【インタビュー】COUNTRY YARD、葛藤が導いた驚きと豊潤の5thアルバム「壮大だけどきゅっとしている」

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■聴いた人にはもっとドキドキしてほしい
■そういうことを考えてイントロを加えた

──その「One By One」もCOUNTRY YARDらしいところもある一方で、おもしろい曲だと思いますよ。

Sit:そうですね。

──ラーズの「There She Goes」を連想させるネオアコっぽいイントロから2ビートのメロディックパンクになる展開に意表を突かれました。どの曲にもそういうアイデアの閃きが感じられますが、「One By One」に、あのイントロを加えたのは、どのタイミングだったんですか?

Miyamoto:「One By One」はSitが原曲を持ってきたとき、言葉にはできないんですけど、全員が何かを掴んで、何も考えずにもう、「こうだよね。こうだよね」って曲が出来上がっていったんですよ。それも含め、Sitはさっき「One By One」がCOUNTRY YARDっぽいって言ったと思うんですけど、だから特に苦戦はしなかったんですよ。

Sit:イントロだけだよね。

Miyamoto:そうだね。従来の自分達らしい曲に仕上げたんですけど、でも、従来の自分達らしさだけじゃダメだと思ったんです。他の曲が出揃った段階で「One By One」を作ったので、全体のバランスを見たとき、“この曲を普通に投げるだけじゃおもしろくない。聴いた人にはもっとドキドキしてほしい”──そういうことを考えて、あのイントロを加えたんです。何を聴いてとか、何っぽいとか、そういうことは関係なく、聴いた人にドキドキしてほしいと言うか、“えっ、この後、何が来るんだろう!?”と思わせたところにSit節と言えるメロディがドーンと来たらドキドキしてくれるんじゃないかなって考えているうちに、あのイントロを思いついたんですよ。


▲Yu-ki Miyamoto (G, Cho)

──Miyamotoさんがおっしゃった「普通に投げるだけじゃおもしろくない」という意味では、「Mountain Path」のイントロのヘヴィなリフからの、あのメロディという流れも意外性があってひきこまれました。

Sit:あのフレーズはアコギで弾いてもヘヴィなんですよ。ミヤモに「フィーダーみたいな感じで」って伝えたら、「フィーダーは聴いたことない」って(笑)。

Miyamoto:その後、聴いてもいないけどね(笑)。

Sit:ははは。フィーダーは、あの感じのファズのリフをもっと圧縮するんですよ。でも、俺達はそのままぶっちぎったんです。『COUNTRY YARD』(2017年発表)ってセルフタイトルのアルバムで一音下げチューニングをやったこともあるんですよ。でも、一音下げで出したかったヘヴィさって意外に出なかった。でも、チューニングではなくて、フレーズを工夫したら、自分が出したかったヘヴィさが出たんです。「Mountain Path」は、ずっと作りたいと思っていた曲が比較的すっとできたって感じです。

──あのリフと歌メロは同時にできたんですか?

Sit:そうです。Cメロ以外は、イントロからずっとあのリフのループなんですよ。だから曲の構成的には、すげえ普通のロックバラードだけど、それをただ聴かせる曲だけにするんじゃなくて、ロックとして届けたかったんです。

──フィーダーの名前が出てきたとき、Miyamotoさんは「聴いてもいない」と言ってましたけど、そういうレファレンスはメンバー同士、共有しなくていいんですか?

Sit:共有するパターンもあるし、共有しないパターンもあるし、いろいろですね。『The Roots Evolved』の「Son Of The Sun」っていうゆっくりしたアコースティックな曲を作った時は、Shunちゃんにいろいろな音を送りました。それこそビートルズの「You’ve Got To Hide Your Love Away」を送って、「普通にこういう曲を堂々とやりたいんだ」みたいなね。そういう共有はタイミング、タイミングではしていると思うんですけどね。答えをばっと言って、こういうことをやってほしいと言うよりは、目指しているのはこんな感じなんだよっていうニュアンスで、メンバーには伝えていますね。

──なるほど。もちろん、ビートルズやフィーダーのような曲をやりたいわけではないですからね。

Sit:キャッチが早いんですよ。ミヤモは特に。フィーダーと言われて、フィーダーの曲をチェックはしないだろうけど、頭の中に彼なりのフィーダー像はできていると思うんです。話が早い人って、大体そう。そういうキャッチ&リリースは、バンドに持っていったら早い。だから、そんなに言わなくても、それぞれがそれぞれに、それぞれのタイミングで消化しているってことが、今回、アルバムを作るプロセスの中でわかりました。


▲Hayato Mochizuki (G, Cho)

──今回、さらに曲のバリエーションが広がった印象がありますが。

Sit:そうですね。『MODERN SOUNDS』(2010年発表)を出した頃、とあるライブハウスのブッキング担当の方から、「もっといろいろな曲が欲しい」と言われて、たぶん、そこでいろいろな曲が作りたいってスイッチが入ったと思うんですよ。ただ、もう5枚目のアルバムですからね。意識的に、よし、こういう曲を作ろうって頭の中に並べて作ると言うよりは、自然といろいろな曲が滲み出るようにはなっていますね。もはやナチュラルなものだと思います。狙っているわけじゃない。

──曲のバリエーションが広がれば、楽器のアプローチも広がると思うのですが、今回、ギターアンサブルの可能性が前作以上に広がった印象がありました。

Miyamoto:もう長年、Sitがアコースティックギターの弾き語りで原曲を持ってきて、という作り方をしているんですけど、おもしろいコード進行を持ってくるんですよ。それを普通にエレキギターで鳴らすと、そのおもしろさが生かせない。それで、それをどうやって解釈しようかって考えたとき、1本のアコースティックギターを、Hayatoと俺で分ける。2本で1本みたいな感じにするんですけど、わかりやすく言うと、上3弦はHayatoが弾いて、下3弦は自分が弾いてというくらいの感覚で分裂させて、そのコード感を聴かせるみたいな音作りをしているんです。もちろん、エフェクターもいろいろ前作から使うようになりましたけど。あと、弾かない時は弾かない。特に自分はリードギターという立場だから、ずっと何か弾いてないといけないってルールはないし、本当に一瞬だけ弾いて、空気感を足すみたいなことが自分の役割かなと思ってからは、基本的に引き算の考え方で、COUNTRY YARDの音像における自分のギターはイメージしています。その結果、歌が際立ったり、ギターフレーズがより聴こえたりして、マイナスがプラスを生んでいると言うか、だから極端なことを言えば、プレイ的には何も変わってないんですよ。強いて言うなら、今回はアコギを多めに入れたことぐらいかな。

──そうですね。

Miyamoto:フレーズ的には減らしていった気がします。印象づけという意味で、さっきの「Mountain Path」のイントロでヘヴィさが伝わっていれば、ギタリストしてはしてやったりと言うか、あとは重要なフレーズはそんなにないと言うか。だから、誰がどういうフレーズを弾いているとか、ソロはどうだとかっていうのは二の次なんです。ストレートを打たずにフックでどれだけ聴こえ方を違うものにできるかみたいなことが自分の中にはあるんですけど、そういう発想って自分達がいたメロディックパンクのシーンにはそんなに見つからなかったことなので。そういう意味では、Sitに薦められたビートルズの『Revolver』を聴いて、“あー、ギターっておもしろいな”って改めて思いました。そういう影響はありましたね。

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