【速レポ】<SAI 2022>DAY1、ACIDMAN「数々の仲間達に支えられています。最高の夜にしましょう!」

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ここにいる誰もがこの瞬間を待っていた。5年ぶりに開催された<ACIDMAN presents「SAITAMA ROCK FESTIVAL “SAI” 2022」>。その1日目のトリを飾るのは、もちろんフェスの主催者であるACIDMANだ。

◆ACIDMAN ライブ写真

SEの「最後の国」に合わせ、手を打ち鳴らす観客に迎えられたACIDMANは、浦山一悟(Dr)によるドラムの連打と佐藤雅俊(B)がタイトに刻むリズムに大木伸夫(Vo, G)がコードをかき鳴らすリフを重ね、ガレージロックの趣もあるファンクロックナンバー「to live」でスタートダッシュをキメる。鋭い言葉をたたみかける大木によるラップ調のボーカルの勢いとグルーヴィな演奏が早速、アリーナとスタンドを揺らしていく。



「1-2-3-4!」と浦山が声を上げ、バンドが繋げたのが向こう意気とともに青さも印象づけた疾走系のロックナンバー「造花が笑う」。そして、大木がギターを持ち替える間を浦山がドラムで繋げながら、ディレイを掛けて、ギターの音色をキラキラと鳴らした「FREE STAR」を披露。サビの4つ打ちのリズムで観客を跳ねさせながら、現在のバンドが持つ包容力を印象づけ、アンセミックな光景を序盤から作り上げていった。

まさにトリにふさわしい展開! しかし、そう思ったのも束の間、筆者はそれが早合点だったことを思い知らされるのだが、その前にこの日、ACIDMANの前に演奏した9バンドに対する思いを興奮気味に称えた大木の言葉を書き記しておきたい。

「どうです? すごくないですか! 本当に素晴らしいアーティストが揃ってくれました。もちろん、僕達の結成25年、メジャーデビュー20周年という意味合いはあるけれど、この世代のバンド、カッコいいなと改めて思いました。最初から見てくれた人は疲れたと思うけど、いい疲れですよね(笑)。こんな日が戻って来るとは思わなかった。やっと戻って来た。もちろん、僕達の力だけで成り立っているわけではなくて、数々の仲間達に支えられています。最高の夜にしましょう!」──大木伸夫




そんなふうに客席を盛り上げた直後に繋げたのが、ソウルっぽいともジャジーとも言える大人っぽい曲調をぎくしゃくとした演奏に落とし込んだ「Rebirth」なのだからニヤリとせずにはいられないではないか。そんな演奏がサビで唐突にアンセミックになる展開、大木による荒々しいギターソロともに、クセがありすぎるだろう。なるほど、単純にのりやすいアンセムを並べ、観客を楽しませるだけではACIDMANの3人は飽き足らないようだ。

思えば、「to live」「造花が笑う」と冒頭からたたみかけた時に気づくべきだった。向こう意気に加え、ACIDMANというバンドが持つ尖った感性を物語る曲を多めに選んだこの日のセットリストは、フェスのトリで演奏するには十二分にチャレンジングだったと思うが、それが結成25年を迎えた現在のACIDMANなのだろう。

その意味でハイライトだったと思うのが、ネオアコ風のポップな曲作りを熱度満点の演奏に落とし込んだ「赤橙」を挟んで披露した10分超えの「廻る、巡る、その核へ」だ。大木が奏でるトラッドフォーキーなリフに佐藤と浦山の無骨な演奏が加わると、往年のジャズロックにもプログレにも聴こえるスローナンバーを身じろぎもせずに聴きいっていた観客を、最後、轟音の演奏が圧倒する光景は、ある意味、壮観だったが、それも含め、この日のACIDMANのステージのハイライトの1つだったと言ってもいい。

その「廻る、巡る、その核へ」を演奏する前に子供の頃から抱き続けてきた宇宙に対する畏怖を語って、「この宇宙も、この星もいつか終わる。その寂しさ、悲しさ。ちょっとでもそうじゃないんだとすがりたいんでしょう。きれいごとかもしれないけど、そのたった1つを探しているんだと思います。終わってしまう宇宙、自分達の未来の、その先を願う。生まれ代わりって本当にあるんじゃないかって本気で願った歌です」と大木は紹介したが、続く「世界が終わる夜」は、いつかは世界が終わることを受け入れた上で今この瞬間を謳歌しようという思いを歌ったバラードだ。その2曲を繋げたことで、大木の考え方の変化とともにバンドの成熟が浮き彫りになった心憎い演出だったと思うが、それに加え、「世界が終わる夜」のクライマックスに星形の紙を無数に降らせるというフェスのトリにふさわしい演出も取り入れ、観客を歓ばせることも忘れない。





「5年前の再現! 2017年に<SAI>の1回目を開催しました。その時、力を貸してくれた2人がいます。その再現をしてもいいですか? 東京スカパラダイスオーケストラから谷中敦さんと加藤隆志さん! この2人がいなければ、今の俺達はいません」と大木が谷中と加藤を呼び込むと、「ACIDMANを応援しにきました! ACIDMAN、25周年おめでとう!」と谷中が声を上げ、「ある証明」の共演が実現した。

アンセミックなロックナンバーを豪快に鳴らす演奏が確実にいつもよりも熱かったことは言うまでもない。スカパラはもちろん、この日出演した全バンドに感謝を述べた大木が「まだまだやりたいこといっぱいあるからこれからもどんどん続けていきます。音楽っていうのは、人の心を一瞬にして変える魔法みたいなもので、それを僕は信じています。そんな魔法を信じてずっとやっていきます!」と結成25年を迎えたバンドの、さらなる前進を誓い、「ありがとう!」と観客に対する感謝の気持ちを込め、ACIDMANの3人が最後に「Your Song」を駆け抜けるように演奏すると、キャノン砲によって無数の金テープが客席に放たれ、すべての出演バンドと観客が作り上げた1日目の成功を華やかに祝福したのだった。



取材・文◎山口智男
撮影◎三吉ツカサ/石井麻木/AZUSA TAKADA/山川哲矢/Taka“nekoze photo”

セットリスト

1. to live
2. 造花が笑う
3. FREE STAR
4. Rebirth
5. 赤橙
6. 廻る、巡る、その核へ
7. 世界が終わる夜
8. ある証明
9. Your Song

■<ACIDMAN presents「SAITAMA ROCK FESTIVAL “SAI” 2022」>

2022年11月26日(土) さいたまスーパーアリーナ
2022年11月27日(日) さいたまスーパーアリーナ

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