【インタビュー前編】高瀬統也、信頼する仲間と作り上げたこれまでの軌跡を凝縮する作品『13月2日』
「どうして(feat.野田愛実)」などが国内外でヒットとなり、精力的な活動を続けるシンガーソングライター高瀬統也。彼が初のフルアルバム『13月2日』を完成させた。2019年3月から始動した高瀬統也名義での活動をコンパイルするような、まさしくベスト盤とも言うべき内容。初期曲「I can’t stop loving you」と「毒のあるA」はリニューアルのうえ再録され、新曲も収録するなど、彼の4年弱の軌跡を凝縮する作品に仕上がっている。今作について“活動のターニングポイントになった楽曲が入っている”と語る高瀬。どうやらそれぞれの楽曲に信頼する仲間との濃いエピソードがあるそうだ。高瀬統也の歩みが反映された同作を通して、彼の立つ現在位置を探っていった。
■僕に関わってくれるみんなを信頼しているからこそ
■高瀬統也というプロジェクトは成立する
――このインタビューは<TAKASE TOYA LIVE 2022 Road to 香港国内外ツアー>の名古屋公演直前に行っていますが、東阪公演はいかがでしたか?
高瀬統也:初めて見るお客さんがたくさんいて、曲が広がっていることを実感しました。特典会で「失恋して傷心のところに友達から曲を薦められて、それきっかけで今日来ました」と言っていただくことも多くて、SNSの力やクチコミの強さをあらためて痛感しました。今回はDJとキーボードとギターの方に入っていただいて、ギターやピアノの弾き語り、ハンドマイクで歌う曲もあるなどいろんな見せ方もできたので、ライブのバリエーションがかなり増えたと思います。
――このツアーには全公演とも野田愛実さんと佐藤文哉さんがゲスト参加なさっていますが、野田さんとは東京公演の前日に新宿で路上ライブをなさったそうですね。
高瀬統也:野田愛実ちゃんが新宿で路上ライブをやるというので誘ってくれて。リハーサルで「どうして」を歌っただけで人が集まってきましたね。でも路上に不慣れすぎて、看板とか一切持って行ってなくて。観てくれている人には「どうして」を知っていても僕らふたりが本人だとは気付いていなかった人も多くて、あらためて自分の知らないところでどんどん広がってるんだなと思いましたね。だからこそ、曲を好きになってくれる人にもっとライブに足を運んでもらえるアーティストにならなきゃなと思うんです。
――ストリーミングサイトだけで満足されてしまうのではなく、その先にということですね。
高瀬統也:そのためにももっと自分のことを知ってもらうことが必要だなとは、今年特に感じたことですね。ライブは自分の作った曲を音源+αで届けられるし、自分の持っている自信に加えてお客さんから自信をつけてもらえる場所なんです。アナログな活動は自分に足りていなかったので、来年は特にライブをたくさんしたいと思っています。
――ツアーの東京公演で、10月リリースのデジタルシングル「らりるれ」を初披露なさったんですよね。ドリルビートをベースにしたセンチメンタルなナンバーで、午前4時の道玄坂が舞台になっているということですけれども。
高瀬統也:そうそう、そうなんです。今年の9月に愛実ちゃんとカラオケに行って朝4時に解散して、渋谷でひとりになったときの出来事が元になっています。キャリーケースとギターを背負ってホテルに行くも、どこも予約がいっぱいで泊まれなくて路頭に迷っているときに、遠征するもお金がなくてホテルに泊まれなかった時期の感覚を思い出したんです。ひとりぼっちの道玄坂でいろいろなことを考えていて――そのときに目の前にたまたま、道路に置いてあったゴミ袋の上で寝ていたお姉さんがいたんです。
――あら、なかなかハードなシチュエーション。
高瀬統也:周りにはネズミが走っていて、かなりパンチのある光景でした。お姉さん何があったんだろう、男でミスったのかな、それとも仕事でやけになって飲み潰れたのかな……とすごく心を持っていかれるものがあったんですよね。道玄坂ってストレス解消のために来ている人が多い印象があって。“もう男なんてクソなんだよ~!”と言いながらカバン振り回してる女の子もいればケンカしてる男女もいて、そこをひとりで歩いてる俺もなんなんだ?とかいろいろ考えて。そのインスピレーションから書いたのが「らりるれ」です。“ひとりぼっち”から“らりるれロンリー”という言葉を思いついたんです。
――作詞は高瀬さんに加え、岡本正勇さんとRaytuckerさんの連名ですが、おふたりはどのように参加なさっているのでしょう?
高瀬統也:《今更もうわたしは変われない》という歌詞があるんですけど、レコーディングしてるときに、女の子が変われないと歌うべきか、その子の彼氏が変わらないからわたしは変わったんだと歌うべきか、すごく悩んでたんです。ちょうどそこに立ち会っていたのが、エンジニアの岡本さんとシンガーソングライターのRaytuckerで。それをふたりに相談したら“《わたしは変わらない》でいいと思う”と後押しをしてくれたから、名前が入っています。
――なるほど。でもそのレベルでクレジットを入れるって、すごく珍しいとも思います。
高瀬統也:全然入れますよ! 海外とかみんなそうじゃないですか。なんならその場にいる全員入れたいくらいです。やっぱりみんなで作ってるから、参加してくれたみんなが自分ごとのように思ってほしいんですよね。それこそ今回フルアルバムを作るに至ったのも、このインタビューに同席してくださっているスタッフさんと第一興商の方の言葉がきっかけなんです。自分で決めたことよりも、アドバイスを取り入れていってできたのが『13月2日』なんですよね。このアルバムタイトルも、僕のMVをずっと撮ってくれている杉浦哲平さんの発案なんです。
――へええ、そうだったんですか。
高瀬統也:2019年に出した「I can’t stop loving you」で、初めてお互いがMVを撮ったという間柄で、僕にまつわるデザインのトータルプロデュースを担当しているだけでなく、いつも一緒にタイトルを決めているんですよね。僕としては今回のアルバムで新しい風をイメージさせたかったんですけど、彼が“いや、『13月2日』じゃない?”と言い出して。それで自分も帰ってから1日考えて、『13月2日』というタイトルがシンプルでわかりやすいなと腑に落ちたんです。これも全部、身近の信頼してる人たちが高瀬統也の活動を自分のことのように捉えてくれてるから起こることなんですよね。そういうところにもすごく助けられてるんです。
――とはいえ、やはり自分の意見を通したくなることもあると思うのですが、どうなんでしょう。
高瀬統也:自分で全部決めると偏ってしまう。昔それで失敗したので、できるだけ受け入れるようにしています。これまで高瀬統也として発信したものは、すべてが自分ひとりでは作り上げてこられなかったものだと思っているんです。僕に関わってくれる信頼するみんなが自分ごととして捉えるからこそ、高瀬統也というプロジェクトは成立する。みんなが僕を円で囲んでいるような作り方をしたいんですよね。
取材・文:沖さやこ
※アルバムインタビューの後半は後日公開予定
リリース情報
2022年12月7日 配信リリース
https://lnk.to/jyusangatsufutsuka
M1. 13月1日
M2. I can't stop loving you(feat.野田愛実)
M3. らりるれ
M4. Make you high
M5. All or Nothing
M6. どうして(feat.野田愛実)
M7. 毒のあるA
M8. Don't stop me lyrics
M9. Tears Tears
M10. センチメンタルじゃ終わらない
M11. TWI LIGHT(feat. N.O.A)
M12. FAKER
M13. I'll be right there
M14. MINT
M15. 備忘録(Self Cover ver)
M16. どうして(feat.野田愛実)Remix by RINZO
ライブ・イベント情報
12月24日(土)香港・Music Zone @ E-Max
12月25日(日)香港・Music Zone @ E-Max
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