【インタビュー】龍ヶ崎リン、低音ボイスが映えるチルかつ情熱的なナンバー「Twilight Stream」
■表面から奥底までの地層みたいに重なったレイヤーをすべて見せられるのが音楽なんですよね
――とても素敵な話です。ファンの方々との関係については、2022年のバースデーライヴのMCで“普段の自分を知っている人がこのライヴを観てくれていることに意味がある。音楽を通して気持ちを伝えていきたい”とおっしゃっていました。Vtuberさんには気持ちを伝える方法がたくさんありますが、音楽で伝えられるのはどんなことでしょう?
龍ヶ崎リン:僕は自分の思っていることをわかりやすく、的確に伝えるのがすごく苦手で。言葉として発するまでにものすごく時間が掛かるし、大事な本心を伝えるときは特に言葉に詰まってしまうんです。それでこの1stシングルを作るなかで思ったことなんですけど……どういう曲にしたいかをまず考えたときに、自分を見つめ直していくなかで、自分自身のベースにある感情は怒りなんじゃないかなと思ったんです。
――怒り、ですか。
龍ヶ崎リン:リアリティのある曲が好きだから、自分もそういう曲を作りたくて。喜びよりも怒りのほうが自分にとってはリアリティを感じるんです。音楽を作っていくのは自分と向き合っていくことなので、なぜ自分はその人の言葉に腹が立ったんだろう、なぜその人はそんなことを言ったんだろう――みたいに考えていくと、なぜ自分はあのときにこう思ったのか、なぜこういう曲を作りたいのかが少しずつ見えてくるんです。本当に自分が思っている奥底の気持ち、表面から奥底までの地層みたいなたくさん重なったレイヤーをすべて見せられるのが音楽なんですよね。
――ああ、なるほど。すごく腑に落ちますね。お話の印象から受けるに、多分龍ヶ崎さんはその瞬間には腹が立たなくても、時間を置いてじわじわとその違和感が膨れ上がってくるタイプなんじゃないかなと思いますし。
龍ヶ崎リン:あ、ほんとそうなんです!(笑) それを言われたときは全然気にならなかったけど、後から思い返して“なぜあんなこと言われなきゃいけないんだろう?”と思うことがよくあります(笑)。そこから怒りや憤りに関する“なぜ?”を一つひとつ自分で解決していって……そうしていくと最終的に優しい気持ちになっているんですよね。
――怒りを紐解いていくと優しさになる。名言ですね。
龍ヶ崎リン:あははは。カヴァーをするときもソングライターさんやヴォーカリストの方のレイヤーを自分なりに一つひとつ紐解いていくところから始めるので、音楽で気持ちを伝えるのは自分にぴったりなんだなと「Twilight Stream」の制作を通して気付きました。リスナーさんには怒りをうまくアウトプットできない人ももちろんいると思うので、そういう人が聴いたときに心が軽くなる楽曲だったらいいなと思います。
――maeshimaさんらしいチルな楽曲でありつつも、どこか燃え上がるような雰囲気を感じるので、そこも龍ヶ崎さんにぴったりだなと。あと、今まで以上にヴォーカルの伸びも良くて、声の良さも際立ちます。
龍ヶ崎リン:そう言っていただけたらうれしいです(笑)。OHTORAさんとmaeshimaさんが僕の声に合った曲やメロディを作ってくださったなと思いますし、あとヴォーカルディレクションをOHTORAさんにしていただいたんです。今までも自分でラップを作ることはあったんですけど、楽曲提供とディレクションしていただくことが初めてで。自分では開けられなかった引き出しを開けられた感覚があって気持ちよかったです。
――お話を聴けば聴くほど、石の上にも三年が名曲を生んだんだなと思います。
龍ヶ崎リン:ほんとですね。最初は“音楽がやりたくて入ってきたのに、なんで芸人さんばりに人を笑わせなきゃいけないんだ! こんな事務所辞めてやる!”って100回ぐらい思っていた時期もありました(笑)。でも3年間の活動が全部、今の糧になっているんです。事務所のいちばん偉い人に“音楽を主にやりたいから配信活動を減らしたい”と頼んだりもしたことがあったけど、結局配信活動を減らさずに、目標に向かっていく道を選んで、ひたすら“自分は音楽をやりたい人なんだよ”とアピールをしてきて……それがあったから音楽への思いもさらに強くなったし、エンタメの大切さや自分のやりたいことだけをやっていても自分の夢は叶わないことを知って。今いる場所での“やるべきこと”と“やりたいこと”を自分の中でかみ砕いて納得して活動に繋げる大切さを学べていると思います。本当にかけがえのない時間でした。
――“音楽がやりたい”という思いを、口だけではなく実際に行動に起こして貫き通したからこそ自力で掴み取った1stシングルですしね。決められたレールを歩くよりも自信につながると思います。
龍ヶ崎リン:本当にそうですね。自分に花丸です(笑)。
――念願の1stシングルを作ったとなると、やりたいこともたくさん浮かんできているのではないでしょうか。
龍ヶ崎リン:……はい!(笑) やっぱり僕は、売れたいというよりは、同じ価値観を持っていたり、自分の声を好きになってくれる人みたいに、僕と共通の何かを持っている人に音楽を届けられたらなと思うんです。僕の配信を観てくれている人なら「Twilight Stream」の歌詞の響き方も全然違うと思うし、僕の発表する曲にも深く共感してもらえるんじゃないかなって。音楽を通して自分の伝えたいことをみんなに聴いてもらいたい。そのためにも、自分の感じた違和感には目を背けずにいたいと思っています。
――それでまた新しい曲が生まれていくでしょうし。
龍ヶ崎リン:それが人間的な成長にもつながると思うし、人として成長したことが音楽に結びつくと思っているので、音楽のスキルや歌唱力を上げるだけではなく、人として正しい判断をできる力をつけて内面的な部分を磨いていきたいです。自分と共通したものを持っている人にもっと届けるためにも、もっと研ぎ澄ましていきたいですね。……ってなんだかんだいろいろ話しましたけど、僕はこれが初めてのオリジナル曲なんですよね(笑)。もう何曲も出しているかのように話してますけど(笑)。
――はははは。龍ヶ崎さんのカヴァーは、歌を通して聴き手や楽曲とコミュニケーションを取ろうとしていることが強く伝わってくるものばかりなので、わたしも何曲もリリースしているアーティストさんに対して話す気持ちでした。
龍ヶ崎リン:いやいやいやいや……ほんとまだまだだなっていう気持ちが大きいので。いつかは全部自分の曲のライヴがしたいし、いろんな色の龍ヶ崎リンを観ていただける楽曲を皆さんに聴いていただきたい。この先もどんどん曲を出していきたいですし、公表していないこともたくさんあるので、ぜひ楽しみにしていただきたいです。もっと上に上がっていけるよう精進します!
取材・文:沖さやこ
◆インタビュー(1)へ戻る