【インタビュー】SHAG、SUGIZOが語る1stアルバム「2020年代の怒濤のジャズロックをやりたかった」

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■この時代のアティテュードを体現しなきゃ
■だからSHAGなんです

──今回のSHAGの復活を促した、もっとも大きな要因となったものは何ですか?

SUGIZO:2020年代の怒濤のジャズロックをやりたかったんです。そのきっかけのひとつとしてはコロナ禍があった。ご承知のように世の中が分断して、疲弊して、今は戦争も起きている。21世紀ってもっと平和な未来のイメージがあったのに100年前に退化してるじゃん?みたいな憤りがあって、それを音楽として表現せざるを得なかった。そこをネガティヴな言葉に書き出すハードコアな方向ではなく、ジャズロックのスタンスで落とし込みたかった。

──ほう。

SUGIZO:そこには、僕が最も影響を受けたマイルス・デイヴィスの名盤『ビッチェズ・ブリュー』が2020年でリリース50周年だったってことが大きい。50年前のカルチャーシーン…ヒッピームーブメントがありサイケデリックが終わろうとしていて、ベトナム戦争で世の中が大きく変貌していった時代。若い奴らが既存の社会の在り方にNOを叩きつけて、世の中のうねりとともにロックやジャズやファンクのカルチャーが大きくなっていった。同時に人種差別があって、黒人の音楽がそこから這い上がるために熱くなっていて、時代の社会性とカルチャーが音楽をとっても進化させていたと思うんです。それってすごく大切なことで、ジャズとロックとファンクと様々な音楽が融合した時代なんですね。だからこそ、今はこの時代のアティテュードを体現しなきゃと思ったんです。この時代だからこそのような音楽が重要だと。だからSHAGなんです。


▲SHAG

──それにしてもよくこんなメンツが集まったものですね。

SUGIZO:「過激なジャズロックやろう」っていうところですかね。もうひとつのイメージは『ビッチェズ・ブリュー』リスペクト。「オーケーいいね」「やろう」って。

──それだけで十分だ。

SUGIZO:過激なジャズロック。2020年代だからできること。あとはフリージャズに接近することですね。その前にファンキーであること。って感じですかね。

──楽しんでますね。

SUGIZO:超楽しいですねえ。やっぱりこういうことやってることが一番楽しいです。

──SHAGでの活動は、アートとエンターテインメントのバランスは考えますか?

SUGIZO:“アート7:エンタメ3”、くらいですかね。

──エンターテイメントが3もあるんですね。

SUGIZO:このメンバーで演奏するとエンタメになるんですよ。

──それはメジャー感みたいな?

SUGIZO:メジャー感ではないかな。雰囲気のゴージャス感というか。演出的ですよね。自然とそうなります。

──KenKenもそういう男ですし。

SUGIZO:そうそう。もう何もしなくても彼は演出力があるじゃないですか。

──なるほど、そういうことか。

SUGIZO:で、今はさらにダンスミュージックとして機能させたいんですよ。SHAGで踊ってもらいたい。


▲SUGIZO

──そうするとエンタメ感がもっと増すのかも。

SUGIZO:そうですね。そこに関してはこれからもっとコミットしていきたい。最終的にはこのシーンを大きくしたいという夢があるから。ジャムのシーン、インプロのシーン、インストゥルメンタル・ミュージックのシーンって日本ではとてもニッチな世界で、素晴らしいミュージシャンでもそれ相当のキャパシティでライヴができる人ってほんと一握りですよね。超絶な素晴らしいプレイヤーでさえも、小さなジャズクラブで数十人を相手に演奏しているような世界なんですけど、でも演奏の中身や表現というのはとんでもなくレベルが高い。本来そういうレベルが高い極めて優秀なプレイヤーは、それ相当の評価や対価がないとおかしいと思うんです。日本はそこがあまりにも残念で、僕的には間違ってると感じてしまう。やっぱり日本にはシーンが育ってないんだと思うんです。

──そうか。

SUGIZO:20年経ってもね。ジャムバンドのシーンとしては、アメリカでは総本山がまずグレイトフル・デッドですよね。デッドからはじまり有名なところでいうとメデスキ、マーティン・アンド・ウッドとかフィッシュとか、ちゃんと大きなフェスがあったり数千数万人のお客さんを集められる。確固たる地位があるんです。そこにはドラッグカルチャーが切り離せないので、そのまま日本に移行するのは難しいわけですけど、日本でも音楽を自由に楽しんで、ステージのミュージシャンが永遠とジャムっていて、踊る人もいればいい感じで酔っ払ってる人もいるっていうシーンを成長させたいっていう夢がある。なので、そういう意味ではエンタメとしてSHAGをより成長させていきたい。アートの部分も崩さずに大きくしたい。シーンを醸成させて若い奴らをどんどん引き込みたいんです。そのためにSHAGを本気でやっているんですよ。


▲1stアルバム『THE PROTEST JAM』

──SHAG結成20年にして、初のアルバム『THE PROTEST JAM』が登場しましたが、録音してライヴ音源をエディットして、新たに音を加えたりして完成させたとのことですね。

SUGIZO:ライヴの瞬間に起きるあのスリルやダイナミズム、ライヴで起きた魔法の瞬間をベーシックにして構築したかったんです。それこそ1960年代後半から1970年代のマイルス的手法ですね。スタジオでも延々とジャムって、それをプロデューサーのテオ・マセロが切り貼りしてアルバムにする。マイルスのライヴもそう。延々と演ったライヴのジャムも切り貼りして短い楽曲にしてリリースする。ただマイルスはライヴで録ったジャムのテイクにダビングすることは多分なかったと思うので、その意味で言うとザッパの手法が一番近いと思います。

──そういう作業って、どこが正解なのか分からなくなる難しさがありませんか?

SUGIZO:なんかもう「こんなとこじゃない?」みたいなもんですね(笑)。正解はあるようでないし、少なくともSHAGに関しては、綺麗に作ろうとはまったく思ってない。リズムのよれとか、普通の録音だと有り得ないようなアンビ(残響)が入ってしまったりとかするんですけど、それも含めてその雑な感じがSHAGでいいやみたいな(笑)。「お、これはグッとくるわ、すげえ」と思うものが正解ですね。

──出来上がった音を聴いたメンバーの反応は?

SUGIZO:すこぶる良かったですね。大体僕がざっくりとエディットして「みんなどう? こんな感じなんだけど、注文があったらいろいろ教えてください」ってやったんですけど、こう直したいという注文もなく。

──素晴らしい。

SUGIZO:基本8割の音はライヴです。録り直しが多かったのはパーカッションくらいかな。音の被りが酷かったから。あと、ローズとピアノを1曲ずつ追加で弾いてもらったのと、トランペットに関しては1曲だけソロを吹き直したくらいかな。

──ほんとにインプロヴィゼーションの美しいところが入ってるんですね。

SUGIZO:うん。「ここのヴィブラートこうじゃないんだけどなあ。まあ、いっか」みたいな(笑)。ライヴだとやっぱり雑になるんですけど、ダイナミズムがすごくいいからこれでいいわ、みたいな。

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