【インタビュー後編】ЯeaL、運命の4人編成になって渾身のリリース「拝啓、あの日の僕へ」
■「拝啓、あの日の僕へ」はスピード感良くできたのがよかったのかな
■この曲はいまのバンドをそのまま閉じ込めるのが一番映えるので
──先日、Ryokoさんに6ヶ月連続シングルの各曲についてお聞きしたんですが、「拝啓、あの日の僕へ」については、「まだ言えないことがある」ということだったんですよ。なので、改めてお聞きしたいんですが、「拝啓、あの日の僕へ」はどういうところから作り出したんですか?
Ryoko:この前のインタビューで言えなった“制作が3ヶ月押した理由”なんですけど、なぜ押したかというと、まず、12月にリリースするので、これが10周年の記念の曲になるし、ここまで出してきた中で一番良い曲、“6ヶ月連続リリースのリード曲”をやっぱり出したかったんです。それに、Yuriさんが入ったことを世間に伝えるタイミングの楽曲にもなるので、先に出した5曲もハードルは高かったし、それはそれで悩んだんですけど、その5倍ぐらい高くて。それこそYuriさんはたんこぶちんというバンドを背負ってЯeaLに入ってくれるという選択肢をしたけど、「こんなもんなんや?」って思ってほしくなかったんですよね。Yuriさんが選んだ選択も正しかったって言わせたかったし、ЯeaLがその決断をしたことも正しかったってどうしても言わせたくて。なので、この楽曲は絶対に妥協したらいけないし、この前のインタビューでも話しましたけど、この曲は今までの楽曲──それこそ「カゲロウ」とか「未来コネクション」とかを超えた楽曲じゃないといけなかったんですよ、自分的に。それが全然書けなくて。
▲「拝啓、あの日の僕へ」
──かなり苦戦したと。
Ryoko:すぐに書けるわけがないんですよね、そんな楽曲。締切を8月末にしていたけど、実はそれまでに150曲ぐらい書いてたんです。いろいろなパターンをとにかく試してみたんですけど、全然できなくて。で、この前も話しましたけど、制作途中は誰にも会いたくないから、3ヶ月ぐらい音信不通になって。スタッフさんから「バラードにしてみたら?」とか「リード曲じゃなくてもいいんじゃない?」とか、いろんな救いの手をもらっていたんですけど、自分としては、それは逃げてる感じがしたんです。ここでバラードに逃げるのも、リード曲を書かないのも違う、と。今までの10年すべてが詰まっていて、そのすべてがちゃんと肯定されていて、これからの未来も見える楽曲じゃないとダメだなと思って。でも、結局3ヶ月ぐらい書けず。
──突破口みたいなものはあったんですか?
Ryoko:10月から10周年記念のワンマンツアーが始まって、初日が大阪だったんですけど、その日のライヴがすごく良かったんですよね。演奏うんぬんというよりは、まだ発表していなかったけど、私達の中ではYuriさんはメンバーになっていたから、私達的には一個の物語が始まった日でもあったし、しかもそれが自分達の出身の場所だったのもあって。いつもはMCでこういうことを話そうとか、こういう気持ちを持っていこうって作っていくんですけど、ずっと楽曲のことを考えていたのもあるんですけど(笑)、本当にステージに上がる5分前まで何も考えていなくて。で、ステージに立って4人で演奏しているのを考えたときに、なんか、すごく明るい未来が見えたんですよね。去年1年間は本当につらくて、ライヴに対してもトラウマがあったけど、その日のライヴは本当に楽しかったし、バンドを続けていくこと、メンバーが増えてこうやって続いていくことってすごく素敵なことで、これは一生続けていきたいなって、シンプルにそう思えたんですよ。
▲Ryoko(Vo&Gt)
──その気持ちを書いたと。
Ryoko:そこからちょっとだけ悩みはしたんですけど、メロディと歌詞を5分ぐらいでバーっと書き上げて。ただ、第2弾の「Bright」と一緒で、フラッシュアイデアで作っただけのものだから、それが不安ではあったんです。テンポもゆっくりだし、メロディも歌詞もすごくわかりやすくてストレートなので、今までだったら編曲でもっと癖を入れたりしていたんですけど、それもなく。そうやって自分達の荒削りの感情を閉じ込めただけの楽曲って、自信が持てない節が多々あるので、ずっと不安で。
Aika:レコーディング中もずっと「大丈夫かな……」って(笑)。
Ryoko:でも、ちゃんと今の4人で作れたし、背伸びもしていないのかなって思いますね。今の4人の空気感とか、ライヴの空気感とかも閉じ込められたし、これから自分達がやっていこうとしているものも全部詰まった1曲になったと思うから、3ヶ月悩んだ甲斐があるものになったなと思います。
──イントロから良いですよね。ギターが絡んでいる感じが、それこそギタリストが加入したということを物語っていて。
Ryoko:自宅でデモを作っているときからギターリフで始まる曲にしたいと思っていました。やっぱりYuriさんが入ったからこそできるアレンジにしたかったので。
──Yuriさんもそういうアレンジであることを感じながら弾いていたと。
Yuri:めちゃくちゃ感じましたね。これをライヴでやるときには、私とRyokoだけの音で、後ろでハイハットを刻んでるぐらいだろうなと思ったので、ここをビシっと決めないと、ライヴもレコーディングも決まらないんだろうなっていう責任を感じながら、しっかり弾かせていただきました。
Ryoko:それこそああいうアレンジをしたのは「カゲロウ」振りなんですよ。あの曲ができた後にメンバーが抜けるという話になったので。だから、ああいうフレーズって今まで避けていたんですけど、今回入ったので。
▲Yuri(Gt&Cho)
──となると、やりますよね(笑)。
Ryoko:そうですね。
Yuri:だし、一番大変だったのは、こんな大切な曲のギターソロを任せられたんですよ(笑)。
Ryoko:まあ、任せるよね(笑)。
Yuri:16小節をポンと投げられて。あまりの責任の重さに、じんましんと涙が出ました(苦笑)。ホントにどうしよう……!って。
Aika:ワンマンとかもあったしね。
Yuri:うん。準備期間も短かったし。
Ryoko:そこはほんまにごめん……。
──瞬発力も問われつつ、という。
Yuri:そうですね。でも、この瞬発力が大事かもと思いながら弾いていました。
Ryoko:締切から3ヶ月も遅れといて言うのもなんなんですけど、この曲に関してはこのスピード感でできたのがよかったのかなって。やっぱり時間があると、もっと良くしようと思って練り込んじゃうんですよね。でも、この曲はいまのバンドをそのまま閉じ込めるのが一番映えるので。だから、そこに関しては逆に良かったかなって、いまは思っています。
──より剥き出しの状態のものが作れたと。Fumihaさんは「拝啓、あの日の僕へ」に取り組んでみた感想というと?
Fumiha:私は、時間が、欲しかった!
──だいぶ一言一言を置きながら言いましたね(笑)。
Ryoko:すみません……。
Fumiha:曲を送ってもらったのがワンマンの前日だったんですよ。そこから福岡に移動して、ワンマンして、その次の次の日にレコーディングだったから、そこでやるしかなかったので。だからもうちょっと時間がほしかった。あと2日ぐらいは。
Ryoko:だよね……。
▲Fumiha(Ba&Cho)
──デモを聴いたときの印象は?
Fumiha:もうそれどころじゃなかったです(笑)。ワンマンはワンマンで、みなさん来てくださっているからそこは頑張らないといけないし、レコーディングはレコーディングで頑張らなければならないし、とにかくもうやるしかない!っていう感じではありました。でも、最終的にはものすごく良いものになったと思います。
──Aikaさんはいかがです?
Aika:私も時間がほしかった(笑)。
Ryoko:すみません……ほんとすみません……。
Aika:でも、ワンマンツアー中にスタジオに入ったのは良かったと思いました。
Fumiha:ああ。ライヴの熱量でやれたのはよかったかも。
Aika:良いエモさが出たというか。ライヴの熱量とか余韻を持ったままレコーディングできたので、そこまで持っていけたのかなと思います。最初にデモ音源を聴いたときも、めちゃくちゃ良い!と思って、「ЯeaLの曲で上位に入るぐらい良いです!」って送ったら「あ、そうですか」みたいな。ああ、これは自信がないときのやつだなと思って(笑)。
Fumiha:いつもより酷かったもんね? 「めっちゃ良い!」「あ、はい……」みたいな。
Ryoko:そこは3つぐらい要因があって。ひとつは自分のハードルが高すぎたことと、締切から3ヶ月も遅れて、これから大変なことになるであろう3人に、これどう?って聞くのがおこがましく感じて、本当にすみません、待たせてしまって申し訳ないです、ごめんなさいっていう気持ちが2つ目。で、3つ目は、ほんとに良かったら「いいやん!」って言われるかなと思ってスタジオに行ったら、「あ、おつかれー」みたいな。あれ……? みんなデモ聴いた……?みたいな。
Fumiha:それどころじゃなかった(笑)。やらなあかんから。
▲Aika(Dr&Cho)
──(笑)。でも、しっかりと自分達を閉じ込めた楽曲になりましたね。12月17日にSpotify O-WESTで開催される<ЯeaL Яock Яevolution vol.10 10th Anniversary>も目前に迫ってきましたが、Aikaさんは当日どう臨もうと考えていますか?
Aika:初めて東京でワンマンをしたのがO-WEST……だったよね?
Fumiha:だったらしい(笑)。
Ryoko:さっき動画を撮ってきたんですけど、忘れてたんですよ、そのことを(笑)。
Aika:あれって5年前?
Ryoko:そう。そのO-WESTでやったワンマンでメンバーが抜けているんですよ。だからメンバーが抜けたのもO-WESTで、メンバーが入るのもOWESTなんです。
Aika:だから気持ちとかもうぐちゃぐちゃでしょうね。やばいライヴになりそうだなと思って。
Ryoko:ツアーのときから結構すごかったよね? インタビューの前編で、去年までとてつもなく仲が悪かった話をしていたのよ。空気悪かった時期あったでしょ。
Aika:うん。
Yuri:そうね。私はそこにあんまり触れていなかったけど。
Fumiha:サポートだったもんね?
Ryoko:去年と今年の頭のことを乗り越えて、Yuriさんが入ることになって、6ヶ月連続リリースをしていく中で、バンドとして3段階、4段階ぐらい良くなったんですよ。そのまま10周年ツアーの地方編に入れたから、ライヴもとても良くて。メンバー全員が楽しめる空間になっていたし、それがお客さんにも伝わって、感じてくれていて。プラス、この10年のこともそうだし、自分達的にはメンバー加入というのも相まって、地方編からぐちゃぐちゃだったから、これがね?
Aika:ファイナルだしね。個人的には、ドラムって一番後ろにいるじゃないですか。フロントマンよりは気持ちが伝わりづらいというか、お客さん側から見ると、あまりわからないじゃないですか。ドラムってほぼ見えてないから。
Ryoko:そんなことあらへん(笑)。
Fumiha:やし、そんな後ろでもないやろ(笑)。
Aika:でも、それがちょっと悩みだったんですよ。気持ちが一緒じゃないというか。でも、10周年を迎えて、お客さんを入れて、声出しもできるようになって。それがなんかもうエモすぎて。これが初めてというわけではないんですけど、この4人でちゃんとやっているな、同じ気持ちでステージに立てているなと思えたので。O-WESTではそれをちゃんと伝えられるんじゃないかって思いました。
──Fumihaさんはいかがです? O-WESTにはどういう気持ちで臨みたいですか?
Fumiha:私としては、10周年の実感がないんですよ。記憶がないので(笑)。それよりもO-WESTから4人になるから、ここから1年目みたいな気持ちで頑張ろうかなと思っています。
──記憶がないというのは……どういう理由で?
Fumiha:フツーに覚えてられないんですよ(笑)。
Ryoko:いまを生きてるからな。常に新鮮な気持ちで。
Aika:常に1周年。
Yuri:素敵やね。
──1周年を10回続けてきたという。
Yuri:いっぱいパーティーできていいね。
Ryoko:そのツッコミやばいな(笑)。
Fumiha:私としては、10周年というよりはメンバーが入るライヴなので、4人でまたやれるというのが嬉しいです。
──地方編では、それこそエモくなる瞬間も多かったですか?
Fumiha:そうですね。なんか、そこも10周年というよりは、声出しありのライヴがコロナになる前以来だったんで。ほんとにもう終わったと思いました。ライヴができないと思って。
──昂りすぎてしまって。
Fumiha:そう。ずっとドラムのほうを見て、「無理……無理かもしれん……」って。
Ryoko:Fumihaがそうなるのってほんとに珍しいんで。
Fumiha:だから、東京ではマジメにやろうかなと。
Ryoko:それぐらいにしておかないと死ぬもんな。
Fumiha:彼女が主役だと思いながら、マジメにやろかなと思っています。1年目やし。初心に帰って頑張ります。
──Yuriさんはいかがです? 公にメンバーとしてステージに立つのは初になるわけですけども。
Yuri:ЯeaLが抱えてきた10周年の重みは、正直傍から見ていた人間なので、その重たさをまだあまり実感できていないところもあるんですけど。でも、このスタートが私にとってのまた大きな分岐点になると思うと、すごくエモいなという気持ちもあって。それをいろいろな人に見て欲しいっていう気持ちが一番ありますね。で、地方編で私が一番泣いちゃったのが福岡だったんですけど。
Fumiha:なんでなん?
Yuri:私の父親が、もともとЯeaLが大好きで。サポートすることになったときに、父にそのことを話したらすごく喜んでくれたんですよ。で、今回メンバーになるっていう話をしたら、泣きそうになるぐらい喜んでくれて。福岡のワンマンには妹と父が2人で来てくれたんですけど、感極まった感じで観てくれているのにすごい感動しちゃって。
Ryoko:まだ発表してないのに爆泣き(笑)。
Yuri:そう(笑)、まだ発表してないけど、「私、ちゃんとЯeaLになるからね」っていう意思表示ができたっていうのと、あと、このインタビューで嬉しかったのが、今までメンバーが私に対してバンドに入ったのを喜んでくれている実感があまりなかったんですよ。
Ryoko:ウソっ!?
Aika:なんで?
Fumiha:別に嫌がってないやろ(笑)。
Yuri:いや、嫌がってるんじゃなくて、この子達、不器用なんですよ(笑)。
Ryoko:ああ! 私もそれ分かる! 私も曲書いたときに、みんなから……。
Yuri:ね!? ね!?
Aika:言葉にしないからね。
Yuri:そう! あまり言葉にしないメンバー達なので、「Yuriさん、本当にありがとう、嬉しいよ」っていうのが、今日のインタビューですごく伝わってきて、そうなんや! そんな気持ちやったんや!っていうので、嬉しくなりました(笑)。その気持ちを受けて、ワンマンではしっかり表に気持ちを届けていきたいです。
Ryoko:(嬉しさが)伝わってなかったって。
Aika:しゃあないやん。10年間それで生きてきたんやから。
Fumiha:まあ、嫌やったらそもそも誘ってないし。
──そこはそうですね(笑)。
Yuri:でも、ファンの人がどう思ってくれるのかなっていう不安は、正直ありますね。今までサポートっていう打ち出しをずっとしてきたし、今回も実質ギリギリまでサポートという打ち出しをしているんですよ。なので、驚きのほうが多いのかどうなのか、ちょっと手汗かきますね。どう思ってくれるんだろうなって。でも、私は純粋にЯeaLとして一緒に音楽を届けていきたいと思っているっていうことは、ちゃんと伝わってほしいなと思います。元々やっているバンドがどうとか、置き去りにするとか、そういう気持ちじゃなくて、それも背負って、ここでちゃんと歩んでいきたいっていう気持ちを伝えられたらいいなと思います。
──Ryokoさん、改めてどんなライヴにしたいですか?
Ryoko:ライヴもそうなんですけど、楽しいと思えることって奇跡だと思うんですよね。全員10代からバンドをやっているから思うことなんですけど、バンドを始めたときって、夢だけしかなかったというか。キラキラした未来をずっと考えていたけど、大人になって、それだけじゃないことも、それだけではうまくいかないこともたくさんあると知ったし。いろんな人達がやめていったり、仲間がいなくなったりしてきたなかで、こうやって全員でステージに立つのが楽しいって思えることがすべてだなって、いまは思うんです。またいつか、この4人でもいろいろなドラマがあると思うんですけど、それこそЯeaLという名前の由来ですよね。ネガティヴというか、悲しいことも苦しいこともみんなで一緒に共有して、これからもいろいろなことを乗り越えていけるようなバンドにもっとなっていけるタイミングだなと思っているので。自分達がこれだけ楽しんでバンドをやっているということ、自分達がЯeaLというバンドに誇りを持ってやっていることが、伝わればいいなと思っています。10年続けてきたというのもあるけど、ここが私達のスタートとして感じてほしいタイミングなので、「来い!」って感じですね(笑)。
──急に言葉が強めに(笑)。
Ryoko:良くも悪くも絶対に良いライヴになると思うので。こっちが感情的になっても、楽しくなっても良いし、みんなが驚こうが、泣こうが、笑おうが、絶対にそれがすべてなので。一緒にいろいろな感情を楽しめたら良いなと思っています。
取材・文:山口哲生
リリース情報
「カミサマ」
2022.7.1リリース
◆https://realjp.lnk.to/kamisama
▲「カミサマ」
6ヶ月連続リリース 第二弾
「Bright」
2022.8.5リリース
◆https://realjp.lnk.to/Bright
▲「Bright」
6ヶ月連続リリース 第三弾
「さよならの理由」
2022.9.9リリース
◆https://realjp.lnk.to/sayonaranoriyu
▲「さよならの理由」
6ヶ月連続リリース 第四弾
「ディストラクション・ガール」
2022.10.7リリース
◆https://realjp.lnk.to/destructiongirl
▲「ディストラクション・ガール」
6ヶ月連続リリース 第五弾
「re:call」
2022.11.4リリース
◆https://realjp.lnk.to/recall
▲「re:call」
6ヶ月連続リリース 第六弾
「拝啓、あの日の僕へ」
2022.12.9リリース
◆https://realjp.lnk.to/haikeianohinobokuhe
▲「拝啓、あの日の僕へ」
ライブ・イベント情報
2022年12月17日(土)@ Spotify O-WEST
https://l-tike.com/concert/mevent/?mid=364634
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