【インタビュー第二弾】渋谷すばる、音楽家としての自身を語る「映像と音はセットだなって思う」
■曲作りに共通している思いは
■ライヴを前提に作っているってところ
──たしかに人生って俯瞰して見たら、壮大なドラマですもんね。いろんなことが起こるたびに“うわっ。ドラマみたいな展開だな、これ!”ってよく思ったりします、自分の人生なのに他人事みたいに(笑)。良いときも悪いときも。
渋谷:たしかにね(笑)。今、話してて思ったんですけど、普段曲を作るときも、いろいろと情景やそこにある景色を思い浮かべながら書くことが多いかも。すごく古い話になるけど、昔、ウォークマンで音楽聴いてた頃から、外で音楽を聴くのが大好きやってん。外に行くとき音楽がないと出掛けられない感じというか。景色と音がセットじゃないと聴けない、みたいな。風景の中で、景色を見ながらしか音楽を聴けない感覚があって。電車の中で音楽を聴くのが大好きだったんですよね。BGMみたいな感覚。
──すごく分かります。新幹線に乗ってるときとか、“この景色でこの曲聴きたい!”と思って、わざわざその風景に合わせて曲をスタンバイしてかけちゃったりしますよね(笑)。
渋谷:そうそうそう! そんで1人で陶酔する感じ(笑)。
──それです! その感覚を、“自分MV”って呼んでいるんですけどね、私(笑)。
渋谷:“自分MV”!? 何やねんそれ(笑)。
──自分がそのMVの主人公になった感じに陶酔することです(笑)。その感覚に似てるなぁと思って。
渋谷:あははは。そういう感覚ね。でも、たしかに、そこで陶酔するってことは、そういう感覚なのかもしれへんよね。感情が入り込みやすいというか。まぁ、分かるよ(笑)。でも、そんな風に思ったことはないけど(笑)。
──前に渋谷さんに、「そういう感覚ないですか?」って訊いたら、「ないなぁ」って言ってましたもんね。「そういう感覚で、印象的な映画やドラマに、勝手に主題歌付けたりしないですか?」って訊いたときも、「ないなぁ」って言ってましたし。でも、「外に行くとき音楽がないと出掛けられない感じ」って、それに近いんじゃないかな?と。その感覚とは違うんですか?
渋谷:あぁ〜、なんかそれ訊かれたことあったなぁ。でも、それとはちょっと違うねん。タイアップを頼まれてないのに、勝手に主題歌作るみたいなことやろ? それはないねんなぁ(笑)。そこはやってやれんことはないと思うけど、そこはやったことないです、まだ(笑)。なんか、ちゃんと実際にお願いされないと、それはやったらアカン気がしてるのかもしれないです(笑)。うん。ちゃんとタイアップという形でお願いされないと、いたずらにそれはしたらアカンと思ってるのかもなぁ(笑)。
──遊びで歌詞が書けないタイプということですか?
渋谷:絶対書けないタイプやと思う(笑)。そんなことで書いた歌詞を世に出してはいけない!と思ってしまうんやと思います(笑)。
──真面目、ですね(笑)。
渋谷:案外そうなんです、僕(笑)。そういう作り方をしてる人が悪いとは思わへんけど、自分はなんか、量産するためにそういう作り方して作るのは、なんか後ろめたいというか…。でも、タイアップという与えられたテーマがあったら、そこに自分を連れていってあげられる気がするというか。それも嘘じゃない気がするというか。
──じゃあ、渋谷さんの楽曲や歌詞には、自発的に出てくるノンフィクションはないってことになりますか?
渋谷:まぁ、そういうことになるのかなぁ。でも、だからタイアップって好きなのかも。自分じゃないところと、自分であるところが混在させられるから。なんか、キッカケになるというか。
──だから“楽しい”と感じるのかもしれないですね。物語を書く感覚に近いのかも。
渋谷:うん。そうかもしれないですね。それを楽しめてる気がします。
──昨年12月にリリースされた第4弾「Stir」は、今までの渋谷すばるとは少し違ったテイストの楽曲でしたよね。今までのようなストレートなロックンロールサウンドというより、オルタナティヴロックというか、ポストロックというか、少し違った質感のロックだと感じたのですが、「Stir」はタイアップというところではなくとも、少し違う方向性を意識されて作られた感じだったんですか?
渋谷:「Stir」は意識的に、いつもとは少し違う雰囲気の楽曲を作りたいと思って作ったんです。いつもと違う方向をちょっと向いてみようかなと思ったというか。いつも曲を作るときに共通している思いとしては、ライヴでやることを大前提に考えて作っているってとこなんです。全部そう。曲調が違うのは、切り取ってる場面が違うんです。ライヴのこういうシーンで聴かせたいなっていう、場面が違う感じ。「Stir」は、なにも考えずに体が動いてしまうような、踊れる曲を作りたいなって思ったんです。そういう曲って、ないなぁって思って。「Stir」を去年12月にリリースしたのは、去年9月から4ヶ月連続リリースの流れだったんですけど、9月の「7月5日」も10月の「ぼーにんげん」も11月の「これ」も、作った時期がツアー前で、“ツアーで何曲目にやりたいな”って考えながら作ったんです。
──ライヴの景色と繋がっていたということですね。
渋谷:そうそう。
──昨年のツアー(<渋谷すばる LIVE TOUR 2022 二歳と1328日>/9月14日&15日@福岡サンパレスホテル&ホールを皮切りに、ファイナルの11月5日&6日@大阪城ホールまで全国7ヶ所14公演)は、座組みが大きく変わったのも印象的でした。よりバンドサウンドになったなと感じました。
渋谷:そう。去年のツアーでバンドメンバーが変わって、よりバンドっぽくなったのも変化の一つというか、むしろ、そこが一番大きい変化やと思う。自分の中でもツアーをやってるうちに、変化を感じていたというか。どんどん“こんな曲作ってみたい!”っていう想いが膨らんでいってるんです。だからこの先、どんどん変化していくと思う。リズムをすごく感じられる音になってるというか。
──ツアー<渋谷すばる LIVE TOUR 2022 二歳と1328日>で得た大きな手応え、ということですよね?
渋谷:そうそう。今のメンバーと一緒にツアーしてみて、自分的にも手応えをすごく感じたし、お客さんの反応というか、ノリが変化したのを感じたんです。一緒に音を楽しんでくれてる感覚というか、ライヴという空間を楽しんでくれてる感じというか。もっともっと、今まで以上に、ライヴという非日常を一緒に作れる感じがしたんです。もっとそういう空間を作りたいって思ったというか。なんていうのかな、本当に“もっといける!って思わせてくれたというか。もっと特別な場所に出来そうだなって思えたのもあって。
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