【対談】K×MADz’s、刺激に満ちたコラボ曲誕生「新しいところに飛び込んでみたい」
Kによる2021年の新プロジェクト第1弾として完成された「Day 'N' Night feat. MADz's」は、自らの可能性を切り拓くことに対して前向きなKの姿が鮮烈に示されている楽曲だ。若手ラップグループMADz’sとのコラボレーションによって生まれたこの楽曲は、80’sシティポップ的なエッセンスを香らせつつ、4人の歌声とラップの多彩なコンビネーションを示している。フレッシュな音楽を生み出せたことに対するKの喜び、感じている手応えは非常に大きい。長崎在住だったMADz’sとの出会い、インターネットでのやり取りによる制作など、今回実現したインタビューは、興味深いエピソードが満載のものになった。
◆ ◆ ◆
■インスタから「一緒にコラボをしましょう」
── MADz’sに声をかけた理由、きっかけは、どのようなものだったんですか?
K:去年、「次の作品どうしようかな?」って思っていた時に、Spotifyでランダムでいろんなものを聴いていたんです。それでMADz’sの楽曲に出会って、普通にインスタで検索をしてメッセージを送ったのが最初の一歩でした。「多分、興味がなかったら返事が来ないんだろうな」っていう軽い気持ちでした。でも、すぐに返事が来て、すごく嬉しかったです。しかも「一緒にコラボをしましょう」っていうことも言ってくれたので。
──MADz’sのみなさんは、Kさんから突然連絡が来た時、どういう反応だったんですか?
Kohjiya:僕たち当時、Kさんのことを知らなかったんです。
K:そうだろうね(笑)。
Kohjiya:「誰だろう?」って調べたんですけど、『1リットルの涙』っていうドラマの主題歌を歌っていて、僕のお姉ちゃんや親の世代が聴いていて、ヒットしたっていうことを知ったんです。曲を聴いたら最近の曲も僕ら寄りというか、メロディアスな曲を作っていて、「かっこいいなあ」って思いました。それで、この3人で「やりたいね」っていうことを話したんです。世代が違う人と一緒にやるのが面白いっていうのもあったし、そういう新しさも「一緒にやりたい」っていう気持ちに繋がりましたね。
Lazzy:自分もKさんのことを知らなかったんですけど、親に訊いてみたら「知ってる」と。それで「AURALの親はどう?」って言ったら「知ってる」と。
AURAL:僕も親に訊いて、調べたりもして、「すごい人から声がかかっちゃたな」って思って、めっちゃワクワクしました。コラボができるというお話だったので、「かましたろ!」って(笑)。
▲「Day 'N' Night feat. MADz's」
──(笑)この記事を読んでMADz’sを初めて知る人も多いと思うので、自己紹介的なこともしていただきたいんですけど。
Lazzy:中1くらいから3人でいるようになって、放課後とかに家に集まって曲作りをしたり、授業中にノートの隅っこに歌詞を書いたりもして、それを休憩時間に見せ合ったりしていたんですよね。そういうところから始まりました。
──みなさん世代だとパソコンやスマホで音楽を作れる環境が、物心がついた頃には既にあったわけですよね?
Lazzy:はい。
──今の時代は譜面が読めなくても、楽器が弾けなくても、例えばiPhoneとかに最初から入っているGarageBandとかを使えば感覚的に音楽が作れますからね。
K:そうなんですよね。何か機材があればできちゃうわけだから。
Kohjiya:作り始める敷居は低くなってきていると思います。僕たちも中学の頃からアプリで作曲じゃないけど、ビートを作っていました。レコーディングブースはちゃんとしたスタジオに行かないとないから、今でも自分はデモを録る時、iPhoneで録ったりするんですよ。それをAirDropでLogic Proに飛ばしてデモを作ったりしていて。そういう感じで敷居が低くなっているのは、いいなあって思います。
──Kさんは最近、新しい自宅スタジオを作ったんですよね?
K:はい。前のスタジオよりは少し広めで快適で、心地よく作業できるのかなって思います。
Kohjiya:僕らは長崎にいた頃はLazzyの家に機材を集めて作っていたんですけど、東京に来てからレコーディングスタジオで録ったことがあるんです。他の人に見られながら録るのは緊張というか、慣れなくて。宅録じゃないと自分を出せないというか、本来の自分を発揮できないんですよね。
Lazzy:エンジニアさんとか、他の人がいたら気使っちゃうじゃないですか。
K:そうだね。
Lazzy:録ってみたのを聴いて、自分的には駄目だけど、「俺、これもう8回くらいやり直してる」ってなると「OKです……」って言っちゃうから(笑)。
AURAL:わかる(笑)。
K:そういうのもあるから、僕も自宅で全部やるようになったの。時間も気にしなくていいし。そういう点でも自宅スタジオ作って良かったなあって思う。
──あと、このコラボレーション、インターネットの時代だからこそでもありますよね。みなさんが実際に会ったのは、今年の3月31日、渋谷duo MUSIC EXCHANGEでのKさんのライブ(<K style 2021~Starting over...~>東京公演)の時だったわけですから。
K:ほんと、よくそれで曲ができたよね(笑)。
Kohjiya:俺たちは毎回そんな感じなんですけど。
K:そうなんだ?
Kohjiya:全国各地の人とネットで連絡を取り合ってやっていました。地元で音楽、特にラップとかをやっている人がほぼいなくて。今まで曲を一緒に作ってきて、東京に行って初めて会ったっていうようなことはよくありました。
Lazzy:曲はインターネット内で完成して、初めて会う日がその曲のPV撮影の日だったりとか(笑)。
Kohjiya:でも、電話とかは結構しているから、会ったことはなくても仲は既にいいんですよ。
──今回の制作の過程ではKさんとMADz’sの間で、「どういうものを作りますか?」というお話になっていたんですか?
K:正直に言うと、僕は彼らに委ねたい部分が結構あって。僕の引き出しじゃなくて彼らの引き出しからいろんなものを出し合ってもらって、そこに僕が乗っかりたいっていう考えが最初から僕の中にあったので。それをもとに僕がトラックを作って、聴いてもらって、直しとかもやったりしてトラックが完成したんです。
──トラックが完成した後の作業は、どのような感じでした?
K:トラックが完成したら、本来のコラボだったら僕が歌いたい部分は僕が作って、彼らの部分は彼らに任せるっていうのが普通だと思うんです。でも、そこに関しても全部彼らにお任せしました。僕が歌うパートまで作ってもらいましたから。ところどころ僕が作った部分もありますけど、ほとんど彼らに作ってもらったんですよね。
──MADz’sのみなさんから提案したアイディアとかイメージは、どんなことでした?
AURAL:もともとハウスっぽい4つ打ちとかをやりたいって思っていて、それを提案してKさんにビートを作っていただいたんですよね。
Kohjiya:「僕らの世代は80年代とかのシティポップをリバイバルで知ったので、そこはKさんの世代でも親しみ深いものだし、僕たちにとっても新鮮なハウス、4つ打ち、シティポップなノリのものを一緒に作れたら、いい感じなものになるんじゃない?」っていう話をしていました。
Lazzy:曲を作る時にイメージしていたのは、「今のKさんが作っている楽曲のような感じと、自分らがいつもしている感じを良い感じで融合させることができたらな」っていうことだったんです。上手くいったと思います。
──「Day 'N' Night」のサウンドは上モノ系の音が比較的抑え目で、みなさんの声の融合を活かす方向性で仕上げられていますよね。
K:彼らと一緒に曲作りをするのが初めてだったので、どういうものが来るのか正直、わからなかったんです。だからトラックは最初、すごく情報量を多めにして、いろいろ入れていました。でも、声がのっかってきたら僕が作ったトラックがすごく邪魔で(笑)。最終的には切り落としていって、なるべくシンプルで、声がバン!って前に出るような感じになりました。
──Kさんの声がコラージュされているような感じにもなっていますよね?
K:はい。それに関しては、実は秘密がありまして。レコーディングを同じ場所でするわけではないので、なるべく統一感を出したかったというか。コラボなので同じ色を出したかったんです。だから彼らが制作に使っているソフトだったり、エフェクターだったりを教えてもらって、同じような環境でこっちも録ったんです。マイクも2種類くらい試して、良いのを彼らに選んでもらって、彼らの環境に近いものにしました。だからエフェクトに関しても僕が今まで使ってこなかったような感じのものになっているんですよね。
──「Day 'N' Night」は、4人の声の絶妙なコンビネーションによって成り立っている楽曲ですから、例えばカラオケで歌うとなると、かなりのチャレンジになるでしょうね。
K:まずはカラオケボックスにパソコンを持ち込んでいただいて(笑)。
Lazzy:まず4人いないと絶対に無理ですからね。
K:そうだね(笑)。でも、最近は家でもカラオケができたりするので、友だちとか家族でパートを分けて歌ってみても面白いと思います。
Lazzy:家族で歌う場合は、誰か1人ラッパーがいないと(笑)。
──ラッパーが1人いて、「Day 'N' Night」を歌いこなせる家族って、かっこいいなあ。
K:素晴らしい家族ですね(笑)。
──話が脱線してすいません(笑)。Kさんは今回の制作の中で新しい機材もいろいろ試したそうですが、そういうことによって創作のアイディアが広がったりもするんですか?
K:そういうのもありますし、「できない」っていうことが嬉しかったりもするんですよ。機材を買ったら、やっていく内にいろいろ使い方を覚えていくことになりますけど、新しい機材を買ったら、また一からやらなきゃいけないので。そこは結構燃えるというか、いろいろやっていく内に曲ができていくんですよね。
──なるほど。
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