【インタビュー】Deep Sea Diving Club、メジャーデビュー作に“ポップス”の意識と人間としての成長

“TENJIN NEO CITY POP”というテーマを掲げて、福岡を拠点としながら活動を重ねているDeep Sea Diving Club。EP『Mix Wave』は、多彩な作風が発揮されているメジャーデビュー作だ。昨年配信リリースした「フーリッシュサマー」「Left Alone feat. 土岐麻子」「Miragesong」の他、新曲の数々の魅力もとても大きい。“ポップス”であることを軸としつつ、大胆なサウンドアレンジ、ダイナミックな演奏、自由な発想も盛り込んだ各曲は、底知れない実力を存分に示してくれる。今作について谷 颯太（Vo.）が語ってくれた。

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■未来の人が聴いて、アウトロで大爆笑になったら理想的（笑）

── どのような1枚にしたいと思っていました？

谷 颯太：昨年リリースした3曲はポップスを意識して作っていたので、今回もポップにというか。メンバーそれぞれで「リード曲を作ろう」ということになってコンペをしたんです。それが1枚になったので、細かいコンセプトみたいなものはなかったですね。

── 4人それぞれの思う「メジャー感」みたいなのが表れた作品ということでしょうか？

谷：そうですね。特に鳥飼さん（鳥飼 悟志／Ba＆Cho）と大井（大井 隆寛／Gt＆Cho）が書いた曲は、メジャーのリードを目指して作っていったので。出原（出原 昌平／Dr＆Cho）の曲に関しては、もともとあった曲をリアレンジしていったんですけど。


── 鳥飼さんが作詞作曲から編曲までを手掛けた「bubbles」は、メジャー感がまさにあるサウンドだと思います。

谷：「フーリッシュサマー」の時に岩田雅之さんにアレンジで参加していただいたんですけど、鳥飼さんは「勉強になった」ってずっと言っていたんです。それがすごく活きていると思います。『Deep Sea Diving Club』というアニメがあるとすれば、そのオープニングテーマみたいな感じというか。どんなアニメになるんだろう？　犯人役で出原が出てきそう（笑）。リード曲のコンペで「ゴースト」と「bubbles」が決勝に残って、自分は最初、「bubbles」を推していたんです。「これでデビューするんだ！」っていう鳥飼さんの気概も感じたので。

── 《帰りの酸素も用意してないような恋だった》とか、恋をダイビングで喩えて表現している歌詞も印象的です。

谷：彼は語彙力がすごくあるタイプで、そこが存分に出ていますね。普段からロマンチックなことを言うんですよ。家に行くと女流作家さんの小説が机に置いてあったりして。初めて家に行った時は、太宰治の『斜陽』が置いてあったのを覚えています。彼は作詞にすごく時間をかけるタイプで、「bubbles」の時もギリギリまで考えていました。ベースを弾く方が簡単そうにしているように感じます。

── この曲の歌は、ファルセットがすごく活かされていますね。

谷：俺以外の3人が作ってくる曲は、高いんですよ（笑）。最初は「ファルセットを入れ過ぎで、美味しくないんじゃない？」みたいな話をしていたんですけど、歌ってみるとそれぞれの曲に合ったものになっているんです。俺はもともと自分のファルセットは、キンキンしていてうるさいと思っていて。でも、そこを良さとして3人が捉えてくれているのを感じています。

▲谷 颯太（Vo.）

── アウトロのギターがはじけていますね。

谷：デモの段階ではキーボードソロだったんですけど、大井のギターになりました。鳥飼さんは大井のギターソロが大好きなので、「やれ！　やれ！　行け！　行け！」ってよく言っています。

── 他の曲に関しても言える点ですが、各楽器が思いっきりはじけたプレイをすることがよくありますよね？

谷：はい。あくまで歌がメインなんだけど、後ろも思いっきりやっている感じというか。それはメンバーの日頃の関係性が自然に出ているんでしょうね。

── 昔の歌謡曲とかも、楽器がものすごいプレイをしているのがよくありましたけど、あの雰囲気を思い出します。

谷：昔の曲を聴くと、「これ、やってんなあ！」っていうの、ありますよね。この曲とかも未来の人が聴いて、アウトロで大爆笑みたいになったら理想的です（笑）。

── （笑）。今のシティポップに対する評価は、参加した楽器プレイヤーのはじけた演奏に着目している部分もありますよね？

谷：そうですよね。「やり過ぎでしょ⁉」っていう曲は面白いので、そういうことはやっていきたいです。1stアルバムまでは地元の福岡で録っていたんですけど、その場の思いつきをどんどん入れていたんです。今回は積み重ねてきた経験と、昔やっていたような好き放題の両方を、やっと技術を伴った形で出せるようになったのかもしれないです。

── 昨年の7月に配信リリースした「フーリッシュサマー」も、気持ちいい音が鳴っていますね。ラテンテイストの要素が絶妙に活かされているのを感じます。


谷：鳥飼さんはRIP SLYMEがすごく好きで、サンバやボサノバ、シェイカー、アコーディオンとか、トロピカルな音が夏のイメージらしいんです。それがフルに発揮されていますね。アレンジャーの岩田さんとお話しながら、そういう要素をたくさん入れていただきました。アウトロのコーラスも岩田さんにアレンジしていただいたんですけど、そういうのがものすごく勉強になりました。

▲鳥飼 悟志／Ba＆Cho

── 去年の9月に配信リリースした「Left Alone feat. 土岐麻子」もこのEPに収録されていますが、土岐さんが沖縄にいる時にコラボのお願いをしたんでしたっけ？

谷：そうです。沖縄を車で走っている時に「フーリッシュサマー」が届いて、「コラボ、どうですか？」ということだったみたいです。「フーリッシュサマー」が沖縄に合っていたみたいで、それでオファーをご快諾いただけたらしく、「沖縄、ありがとう！」みたいな話をよくしているんですけど（笑）。

── （笑）。この曲がきっかけでDeep Sea Diving Clubのことを知ってくださった人も多いんじゃないですか？

谷：そうですね。土岐さんのおかげで、いろんな方々にリーチすることができました。コラボはまた機会があったらやりたいですね。コラボは今までに4作やってきたんですけど、自分たちだけでは出てこないものを引き出していただけるので楽しいです。


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