【インタビュー】フリースタイルピアニスト“けいちゃん”、1年半ぶり2ndアルバム完成「ピアノって本当に王様なんです」

ポスト
no_ad_aritcle

YouTube登録者数107万人越え、総視聴回数2億8千3百万回突破、現在はTBSの朝の情報番組『THE TIME,』にレギュラー出演しているフリースタイルピアニスト“けいちゃん”が12月14日、ニューアルバム『聴十戯画』(ちょうじゅうぎが)をリリースした。約1年半ぶりのCD作品は、全曲が自身作曲による10曲のインストゥルメンタル。アルバムタイトルは、様々なジャンルを網羅した“戯画”になぞらえた“十”の楽曲を収録していることから命名された。

◆けいちゃん 画像 / 動画

「一度原点に帰ってアコースティックピアノが持つ力、魅力を存分に発揮したいと思い、ピアノのみで勝負出来るアルバムを作りました」とはけいちゃんの弁だ。高いスキルを土台とした自由なピアノ演奏で圧倒的な人気を確立している彼の原点であるピアノに焦点を当てた2ndアルバム『聴十戯画』は、唯一無二の魅力が満載だ。収録全10曲のインストゥルメンタルは、ポップス、ロック、ジャズ、ダンスミュージック、クラシックなど、幅広いエッセンスがピアノと美しく融け合っている。“ピアノってこんなにも可能性に溢れた楽器なんだ”と実感できる今作について、じっくりと語ってもらった。

   ◆   ◆   ◆

■曲にストーリー性を持たせることが多い
■この展開なに?とびっくりさせるのが好き

──ピアノを始めたのは、3歳の時ですよね?

けいちゃん:はい。家にあったピアノで遊んでいた僕を見て、母親が“やらせてみるか”ってなったらしいです。習い始めたら楽しくて、コンクールに出るようにもなって、どんどん真剣になっていきました。

──他に習い事はしていました?

けいちゃん:水泳はやっていて得意でしたね。水泳の先生に勝ったことがあります。危うく選手になるところでした(笑)。あと、立ち幅跳びもめちゃくちゃ得意でした。これは習い事ではないですね。



──ピアノの道に進みたいという気持ちは、小中学生くらいの頃には固まっていました?

けいちゃん:はい。小学生の時点でピアニストになりたいと思って、音大を目指すことも決めていました。

──音大受験は、勉強がすごく大変だと聞きます。

けいちゃん:そうですね。でも、ピアノに関しては自信満々でした。挫折と言える体験は、あまりしたことがないんですね。練習は嫌でしたけど、もうやめたいと思ったことはないです。

──クラシックの世界は枠からはみ出たことを許されない雰囲気がありますけど、それに関してはどのように捉えていました?

けいちゃん:真摯に受け止めていました。先生に言われたことをちゃんとして、レッスン毎に直していってコンクールに臨む生活を繰り返していましたから。その経験があるからこそ基礎が固まって、今の演奏に活かせているのかもしれません。それがなかったら今の僕はないので、クラシックをやっていて本当に良かったです。

──クラシックの勉強を重ねる日々の中で転機になったのは、高校の修学旅行だったそうですね。ロンドンでストリートピアノと出会ったとか。

けいちゃん:駅にピアノが置いてあったんですけど、まず、その“駅にピアノが置いてある”っていうこと自体が驚きだったんです。当時はまだ日本ではストリートピアノという文化が浸透していなかったので。周りの友達から「弾いてみてよ」って言われて、「ラ・カンパネラ」を弾いたら、観光客や現地の人たちがたくさん集まってきて拍手喝采でした。そういう経験は初めてでしたね。知らない人と一緒に和気あいあいと楽しめるストリートピアノって、すごくいい文化だなと思いました。

──日本でもストリートピアノの文化は広がりつつありますよね。

けいちゃん:この4〜5年くらいですね。ピアノって持ち運べない楽器なので、“公園に行って弾く”とかできなかったんです。でも、街中に置かれることによって誰でも気軽に弾けるようになったのは、すごく大きな変化だと思います。


──そういう文化に触れつつ、音大に進学してからはどんなふうにピアノと接していました?

けいちゃん:大学の時までずっと真剣にクラシックピアノをやっていたんです。でも、ふと“もっと枠に縛られずに自由に演奏をしたい”と思って、そこから独学で勉強を始めました。たとえば、周りのいろいろな人の演奏も吸収して、自分なりにアウトプットしてみたりとか。そういうことをしているうちに自由な弾き方や、自由な作曲とかができるようになっていったんです。で、大学を卒業した頃にストリートピアノが日本で流行っていると知って、“ストリートで弾いてみたい”と思ったことが、今の僕に繋がっています。

──ストリートピアノが日本で広まったのと並行して、YouTubeを通じてピアノの魅力を幅広い人々に伝えやすくなりましたよね? けいちゃんは現在、YouTubeのフォロワー数107万人、総視聴回数2億8千3百万回以上。これは、ものすごいことです。

けいちゃん:それも運とタイミングが良かったと思っています。数が数なので想像できない感じもあるんですけど、本当にありがたいことで。ピアノの魅力をもっとたくさんの方々に知っていただきたいですし、音楽を共有したいという気持ちを僕はずっと持っているんです。僕の動画に関しては、観てくれるみなさんの性別や年齢が幅広いので、さらに音楽の楽しさを伝えられたらいいなと思っています。

──ピアノ自体も、とても魅力的な楽器ですからね。

けいちゃん:“楽器の王様”と言われているくらい、ピアノひとつで全部が完結できてしまうところがありますから。それは他の楽器にはなかなかないところで。今回のアルバム『聴十戯画』もそうなんですけど、周りの楽器が何であっても馴染めるサウンド的汎用性の高さも魅力だと思っています。良い意味で昔から進化せず、今日まで受け継がれている楽器なのもすごいですよね。

──作曲の際も、ピアノを使うとイメージを広げやすいですし。

けいちゃん:メロディ、伴奏、リズム、バックで流れている音とかを一気にイメージしやすいので、ピアノが弾けると作曲の時に有利だと思います。いろいろな要素の再現に向いている楽器なんです。

──けいちゃんの活動に触れて、ピアノが身近な存在になった人がたくさんいるでしょうね。

けいちゃん:「けいちゃんの動画を観てピアノを始めました」って言ってくれる男の子が増えているなと実感しています。学校を訪れてピアノ演奏を披露する機会もあるんですけど、「ピアノやっている人いる?」って聞くと、男の子も多いんですよ。昔は男の子でピアノをやっている人って、そんなに多くなかったですからね。今は“男の子がピアノをやっていても当たり前。弾けるとカッコいい”っていう感じになってきているので、そういうことがどんどん浸透していったらいいですね。本当に楽しい楽器なので。


──2ndアルバム『聴十戯画』も、ピアノの楽しさが満載です。前作はご自身が歌う曲もありましたけど、今作は“ピアノが持つ力や魅力を存分に発揮したい”という構想があったそうですね。

けいちゃん:たまたま今回やりたかったことがピアノだった、ということなんですけどね。ピアノの音の美しさ、汎用性の高さ、幅広さを表現したくて、そこにフォーカスしようと思っていました。“やりたいことを思いっきり出した”みたいな感じだから、ジャンルも何と言ったらいいのかわからないし。僕の頭の中に浮かんだ順番で出していった10曲なので、もしかしたら3日後とかに『聴十戯画2』が出来るかもしれない(笑)。それくらい勢い任せというか、日常の延長で書いた曲たちが集まっている感じです。

──ピアノを軸としつつ、幅広い音楽の要素を反映していますね。アルバム収録曲の具体的な話を聞く前に、リスナーとしてはどんな音楽を聴いてきたのか教えていただけますか?

けいちゃん:小学校の頃は、ほぼクラシックばかりを聴いていて。中学くらいからJ-POP、ボカロ、洋楽を聴くようになったんです。最近はヒップホップや海外の音楽も聴いたりしているので、わりとジャンルが幅広いリスナーなのかなと思います。

──アルバム『聴十戯画』には歌心がありますよね。ピアノがボーカルのように歌っていると感じる瞬間が度々あったので。

けいちゃん:曲に関しては第一印象が大切だと思っているんです。だから録ったものを一回聴いて、馴染みやすいメロディだったり、複雑な構成の中にもシンプルな要素を入れたりして、親しみやすい曲にすることは意識しています。ピアノの曲でありながらも、歌や歌詞が浮かんでくるようなものにしたいと考えることが多いので、歌心ですよね。

──インストゥルメンタルの曲を“難しそう”と感じる人もいると思いますけど、そんなことはないと伝えられるアルバムにもなっていると思います。

けいちゃん:インストの良さってありますからね。歌詞があると“こういう曲です”というのがある程度限定できますけど、歌詞がないと自由にイメージしていただけるんです。そこがインストの良さですね。

──アルバム収録各曲は様々な展開をするので、物語も想像できます。

けいちゃん:曲にストーリー性を持たせることが多いんです。“え? この展開なに?”ってびっくりさせるのが好きなので。

◆インタビュー【2】へ
この記事をポスト

この記事の関連情報