【インタビュー】ヤユヨ、新シングル「POOL」で第2章へと突入したことを軽やかに提示
今年は3月に大学を卒業し、等身大の日常を落とし込んだアルバム『日日爛漫』を持って全国ツアーを成功させたヤユヨ。作品としても、パフォーマンスの面でも確固たる手応えを感じることができたという彼女たちは、10月にデジタルシングル「POOL」を発表し、ヤユヨが第2章へと突入したことを軽やかに提示した。今回はメンバーを代表し、リコ(Vo、G)、ぺっぺ(G、Cho)に曲作りに対する思いや完成までの経緯、そして初となる対バンツアーへの意気込みなどを聞いた。
写真(左から:はな/Ba,Cho、リコ/Vo,Gt、ぺっぺ/Gt,Cho、すーちゃん/Dr,Cho)
■自分達のワクワクな気持ちのまま届けることができたから
■自分達の高揚感と一緒の気持ちで聴いてもらえて嬉しいな
──デジタルシングル「POOL」が配信になりました。YouTubeの生配信ライブ<“FALL” in LIVE!!>での発表、MVのプレミア公開など、リリースに向け段階を踏んでいく感じはとてもワクワクしましたが、当事者としては意外とバタバタしていたりするのでしょうか。
リコ:バタバタと言えばバタバタでした(笑)。この曲を、秋にリリースしたかったから。でも良い曲だし、新しい挑戦もした楽曲だし、みんなに早く聴かせたいというワクワクの方が大きかったかもしれないですね。(結果的には)こうして無事に世に放つことができた安心感もありました。
ぺっぺ:レコーディングをしてからみんなに聴いてもらう形になるまでが、ヤユヨの今までの楽曲の中でも最速だったんですよ。大体(リリースされるのは)半年後とかになるパターンが多いけど、今回はこの楽曲ができた時の臨場感というか、出来立てほやほや、自分達のワクワクな気持ちのままみんなに届けることができたから、バタバタだったけど、自分達の高揚感と一緒の気持ちで聴いてもらえて嬉しいなと思っています。
──どうして今回は最速で届けることになったんですか?
リコ:いつもは楽曲を録って、時間をかけて計画的にやっていくみたいな感じですけど、今回は、録った時にもう「速攻出したい!」みたいな気持ちがみんなの中にあったんです。この作品のひとつ前が、3月に出した『日日爛漫』というフルアルバムで。卒業という自分達の大きなポイントに沿った作品だったので、その次に出すものとして考えた時に、新しい自分達をちゃんと見せられたなって思えたし、詰め込めたなと思ったんで、その直感のまま出したいって思ったというか。「出すしかないよね」みたいな感じで話が進んでいったんです。
──デジタルシングルや配信って、作り手の気持ち的な部分とあまり時差なく繋がれるってことなんですね。
ぺっぺ:そうですね。CDもいいんですけど、デジタルだからこそのスピード感とかが効いてくるかなと思うので。
リコ:今の時代ってサブスクを利用している方も多いから、(作った時の)気持ちのままをすぐに伝えられるのは嬉しいですし、新曲を聴いてもらった上でツアーが回れるって思うと、それもまた楽しみだなって思うんですよね。
──では今回の新曲「POOL」について聞かせてください。作詞・作曲はぺっぺさんですね。
ぺっぺ:曲を作るときはいつも詞先なんですが、今回はまずコードとメロディーを作ってから歌詞を入れていきました。今回は新しい自分達を見せていきたいっていうのが軸としてあったんですが、今までのやり方以外のことにもどんどんチャレンジしていきたいなって自然と思えたので、その第一歩として作り方をガラッと変えてみたんです。自分の中でこの曲はギターロックじゃなくてシンセやピアノをメインにしようというアレンジイメージもあったから、打ち込みでデモを作ってメンバーに送りました。
──これまでは、曲ができたらそれぞれがアレンジを考えて持ち寄って完成させるというスタイルだったけど、今回はぺっぺさんの設計図みたいなものをもとに完成させたような感じなんですね。
ぺっぺ:そうですね。今回は、自分からみんなにプレゼンしたみたいな形でした。そこからみんなで「こうしよう、ああしよう」というのを軽く進めて土台ができ、シンセなどは全部自分で入れていきました。
──リコさん、この曲の第一印象は?
リコ:最初に聴いた時は、新しい!って思いました。第2章のヤユヨをやっていこう、新しいことに挑戦していこうねっていう話はもともとしていたので、それをぺっぺなりに考えて持ってきてくれたっていうのがしっかり伝わってきました。でもその新しさって、今までのヤユヨが完全に消えたというわけじゃないんです。ぺっぺが作る、独特でちょっとダークな歌の要素もちゃんと入ってるから、今まで応援してくれた人にもちゃんと伝わるって思いました。今回はラップのパートもあるんですが、そこは自分にとってもかなり新しい挑戦になりました。あまりそういう感じで歌ったことがなかったからちょっと不安もあったし、最初は全然上手く歌えなかったんですけど、そこも含めて楽しかったというか。自分も挑戦してるって感じることができたし、とにかくこの曲を良いものにしたいって思いながら歌いました。
──今「ぺっぺが作る、独特でちょっとダークな歌の要素」という表現がありましたが、個人的には、ぺっぺさんが書かれた「雨」に出てくる主人公の距離感みたいなところにも、この曲と共通するムードがあるなと感じました。
ぺっぺ:ちょっと抽象的ですけど、今回は自分の中でひとつ「孤独」というテーマがあって。それをもとに広げていったのが今回の「POOL」なんですが、そう思うと確かに、「雨」もちょっとニュアンスの違う孤独について書いてるなって思いますね。
──ヤユヨ第2章の幕開けとなる曲のテーマが「孤独」。ある意味真逆のようなムードを感じてしまうのですが、ここにはどんな思いがあったのでしょうか。
ぺっぺ:『日日爛漫』というアルバムを出したのは、自分の中で、イコール卒業という意識が結構強くて。私たちはアーティストとして活動しているけど、世間的には社会人1年目なんですよね。自分の周りもみんな社会に出て企業に勤めたり、夢に向かってバイトしてる子もいたりする。色々な形はあれど、みんな社会の一員になっている。そういう周りの環境がある中で、自分は音楽をするって決めて、社会人1年目って言葉ではないかもしれないけどその状況になっているって思った時に、なんというか、すごい他者と比べてしまう時間があったっていうのが率直なところで。
──他者と比べてしまう。
ぺっぺ:自分達は今音楽をしていて、それこそバンドとして自分達の魅力ってなんだろうとか、自分達が推していくものって何がいいのかとか自分のことを考えるんだけど、そこで、他と比べてどうとか、他の人はこういうことをしていて自分達はこういうことをしているとか、他者のことも考えてしまうみたいな。その時にちょっと、孤独感を感じたんです。"社会の中の1人"なんやなって、すごく思ってしまったというか。
──「孤独」というとどうしても“寂しさ”が強調されるけど、“個”であるという意味もあると。
ぺっぺ:はい。魅力とか個性って、自分で考えたり意図してすることもできるかもしれないけど、結局決めるのって自分以外の人だとなんとなく思ったんです。自分がどれだけ「ここが魅力、これが自分の個性」とか言っても、そう思うかどうかの基準ってたぶん他者だなって。自分が「ここは嫌やな」って思っていても、他者から見れば「そこがいい」って思う人もいる。そう考えたら基本的には、基準って自分だけじゃなく他者にもあるなって。
──なるほど。
ぺっぺ:じゃあ魅力がどうとか個性がどうとか、どうしなきゃ、こうしなきゃって囚われるんじゃなくて、自分のしたいことだけをした方がいいんじゃないかって思ったんです。それで、今自分がしたいことって何だろうって思った時に、私は新しい音楽性を見つけたいなと。何かに囚われることなく、自由に音楽を作ってみようと思ったのがきっかけだったんです。そこから、恋愛的な孤独というものと掛け合わせながら歌詞として表現していきました。
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