【インタビュー】MAY'S「自由な羽根の伸ばし方が合っているのが20年続いた一番の理由かな」
「ONE LOVE ~100万回のKISSでアイシテル~」や「I WISH」「I LOVE YOUが言えなくて」などの多くのヒットソングを生み出し、2022年に結成20周年を迎えた2人組ユニット・MAY'Sが、11月から2ヶ月連続でデジタルシングルをリリースする。その第1弾となるのが「One More Dance」。熱い思いが込められた90'sテイストのミドルダンスチューンだ。“全てのライブハウス、全てのミュージックラバー、全てのファン、そして自分達自身にこの曲を捧げます。私たちに歌と踊りの場所を残してくれてありがとう”という公式コメントにもあるように、歌詞には様々な熱い思いが刻まれている。この楽曲の背景には、ふたりのどんな思いがあるのだろうか。20年を振り返りながら、同曲の真相に迫った。
■二十歳の時に結成して人生の半分をMAY'Sとして過ごしてきた
■ここから先はまた新しい1歩目を踏み出せそうな感覚があります
――2002年に専門学校の同級生として出会ったおふたりは、この20年をどのような期間と捉えていますか?
片桐舞子(以下、片桐):ポジティブな意味で山あり谷ありの、長かったようであっという間の20年間でした。“片桐”と“河井”だったので出席番号順の座席が前後ろで、二十歳の時に課題制作のために結成して、それから人生の半分をMAY'Sとして過ごしてきて。ここから先はMAY'Sとして生きることが自分の人生のなかで長くなっていくんだなとあらためて思いました。ここから先はまた新しいMAY'Sへの1歩目を踏み出せそうな感覚がありますね。
河井純一(以下、河井):専門学校2年生でMAY'Sを結成して、そこから今までずっとつながっているような感覚があるんです。僕らはオーディションを受けたことも、事務所にデモテープを送ることもなくて、アマチュアでの活動、インディーズを経て、メジャーデビューをして……周りの皆さんの優しさもあって、ずっと自由に音楽活動をさせてもらえたなと思います。だから本当に、学生の頃のままここまで来させてもらったんですよね。MAY'Sとして20年やってきた実感ももちろんあるんですけど、20年友達と音楽で遊んできた感覚も強いんです。
――音楽に対してピュアなままでいられていると。
河井:そうですね。曲作りへの向き合い方は、本当に変わっていないかもしれない。
――とはいえ20年間同じメンバーと二人三脚で活動を続けられる方々は少ない気もしています。
片桐:やっぱりバランスの良いふたりなんだと思います。わたしは前に出るほうが向いているし、純ちゃん(河井)は一歩下がって影で支えるほうが性に合っている。男女だからお互いの立ち位置がバッティングしないし、お互いセルフプロデュースに向いているけど得意なことが違うので、しっかり役割分担ができるのも良かったんだと思います。
河井:違うところは全然違うんだけど、共通言語も多いんですよね。年齢も一緒で、舞子は群馬で僕は埼玉出身という片田舎育ちで(笑)。お互い家が自営業で、世代が一緒だから聴いている音楽や観ていたドラマ、読んでいた漫画も一緒だし、パッと思いつくものに対してのギャップがなかったのも、20年続いた大きな理由なのかなと最近は思いますね。一緒に表現をするうえで意思疎通がすごくしやすいんです。
――音楽への表現欲が尽きないことにも、それを進化し続けていることも、MAY'Sの特徴ではないでしょうか。
片桐:いやいや、わたしは20年間いつも行き詰まっています(笑)。アルバム制作の納期ギリギリぐらいの時期になって、ものすごい回転数を上げてゾーンに入っていくので、日常で過ごしていくなかでふと歌詞が思いつくタイプでは一切ないんですよね。
河井:舞子はいつも“これが最後の作品だ”ぐらい絞り出すところがあって。だから毎回作り終わると1回カラッカラになるんだよね。
片桐:河井さんは真逆で、日々曲を作り続けて、常に自分をリニューアルしているタイプなんです。この20年、スランプになっているところなんて見たことないです(笑)。気持ちや抑揚の振れ幅があまりないので、感情の波に飲まれそうになるわたしは、一緒にいると冷静になれるというか。助けられてますね。
――河井さんが20年間リニューアルし続けられるのはなぜなのでしょう?
河井:たぶん僕は新しいもの好きでミーハーというか……。あと飽き性なのもあると思いますね。“今こういうの流行ってるんだ”と思ったら、そういうのを作ってみたくなるんです。あと決定的なきっかけというと、何年か前に山下達郎さんのライヴに行かせていただいたときですね。達郎さんがMCでおっしゃっていた言葉が、当時の僕にすごく刺さったんです。
――と言いますと?
河井:“この中に音楽をやっている人がいるなら、先輩アーティストや年配の人のアドバイスは話半分で聞いておくほうがいい。新しいものを作っている人が常に優れている”という旨の話をしてらっしゃったんですよね。当時の僕もものすごく腑に落ちたんです。自分も後輩に対して“面倒くさい先輩”みたいに思われたくないなと(笑)。もともと新しいもの好きではあったけど、“今のものをちゃんと追いかけ続けられるクリエイターでいたい”とあらためて認識した瞬間ではありますね。
――この20年で音楽の届け方や聴かれ方もかなり変わってきていますが、そのなかで音楽を発信していくのはどのような心境でしたか?
片桐:わたしたちのデビュー前後の時期はまだCDがそこそこ主流で、その直後に着うたからヒットが生まれるようになったという、割と大変革期のタイミングで。だからやっぱり着うた全盛期のときは、ガラケーで聴くことを想定して曲作りをしていましたね。
――2010年代は“iPhoneの純正イヤホンで聴いたときにどう聴こえるかを重要視している”とおっしゃっているアーティストが多かったので、それと似た発想ですね。
片桐:聴く人の環境は考えていましたね。ガラケーは高い音だと抜けて聴こえるから、曲のキーを限界まで上げたりしていました。自分たちがやれること、やりたいこととどう折り合いをつけていくか、シーンに対してどうアプローチしていくかは曲作りにおいて重要視していたところです。この20年でどんどん聴かれ方も変わっていて、それに対して反応していける柔軟さは持ってないといけないなと最近もすごく思います。何年経っても勉強ですね。
河井:今の音楽の聴かれ方に否定的な方々もいますけど、自分はCDの頃のほうが良かったとかはあまり思わなくて、今は音楽を作る人間にとって良い時代だなと思っています。今の時代に音楽を始めたミュージシャンの子たちは、情報過多で埋もれがちになってしまうと悩むことも多いと思うんですけど、これだけ音楽を発信できる場所があるとやりやすいだろうし、羨ましいですね。舞子の言うとおり聴き手の環境を考えた制作は僕らの頃からあったし、過去に執着しているとダサい先輩みたいになりそうでもあるし(笑)。
――(笑)。MAY'Sのおふたりは、幼少期から急速に物事が移り変わってきた世代の方々ですものね。そういう変化に対する柔軟性は、未成年の頃から備わっているのだろうなと思います。
片桐:言われてみると確かに。それはあると思いますね。
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