【プロミュージシャンのスペシャル楽器が見たい】Gacharic Spin はな、マルチな彼女の現在のメインはベルモア ムスタングタイプ
■そして、現在のギターボーカルにコンバート
――ドラムの追求も引き続き重ねつつ、今はギタリストですよね。青いエレキギターは、第5期になってギターボーカルにコンバートしたタイミングで作ったんですか?
はな:はい。第5期の最初の頃はフリーダムのギターをお借りしていて、「作りたいな」と思って中野サンプラザのワンマンの時に初披露しました。
――作ったギターはムスタングタイプですね。メーカーは?
はな:ベルモアです。ネックのスケールをPRS(ポール・リード・スミス)と同じものにしていただきました。
――ドロップD用のペグを付けるのも、オーダーの段階で決めたんですね?
はな:そうです。「僕だけのシンデレラ」がドロップDの曲ですけど、全部をドロップDで弾くことはまずないだろうし、今後ドロップDの曲を作ったら私がそっちを担当できますから、それ用のペグを付けることにしたんです。
――ネックのポジションマークのLEDが赤と青に光る仕様は、ガチャピンらしいですね。昔からLEDを様々な形で活用してきたバンドですから。
はな:ギターのどこかにLEDを入れたいというのは思っていました。
――ガチャピンにとってLEDとガムテープは必須アイテムだという印象です。
はな:そうなのかも(笑)。ガムテープも大事ですからね。
――ギターやベース回しのためにストラップをガムテープで固定するのも、お馴染みの仕様ですし。
はな:ギター回しは私は5期ではやっていないんですけど、TOMOちゃんが入院して、彼女の代わりにギターを弾いてライブをした時に回しました。当時のプロデューサーに「完コピして、ソロも完璧に弾いて!」って言われて、入院しているTOMOちゃんのところに「ソロ教えてもらっていいですか?」って行ったんですよね(笑)。
――(笑)。あの時、サポートギターを入れるのではなくて、ドラムをむらたたむさんにお願いしたんですよね? 普通のバンドだったらサポートのギターに入ってもらうだろうし、そっちの方がスムーズなはずなのに。
はな:一応サポートのギタリストを探したんですけど、なかなかタイミングが合う人がいなかったんですよ。
――こうやってお話を聞くと「そういうもんかな」ってなりそうですけど……。
はな:やっぱり何かがおかしいですよね(笑)。その頃はレコーディングのミックス作業をしている時期だったんです。作業をしていただいている間、私はギター回しやソロの練習をしていました。
――ギターソロとギター回しって、ガチャピンにとって同じ重要度?
はな:はい。回すのも大事ですから。
――TOMO-ZOさんもガチャピンに加入した時、「弾けるのはわかってるから」って、ギター回しの特訓から始まったって言っていました。
はな:そうでした(笑)。
――(笑)。第5期ガチャピンでギターボーカルとしてギターを弾くようになって、どのようなことを思いました?
はな:曲作りとかでは前から弾いていたんですけど、お客さんの前でちゃんと弾いたりするようになったのは第5期が初めてだったんです。だから、「どれくらい自分はやれるのか?」という点に関して未知数。楽しめるのか緊張してできなくなるのかもわからず、謎のままライブ初日の沖縄を迎えていました。練習はいっぱいしましたけど、どうなるのかはわからなかったんですよね。
――最初のツアーの時は、手探りが続いている感じでしたよね? ツアーが4月から始まって、5月の渋谷ストリームホールのライブの後にお話しした時、「その内、TOMO-ZOさんとツインソロとか、バリバリやるようになるんじゃないですか?」って僕が言ったら、渋々といった感じの表情ではなさんが「はい……」って言ったのをよく覚えています。
はな:渋々でした?(笑)。最初の頃からツインソロはあったんですけど、「なるべく増やしたくないな(笑)」って思っていたんですよね。でも、その後に増えていきました。
――10月の中野サンプラザのワンマンの時は、ツインソロが増えていましたからね。
はな:あの時は、すごく緊張していました。「ネック折れるかも?」っていうくらい力を入れて弾いていましたから(笑)。でも、ギターボーカルは、もうかなり馴染みましたね。
――ギタリストになって、ギターに関する新しい発見とかはありました?
はな:ギターの知識と経験はまだ浅いんですけど、他の楽器を弾いてきた経験をギターに反映するのも良いのかなと。そんなことを思うようになっています。「本来だったらキーボードが弾くようなフレーズをギターで弾いてるよね?」ってギタリストの大村孝佳さんに言われて、「そうなのかもな」って思いました。
――ギターの見た目に関してはムスタングが好きだから、オリジナルギターもこのタイプに?
はな:はい。でも、テレキャスも好きなんです。高校の卒業のタイミングでホワイトファルコンを買った時に、オールローズウッドのテレキャスとホワイトファルコンのどっちにするか迷いました。ギターを作った時もムスタングタイプ、テレキャスタイプ、ストラトタイプとか、いろいろ考えましたね。レスポールタイプはちょっと似合わないかなと思っていましたけど。
――このムスタングタイプのギター、赤いラインが入っているのもかわいいです。
はな:いろんな色を当ててみて、「赤がいい」ってなったんだと思います。
――ネックのスケールをPRSと同じにしたのは、理由があったんですよね?
はな:そうなんです。TOMOちゃんのギターがPRSで、私も家でPRSも使っているので、弾きやすさを知っているんですよね。それに、ライブでギターがトラブった時にお互いに交換したとしても、いろいろスムーズですから。
――今まで機材トラブルでTOMO-ZOさんのPRSを弾いたことはあるんですか?
はな:自分のギターが完成してからはないかも。だから今後、私がPRSを弾くことがあった時は、「何かトラブルがあったんだな」って思ってください(笑)。
――(笑)。新しいギターが欲しくなったりはしています?
はな:TOMOちゃんが結構ゴンゴンした強い音で弾いているから、底高でライト、シングルコイルにもなるように設定しているのが今のギターなんです。だから敢えてゴンゴンした音のギターを使ってみても面白いのかもしれないですね。
――ホワイトファルコンは前から持っていましたよね?
はな:はい。高校の卒業祝いでお姉ちゃんが買ってくれたんです。もっとギターが上手くならないと恩返しができないです(笑)。これ、70年代のギターなんですよ。当時、ギターのことがあまりわからなかったので先輩に一緒に楽器屋さんに行ってもらって、「これなら値段と良さのバランスがとれてるんじゃない?」ってアドバイスをいただきました。「大きいから持たされてる感が出るかな?」って思ったんですけど、意外としっくりきました。家でデモを作る時とかも弾いてきたギターです。ガチャピンの初期の頃はこのギターを持ってKOGAさんと一緒に公園に行って、弾きながら曲を作っていました。「僕だけのシンデレラ」のMVで弾いているギターも、このホワイトファルコンです。
――アンジェリーナ1/3さんが20歳のお祝いにスタッフさんからギブソンのSGを頂いたそうですし、その内、はなさん、TOM-ZOさん、アンジーさんのトリプルギター編成でステージに立つこともあるかも?
はな:ギター多過ぎ(笑)。かっこ良くなればいいですけどね。アンジーは若くて吸収が早いから、そういう時期にコードとか、いろいろ覚えられたらいいなと思っています。「何か課題ください」ってアンジーから言われたら、ゲームみたいな感じで課題を出したりもしています。私も高校から専門学校にかけての頃に楽しみながらいろいろ吸収したから、今の内にいろいろ勉強できたら良いですね。
――ギターの機材に関しては、足元についても教えてください。今使っているのはkemper(ケンパー)ですね。
はな:はい。2020年から使い始めたんだったと思います。TOMOちゃんが9割、私が1割弾くくらいの配分だった頃まではボスのMS-3だったんですけど、今は半々くらいになってきているので、音を進化させつつ幅を広げたいと思ってケンパーにしました。使っているのはPROFILER Stage。キーを変えたり、ギターでベースやキーボードの音も出せるし、いろいろ楽しくなりそうだなと思ったんです。あと、ボードの左上にボーカル用のエフェクターも置いています。それでケロケロさせています。
――ギターに関するアドバイスをTOMO-ZOさんから頂くことはあります?
はな:TOMOちゃんは、あんまりアドバイスをしてくれません(笑)。でも、彼女が作ったフレーズを聴いて「こうかな?」って耳コピした時に、「こういう運指の方が弾きやすいんじゃない?」っていうのは教えてくれます。
――同じギタリストとして、TOMO-ZOさんのプレイの魅力は、どのようなところにあると感じていますか?
はな:センスも、リズムも、グルーヴも良いんです。「安心感」っていう感じですね。私はまだギタリストとして粗いけど、それでも2人でツインギターでハモったりする時に気持ち良いのは、グルーヴの感じが合っているんだろうなと。これで私がもっとレベルアップしたら、さらに緻密なグルーヴの合い方もしていけるんだろうなと思っています。yuriもそうなんですよね。yuriのセンスの良さは加入当時からわかっていたんですけど。「ガチャピンに入るべくして入ったセンスの良さ」っていう感じかな? そういうものが彼女にはあるんですよ。ガチャピンって「メタラーです」っていうことでもないし、「ずっとポップスしかやりません」っていうことでもないですし、「バラードしかやりません」っていうことでもなくて。幅広くやるにはいろいろな曲のことを知っていなきゃいけないし、柔軟性も必要だし、表現できるテクニックも必要なんです。そういうことに対応できるのがyuriなんですよね。
――yuriさんとアンジーさんが加入してから、はなさんはエアロフォンも演奏するようになりましたが、これはどういう経緯だったんですか?
はな:当時のプロデューサーが「もう一つ何か楽器をやれば?」って言って、ローランドに遊びに行った時に「これ面白い!」ってなったんです。「笛と一緒ならやってみるか」ってやってみたらめっちゃ難しくて(笑)。運指は大体一緒なんですけど、「笛と一緒ではない」ってなりました。届いてからサックスの先生に運指を習いに行ったんですよ。
――これ、元々白色だったのを青色に塗ったんですよね?
はな:そうです。白もかわいかったんですけど、青の方が「はなのです」っていう感じになるのかなと思って。
――管楽器は、もともと興味があったんですよね?
はな:はい。12.ヒトエのメンバーが吹いているのを見て、「楽しそうだな」って思っていました。
――今後も新たな楽器に興味を持って、ガチャピンに導入する可能性はありそうですね。
はな:可能性はゼロではないと思います。
――お父様がトランペット奏者ですから、トランペットとかあり得るのかも。
はな:難しいですけど、せっかく習ったことがあるから、どこかでやれたらいいですね。
――オレオさんと一緒に鍵盤を弾くとかもあり得そうです。
はな:ツインピアノの曲はもともとガチャピンにあるので、そういうのをいずれやっても楽しいかもしれないですね。
――あと、機材に関しては、青色のボーカルマイクを使っていますね。TELEFUNKENのM80。
はな:はい。ドラムボーカルだった時はシンバルとかの音を拾わないように指向性の狭いマイクをなるべく選んでいたんですけど、ギターボーカルになってからはそこまでシビアに考えなくても良くなったんです。福井のライブハウスでTELEFUNKENのマイクを見てかわいいなと思って。音に関してもレンジが広くてきらびやかなので、ガチャピンに合っていますね。
――今回の取材でピックの写真も撮りましたが、オリジナルのものですね。
はな:はい。ウルテムっていう素材だったと思います。アコギとかベースはおにぎり型のピックを使うんですけど、エレキギターはティアドロップやジャズ型が好きで、ジャズ型にしました。厚さは0.88ミリ。あと、ギターに関しては音をキンキンさせないためにゴムのフレットラップを付けました。ガチャピンは音が多いので、ちょっとすっきりさせてみても良いのかなと思って。
――楽器屋さんに行って、「これ使ってみようかな?」とか考えることはよくあるんですか?
はな:高校生の頃はよく行っていましたけど、最近は何かを買うためにしか行かないです。
――ギターとかをいろいろ欲しくなるタイプではないんですね。
はな:そうなんだと思います。もしすごいお金持ちになって自宅に倉庫やスタジオを作れるようになったら、たくさんのギターではなくてたくさんの楽器が欲しいかも。木琴やスチールパンとかもやりたいし、いろんな楽器を弾いてみたいです。琴とかもあってもいいし、いろんな楽器を置きたいですね。でも、それを全部管理して調整できる人もお願いしないといけないから大変ですけど。
――音が出るものが好きですよね?
はな:好きですね。
――ガチャピンのYouTubeチャンネルの企画『楽器を使わずNirvanaの“Smells Like Teen Spirit”を演奏してみた!!』も、自宅にあるいろいろなものを使って音を出していたじゃないですか。
はな:あれも地味だけど楽しかったです。最初の緊急事態宣言の自粛要請があった時期でしたね。たしか打楽器から決めていったんだったと思います。例えば「目覚まし時計のこことここを叩いたらこの音が出る」とか、その音しか鳴らないものをまず決めて、「じゃあ、この音程が使える楽曲を演奏しよう」っていう感じで、それに必要な音を見つけていきました。あの頃は家中のいろんなものを叩いていましたね。「B♭どこかにないかな?」とか思いながら(笑)。
取材・文:田中大
▲Gacharic Spin(後列左より:オレオレオナ、はな、yuri)(前列左より:F チョッパー KOGA、アンジェリーナ1/3、TOMO-ZO)
リリース情報
▲『Gacharic Spin』(左より:【初回限定盤type-A】【初回限定盤type-B】【通常盤】)
メジャー5thオリジナル・アルバム
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ライブ・イベント情報
2022年7月2日(土)@豊洲PIT
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