【インタビュー 後編】KAMIJO、アルバム『OSCAR』が一大巨編な理由「一緒にこの世の中を美しい世界にしませんか」

ポスト
no_ad_aritcle

■闇に生きてきたルイ17世が名乗りを上げる
■「OSCAR」はいわゆるクライマックスです

──「TEMPLE 〜真夜中に咲いた薔薇〜」はイントロのドラムフレーズだけで期待感を煽られます。

KAMIJO:そうですね。シングルヴァージョン「TEMPLE -Blood sucking for praying-」とはアレンジも変わっていて、バンドはすべてのパートを録り直したんですが、特にそのドラムフレーズも今回は新たなものにしようと思ってたんですよね。前奏もなくして、いきなりフィルから刻んでスピーディーに始まるという。それから、シングルは英語ヴァージョンだったんですけど、ライヴで歌っていた日本語ヴァージョンで歌い直して。ある意味、耽美メタルみたいな感覚になったんじゃないかなと思ってます。色気ある感じで歌えましたし、特にサビが気に入ってますね。“道を開けろ”っていう冒頭の歌詞からは、決意表明じゃないですけど、力強い信念みたいなものを感じてもらえたらなと思うんですけどね。

──それはKAMIJOさんの気持ちですか?

KAMIJO:僕も、ですね。ストーリーもありつつ。“TEMPLE”という言葉には寺院などの意味もありますけれども、テンプレートであるとか、自分の中で一番ベーシックなものという意味合いもあるんですよ。「Persona Grata」、そして「Eye of Providence」と続くストーリーの中で言えば、自然エネルギーが枯渇してゆく中、もうエミグレというエネルギー施策にしか望みはない。でも、その旗振り役だったサンジェルマン伯爵はもういない。つまり、エミグレに頼ることができない。そんな絶望に浸っている中、ルイが、自分がその道を歩むのだと決意する。その第一歩がこの「TEMPLE 〜真夜中に咲いた薔薇〜」ですね。

──サンジェルマン伯爵に代わってエミグレ制度を実現するのだ、だからこそ“道を開けろ”と。

KAMIJO:はい。サンジェルマン伯爵自身はルイを守るために存在していましたし、ルイのことをひた隠しにしたままいなくなってしまうんですが、ルイが自ら世に出ていくことになる。そして、この「TEMPLE 〜真夜中に咲いた薔薇〜」から次の「OSCAR」で、まさにすべてが語られる。「OSCAR」はものすごくストレートな歌詞になってると思うんですけどね。



──そうですね。アルバムタイトルが“OSCAR”であることは早い段階で発表されていましたが、その真意がついに明らかになった。

KAMIJO:ずっと闇に生きてきたルイ17世が、自分がルイ17世であり、このエミグレ制度にとって必要な“OSCAR”であると名乗りを上げるのが、この「OSCAR」なんです。いわゆるクライマックスですよ。ルイ17世がついに公の場に姿を現してしまう。僕がここであえてそのシーンを明かすのは、クライマックスとはいえ、実はこの作品の最も重要なのはエピローグだったりするんですよ。だから、まずここまでは確実にストーリーについて来ていただいて、この後のさらなる感動を楽しみにしてもらいたいんですよね。

──ええ。ここでルイ17世の存在も明らかになりますが、「Avec toi 〜君と共に〜」「NOBLESS OBLIGE」で幕を閉じるこのアルバムでは、結末がまだ描かれていないんですよね。

KAMIJO:そうなんですね。ただ、大事なのはルイのストーリーではありつつ、ツアーでずっとやってきた、いろんな人物のストーリーもあるんですよね。この後の「Avec toi 〜君と共に〜」「NOBLESS OBLIGE」で、ある意味、ルイを世界はどう受け止めたのか……「OSCAR」の歌詞を見てもらえれば、たぶんファンの方だったら、これはどんなことを指してるのかなとか、『Symphony Of The Vampire』(2014年)から繋がるストーリーを見出せると思うんです。

──サウンド面でいうと?

KAMIJO:ギターの刻み方もすべてデモの段階で細かく指定して、それそれをHIZAKI(Versailles)によりカッコよく弾いてもらったんですよね。

──やはりこのギターのズクズクと刻むリフは外せないところですか。

KAMIJO:そうですね。たとえば、X JAPANであったり、自分が影響を受けたアーティストがいますよね。どちらかと言えば、この曲ではHIZAKIが影響を受けたANGRAだったり。そういった刻み方は、自然に自分たちの体の中に流れているんですよね。だからこそ、自分の歌を乗せやすいですし、実際にヴォーカルメロディに合わせて細かく作っていますし、そう意識したうえで弾いてもらいましたね。

──ライヴでどんな盛り上がりが生まれるのか楽しみですね。まだステージでは演奏していないんですよね?

KAMIJO:「OSCAR」は実はつい先日、横浜の2日目(2022年10月2日=神奈川・新横浜NEW SIDE BEACH!!)で1回だけ披露しました。もうゾクッとしましたね。何しろ初めて“OSCAR”がルイ17世だと明かした瞬間でしたし。サビが4分の3拍子なのか4分の4拍子なのか、ポリリズムのようなメロディなので、そこら辺がライヴでどういうふうに聞こえるかなっていうのが楽しみだったんですけども、歌詞を書いた時点でピタッとハマっていたので、不安もなく気持ちよくできましたね。


──以降の『OSCAR』に伴うライヴでは必ず演奏されていくことになるわけですね。「Avec toi 〜君と共に〜」も7月のライヴで演奏されていましたが、曲的にはいわゆるバラードですよね。当時のMCでも、「愛は目に見えないものだ、愛する者への歌だ」という趣旨の話がありました。

KAMIJO:そうですね。ただ、このアルバムの中で聴いたときに、この男女は今どういう状況にあるのかというのが、二つ想像できると思うんですよ。その具体的な光景についてはあえて言わないでおきますが、歌詞としては純粋に愛を歌っているんです。人によっていろんな関係がありますが、どんな形でも大切なものを思う気持ちは変わらないと思うんですよね。

──KAMIJOさんとファンとの関係かもしれないし、いろんな置き換えができると思うんですが、歌詞がものすごくストレートなんです。今までここまでストレートに書いたことはあったかなと思うぐらい。

KAMIJO:ないですね(笑)。目の前の愛する人に言う台詞ですね。リアリティを追究した結果です。“ありがとう” “愛してる”……世の中にはいろんな歌詞がありますよね。でも、僕が今まで使ってこなかったのは、自信がなかったのかもしれないですし、本当に思っていないと伝わらないものだと考えているからなんですよ。何か軽い気持ちで“ありがとう”って……いや、もちろん、商業的に作詞しようと思えば書けますよ。

──そういう重みのない歌詞っていっぱいあるじゃないですか。それを耳にしてうんざりすることも多いんですよ。

KAMIJO:そうですよね(笑)。でも、本当にそう思っちゃったら、その言葉以外にないんですよね。本当にそう思ってたからこそ、書けたんじゃないかなと思います。

──だからライヴで聴いたときに驚いたんですよ。ファンの人からも反響があったんじゃないですか?

KAMIJO:「ストレートですね」みたいな? どうなんでしょうね。むしろ、自然に受け止めてくださったように思います。そういった肌感覚がありますね。確かに作詞していたときは、僕もここまでストレートでいいのかなとは思ったんですが、もう抜け出せなくなったんですよね、一度この言葉を形にしたら。それだけ、本当にこの曲はそういった言葉を求めてたんでしょうね。ギターソロもタメがすごくいい感じで、たまらないですね。

──メロディといい、心温まるようなフレーズですね。

KAMIJO:これはRENOくんじゃなきゃ弾けないようなギターソロだと思うんですよ。ラフで一回上がってきたときに、もうこのまま弾いてくれと伝えたぐらいで。この曲ではアコギでHIZAKIも参加してます。それから、ピアノの佐山こうたくんが、他の楽曲もそうなんですけれども、この「Avec toi 〜君と共に〜」は特に僕の出したい雰囲気をしっかり汲み取って弾いてくれているんですよね。本当にありがたいです。「Behind The Mask」のソロもすごく秀逸ですしね。本当に素晴らしいピアニストです。

◆インタビュー【3】へ
◆インタビュー【1】へ戻る
この記事をポスト

この記事の関連情報