【インタビュー】近石涼、「自分らしさなんて捨てられれば」は人生観をそのまま映し出した勇気と励ましのメッセージ
■誰かと一緒に音楽をする楽しさを感じられるようになった
■それは大変なことでもあるけど誰かとじゃないとできないこともある
――これを聴いた人は、誰もが誰かのことを思い浮かべると思います。それは自分のことかもしれないけど、救いの手を差し伸べる曲になっていると思います。特にサビのところ、“君が今苦しいのは、自分自身を生きてる証拠”というのは、すごく力のある言葉だなと。
近石:そこは、じゃあそれがどうやねん?ということでもあるんですけど…本当に悩んでいる人がこれを聴いても立ち直れないかもしれない。でもそう思えたら、今の苦しさが少しでも和らぐかもしれないし、前を向けるかもしれないし、僕はそういう言葉をかけるしかない。その人の代わりにはなれないし、その一人一人に直接手を差し伸べることは無理だし、自分も苦しい時もあるし…そういうことを含めて、なんとか前を向いてほしいと思って書いた言葉です。
――精一杯の表現だと思いますよ。そしてこういう、日々の生活や仕事のなかで疲れ切ってしまって、明日が見えないような状態になってしまう、その気持ちは自分の中でも共感できる部分があるということですか。
近石:そうですね。もともと自分がそう思ったから書いているんでしょうね。「自分らしさなんて捨てられれば」も、「夢なんて捨てる勇気が僕にはなかった」と言っているのも、本当は捨てたくないんですよ。でも夢を追い続ける勇気とか、自分らしさを求める勇気じゃなくて、逆に「捨てる勇気」が僕にはなかったということだと思います。今はこうして歌を歌えているんですけど、それを捨てて普通に働いてる毎日があったとしたら、僕はそっちのほうが怖いと思う。だからこそ、そこに立ち向かって日々生きている誰かに向けて、さっき話した子も含めて、すごく尊敬するし、そこに対して僕は無意識のうちに負い目を感じているような気持ちもある。「みんなは頑張ってるのに僕は」みたいな。
――ああー。そうか。
近石:そういう子たちに久しぶりに会ったとして、「よう頑張ってるね」とか言ってもらえると、さらに「自分、頑張れてるんかな?」と思ってしまうこともあって。その人たちに何か僕の活動で、負い目を打ち消すぐらいの元気や勇気を与えられたらと思っているから、こういう曲ができたんだろうなと思います。
――誰かを元気づける歌でもあり、自分のことを歌った歌でもある。
近石:そうです。それと、ワンマンライブを終えたあとにこの曲を書いたので、それがなかったらこういう曲展開にはなっていなかったと思います。今までずっと一人で弾き語りをしてきたので、自分が全責任を負う代わりに全部が自分の思うようにできたんですけど、たぶんその先には行けなかったと思うんですね。でも最近は周りに手伝ってくれる人が増えてきて、誰かと一緒に音楽をする楽しさを感じられるようになって…それは大変なことでもあるんですけど、誰かとじゃないとできないこともあるなとすごく思うんです。それが曲の後半の「できないことがあるという事は、誰かと分かち合えるという事」という歌詞になっていて、そういう自分の体験をもとにして…「できない」って、いいことだと思ったんですよ。
――はい。なるほど。
近石:一人でできないから、誰かが助けてくれるというか。ワンマンを終えて感じたそういうことが、歌詞にすごく反映されてる気がします。歌っているテーマに関しては、「兄弟II」とそんなに変わってないんですけど、『Chameleon』を出して、「兄弟II」が一番届いたなという実感があって、それが今一番歌いたいことでもあったし、そこをもっと突き詰めて書いてみようと思ったのがこの曲だったので。このあともこういうテイストというか、誰かに向けた曲が多くなっていく気がします。今作っているデモも、そういうものが多いし。
――近石涼の応援歌シリーズ、楽しみです。あと単純にこの曲、演奏者がみんな楽しそう。ばんばん転調するし、展開がどんどん変わるし。
近石:そうですね。サビでこんなにあからさまに転調することは今までやってこなかった。実を言うと、もともとは転調しないで作っていたんですけど、メロのほうが音域が高くなっちゃって、メロが高くてサビが低いから、これどうしよう?と思ってメロを下げたんですよ。それで転調してみたら、サビで惹きつける感じが出てきて、今までになかったものになったんですね。結果的にその転調が、この曲のキーになっている気がします。それがないと成り立たないぐらいの。曲のストーリー的にも、疲れて家に帰って、また明日も同じことの繰り返しかと思う主人公がいて、それが転調してパッと語り部が変わるということになっているし。
――確かに。うまく場面チェンジできています。
近石:最初は音域の解決のつもりやったけど、曲としてこの転調はここにあるべきだと思ったので、そのまま採用になりました。ライブで歌っていても気持ちよくて、そこがバチっと合うと、バンドでやることがさらに楽しくなるんですね。サビ前の転調とか、Cメロの「昨日よりひとつ後の電車に揺られて」のところとか、ライブでやるとすごく楽しいです。
――聴いていても楽しいです。メッセージはシリアスだけど、演奏はむしろ楽しい。
近石:面白いですよね。バンド形態でやることはまだまだ経験がないんですけど、そういう演奏を意識して作る曲は今後も増えていくと思います。弾き語りをやっていても、根本的に好きなのはバンドの音楽だし、今そこに近づけて音楽がやれていて、全員同い年のメンバーですごい仲良くやれてるのが楽しいし幸せ。もっと広げて行って、今のメンバーでもっと大きいところでできたら最高だと思っています。
――そのための大きなきっかけになる曲だと思います。「自分らしさなんて捨てられれば」は。今後のライブも期待しています。
近石:今後は、バンドで決まっているライブが数本あるので、頑張ります。今のメンバーではまだ2回しかしていないので。ライブになると、スタジオでは練習できない部分が絶対的にあって、ライブでしか培えないものがあるので、もっと場数を踏んでどんどん力をつけていきたいです。
取材・文:宮本英夫
ライブ・イベント情報
*バンドセットでの出演
5月20日(金) 梅田Zeela
[act] 13.3g / 声にならないよ / SHIROI ATELIER. / 近石涼
OPEN/START 18:30/19:00
ADV ¥2500
購入ページ
https://eplus.jp/sf/detail/3627730001-P0030001
<szsy pre.「在るべき邂逅」>
*バンドセットでの出演
5月22日(日) Abeno ROCKTOWN
open 14:00 / start 14:30
adv. ¥3400 / door ¥3900 (+1d ¥600)
■出演者
バニーブルース
名切翔輝
おがた&三木(ex.EARNIE FROGs)
ネオンと無重力
AOI MOMENT
小倉海(ザ・ハウル)
三国未来
近石涼(Band Set)
airlie
<ロマンチック連合軍スピンオフイベント「夢想家たちの」vol1>
7月5日(火) 豊中LIP2nd
ACT
ザ ステアーズ
夕方と猫
-aiue-
近石 涼
<ぷすっぽ pre. 「グッドPOPS A5ランク」>
*バンドセットでの出演
7月18日(月) 心斎橋Pangea
出演:GET BILL MONKEYS / みみみ食堂 / 近石涼 (Band Set) / ぷすっぽ
OPEN 17:00 START 17:30
ADV ¥2500(+1d¥600)
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