【インタビュー】逹瑯(MUCC)、ソロプロジェクト第三弾に大胆な実験「決め込まずに試してみよう」
MUCCのフロントマン逹瑯が3月15日、ソロプロジェクト第三弾として2ndシングル「残刻」をリリースする。前作「エンドロール」に続き、サウンドプロデューサーに大島こうすけを迎えて制作された今作は、逹瑯流のJ-POP解釈による大胆な実験作。怒涛の疾走感とキラキラ感に満ちたアッパーなロックサウンドをベースに、オリエンタルな叙情性を湛えた楽曲に仕上げている。真実を突き付け、聴き手の心をえぐるようなリアルさを強みとするMUCCとはまた違った、どこかファンタジックでスペイシーな世界観は美しく、かつ新鮮に響く。
◆逹瑯 動画 / 画像
逹瑯ならではワードセンスは変わらず秀逸だが、曰く「リフっぽくて詩的な言葉が乗りそうな譜割りではない」ことに加え、起伏と疾走がなだれを打つメロディーをいともたやすく表現しきった力量は注目に値する。バックに流れるサウンドは一聴するとシンプルだが各パートのプレイは難易度が高く、それらが高次元で絡み合うアンサンブルの妙が凄まじい。聴けば聴くほど新たな発見がそこかしこに溢れる仕上がりだ。
カップリングでは、2011年にjealkbへ楽曲提供した「恋心」をセルフカバー。歌詞を新たに付け加え、より切なさを高めるバラードアレンジで生まれ変わらせている。このシングルが生まれたプロセス、作品に落とし込みたかった心象風景、ソロ活動によるMUCCへの波及効果など、逹瑯に様々な質問を投げ掛けてみた。
◆ ◆ ◆
■あの流れをやってみたい!と思い付いた
■昔よくあったシングル3枚連続リリース
──2023年1月8日に川崎CLUB CITTA'で行われた<1st Anniversary 逹瑯 ONE-MAN SHOW「Kitchen Guys 1st Kitchen Party」>。終えた手応えはいかがでしたか?
逹瑯:フルサイズのワンマンは前回の横浜(<First Solo Tour『はじめまして逹瑯です。』FINAL>KT Zepp Yokohama/2022年2月12日)が初めてで、その時も思ったんですけど、“もっとこの感じでライヴやりてぇな。ツアー行きてぇな”という感じでしたね。曲は少し増えていてもライヴは1本しかなかったので。このメンバーでせめて10本ぐらいやって、バンド感の出来上がり方を見てみたかったな、と。現状でも結構良かったから、“もっと良くなりそう”と思いました。
▲<1st Anniversary 逹瑯 ONE-MAN SHOW「Kitchen Guys 1st Kitchen Party」>
──バンドメンバーは固定ではなく、変わっていくんですよね?
逹瑯:固定できたらいいんですけど、間違って最初のメンバーを忙しい人ばかり集めちゃったので(笑)、“毎回みんなのスケジュールを合わせるのは、たぶんしんどいな”と気付いて。何人かでチームを組んで、その時に出られる人、という感じで回していったほうがいいかな?と。SORAはDEZARTが忙しいので、今回は宏祟(R指定)を呼びました。アイツ、暇なんで。
──酷い(笑)!
逹瑯:宏崇がNGな時はまたSORAに「叩いて」と言わなきゃならないから、「エンドロール」と今回の「残刻」を新しく覚えてもらうのは大変だろうなぁ…。
──MCでは、ギタリスト陣に結構な無茶ぶりをされていましたよね?
逹瑯:そう。空いている人が2人とも上手(かみて)だと困るので(笑)。「どっちも弾けるようにしといてくれ」と言っておきました。
──ヴァイオリンの後藤泰観さんは、最初は数曲だけの予定だったのが、ポテンシャルが高くて全部弾いてもらうことになった、と。
逹瑯:後藤が「もっと出たい」と言うので、“じゃあ弾いてもらおうかな?”と思って。「自分の解釈で全曲ヴァイオリン付けてみて。“もっとこうして欲しい”というのがあったら言うから」と伝えたんですけど、勘が良くてほとんど俺から何も言うこともなく。生のヴァイオリンがずっといるのがバンドの色になって面白かったし、すごく良かったですね。
──楽曲のバリエーションが豊かだなと改めて感じたのですが、逹瑯さん自身、何か発見はありましたか?
逹瑯:思っていたよりもキーが高い(笑)。自分でやっているからもう少し楽できたはずなんですけどね。あとは、フルサイズでやってみると“もっとこういうタイプの曲が欲しいな”というのに気付いたりもして。やっぱり無意識のうちにMUCCのフォーマットに乗っかっちゃうんですよね。でも“そこに乗っかる必要ないな”と思って曲順を組んでいったりしたのは面白かったかな。
──ファンの方たちの反応はどう受け止めましたか?
逹瑯:フロアの乗り方もMUCCの時とは違くて、面白かったですね。見た顔たちが全然違う楽しみ方をしていたから。
──それは、逹瑯さんが違う顔を見せているからでしょうね。
逹瑯:うん、ステージ上でも違う感じで歌っているし、演奏しているし、というのもあるんでしょうけど。ソロではいろいろな実験をしようと思っているので、世界観をまだグッと決め込まずにいろいろなことを試してみよう、という感じかな。MUCCがあるからこそ、それができる。ソロ1本になったらこんな気楽に考えられないと思うので。
──2ndシングル「残刻」は、1stの「エンドロール」に引き続いて、大島こうすけさんをサウンドプロデューサーに起用。キラキラとした華やかなサウンドが印象的な怒涛のロックナンバーですが、制作はどのようにスタートしたのですか?
逹瑯:最初のアルバム(『=(equal)』『非科学方程式』2枚同時リリース)の時は、やりたいことをガムシャラにやってみることで、見えてきたテーマとして“俺はJ-POPをやりたいんだな、きっと”というのがあって。“J-POPをちゃんとやりたい”というテーマで走り出して、だったら、プライベートでも仲良くさせてもらっていた“J-POPど真ん中の大島さんと仕事をしたい”と思って、「エンドロール」からコラボレーションが始まり。”今回もJ-POPをやりたい”となった時、”あの流れをやってみたい”と思い付いたことがあるんですよ。なにかと言うと、昔よくあったシングル3枚連続リリース。アッパーな曲、アッパーな曲、次はバラード。で、最後にアルバム、という流れをやりたいぞ!と思ったんです。
──音楽性としてだけではなく、打ち出し方としてもJ-POPの王道で行ってみよう、と。
逹瑯:そのシングル3作は大島さんとやりたいというのがあって。3作目は、どバラードをやりたいなと思っているんですけど、今回は“キラキラした感じの曲をやりたいな”と。曲のベースとなる部分は、前回に続いて足立(房文)がつくっていて。まずは「こういう雰囲気の曲がいいな」と俺から伝えて、「じゃあちょっと叩き(土台/ベース)をつくってみます」という感じで戻ってきたり。そんなやり取りをしながらつくっていったんです。でも、メロディーの癖とか譜割りとかが、自分……というかMUCCの感じと全然違うんですよ。歌詞を書くのがまぁ大変で、その新しいチャレンジが楽しいといえば楽しかったですね。
──足立さんに伝えた「こういう雰囲気」というのは、どういうイメージだったんですか?
逹瑯:「今っぽい感じの曲をやりたいよね」とは話していましたね。MUCCではそこまで飛び抜けた感じはやらないので、やってみたかったんです。かつ、それでもどこか叙情的というか、“そこに行き切らない感じになりたいなぁ”、“でもそこのアイデアないなぁ”と。原曲はもっとキラッキラしていてもっと打ち込みっぽかったんですけど、それを元に大島さんと話している時に「ここまで行っちゃっていると今っぽ過ぎるので、もう少し馴染ませてほしい」というお願いをして。そこで、大島さんからは今のイントロのフレーズとかがバッと出てきたので、“すごいなぁ”と思いました。
──和風というか、オリエンタルなニュアンスもサウンドから感じられました。
逹瑯:あれは大島さんの「ハープを入れたい」というアイデアで。ハープの音ってちょっと琴の旋律に似てるから、そんな感じを受けますよね。曲がオリエンタルな感じで、幻想的な綺麗な景色がずっと頭の中に浮かんでいたので、この世界観に「残刻」というタイトルを付けたらギャップ感がいいなぁと。歌詞はまだ一言も書けていなかったんですけど、新曲発表のニュースリリースを出すタイミングの関係で、タイトルだけ「残刻」ともう決めて、“行っちゃうか?”って。賭けでしたね。“書いているうちに内容が全然変わっちゃったらどうしよう?”とか思いながら(笑)。
──逹瑯さんの頭の中で浮かんでいた景色を、もう少し具体的に語っていただくことはできますか?
逹瑯:淡~いピンクなんだけど、濃紺が後ろに敷き詰められているような。何の花だか分からないんだけど。
──それは桜ではないんですね?
逹瑯:桜なのか、樹なのか、敷き詰められている花なのか、分からないんですけど。満天の星の夜空でボワッと明るい、みたいな景色がずっとあって。
──この世ではないような感じでしょうか?
逹瑯:うん、そんな感じですね。景色と匂いは強烈に感じるんだけど、“これをどう具体的な言葉に落とし込んで、どういうストーリーを付けていこう?”と考えながら書いていったかな。そして“譜割がめっちゃむずいな”と。2週間ぐらいは歌詞が一文字も付かなかったですね。
──それは逹瑯さんにとって珍しいことなんでしょうか?
逹瑯:なかなかないですね。でも足立の曲はそうで、「新世界」とかも全然歌詞が付かなかったんですよ。メロディーがリフっぽくて、詩的な言葉が乗りそうな譜割りではないから難しいんです。この曲は“♪タータタッ タータタッ”という三音の連続だから、そこにパズルのようにハマッて“語呂的に気持ちいいほうに転がっていく言葉を付けるのが正しい”のか、そこは無視して、ただ単にこういう譜割りなだけで“文章として気持ち良くハマッているのがいい”のか、“どっちなんだろう?”と迷っちゃって。
◆インタビュー【2】へ
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