【インタビュー】ヤユヨ、新シングル「POOL」で第2章へと突入したことを軽やかに提示
■熱い気持ちが自分の中でじわじわと広がっているんだけど
■ちょっとあきらめというか冷めてるような部分が交差してる感じ
──冒頭の「この曲は秋にリリースしたかったから」というリコさんの言葉や、今のぺっぺさんのお話を聞くと、「POOL」というのはいわゆる泳ぐためのプールというより、何か溜めておく、プールするといった感覚が近いのかなと思いました。
ぺっぺ:恋愛的な方向性の意味での「POOL」は思いを溜めていくというか“溜めているもの、場所”っていう意味ですが、さっき話した孤独って意味では、社会みたいな、計り知れないというか目に見えるものも見えないものもあるみたいな広いものの中での孤独。でも、そう思いたくないなってすごく思ったんですよね。
──というと?
ぺっぺ:別に社会って宇宙みたいに際限なく広がっているものじゃないし、そんな中での1人じゃなくて、それこそ海とかプールみたいな、限られた場所の中の1人であるって思いたかったっていうのがひとつありました。沈むとこまで沈んでも底はあるし、出口がなさそうに見えても抜けようと思えば抜けられるしっていう。
──そういうところまで話した上で、MVの世界観ができたりするんですか?
ぺっぺ:そうですね。監督にもどういう意味で曲を作ったとかは話して、その上でこういうのはどうですかっていう監督からの話を聞いて作っていきました。出来上がりもめちゃくちゃ良くて、すごく大好きなMVになりました。
──リコさんは今回も電話をかけているシーンがありましたね。電話、かけがちじゃないですか(笑)。
リコ:かけがちかも(笑)。これまで3回ぐらいかけてる気がします(笑)。
──(笑)。映画監督ウォン・カーウァイの世界観にも通じる、色彩や映像表現が印象的でした。
リコ:黄色とかオレンジっぽい、ちょっと独特な色合いですよね。あたたかさもあるんだけど、スモークの演出とかメンバーの表情、服装の色味には冷たさもあって、熱いけど冷ややかというか。そこがすごく、孤独の寂しさと、恋愛的な歌としての相手への熱い思いという部分にも通じている気がします。熱い気持ちが自分の中でじわじわと広がっているんだけど、ちょっとあきらめというかスッと冷めてるような部分が交差してる感じを、音楽でも映像でも表現できたんじゃないかなと思いました。映像としておしゃれだから好きっていうのもあるんですけど、それ以上に曲の意味ともちゃんとマッチしていてお気に入りの作品になりました。
ぺっぺ:私は、もともとウォン・カーウァイ監督の日常の切り取り方がめちゃくちゃ大好きで。ただのあの四角の中に、端から端まで日常が詰め込まれている。1シーンの中の細部にまで日常というものが詰め込まれていて、人の距離感とかもそうだけど、意図してこういう距離感で撮っているんだろなっていう、そういう日常へのクローズアップの仕方が、自分達の目指している音楽性ともちょっとだけ似たものがあるんじゃないかなって常々思っていたんです。畏れ多いことですけど(笑)。それで今回はああいう風に撮ってほしいって監督に直接お願いしたのもあるし、それを見事にヤユヨらしさでアウトプットしてくれたので、もう何もいうことはないくらい好きな作品になりました。
──ウォン・カーウァイ監督の色彩や映像のセンスは日本のカルチャーにも大きな影響を与えましたが、みなさんのような新しい世代にもこうして刺激を与えているんですね。ゆくゆくは、ウォン・カーウァイ監督ご自身にオファーとかどうですか。
ぺっぺ:そんなことできるんかな(笑)。光栄ですけどね、もしそうなったら。
──今の時代、それこそSNSを通じて何がどう転んでいくかわからないですからね。
リコ:確かに(笑)。そのためにもぜひいろいろな方に見てほしいし、曲を聴いてほしいなって思います。
──では最後に、11月24日からスタートするツアー<ヤユヨの徒然させない対バンツアー>について聞かせてください。“徒然させない”って面白い表現ですね。
ぺっぺ:“つれづれなるままに、日暮らし”という「徒然草」の一文がありますが、そこから考えて、みんなに提案しました。徒然なるままだと退屈って意味になっちゃうので、正式な日本語ではないんですが、現代風に言葉で遊んでみようと思い“徒然させない”っていうワードにしたんです。
──すごくインパクトがありますね。
ぺっぺ:ヤユヨにとって対バンツアーって初めての試みなんですけど、これまでヤユヨが好きでライブを見に来てくれてた人にとっては「ワンマンじゃないのか」って思う人もいると思うんですね。それに、もちろん対バンするアーティストを知っている人もいると思うけど、もしかしたらそのお客さんが知らないアーティストかもしれない。どちらにせよ自分達の初めての試みを一緒に迎えてもらえたら嬉しいし、楽しんでほしいな、良いツアーにしたいなっていろいろ思いを巡らせていたときに、みんなを「退屈させない」みたいな意味がニュアンスとして伝わるタイトルにしたいと思ったんです。もともと徒然草の冒頭が好きやったし、ヤユヨっていうバンドっぽいタイトルにもなるなと思って、現代語っぽく表現してみました。
──対バンするアーティストは、かなり個性豊かな顔ぶれになっていますね。それぞれご紹介していただきたいのですが、まず東京公演はanoさんです。
リコ:アイドル時代からパフォーマンスがかっこいいって思っていたんですが、ソロプロジェクトになってからも、anoさんが考えるワードとかやっぱり好きだなって。ライブになったらどういうanoさんが見られるのかな、ヤユヨとの化学反応がどんな感じになるんだろうって、今からすごく楽しみにしています。
──名古屋は、ビートルズやUKロックの影響を感じさせるThe songbards。
リコ:何度かイベントでご一緒したことがあるんですが、ちゃんと対バンするのは初めて。私は結構声フェチなんですが、ボーカルの松原(有志)さんはまるでお薬のように体に染み渡るお声をされていて(笑)。バンドとして本当にかっこいいし、普通に1ファンとしても楽しみなんです。演奏面はもちろん、ハーモニーもすごく素敵なので、ヤユヨのファンの皆さんにもぜひThe songbardsのライブを見てほしいなって思っています。名古屋公演、楽しみにしていてほしいです。
──ヤユヨの地元である大阪は浪漫革命。こちらは京都のバンドですね。
リコ:すごく京都っぽい、京都のバンド。見るたびに音がデカくなっています(笑)。結構ライブは見ているんですが、前々から一緒にやってみたいなと思っていたので今回お誘いさせてもらいました。ボーカルの藤澤(信次郎)さんは特に仲間とか友達っていう感覚を大切にされていて、メンバーやファンの方に対する思いも結構熱いから、そこから溢れるグルーヴ感だったり一体感が音になって、心に突き刺さってくる感じがすごく好きなんですよね。
──どの公演も、退屈とは程遠い内容になりそうですね。
リコ:そうなんですよ。今回は三者三様の魅力を持った、かっこよくて大好きな方達ばかり。自分達が本当にいいなと思う3組をお誘いさせてもらったし、それが実現できるのがすごく嬉しいなって。初めての対バンツアーということで、ヤユヨとの混ざり具合いを楽しんでいただきたいと思っています。
──ツアーはもちろん、今後の活動も楽しみにしています。
ぺっぺ:ありがとうございます。『日日爛漫』というフルアルバムを経て、今回ちょっと新しいヤユヨを見せられるような楽曲が発表できたなと思っています。まだまだ新しい自分達を見せるため、そしてお客さんたちを楽しませるようなものを常に考えながらジリジリと準備しているんですけど、今回の「POOL」という曲でも、その布石はひとつ打てたんじゃないかなって思っていて。対バンツアーも含め、来年に向けての自分達の音楽の向き合い方とか、そういうものをこれからも一緒に見届けてくれたらなって思っています。
取材・文:山田邦子
ライブ・イベント情報
ゲスト:ano
11月25日(金)名古屋 池下CLUB UPSET
ゲスト:The Songbards
12月8日(木)大阪 心斎橋Music Club JANUS
ゲスト:浪漫革命
<エアトリ presents 『毎日がクリスマス 2022』>12月20日(火) 横浜赤レンガ倉庫1号館 3Fホール出演:コレサワ/ヤユヨ
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