【インタビュー】NOCTURNAL BLOODLUST、8年ぶりアルバムに極上の密度と難易度「死角なし。向かうところ敵なし」
NOCTURNAL BLOODLUSTが5月4日、自身8年ぶりのフルアルバム『ARGOS』をリリースした。100の目を持つギリシャ神話の巨人“ARGOS”の名前を冠したアルバムには、全12曲を収録。常にレッドゾーンの中で揺れ続けているようなサウンドが渦を巻き、音の洪水に飲み込まれてしまったら、あとは身を委ねるしかない。まさしく、ノクブラ史上最も強力なアルバムの完成だ。
◆NOCTURNAL BLOODLUST 画像 / 動画
2020年夏、新体制による配信シングルを2ヶ月連続リリース。同年秋、ギタリストValtzとYu-taroの正式加入を発表。同年12月にミニアルバム『The Wasteland』をリリースし、2021年は主催イベント<6DAYS OF CHAOS>開催ほか、精力的なライヴ活動を行った。着実に確実に足元を固め、そして届けられるアルバムが『ARGOS』となる。
BARKSは新体制始動から現在までの意識改革をはじめ、あまりにも濃密で濃厚なエクストリームサウンドが生まれた背景、そして間もなくスタートするツアーについてじっくりと話を訊いた。「これだけやるバンド、日本にはいないでしょ!?」「こういうふうにやりたかったというものが、今回、ようやく形にできた」とメンバー自身も語った『ARGOS』ロングインタビューをお届けしたい。
◆ ◆ ◆
■このメンバーならやれるに違いない
■突き詰めてみたいと思った
──BARKSでは約1年半ぶりのインタビューになります。そのときはギタリストのValtzとYu-taroが加入した直後でした。その後、シングル音源の配信やミニアルバムリリース、ライブ活動などを重ねていますが、1年半前とはマインドの変化もいろいろ起こったと思うんですよ。
Yu-taro:加入前からNOCTURNAL BLOODLUSTのメンバーとは友達で、バンドの置かれた状況なども聞いていました。そのNOCTURNAL BLOODLUSTに誘われたわけですけど、自分自身、そのちょっと前から作曲でちょっとスランプに入っていた時期があって、一旦、音楽活動を休もうかと考えていたぐらいだったんです。当たり前ですけど、自分がのんびりしていても、加入したからにはバンドは動くわけで。前に自分がやっていたバンドは、自分が動かないと何も動かなかったので(笑)、そういう環境の違いを感じていたのが、1年半前ですね。
▲尋 (Vo)
──環境の違いやスランプは徐々に解消されていったという?
Yu-taro:最初のうちはアイドリングが必要な感じでしたね。ゆっくりですけど、ようやく自分を取り戻してきた感が今はあります。変な言い方ですけど、これまでの配信シングルで自分が作曲したものに関しては、そんなに深堀りせずに、“曲ができた、OK!”みたいな感じだったんです。でも今回、アルバムに向けた作曲をしていったとき、原曲を形にした後も深堀りして、“ああしよう、こうしよう”ってアイデアも湧き上がって。前の自分を取り戻してきた感じもありますね。加入してからの自分の変化をものすごく自覚しています。
Valtz:僕は配信シングルとミニアルバム『The Wasteland』で、まず自分のやりたいことをそのまま表現できたかなってところから始めることができた。そこからライブ活動を通して、自分のやりたいこととメンバーのやりたいこと、各メンバーの得意なこと、それらの絶妙なバランスやポイントを狙っていきたい、という思いがありました。
──メンバーとは以前から交流はあっても、加入した当初は手探りのところが?
Valtz:最初のうちはそうですね。でもライブ活動やこれまでの楽曲制作の中で、新たな軸も生まれていって。次のフェーズに持っていくってことができた。
──ライブを通して考え方に変化なども生まれました?
Valtz:去年11月のイベント出演から年末の<JACK IN THE BOX 2021>の武道館までに、個人的にはすごく心境の変化が起こりました。ステージでの爆発力とか躍動感の部分ですよね。演奏以上のバンドの一体感を自分から能動的に表現したいというか。そういう刺激があったので。
──事実、ステージで演奏するときの動きや表情など変わりましたよね。変な硬さが取れて、ダイナミックなライブパフォームなども備わるようになりましたから。
Valtz:そこと演奏クオリティの両立は、未だに難しくて、自分の限界を引き上げる必要があるんですよ。楽器の練習だけじゃなくて、フィジカルなところも含めて。新たにやりたいことや自分を底上げする必要性、メンバーの得意なことなど、いろんなものが見えてきた時期でしたね。基本的な考えとして、前回よりも上に持っていきたい、常にアップデートさせていきたいから。
──ValtzとYu-taroが加入したことで、3人も意識変化が?
Masa:当然起こりました。まずギタープレイがいいってことは最初から分かっていてValtzとYu-taroを誘いましたからね。サウンド面でのバンマスというか、バンド全体のサウンドを構築してくれるのがValtz。それによってバンド全体のレベルも上がるし、Yu-taroもいい曲を持ってくる。それに二人とも、マルチプレイヤーな側面も持っていて、それがアレンジに活かされる。二人が加わったことで、全体が底上げされたなって感じてます。
Natsu:やっぱりサオ隊というのは、チューニングとかサウンドメイクのところで共通認識や感覚の共有が働いていると思うんですよ。ドラムとサオ隊って、少なからず距離というのがある。ところが今は、距離が近くなったというか歩み寄りができている感じ。
Masa:今は一緒に構築している感じでしょ?
Natsu:そうそう。ライブの楽屋だったかな、Valtzがヤバいドラマーの動画を流してて、僕のほうをチラッと見ながら「こういうのやりたいな」ってボソッと言う。そんなこともありました(笑)。
──煽ってくるんだ(笑)!?
Valtz:けっこう高度な技術を要求をしたんですけど、そこから修行の日々が始まったみたいで。具体的に言うと、ヒール&トゥというキックの高速連打技なんですけど、今ではそれをモノにしてきていますから。
Natsu:スパルタ式のValtz先生です(笑)。Yu-taroの作ってくる曲も、涙ちょちょ切れるぐらいハードでね(笑)。でも僕が叩けるフレーズというか演奏技術を上げてもらったおかげで、“これもできるかな”って曲の幅も広がって。Masaも「底上げ」と言ったけど、その底上げの仕方が尋常じゃないんです。同時に伸びしろも凄いことになっていきました。
──というサウンド陣が鳴らす音を全身で浴びながら歌うのが尋。やっぱり刺激されまくりですか?
尋:今のNOCTURNAL BLOODLUSTになってから、いろいろと考えて作るという時間が増えましたね。楽曲がけっこう複雑だったり、すごくドラマチックなものが多いので、ボーカルが単調では、作っているときに自分でも飽きてしまう。どういうふうに構成していくか、ボーカルアレンジを時間掛けて考えるようになりました。だから難易度はさらに高くなったし、自分自身も納得するものを作らないと気が済まない。
──バンドとしても、各プレイヤーとしても、さらに上を目指す意識が高くなったんですね。そしてこのメンツでの初フルアルバムが5月4日リリースの『ARGOS』。これはヤバいブツですね。
Masa:ええ、ヤバい。尖りまくってます。
──ブルータルであり、シンフォニックであり、コアであり、いろんなものが密度濃くミックスされた構成と、誉め言葉として言いますけど、異常さが際立ってる。
Valtz:いい意味で期待を裏切らなきゃなって考え方はあったし、この『ARGOS』が勝負になるんだろうなと思っていたから。“2022年はこれで戦っていくんだ”ってことを、最初から想定して曲を作っていったんです。だからこそ底上げしなきゃなってことで、5人ともレベルを上げたし。結果的にうまくいったと思いますね。曲作りからアレンジ、サウンドプロダクション、「Cremation」ミュージックビデオの映像も含めて。前もっていろんな構想を練って、点がいっぱいあったところが最終的に線になってつながった感覚はあります。
──曲のアイデアやリフ作りは、加入直後から始めていたんですか?
Valtz: 2020 年 7月の配信シングル「ONLY HUMAN」から曲作りが始まったんですけど、それはストックしていたものではなくて、加入してから作り始めたものです。
──1年半前の取材では、「NOCTURNAL BLOODLUSTでは極悪なものをやりたい」と発言もしていました。
Valtz:そうですね。個人的な話ですけど、僕はこれまでに、極悪な曲だったりをやれるメンバーと、そもそも出会えなかった。でもこのメンバーならやれるに違いないって。
──ついに夢が叶うぐらいの?
Valtz:そうなんです。何の要素でもいいんですけど、とにかく振り切った曲、聴いたときにニヤけてしまうくらいヤバい曲が、常に目指したいところなので。それを形にできるポテンシャルを持ったメンバーなんです。その表現のうちのひとつとして、極悪というテーマが自分の中にはありました。それを一度、突き詰めてみたいと思ったのが今回のアルバムです。
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