【速レポ】<中津川ソーラー>DAY2、両極端な2日間を彩ったドラマティック・セッション
初日に続き2日目RESPECT STAGEのトリを務めるのは、小西遼(CRCK/LCKS)が主宰する象眠舎によるスペシャルなセッション「象眠舎 presents Solar Special Session Day2」。今日も4名のアーティストをゲストに迎えた、豪華なステージだ。
◆Solar Special Session Day2 画像
最初に迎え入れられたのは、シンガー福原みほ。カラフルでアフリカンなドレス姿が夜のステージにも映える。1曲目は2021年にリリースした「Sun on my wings」。小西が指揮をし、ホーン、ストリングス、鍵盤、ドラム、ギター、ベースによる大所帯のバンドが奏でるサウンドに、ソウルフルなボーカルを響かせる。間奏パートではバンドのグルーヴに心地好さそうに体を揺らす。曲の終わりに、小西に紹介を受けた福原は、「早く飲みたい! そっち(客席)に行きたい」と笑顔を見せる。贅沢なサウンドを背負って歌うのも格別にちがいないが、いち観客としてこの空間を楽しみたい、そんな気持ちだろう。
そして続くは、アース・ウインド&ファイアーのカバーで「Reasons」。スロウでムーディな演奏に、ビューティフルな歌声を響かせ、また豊かな声量でたっぷりと聴かせる歌に観客はうっとりと聴き入って、体を揺らす。マジカルな時間だ。MCでは小西とともに、昨夜は雨で大変だったけれど、今日は晴れて最高だったことや、また一緒にやりたいことなどを話し早くも最後の曲に。ラストは、福原みほが2008年のメジャーデビューイヤーに発表した「優しい赤」。当時の10代の気持ちをリアルに綴ったこの曲を、象眠舎アレンジで、大人のタフさと優しさとを湛えた歌で表現する。時を超えて、曲に新しい物語が加わった、そんな瞬間に立ち会ったようなシーンだった。
続いては「鬼」のポップなイントロに乗って、元気に登場した吉澤嘉代子。歌い出すや、まちがえた!と慌てて引っ込んで、再び元気に登場となったが、キャッチーでキュートな曲と本人のキャラクターもあいまって、観客はそのハプニングをも楽しみ、大きな拍手で迎え入れた。続けて、「月曜日戦争」へ。ストリングやホーンが加わったオーケストラアレンジで、元々のファンタジックな濃度が急上昇した「月曜日戦争」。その歌声もより物語的となって、ふんわりとしたドレスを揺らしながら歌う姿に会場のムードが華やぐ。
改めて、吉澤嘉代子を紹介した小西は、「楽しいですね、何回もやりたいですね」と語りかけると、吉澤は「もう、一回やり直しちゃいましたけど」と笑顔をみせる。そして次で早くも吉澤嘉代子はラスト。最後は2017年のシングルで、あなたへの想いの温度やその質感をリアルに描いたこれぞ吉澤嘉代子という「残ってる」へ。ピアノとボーカルによるリリカルなはじまりから、ストリングスが叙情的に歌に重なるアレンジが、歌のエモーションと物語を豊かに彩る。アウトロがボリュームを上げる中、吉澤嘉代子が深々とお辞儀をしてステージを後にすると、観客は甘美な歌の世界観に取り残された。
余韻さめやらぬまま続いて登場したのは、今年春に4年ぶりとなるフルアルバム『たまらない予感』をリリースした奇妙礼太郎。そのアルバムからのタイトル曲「たまらない予感」でステージを幕開けた。オリジナルのレゲエ的なエッセンスや洒脱なグルーヴをリスペクトした象眠舎によるアレンジが心地よく、またボーカルもエモーショナルで躍動的に会場を跳ねる。涼しい夜の空気をダンサブルに染めて、会場が心地よく揺れている。ここに続いた「エロい関係」もまた都会的なグルーヴが冴え、小西のサックスプレイに観客も奇妙礼太郎も湧く。さらにエンジンがかかったところもあるのだろう、歌のパワーがどんどん増していて、観客からも熱いエネルギーが放たれていく。「楽しい、やばい!」と奇妙礼太郎も、湧きボルテージを抑えきれないようだ。
小西は今回、アーティストのコラボが決まったときにそれぞれのアーティストにやってほしい曲をお願いしているそうで、奇妙礼太郎にこの曲をとリクエストしたのが「君がだれかの彼女になりくさっても」だったという。ギター一本と歌による、震える心をそのまま投げ出したようなこの“歌”を大事にしながら、繊細な泣きのストリングスを中心に美しくクラシカルなサウンドへと仕立て上げた。深みある演奏と歌によるハーモニーが絶品で、いつまでも浸っていたい思いが募る。
象眠舎として11月と12月に大阪、東京で単独公演が決まったことや、メンバー紹介、そしてこの大所帯のバンドを支えてくれたTHE SOLAR BUDOKANのスタッフに感謝を述べた小西は、この日最後のゲスト、一青窈を呼び込んだ。大きな拍手で迎えられると早速、1曲目「ハナミズキ」へ。ピンクの衣装が鮮やかで、ステージにしゃがんだり、大きく手を広げて歌ったりと情感たっぷりに歌のボリュームを上げていく一青窈。エモーショナルなギターソロに、観客はもちろんバンドメンバーもボルテージが上がって、会場がさらに一体となったところで続くは「もらい泣き」。誰もが知る代表曲2曲だが、アレンジで新しいイメージとなっているのが新鮮だ。ホーンとファットなベースでファンキーな装いとなった「もらい泣き」に、一青窈のボーカルも豊かにその色味を変えていく。新たなミュージシャンとのセッションをダイナミックに乗りこなし、また新たな引き出しを開いて魅せていくのは、ボーカル冥利に尽きる。若い世代とのセッションとなればなおさらだろう。
今年、デビュー20周年を迎えた一青窈。最後の曲は、その20周年を祝した新曲で、同年にデビューをしそれぞれにキャリアを築いてきた盟友・森山直太朗が曲を書き下ろし、一青窈が歌詞を書いた「耳をすます」。ステージに腰掛け、ピアノの音色に寄り添うように歌い、語りかける。歌と鍵盤のシンプルな構成から、徐々に厚みを増したエモーショナルなアンサンブルとなり、その歌はドラマティックに広がっていく。そして再び、歌とピアノでストレートにメッセージを放つ。2日目のRESPECT STAGE、そこがあたたかな歌で、豊かな音楽で、そして愛で包まれていく。
会場が大きな拍手で包まれるなか、小西は「今日は本当にありがとうございました。またすぐ会えることを心待ちにしています」と、2日間にわたったスペシャルセッションを締めくくった。土砂降りと晴天と、両極端なシチュエーションでのステージだったが、どちらもドラマティックな夜となったことはまちがいない。
取材・文◎吉羽さおり
撮影◎俵 和彦
【RESPECT STAGE】セットリスト
02. Reasons
03. 優しい赤
04. 鬼
05. 月曜日戦争
06. 残ってる
07. たまらない予感
08. エロい関係
09. 君が誰かの彼女になりくさっても
10. ハナミズキ
11. もらい泣き
12. 耳をすます
■<中津川THE SOLAR BUDOKAN 2022>
会場:岐阜県中津川公園内特設ステージ
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