【インタビュー】上野優華、“泣ける恋愛ソング”だけじゃない様々な方向性のラブソング
■節目でもありつつこれからを楽しみにしてもらえる
■納得のいくアルバムが作れました
――上野さんが作詞なさったアルバム曲は、随所で関連性がありますよね。最もわかりやすいのは「フラッシュバック」と「Amber」。どちらも失恋ソングですが、前者は《思い出はいらない 苦しくなるだけ》、後者は《忘れたいような思い出が1つもない》と思い出について真逆の解釈が綴られています。
上野優華:今までは1曲1曲キャラクターやシチュエーションをガラッと変えて書くことが多かったんですけど、今回はそんなに変わらなかったんです。アルバム曲は制作期間がぎゅっとしてたので、自然とそうなっていった部分も大きいんですけど、読み返してみると自分でも新鮮で面白かったです。「フラッシュバック」と「Amber」も、“思い出”の解釈を真逆にして書いたらどうなるかなと考えて書いたものなんですよね。
――ちなみに上野さんにとって“思い出”とはどういうものですか?
上野優華:わたしの中の勝手なニュアンス的なイメージですけど、思い出は“良いこと”という感覚があるんですよね。たとえば「フラッシュバック」の主人公は別れた相手との思い出が楽しかった、幸せだった記憶だから最悪だなと感じていると思うんです。だから“過去”ではなく“思い出”は要らないって言っちゃうんだろうなって。だからより鮮明に残っているものが思い出っていう感覚かな。“過去”だと消えかかったイメージがあって。
――確かに“思い出”は消えずに今も手元にあるような感覚がありますよね。
上野優華:と、今は思っています。明日には変わっているかもしれない(笑)。でもわたしの思い出はわたししか知らないものというか、わたしの中だけに残っているものなのかなと思います。
――「チョコかアイス」はNakamuraEmiさんの提供曲で、上野さんは自分が憧れる女性像を歌いたくてNakamuraさんにオファーなさったとのことで。
上野優華:生きていると自分の嫌な部分を言葉にするのが嫌な瞬間や、自分を守るために言いたくても言えないことがたくさんあると思うんです。NakamuraEmiさんはそういうことを気持ちよくかっこ良く言葉にしてくれるので、女性としてすごく憧れるんですよね。わたしも去年結婚して、デビュー10周年という節目や25歳になるということでどうするべきなのか、どっちを選択するべきなのかすごく悩んで。それを曲にしたいけど、うまく自分で書ける気がしなくて。でもそれをテーマに曲を書くのって、多分今しかないなと思ったんです。
――今抱えている焦りを、生々しいまま楽曲に閉じ込めたかった?
上野優華:確かにもっと年齢を経たら25歳に感じていた焦りを綺麗なものとして書けるかもしれないけど、人生って綺麗じゃないことのほうが多い気がしたんです。投げやりになったり、もやもやしたままずっと心残りを抱えている――曲として残すにはあまりにも自分ごとすぎて、不特定多数の人に聴いてもらうには視野や世界が狭すぎるなと思ったんです。それでNakamuraEmiさんの力をお借りしたんですよね。女性の抱える人間としての気持ちを代弁してくれるあの力は途轍もないので、“最近こういうことがあって悩んだんですよね”という自分の話をしたんです。
――それが“2択を迫られること”という楽曲のテーマになっていったんですね。
上野優華:特にリリース時期の春は2択を迫られた人がいっぱいいると思うんですよね。今いる場所にとどまるのか、地元に戻るのか。夢を追いかけるために専門学校に行くか、失敗するかもしれないから安定した進路に進むのか。仕事を続けるのか、家庭に入るのか……。本当にいろいろな2択があると思うんです。わたしが2択を迫られたからこそ、そういう瞬間に背中を押せるようなもの、悩みに寄り添えるようなものを書いていただきたかったんです。結果、NakamuraEmiさんは「チョコかアイス」でどんな人生も全部肯定してくださったんですよね。
――そうですね。自分で人生を選択した人ならば、自分ごととして受け止められる言葉遣いに着地しています。
上野優華:“間違ってなかったな”と思わせてくれる曲だと思います。そういうことって多分、自分じゃなかなか判断できないと思うんですよね。どんな選択をしても“あの時ああしていれば”とか“あの時あれを選んだのは間違ってたのかもしれない”という気持ちは消えないままになってしまう。でもこうやって力強い言葉で“間違ってないよ”と言ってもらえると救われるんだなと、自分で歌いながら感じました。これまでメッセージ性の強い曲を歌う機会があまりなかったので、新しい気持ちで歌えたんですよね。
――様々な新しい面を見せる『恋愛シグナル』ですが、やはりラスト2曲が肝なのではないかと思っていて。様々なラブソングを味わって9曲目に聴く「ジャスミン」は、シングルで聴いたとき以上の感慨深さがありました。
上野優華:やっぱり「ジャスミン」はライヴがまたできるようになってやっとファンの皆さんと顔を合わせるようになったことで生まれたので、すごく大事な曲なんです。だからちゃんと意味のある場所に置きたかったんですよね。
――でも「ジャスミン」で終わらせないところが上野優華なんですよね。
上野優華:そうなんですよねえ(笑)。素直に気持ちを書いた「ジャスミン」も、ラストのひねくれている「分かってくれない」も、どちらもわたしらしさなんですよね。
――なぜ“わたしのことを好きじゃなくなったあなたに少しずつ少しずつ諦めていく恋心”をテーマに書こうと思われたのでしょうか。
上野優華:人生で初めて、詞先で歌詞を書いたんです。2年ぐらい前から普段思ったことをメモしていて、いつか作詞に使えたらいいなとストックしてるんですけど、「分かってくれない」のきっかけは歌詞の冒頭の2行ですね。
――《まだ乾かないままの ベランダを見つめた/昨日の寂しさの続きはまた今度》という歌詞。
上野優華:この続きを書こうと思って書き始めました。それで、いろいろな人と話していると恋愛において“なんでわかってくれないんだろう”という話になることがすごく多いと思ったんですよね。特に女性に多い感情だと思っていて。よく“女性は察してほしいと思う人が多い”と言ったりするので、それを書いてみようと思ったんですよね。そうしたとき、女性には“諦める”という選択肢があって、それはわたしが好きな女性的な要素のひとつだと感じたんです。
――というと?
上野優華:伝える方法もないし、伝えるのも面倒だし……という感情が二十歳過ぎると生まれてくると思っていて。わかってくれないことに対して少しずつ悲しいという気持ちが積み重なって、それを繰り返すことで徐々に“悲しい”が溢れちゃって、もうどうしようもなくなって“悲しい”を手放すために諦めるんですよね。それっていろいろな経験を重ねたから感じる気持ちという気がしていて、すごく魅力的なんです。だから“この人はわかってくれない。だからもう諦めよう”という気持ちを歌詞にしたんです。
――悲しみを抱えながら“いつか絶対わかってくれるはず”と頑張る人が主人公ではない。
上野優華:だからこの諦めに共感する人もいると思うし、逆に「分かってくれない」を聴いて“わたしは諦めないぞ”と思う人もいるのかなって。悲しい歌はいろいろな方向性から何かを救えるんじゃないかなと思うんですよね。男性が聴いて“俺、あいつのことわかってやれてないかも!”と気付いて、破綻しかけたカップルが立て直してくれてもうれしいなとも思います。
――『恋愛シグナル』は様々な節目を迎えて未来を見据えた上野さんのモードが、色濃く反映された作品になったのではないでしょうか。
上野優華:1曲1曲で“わたしってこういうこともできるんだな”と感じました。制作期間がタイトだったのでこの短期間で6曲も歌詞書けるんだなとも思いましたし、アーティストさんから提供された楽曲が多いなかでどれだけ自分らしさを歌詞に出せるかにもこだわれましたし、そういうアピールの仕方は上野優華ならではのやり方だとも思っていて。だから自分のスキルをかなり磨けた1枚になったんじゃないかなと思っています。節目でもありつつこれからを楽しみにしてもらえる、納得のいく1枚が作れました。このアルバムができたおかげでデビュー10周年イヤーを楽しい気持ちで過ごせそうで、ここから先のことを考えるととてもワクワクしますね。
取材・文:沖さやこ
リリース情報
2023年3月22日 Release
・初回限定盤[CD+Blu-ray]
¥7,000(税込)
品番 BZCS-91199
・通常盤[CD only]
¥3,500(税込)
品番 BZCS-1199
CD
1. ジコアイキセイ(作詞作曲:秋元リョーヘイ)
2. imu(作詞作曲:ヨシダタクミ(saji))
3. 恋をしました。あなたに(作詞作曲:内澤崇仁(androp))
4. Cinema(作詞:上野優華、作曲:信政誠)
5. そうゆうとこ。(作詞:山崎あおい・上野優華、作曲:山崎あおい)
6. フラッシュバック(作詞:上野優華、作曲:横井香菜)
7. チョコかアイス(作詞作曲:NakamuraEmi・カワムラヒロシ)
8. Amber(作詞:上野優華、作曲:松室政哉)
9. ジャスミン(作詞:上野優華、作曲:山崎あおい)
10. 分かってくれない(作詞:上野優華、作曲:高木大丈夫)
Blu-ray(初回限定盤同梱)
「上野優華 ONEMAN LIVE TOUR 2022 ~冬の夜長と片想い~」
SHIBUYA duo MUSIC EXCHANGE(2022.11.15)
[収録曲]
1.好きでごめん
2.会いたくない、会いたい
3.こっちをむいて
4.今日も君でした
5.ユキノウタ
6.普通の恋がわからない
7.好きが残った
8.チョコレート
9.おぼろ月の夜に
10.あなたの彼女じゃないんだね
11.メロンパンのうた
12.ジャスミン
13.I WILL LOVE
14.幸せ
15.好きな人
16.ジコアイキセイ
17.愛しい人、赤い糸
ライブ・イベント情報
5/27(土)埼玉・西川口 Hearts
6/10(土)兵庫・神戸 CASHBOX
6/11(日)愛知・名古屋 HeartLand
6/25(日)千葉・ANGA
7/1(土)神奈川・Yokohama mint hall
OPEN/START
[RED] 14:00/14:30
[BLUE] 18:00/18:30
<上野優華 Debut 10th Anniversary LIVE ~ Bouquet of Songs ~>
7/15(土)徳島・徳島市シビックセンター さくらホール
7/23(日)東京・渋谷 Spotify O-WEST
OPEN/START
15:00/16:00
※詳細は上野優華オフィシャルサイトにて
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