【ライヴレポート】LUNA SEA、＜黒服限定GIG 2022 LUNACY＞2日目「闇は光だった。光に向かって旅を続けましょう」

LUNA SEAが12月17日および18日の2日間にわたり、さいたまスーパーアリーナにて＜黒服限定GIG 2022 LUNACY＞を開催した。先ごろ公開した初日公演に続いて、2日目のレポートをお届けしたい。

◆LUNA SEA 画像

RYUICHI(Vo)の声帯手術を経て、2022年8月に日本武道館で＜復活祭＞2DAYSを敢行し、次なる一歩としてインディーズ時代の表記であるLUNACY名義での＜黒服限定GIG 2022＞を選択したLUNA SEA。RYUICHI自身が「新しい声」と表現した歌を携えて、もう一度バンドを原点からスタートさせる──そんな意志を感じさせるさいたまスーパーアリーナでの特別なライヴに、ドレスコード＝黒服を纏ったオーディエンスが集結した。2010年12月25日の東京ドーム公演＜LUNACY 黒服限定GIG ～the Holy Night～＞よりもコアに、サプライズだらけのパフォーマンスで度肝を抜いた初日に続き、さらに狂気を更新してみせた2日目2022年12月18日のライヴレポートをお送りする。


開演予定時刻を15分ほど過ぎた頃、ゆっくりと暗転。オーディエンスの拍手だけをBGMに、ひとりのシルエットがステージに現れる。初日同様、SUGIZOかと思いきや、その姿はRYUICHIだ。そして、“♪夢の中まで仮の心？ 追い求めて迷い込む”と「SEARCH FOR REASON」の一節をアカペラで歌い始めた。気迫に満ちた歌声に息を呑むと、その直後、一斉にメンバー全員の音が放たれる。不協和音ぎりぎりのノイジーなギターサウンド、闇に引きずり込むように重いリズム。歌詞のとおり、LUNA SEAが生み出す美しい悪夢に迷い込んでいくような感覚に陥った。

たった1曲でさいたまスーパーアリーナを闇で染め上げ、さらに「FATE」「SLAVE」と攻撃的なナンバーを投下。白いエクステにリボンという懐かしいスタイリングの真矢が頭を振り乱しながらバスドラを連打し、赤い髪のSUGIZOがギターソロを掻き鳴らす。Ｊの硬質なベースソロとRYUICHIのシャウトで始まった「MECHANICAL DANCE」では、INORANの研ぎ澄まされたカッティングが映える。クリーントーンのリフと跳ねたビートの「IMITATION」、ぐるぐるとループする不穏なリズムとRYUICHIの魂の絶叫に引きこまれる「SANDY TIME」と、5人の個性的な音やフレーズがよりせめぎ合っているのが、この時代の曲の聴きどころだ。



近年のLUNA SEAは、楽器の電源に水素燃料による発電を使用していることもあり、音の分離が際立つサウンドに仕上がっている。加えて、当然個々のプレイヤーとしてのオリジナリティやテクニックも格段に進化。そのおかげで楽曲の解像度がグッと上がり、初期からLUNA SEAのアレンジがいかに重層的で緻密だったかを改めて実感する。“5人全員が主役”という奇跡的なバランスが当時から今なお変わらないからこそ、楽曲が古くなることもなく、5人それぞれの進化によって新たな命を吹き込むことができるのだ。

初期のアグレッションと今のグルーヴの融合が起こす化学反応でステージ上も客席も熱狂が高まり、「おまえらの本気を見せてみろ！」と煽るRYUICHIの声がいつになく荒々しい。そのままファストチューン「CHESS」を叩きつけ、第1部のラストに贈られたのは1stデモテープのみに収録されていた「NIGHTMARE」。蠱惑的なメロディで誘うRYUICHIとサイケデリックなギターソロを響かせるSUGIZO、アルペジオで繊細に彩るINORAN、ドラムソロを挟みつつリズムキープに徹する真矢、淡々とクールにフレーズを刻むＪと、まさに5人の個性を堪能できる1曲だ。音とともにメンバーがひとりずつフェイドアウトし、最後はＪのみがステージに残るという当時から変わらない演出で、第1部を終えた。



デッド・カン・ダンスの楽曲が流れる20分の休憩を挟み、第2部にはさらなる衝撃的な展開が待っていた。モヘアニットに太ももが覗くエナメルパンツという当時を思わせる衣装で登場したSUGIZOに拍手が湧く中、1曲目にコールされたのはなんと「KILL ME」。「NIGHTMARE」と同じく1stデモテープのみの収録曲なうえに、30年以上演奏されていなかった幻の楽曲だ。ヘヴィなリフで突き進むアグレッシヴさから、LUNA SEAの原点にメタル／ハードコアの血も流れていることが伝わってきて興味深い。驚きに包まれる会場に今度はライヴの定番曲「Déjàvu」を放ち、一気に沸点を上げていく。

「約30年の時をリワインドして過去に戻ってみたんだけど、過去には鮮やかな未来がありました。昨日と今日のさいたまスーパーアリーナは、まさに現在・過去・未来がひとつになってる場所なんじゃないかな」──RYUICHI

楽曲を通して過去の自分たちと向き合ったメンバーが見つけたのは、単なる懐かしさや思い出ではなく、未来に繋がる刺激だったに違いない。特にRYUICHIは、手術後の声と初期の本能的な表現方法が交わることで、どの時代とも違う歌声に変貌を遂げていた。喉の負担になるはずなのに、シャウトもロングトーンも一切リミッターをかけず、聴く者すべてを圧倒してくる。いつも限界に挑戦し続けてきた彼だが、今のRYUICHIが、RYUICHI史上最も“ロック ヴォーカリスト”なのではないかという想いがよぎった。


初日に披露されてトレンドワード入りした「TIME IS DEAD」の原曲こと「SEXUAL PERVERSION」、疾走ナンバー「SUSPICIOUS」に続き、シアトリカルな「VAMPIRE’S TALK」ではゴシックな世界を描いていく。さらに、静寂からリフが切り込む「SHADE」で駆け抜けて本編終了、かと思いきや、アウトロのアレンジから繋がったのは、ライヴのオープニングを飾った「SEACH FOR REASON」のフレーズだった。

RYUICHIの壮絶なシャウトを合図にステージに炎が燃え上がり、第1部、第2部を通して錬成されてきた狂気が完全覚醒。舞うように叫び歌うRYUICHI、悲鳴のようなSUGIZOのギターが絡み合い、圧巻のサウンドスケープを繰り広げる。ライヴ冒頭で解き放たれた悪夢の扉が再び閉ざされていくような、この2時間は夢だったのか？と惑わされてしまうほど見事な展開の果てに、ドン！と真矢のキメで暗転。一瞬の間を置いて、割れんばかりの盛大な拍手が湧き起こった。


オーディエンスが掲げるスマホライトの星空に迎えられ、「MOON」で幕を開けたアンコール。巨大なミラーボールの光も加わり、目映いサウンドが優しく会場を包み込む。初期から、闇だけでなく光溢れる楽曲もあるのがLUNA SEAの世界だ。その後、メンバー紹介を兼ねたMCタイムへ。

「何年も経って、本当に真剣に…俺なんてコスプレみたいなもんだけど（笑）。こうやって真剣に遊んで、みんなで楽しめるって最高じゃねえか！ 今日来てる奴も、テレビで(生中継を)観てる奴も…おまえら、最高にかっこいいぜ！」──真矢

「バンドを始めた頃に、自分たちが自分たちらしくいられるためにプランしたこの＜黒服限定＞のライヴを、2022年にまたやれたのは本当に最高です。……提案があるんだけど。またやろうよ！ だって、これって俺たちらしいじゃん。またその時はめちゃくちゃやりましょう！」──Ｊ

「今日は漆黒の祭典なんだよ。闇の祭典だったはずなんだけど、光の日になった気がします。過去が未来だったってRYUの名言があったけど、闇は光だったんだね。光に向かって、旅を続けましょう。……提案があります！ CY(LUNACY)でツアーしようか。みなさん、また夢を一緒に見続けましょう。愛してます」──SUGIZO

「この2日間は、本当に幸せな、最“狂”の夜を過ごすことができました。みんな本当にどうもありがとう。提案があります。もうくすぶっていないで、来年はみんなで特別なことをやろうね。ともにトンネルを抜けていこう！」──RYUICHI

INORANは、ステージ上で話さなかった当時のキャラクター性を再現し、RYUICHIに耳打ち。「INORANからみんなに、“愛してる”って」とメッセージが届けられた。


「全員でかかってこい!!」とRYUICHIが煽り、「WISH」のイントロで銀テープが舞い落ちる。LUNA SEAのライヴに欠かせない1曲だが、1992年のアルバム『IMAGE』に収録されている紛れもない初期曲だ。まったく色褪せない名曲から、ラストは「PRECIOUS...」。フロントにINORAN、Ｊ、RYUICHI、SUGIZOが並ぶシーンもあり、黒一色の会場が歓喜に彩られる温かなフィナーレとなった。

メンバー自身が語っていたように、2日間を通して感じられたのはLUNA SEAの揺るぎない現在と確かな未来だった。止まらずに進む先に、また漆黒の夜が幕を開けるかもしれない。そして終演後にはLEDスクリーン上で、ついに“声出し解禁”となる次回ライヴの開催が告知された。5月29日の結成日直前にあたる5月27日と28日、場所は武蔵野の森総合スポーツプラザメインアリーナ。さまざまな難局を乗り越え、“最強”かつ“最狂”となったLUNA SEAのこれからに、ますます期待が高まる。

取材・文◎後藤寛子
撮影◎田辺佳子／横山マサト／岡田裕介／清水義史

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