから僕たちは、若い世代の人たちにもライブを観てほしいし、そのためにやるべきことがあるんです。もともとHALとは、結成直後に幼稚園や学校から呼ばれて演奏しに行ったりしてたし。
HAL:コロナ前にやってたよね。俺たちの演奏が終わったあとで、「楽器、触っていいよ」って観に来てくれた子とコミュニケーション取ったり。
──体験型ワークショップみたいですね。
Takuya:子どもや学生が生の演奏に触れる機会が増えたらいいなと思ってやってたんですけど、コロナ禍になってからライブハウスは行ってはいけない場所になったじゃないですか。今年、中学や高校を卒業した人にとっては、入学式直後が緊急事態宣言による外出禁止の時期で、マスクが必須で、密になっちゃいけないとか、規制だらけだったと思うんですよ。クラスメイトでも、マスクを外した顔を知らないってことが現実にあったりするわけで。
u:zo:“ライブハウスに行って、感染したらどうするんだ?”って、周囲から止められることも、最近までの現実だったと思うし。
Takuya:うん。行く機会を失ってたはず。だから、特に10代には手厚くしてあげたいなと思って、キャッシュバック。僕らができるとしたら、こういうことかなって。
u:zo:試しに行ってみて、“やっぱり音楽じゃないや”って思ったとしても、それはそれで嬉しいんですよ。
Takuya:そうだね。体験することが大事だから。
HAL:“うるさい”って感想だけでもいいしね。
Takuya:“低音ってドーンドーンって腹に響くんだー”とかね。
u:zo:俺、一番最初にクラブへ行ったとき、“スピーカーの中に人がいるんだ”と思ったもん(笑)。
Takuya:デカい音が飛んでくるからね。
HAL:俺も振動が身体に伝わってきて、気持ちよかったのを覚えてる。でも、このインタビュー面白いね。さっきTakuyaとu:zoの話を聞いてて、“いいな”と思ってたんだけど、俺はもっとシンプルな理由でね。子どもたちの自由が奪われたわけだから、“大人が責任取らないでどうするんだよ”ってことなんだよね。ただ、さっきの話にもあったように、一回自分でお金を払うことが重要で。お小遣いの中からブルブル震えながら5,000円で前売り券を買うっていうことがさ。
u:zo:“ホントに返金してくれるのかな?”って思いながら(笑)。
HAL:前売り券を買って、“どんなところなんだろう?”って想像してほしいわけ。今はみんなネットで調べると思うけど、“ライブハウスのドアってカラオケボックスよりもブ厚いのかな?”とか。前売り券を買ったときから、頭のなかでワクワクとかドキドキが始まってるんだよね。それも知ってほしい。
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