【プロミュージシャンのスペシャル楽器が見たい】K、デジタルとアナログを融合させた温かみのあるプライベートスタジオ

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韓国・ソウル出身のシンガーソングライター K。2005年3月にテレビドラマ『H2』の主題歌「over...」でデビューし、テレビドラマ『1リットルの涙』の主題歌「Only Human」の大ヒットを経て、着々と活躍の場を広げてきた彼は、ブラックミュージックへの造詣が非常に深い。昨年12月に配信リリースされた「winter light feat. sloppy dim」も、音楽的背景に裏打ちされた豊かなサウンドを聴かせてくれる。そんな彼が自宅に作ったプライベートスタジオは、楽曲制作や音楽に対する姿勢が反映された空間であった。作業環境へのこだわり、愛用の機材などについて語るインタビューをお届けする。


――ミュージシャンにとってプライベートスタジオは、いつかは実現したかった夢ですよね?

K:そうですね。前から欲しいとは思っていたんですけど、僕はどちらかと言うと外のスタジオで作業する方が好きだったんです。でも、コロナの影響でいろんなミュージシャンと一緒に作業できない状況がずっと続いたのが、自分で作業できる環境を整えるきっかけになりました。

――ご自宅の引っ越しもきっかけになったんですよね?

K:はい。去年の春に引っ越したので。

――どんな環境にしたいと思っていました?

K:レコーディングスタジオって、“仕事をする場所”っていう堅苦しいイメージがあるじゃないですか? そういう感じにはしたくなくて。リビングルームの延長線上にあるスペースというか。お茶を飲んでいる時にふと何かやりたくなったり、ここで音楽を聴いている内に何か作りたくなる……というような感じの部屋ですね。このスタジオ、作業をするスペースよりも音楽とかを視聴するスペースの方が大きいんですよ。それくらいリラックスしながら過ごせるスペースにしたいなと思っていました。


――何となく過ごしている内に、自ずと何かが生まれるスペースということですね。

K:はい。ミュージシャンによっては限られた時間の中でエンジニアさんと作業しながら作る方が好きな人もいますけど、僕はそういう環境だと自分が抱いていたイメージに到達する前に“こんな感じでいいかな?”って思っちゃうところがあるんです。それだったらこういうリラックスできる場所で過ごして、“今日できなかったら明日やればいいや”くらいの感じでいた方が良い作品ができるのかなと感じています。

――外のスタジオだと使用料もかかりますし、エンジニアさんのスケジュールとかもありますけど、プライベートスペースだと何も気にしないで済むということですね。

K:そうなんです。最初は、“そういう環境だと曲ができなくなるんじゃないかな?”って思っていたんですけど、実際はそうでもなかったですね。こっちの方がむしろ妥協することなく、納得のいくまで作ることができています。


――作業環境を作るにあたって、何か具体的に考えていたことはありました?

K:新しく何かを揃えていく感じではあんまりなかったんですけど、せっかくの機会なので少し買ったりもしました。例えばマイクのプリアンプとか。僕は今まで自宅で本番のレコーディングをしなかったんですよ。ある程度デモを作って、最終的に外のスタジオで録っていたので。でも、スタジオを自宅に作るんだから本格的に録れるようにしたくて、マイクのプリアンプを買いました。

――何を買うか、すぐに決まりました?

K:すごく時間がかかりました。いろんなエンジニアさんからマイクのプリアンプをお借りして、もともと持っていたプリアンプで録ったものと聴き比べて、いろんな人にも聴いてもらって……っていうのを何ヶ月もやりましたから。そして、実際に自分がよく使っているマイクをお店に持って行っていろいろ試してから買ったのが、ノイマンのプリアンプ。僕の声にすごく合っていたんです。ノイマンってドイツのブランドで、U87Aiっていうマイクとか、どこのスタジオでも置いてあるくらいの定番なんですよ。そこの会社が初めて発売したマイクプリアンプがこれ、V402です。


▲ヘッドフォンアンプを内蔵したデュアルチャンネル・マイクプリアンプ「ノイマン V402」。写真下は、RMEのオーディオ・インターフェイス「Fireface UFX」。最大サンプル・レート192kHzで合計30入力+30出力を装備。

――どんなところが気に入ったんですか?

K:ハイファイなサウンドなんですけど、品があって重みがあるんです。アナログサウンドって後から削ることはいくらでもできるんですけど、何かを足すことはできないんですよね。だからなるべく多い情報量で録るのがすごく大事。オーディオインターフェイスの中にもマイクプリアンプは入っていて、それはそれですごく良い音なんです。でも、録れる情報量に関しては、こういうプリアンプには敵わないんです。V402は去年の頭か一昨年辺りに発売になったのかな? それ以来、いろんなエンジニアさんも買っていて、置いてあるスタジオも結構増え始めています。そして、僕はこのプリアンプを買ってからマイクも新しいのを買いました。これなんですけど、重い(笑)。


▲ラウテンオーディオの「LT-386 Eden」。Multi-Voicingテクノロジー搭載の真空管ラージ・ダイアフラム・コンデンサーマイク。

――重厚な見た目ですね(笑)。

K:ラウテンオーディオというアメリカのブランドの「LT-386 Eden」です。プリアンプのV402とのバランスもすごく良くて、ここ最近のレコーディングは全部このセットですね。

――レトロな雰囲気の見た目ですね。かっこいい!

K:そうなんです。でも、最新の技術も入っていて、“ハイファイに録るか、フォワードで録るか、ノーマルで録るか、ジェントルで録るか?”っていうことができて、3本の別のマイクを一体化させた感じなんですよ。ハイテクな部分もありつつ、温かみもしっかりあるんです。まだ日本ではあまり知名度がないみたいですけど、海外だとビルボードチャートに入るような有名なアーティストたちが結構使っているらしいですよ。


――歌録りはこういうマイクとプリアンプで行って、トラック作りはパソコンで行っているというわけですね。

K:はい。デスクトップ上で全てを完結させることが多いです。ほとんどはソフトシンセやいくつかのハードウェアですね。でも、NordやRhodesピアノとかも持っているので、外部楽器を使うこともあります。“ここぞ!”という時には外部楽器のパワーには敵わないものがあるので。この前のライブのSEも基本はソフトシンセなんですけど、その中にも外部楽器を入れました。ソフトシンセの音と並ぶと、外部楽器はボリュームを絞ってもそれだけがポン!と前に出る感じがあるんです。いろいろ混ぜながら作っています。


――サウンドモジュールが置いてありますが、これは?

K:ローランドのINTEGRA-7です。ローランドが今までに出してきたシンセの音のほとんどが入っていて、音の芯が太い感じするんですよね。こういうのはソフトシンセではなかなか表現できないです。とはいえ、全部実機が良いのかというと、それも違っていて。いろいろ混ぜてみた結果、“こっちの方がいい”っていう感じで判断しています。僕は実機をずっと使っていた世代でもあるので、いろんな選択肢があるというのはありがたい時代だなと感じています。今はソフトシンセと実機の音を聴き比べながら曲作りをすることができますから。

▲SRXシリーズ全タイトルを搭載し、ローランドが持つサウンドの資産を一台に凝縮したサウンドモジュール ローランド「INTEGRA-7」。写真下は、YAMAHA「MOTIF-RACK XS」。高品位なAWM2音源にアーティキュレーション機能を持たせたサウンドに加えてVCMエフェクトを搭載した、MOTIF XSシリーズの音源モジュール。

――DAWソフトは何を使っているんですか?

K:もともとはずっとLogicを使っていたんです。初めて打ち込みをしたのは高校2年か3年の頃だから、1999年か1998年とかなのかな? そこからずっと2020年までLogicでした。でも、友達が“Studio Oneってすごく良いよ”って言っていて、周りでも使っている人が増えていて。実際に聴いてみたら音がすごく良かったので、Studio Oneに変えました。使い慣れたものから別のDAWに変えるのって大変なことではあるんですけど、コロナ禍で時間があったのもきっかけになりましたね。


▲64Bitデジタル・オーディオ・ワークステーション Presonus「Studio One」。64bit処理で高音質。「AU、VST2、VST3プラグインおよびReWireのサポート」が標準装備されている。トラック数は無制限。

――ソフトを変えると、最初はいろいろ戸惑いますよね? 使い勝手がかなり変わりますから。

K:20年近く使ってきたショートカットとかを一旦全部捨てるというのは、なかなか大変でした。でも、ちょっとずつ慣れてきています。たまにLogicでしかできない作業もあるのでソフトを開いて作業をしようとすると、あんなに20年近くやってきた使い方の記憶が全部自分の頭の中から消えていたりもして(笑)。Logicの良さもあるし、Studio Oneの良さもあるので、いつでも両方を使えるようにしています。

――作業環境に関しては、何を特に大切にしていますか?

K:スタジオの環境で大事にするポイントは人それぞれですけど、僕はアウトプットを一番大事にしています。オーディオに関してもそうですね。オーディオもインプットとアウトプット、どっちに特にこだわるのかは人それぞれじゃないですか?

――そうですよね。

K:オーディオだと、インプットは例えばレコードの針。アウトプットはスピーカー、アンプとスピーカーを繋ぐケーブルとか。僕が特にこだわるのはどちらかというと後者です。なぜなら、耳に届く一番近い要素がアウトプットなので。だから“マイクを変えるか? それともスピーカーを変えるか?”となったら、まずはスピーカーを選びたい人。結構、いろいろ買い替えてきましたね。今はドイツのブランドのHEDD Audioです。でも、そうやっていろいろ買い替えながらも、ずっと置いてあるのはこのビクターのウッドコーン。


――家庭用のミニコンポとかでお馴染みのスピーカーですね。

K:はい。こういうスピーカーの環境で音楽を聴いている人の方が多いですから、僕の中での基準となっているスピーカーです。

――作業環境に関するこだわりは、他に何かありますか?

K:作業をしている時って、目から入ってくる情報もすごく大きいんです。たくさんのトラック数をわかりやすく見るためにも、モニターは大切ですね。例えばスネアをスクエアな感じで入れていると思いきや、位置を少しずらしてグルーヴを出したりするんですけど、そういうのも大きいモニターで波形を見ながらだと、わかりやすいんですよ。


――グルーヴやノリのニュアンスを耳だけではなくて視覚的にも捉えながら確認しているということですね。

K:そうなんです。そこまで大きくはないモニターで作業をするミュージシャンもいますけど、僕はこうやって目でわかりやすく捉えられる楽しさを結構大事にしています。

――先ほど、インプットとアウトプットの話が出ましたが、作業環境の根本でもある電源に関してはいかがですか?

K:実はトランスが置いてあるんですよ。フィルターみたいな感じで、これでノイズをカットして安定させています。あと、240Vの電源もあります。日本用にトランスをしていない外国のアンプとかも使えるようにしたかったので。

――日本は100Vですけど、それがサウンドに影響しているというのは、よく聞く話です。

K:ね? でも、海外から来たエンジニアさんとかに話を聞くと、“そんなの関係ないよ”っていう人もいて(笑)。気持ちの問題っていうことなのかもしれないですけど。


――トランスでノイズをカットした電源は、やはりサウンドにかなり影響しますよね?

K:はい。スピーカーのボリュームをマックスにしてもホワイトノイズがほとんど出ないですから。前の家ではこういう環境じゃなかったから、ボリューム上げると“シー”っていうホワイトノイズが聞こえました。

――一般家庭の電気は電信柱から分配されて供給されますけど、それがノイズとかになるんですよね。回避する方法として有名なのは、通称“マイ電柱”ですが。

K:そこまではなかなかできないんですけど、スタジオを作るからにはフィルターでノイズをカットするくらいのこだわりは持ちたかったんです。

――機材で音を鳴らす際の時間帯もサウンドに影響しますよね? 時間帯によって、他の家庭とかの電気の使用量が変わりますから。

K:そうですね。特にマンションは、間違いなくそうなんです。夜中の方が絶対に音が良いので。前のマンションでコンデンサーマイクでレコーディングしていた時、上のフロアの電話の声が入ってきたことがあります。何かしらの原因で音がのっかって入ってきたんでしょうね。今の環境は、そういうのも全然なくなったので安心です。せっかく良い電源にしたので、ケーブル類も一応は気を使っています。ここで鳴らした音が、みなさんの環境で鳴る音になるわけではないですけど、良い音が聴ける環境で作業することが作品自体のクオリティを上げると僕は信じたいので。

――作業環境の音に関しては、モニターヘッドフォンも大切な要素ですね。今、私の目の前にあるヘッドフォンは、どのスタジオでも見かけます。

K:ソニーのMDR-CD900STですね。今持っているのは15年くらい前に買ったもので、ここまで値段の高いヘッドフォンを買ったのは初めてに近かったですね。あと、これは何年か前に買ったものなんですけど。群馬にあるTAGO STUDIOがプロデュースしたヘッドフォンで、最近使う人が増えているみたいです。僕はタゴスタジオで何度もレコーディングをしたことがあるんです。このヘッドフォンは、音がナチュラルでバランスが取れています。


▲完全プロフェッショナル仕様のスタジオモニターヘッドホン ソニー「MDR-CD900ST」。多くのレコーディングスタジオで使われる音楽業界のスタンダードとも言える。


▲TAGO STUDIOと製造メーカーTOKUMIが共同製作したヘッドホン「T3-01」。高性能φ40mmドライバーユニットを搭載することで、究極のナチュラルサウンドを実現している。

――本体にKっていう文字が入っていますが、これはもともとの仕様ですか?

K:いえ(笑)。これはファンクラブのステッカーを貼りました。こうしておけば、他の人のヘッドフォンと間違えないから。

――なるほど(笑)。

K:他にこのスタジオのこだわりって何なのかな? あっ、そうだ。88鍵のキーボードが収まる机もそうですね。今はそういう机も少し見つかるようになったんですけど、ちょっと前まで全然なかったんですよ。だから普通のキーボードスタンドの上にキーボードを置いて、その左右にブロックとかを置いて高さを確保しつつ、その上にさらに板とかを置く……っていう感じで作業台にしていました。でも、自分だけの机がずっと欲しくて、5年半くらい前にこの机を作っていただきました。


――綺麗な板ですね。

K:当時の僕は1枚板にものすごくハマっていたんです。この板の下にキーボードがスライド式で収納できるようになっています。板と鍵盤の間に適度な隙間があるんですけど、そういうのもお願いして作っていただきました。

――スライド式で収納できるのって、ものすごく機能的ですね。

K:そうなんです。僕はキーボードを引き出して使うよりも、しまった状態で使うことの方が多いですね。板と鍵盤の間の隙間に指を入れて弾くんです。引き出して弾くと、パソコンとの距離が遠くなって姿勢がきつくなったりするので。そういうのも上手くできるようになっているのが、この机です。この板はタゴスタジオのヘッドフォンでも使われている木材の業者さんから買ったんですよ。何て言う木だったかな? アフリカの木なんですけど……忘れちゃった(笑)。でも、この机を作る時に選びました。手触りも良いですよ。天然の生きている木材の味わいを感じます。


――スタジオのロゴの焼き印が入っていますね。

K:はい。このスタジオを作ってからロゴを友達のデザイナーに作ってもらったんです。

――机の木目とかもそうですが、このスタジオは温かみがすごくある気がします。

K:ありがとうございます。ソフトシンセとか便利なものをいろいろ使いながらも、やっぱりどこかアナログな部分も欲しいですからね。例えばフェーダーもそうなんです。フェーダーはデスクトップ上でも操作できますけど、やっぱり実際のフェーダーを使わないと出ない感触とかニュアンスみたいなものがあるんですよ。例えば“音量をちょっと下げたい”っていう時に、“ちょっとってどれくらい?”っていうのがあるじゃないですか?


――厳密には数値化できないフィーリングですよね?

K:はい。デスクトップ上で操作すると数字で表示されますけど、それだと人間っぽさがないっていうか。実際にフェーダーを手で操作すると出るニュアンスって結構大事ですね。感覚的な“気持ち下げる”みたいなことはアナログ操作ならではのものがあるので。あと、こういうのを手で動かして曲を作ると、自分の中で記憶として把握できるんですよ。“この部分は上げて、ここは下げたよね?”とかいう感じで。譜面もそうなんです。手書きのものとパソコンで打ったものだと、手書きしたものの方が圧倒的に覚えやすいですから。アナログな要素って、やっぱりそういうところがあるんだと思います。

――つまりKさんの基本姿勢は、“アナログならではのフィーリングは大切にしつつ、便利な部分はデジタルを大いに活用する”っていうことでしょうか?

K:そうですね。便利なものに関しては迷いなくデジタルを使いますから。デジタルはスピーディーで無駄がないので、そこはデジタルに頼りたいです。

――アナログな感覚を大事にする姿勢は、このキーボードからもなんとなく感じますよ。結構使いこんでいるじゃないですか。

K:これは10年近く使っています。音が出ないただのMIDI鍵盤なんですけど、タッチが重いんですよ。


▲ピアノ・タッチのMIDIキーボード・コントローラー ローランド「A-88」。SuperNATURAL音源を瞬時にコントロールできるSuperNATURALモードを搭載している。

――生ピアノの鍵盤の重みですね。

K:そうなんです。このMIDI鍵盤はもう廃版なので、壊れないようにしないと(笑)。ローランドのA-88です。生ピアノをずっと弾いていたので、重いタッチの方が良いんです。先ほどのフェーダーと同じような感覚なんですけど、タッチが重い方が情報量が多いというか。鍵盤を下まで押す間のニュアンスがあって、それはペラペラなタッチの鍵盤では出せないんですよね。

――タッチが軽いMIDI鍵盤は音を出すためのスイッチみたいなものですけど、重いタッチのものは中間のグラデーションが豊かということですね。

K:そうなんです。これよりも良い鍵盤が出たら買い替えますけど、それまではずっと使い続けるでしょうね。

――何かさらにプラスアルファで語っておきたいこだわりはあります?

K:夏場はクーラーをつけますけど、風が身体に直接当たらないためのボードも取り付けています(笑)。

――細かなことですけど、そういうのも大事です(笑)。

K:あと、作業する時に座る椅子も大事なんです。僕は打ち込み作業だけじゃなくて歌も歌うので、そこも考えないといけなくて。歌い手、サックスプレイヤー、バイオリニストとか、身体を使って演奏をする人は、柔らかい椅子に座ると力が入りにくいんです。だからこのスタジオを作った時に椅子も時間をかけて探しました。まず条件としていたのは硬い座り心地。そして、これは脚の部分が4つなんです。普通のオフィス椅子とかって座る部分と脚の部分が別々で動くんですけど、これは一体となっていて動かないんですよ。


――オフィス椅子はクルクル回りますもんね。

K:そうなんです。でも、これは動かない。何が良いかって言うと、下に敷いてあるカーペットを巻き込んでめくれたりすることがない。一般的なオフィス椅子で足の部分が5つか6つに分かれているものだと、引っかかってめくれるんですよ。それが嫌だったので“脚の部分が4つ、下が動かない、硬い椅子”っていう条件で、時間をかけて探しました。もしかしたらこの部屋に置いてあるもので一番こだわったのがこの椅子かも(笑)。特注で作っていただくことも考えましたからね。

――作業机の片隅には、リラックスグッズも置いてありますね。

K:アロマオイルです。ここ最近は全然点けていないなあ(笑)。あと、そういえばこれも大事なんですよ。デスクライト。よくあるデスクライトは机に置いて照らすじゃないですか? これはモニターの上の部分に固定して、そこから照らすんです。


――普通のデスクライトとどこが大きく違うんですか?

K:このデスクライトを使うと手元だけが明るくなって、目の疲れがゼロなんですよ。部屋が暗い中で作業をしても全く疲れないです。

――こういうものも少しずつ買い足して、快適な作業環境を整え続けているんですね。

K:はい。YouTubeの動画を観たり、いろいろ調べ倒しています(笑)。だからこの後も少しずつ変わっていくんでしょうね。

■ライブでお馴染みのトークボックスは
■鍵盤ハーモニカのホースをアタッチ



▲MXR「M222 talk box」。サウンド出力用のドライバーに駆動用のアンプを内蔵。他にアンプを用意する必要がない。Volume、Tone、Gainコントロールでトーンを変えることができる。

――今日はライブでもよく使っているトークボックスも用意していただいていますね。声が機械っぽくなるという点ではボコーダーもよく知られている存在ですが、トークボックスとの違いは例えばどういうところですか?

K:ボコーダーはコード(和音)で音が出ますけど、トークボックスは単音なんですよ。トークボックスは口元のチューブに向かって発音して、鍵盤を演奏して使います。ボコーダーはマイクで声を拾うので、そこも大きな違いですね。


――Kさんはライブで使う時、首にチューブを巻いて操作しながら歌っていますけど、トークボックスについて知らないお客さんは、“あれは何だろう?”って思っているかも。

K:“変なもの巻いてるけど、どうしたんだろう?”って思っているかも(笑)。

――(笑)。トークボックスを使う姿は、ライブでも印象的です。

K:トークボックスを持って行くのを忘れたリハーサルが前にあったんですけど、全体的にどこか寂しい感じでした。そんなに目立つ楽器ではないのに、ライブ全体で捉えるとすごく色味が強い存在なんですよね。今、日本だとオートチューンが若いミュージシャンとかの間では一番使われていますけど、海外では結構トークボックスを使っている人がいます。僕はずっと鍵盤を弾いてきたというのもあって使っていますけど、最近作っているような楽曲にも合っているので、ほぼ入れている感じがありますね。

――Kさんのトークボックスのホースは、何かが装着されて延長されていますね。これは?

K:これは鍵盤ハーモニカのホースです。もともとのホースだけだと、噛んだ時とか音が上手く出ないんです。でも、鍵盤ハーモニカの先端は硬いプラスチックなので音が安定するんですよね。しかも、材質が硬いから、音も硬い感じになるんです。こういうのは好みですけど、僕はこの方が好きです。


――“鍵盤ハーモニカのチューブを装着したらどうなるだろう?”って試しに差し込んでみたら、もともとのトークボックスのチューブとサイズがぴったりだったんですか?

K:そうなんです(笑)。“いけるじゃん!”って思いました。

――スタジオや機材をじっくりと紹介していただき、ありがとうございます。最近もこのスペースで制作を着々と進めているんですね?

K:はい。曲を作ったりトラックを作るのが好きですからね。いつ世の中に出せるかまだ決まっていないですけど、みなさんに新しい曲を聴いていただけるはずです。

――時間帯も気にせず、心置きなく音を出せるこういう環境って最高ですね。

K:そうなんです。例えば朝早く起きた時とかも“音楽聴きたいな”って思ったら、LPレコードをかけたりしていますから。そういう時間にすごく幸せを感じます。“音楽をやっていて良かったなあ。音楽を好きになって良かったなあ”って思う瞬間ですね。僕の知り合いのプロの中には家に音楽を聴く環境を作らない人もいるんです。でも、僕は常に音楽が身の回りにあって欲しいタイプなので、こういう場所を作って本当に良かったと思っています。

取材・文:田中大

ライブ・イベント情報

<CLUB K Special 17th Anniversary Cruise>
デビュー17周年記念クルージングイベント
5/15(日)横浜
第1部 14:00~16:15
第2部 16:30~18:50

5/21(土)神戸
第1部 13:15~16:00
第2部 18:45~21:15

<LIVE RE-ORIGIN -Addicted to STEVIE WONDER->東京公演
4/23(土)ビルボードライブ東京
1st STAGE 開場 15:30 / 開演 16:30
2nd STAGE 開場 18:30 / 開演 19:30
■出演
K、Neighbors Complain
■お問い合わせ
ビルボードライブ東京
TEL:03-3405-1133

<K×Neighbors Complain>2マンライブ
4/24(日) ビルボードライブ東京
1st
Open 15:00 Start 16:00
2nd
Open 18:30 Start 19:30
■出演
K、Neighbors Complain
■お問い合わせ
ビルボードライブ東京
TEL:03-3405-1133

<アルペンアウトドアーズ プレゼンツ『HAKUBA ヤッホー!FESTIVAL 2022』>
5/28(土)  白馬岩岳マウンテンリゾート山頂エリア特設ステージ
OPEN:9:00 STRAT:11:00
※K出演 13:30~
■出演
大石昌良/K/さくらしめじ/竹本健一/藤巻亮太/森恵/ロザリーナ
■お問い合わせ
白馬山麓ツアーズ 0261-72-6900
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