【インタビュー】Deep Sea Diving Club、「Left Alone feat. 土岐麻子」で掴んだ“シティポップ”を名乗る自信
■人生としても大きな経験になりました
── 新曲の「Left Alone feat. 土岐麻子」も、夏のイメージが入っていますね。
谷:はい。DTMで作ったデモを持ち寄って、テーマを決めてコンペを毎回行うようになっているんですけど、夏がテーマのコンペが行われた際に優勝したのが鳥飼さんが作った「フーリッシュサマー」だったんです。大井が作った「Left Alone」の原曲もその時にあって、「コラボで形にしていくのがいいんじゃない?」ってなったんですよね。メンバーが名前を挙げさせていただいたのが土岐さんだったんですけど、まさか実現するとは思っていなかったです。大井と鳥飼はCymbalsのコピーバンドをしていたことがあったみたいで、めちゃくちゃ興奮していました。昨日、土岐さんとインスタライブをさせていただいたんですけど、みんなはしゃいでいましたね。
── 土岐さんのあの素晴らしい歌声が自分たちのバンドの曲に加わるって、最高じゃないですか。
谷:本当に嬉しかったです。自分が書いた歌詞にひっかけて2番のサビとかを書いていただいたのを見ると、「何が起こってるんだろう?」という感覚になります(笑)。「シティポップとはなんぞや?」という定義づけは難しくて、自分もそれがなんなのかずっとわからなかったんです。最近になって掴みかけていたところで土岐さんとご一緒できたので、「シティポップって自信を持って名乗っていいのかもな」と思うことができました。
── 土岐さんとは、どのようなことを話し合いながら作っていきました?
谷:歌詞の叩き台となるものは自分が作って、メロディを入れてお渡ししたんですけど、デモが海っぽくって青のイメージがあったんです。だから海を絡めたものにしたいというのがありました。それに対して土岐さんから1つだけ来た質問が「1番だけでもAメロとサビの視点が違っていて、一人称の使い方が異なっていますよね? 男性と女性で分かれるんですけど、どうしてですか?」という内容で。それに対してお返事をしたら、すぐに2番の歌詞が戻ってきました。この歌詞は少し難解にしたいところがあったんですけど、土岐さんが意味を完璧に汲み取ってくださっています。伏線を見事に回収してくださっている歌詞になりました。
── 男女それぞれに喪失感を抱えたまま時が過ぎて行く様が伝わってくる曲です。
谷:男性は「女性が離れていった」と思っているし、女性は「男性が離れていった」と思っている歌詞なんですよね。
── 男女それぞれの胸の内にある取り残された感覚が、「tide pool」というモチーフで表現されていますよね?
谷:はい。波が引いた後に浜辺に残される水たまりが「tide pool」なんです。「tide pool」は自力で動くことはできなくて、波を待つことしかできないんですよね。
── だから《波は来ない》と歌っているんですね?
谷:そうです。「tide poolって、取り残された人に似ているなあ」って思って。もともと生き物が好きで、最近も生き物系ユーチューバーの動画をよく観るんですけど、そこで出会った言葉でした。黒潮に乗って南国からやってきた魚は、日本では寒過ぎて死んじゃうんです。それは「死滅回遊魚」と呼ばれていて、「tide pool」に取り残されることがよくあるんです。そういうのがYouTubeで紹介されていて、「いつか使いたいなあ」って思っていました。
── 土岐さんとのやり取りの中で、特に印象的だったことはありました?
谷:レコーディングではお会いしていなくて、MV撮影の時に初めてお会いしたんです。ウチのメンバーは全員緊張して全然話せなくて(笑)。でも、最初の休憩の時に、「なんで一緒にやってくださったんですか?」と、自分が思い切ってお訊きしました。
── 何とおっしゃっていました?
谷:沖縄にいらっしゃった時にデモの曲が届いて、聴いてくださったそうです。「沖縄にぴったりで、いいなあ。懐かしさもあるけど新しさもある」と思ったとおっしゃっていましたね。土岐さんはあまりメロディを書かれないらしいんですけど、メロディを書いたのはこの曲が久々だったらしく、「バンドの一員になったみたいだった」とおっしゃっていたのもめちゃくちゃ嬉しかったです。
── 今回のコラボレーションも、いろいろ吸収できました?
谷:はい。音楽に関してはもちろん、人生としても大きな経験になりました。土岐さんの2番のAメロのメロディの入れ方とか、大好きです。
── アレンジには縄田寿志さんが参加していますが、どのようなことを話しました?
谷:この曲は打ち込みが多いんですけど、バンド感も入れたハイブリッドなものにするというのが縄田さんのイメージだったんです。だからハイハットとかは生音で録っているんですよ。ベースも打ち込んでいるんですけど、スラップは生音です。
── 既に配信されていますが、どのような反応を感じていますか?
谷:土岐さんのファンのみなさんからの反応もたくさんいただけて、それがとても嬉しいです。ウチはもともと聴いてくださる方々の年齢層の幅が広いんですけど、さらに広がっていったら楽しいなあと思っています。
── Deep Sea Diving Clubは今後、活動の場をさらに広げていくと思いますが、新曲の制作も着々と進めていますか?
谷:はい。デモのコンペをちょくちょくやっていて、コンペがなくてもみんなそれぞれにいろいろ作っています。一緒に作ることもあるので、そういうのも今後盛んになっていくのかもしれないですね。あと、対バンイベントが12月に福岡と東京であるんですよ。今までワンマンでのツアーを2回してきたんですけど、対バンが出るパーティーも大好きなんですよね。こういう初めての企画で2022年を締め括ろうと思っています。
取材・文:田中 大
撮影:TOYO
◆ ◆ ◆
<SEA SIDE PARTY vol.1>
■12/1(木)
会場:福岡graf
Guest:UEBO、えんぷてい
OPEN 18:30 START 19:00
前売り3500円 当日4000円
■12/7(水)
会場:新代田FEVER
Guest:macico、THREE1989
OPEN 18:30 START 19:00
前売り3500円 当日4000円
チケット
HP先行 エントリー期間:9/28(水)0:00~10/12(水)23:59
https://l-tike.com/st1/dsdc-ssp1
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