【インタビュー】MACO「MACOは話すよりも歌のほうが伝えられるから」
2014年にメジャーデビューし、テイラー・スウィフトのカバー「私たちは絶対に絶対にヨリを戻したりしない~ We Are Never Ever Getting Back Together」など、ラブソングを歌い続けてきたシンガーソングライターのMACO。
2019年のレーベル移籍後、配信シングルのリリースを積極的に行いながら、3年ぶりとなる待望のフルアルバム『We Promised.』が完成した。優しいピアノの音色と温かな歌声が響く「Promised.」で幕を開け、色鮮やかな音像の中でさまざまな「愛」を表現するMACOの歌声をじっくり堪能できる。さらに、配信で発表済みの楽曲をまとめたDISC-2との2枚組になっており、新曲とともに移籍から3年間の軌跡も詰め込んだ大作だ。
本作の制作前には、コロナ禍という苦難の時代の中、一度音楽から距離を取ってしまった時期があったという彼女。改めて音楽と歌に向き合ったからこそ生まれた楽曲たちについて、じっくり語ってくれた。今、MACOとして音楽を心から楽しんでいることや、改めてラブソングを歌うことへの熱い想いが感じられるはずだ。
──3年ぶりのアルバムということで、完成しての手応えはいかがですか?
MACO:曲は単発で出させてもらっていたんですけど、1枚のアルバムとしてリリースするのが3年越しになってしまったので、ファンの人たちを待たせていた分、やっと届けられるという気持ちはあります。でも、自分の中では…コロナ禍とかいろんなことを経て、満を持してこの1枚が作れて、ばっちりなタイミングだったなと思います。
──昨今の流れとしては、単発リリースのみでアルバムは作らないパターンも多いと思うんですが、いつかアルバムというかたちにしたい想いはあったんですか?
MACO:ありました。これは次のアルバムに出す時に入れたいと思って作りかけていた曲もありましたし。それが、アルバムに入っている「愛」や「Promised.」だったりするので、『We Promised.』というタイトルをつけて、その曲たちを入れられたのは嬉しかったです。
──やっぱりパッケージとして作品になるのはいいですよね。
MACO:はい。CDで出すのは本当に久しぶりなんですよね。ファンの人たちから、いつアルバムが出るの?とか、配信シングルもCDで出してほしいという声を痛いほどもらっていました(笑)。
──ミニアルバムがついてくるぐらいのボリューム感で。こうしてまとめてみて、ご自身はどう思いましたか?
MACO:「タイムリミット」から、移籍後に発表した曲を全部入れているので、ちょっと集大成的な感じがしましたね。「タイムリミット」を聴くと、もう懐かしいなあと思いますし。3年間、いろいろ葛藤とかがあったのも含めて、今はいい思い出として聴けるというか。本当に3年間がこの作品に詰まっている実感があります。
──アルバムリリース発表の時のコメントに「見つけた答えが体にすんなり入ってくるのを感じた去年の夏の終わり」とあったんですが、去年の夏に何か心境の変化や、アルバムを作るきっかけのような出来事があったんですか?
MACO:そうですね。その夏まで、音楽に対して葛藤があったというか…ちょっと音楽と距離を置いていたんです。自分にとっての一番は歌じゃないのかも、みたいに思ってしまって。どうしてそう思ったのかは、悩んでいた当時の記憶があんまり思い出せないんですけど。コロナ禍でファンの人たちと会えない状況だった影響もあるかもしれないです。でも、一度音楽と離れた時に、改めて自分が救われたり助けられていたのは音楽だったんだなって実感したんです。もちろん、ファンの人たちやまわりの人たちにも助けられているんですけど、一番は音楽だったんだなって。そう思ったのが、部屋のリビングのソファに座って、ひとりで自分が好きな音楽を聴いていた時だったんですよ。その瞬間、その音楽に思いっきり救われて、自分ももう一度歌いたいってウズウズしてきちゃって。その日に「もう一度歌いたい、歌おう」って決めました。そこから、チームのみんなに話して、このアルバム制作に本格的に入ったんです。
──やっぱりコロナ禍に入って直接ファンの方に会えなかったり声援を送れなかったり、状況が変わる中で見つめなおした部分は大きかったんですね。
MACO:そうですね。配信ライヴもやっていたんですが、なかなか慣れなくて。ライヴなんだけど…やっぱり寂しかったんですよね。それでダメージを食らって、いろいろ考えてしまって、ちょっと迷ってたんだと思います。でも、そうやってしっかり音楽と向き合わざるを得ない状況は、いい意味もあって。改めて、自分に残ってるものってなんだろう?と考えた時に、想いを言葉で紡いだり、歌うことかなって思ったんです。MACOは話すよりも歌のほうが伝えられるんだから、じっとしていられないな、止まっていられないなと思って、音楽を自分らしいかたちでやりたいと思いました。歌うことに対して、自分の引っ掛かりがなくなったのが、去年の夏の終わりかなと思います。音楽と距離を置きつつも、歌詞をメモに書いていたりはしてたんですけど、夏以降は、自分が行きたいところを目指して進めたというか。そういう想いを自発的に制作にぶつけていけたので、すごく手応えのある制作期間でした。
──なるほど。その結果なのか、アルバムを聴いた時の印象として、とても歌がストレートに届く作品だなと思って。今まではサウンドでも幅広く遊んでいた感じがあったんですけど、今回は本当に歌のためのアレンジ、歌を活かすアレンジに感じました。
MACO:嬉しいです。自分でも、より声が届くと思いました。たぶんMACOの強みはそこにしかないと思っているので。ファンのみんなも、きっとそれをずっと待っていたんだなあっていうのは、今回アルバムを発表した時に思いました。
──アルバムタイトルが『We Promised.』で、1曲目に「Promised.」という曲がありますが、この「Promised.」…「約束」という言葉にはどういう想いをこめたんですか?
MACO:「約束」はアルバムのコンセプトになっていて。いろんなかたちの約束があると思うんですけど、「Promised.」を作る上で考えていたのは、「これから約束を果たす」というより、「魂同士がすでに約束していたから、今出会うことができたんだ」というイメージなんです。このアルバムを作るまで、音楽からちょっと離れたり、悩んだり、いろいろあったけど、すべてはここに繋がるためにひとつひとつ消化していっていたのかなって。大きいターニングポイントと言える出会いがあるのは、実は昔から約束していたんじゃないかって思えて、「Promised.」というタイトルになりました。
──「Promise」ではなく、過去系になってピリオドがついてるのがおもしろいなと思いましたけど、そういう気持ちがこもってるんですね。
MACO:はい。やっぱり音楽を手放すことはできなかったし、MACOが今、歌でみんなと繋がりあえているのも、どこかで約束してたからなんだって。だから、これからはみんなとの約束を果たしたいし、まだ会えていない人とも、きっといつか会う約束をしているんだと思います。
──そのお話を伺うと、2曲目に「運命共同体」という強いワードが出てくるのも納得です。
MACO:「運命」という曲とちょっと被るかなと思ったんですけど、これ以上にしっくりくる言葉がなかったんですよね。ふたりでひとりというか、魂は1個だけど、ただ人間としてふたりに分かれただけみたいなふうに感じる時があって。そこから、こういう曲になりました。
──3曲目も「愛」というストレートなタイトルですね。
MACO:本当、そうなんですよね。だから、タイトルをみんなに言った時はびっくりされました(笑)。「愛」の歌詞は、恋人同士だけではない関係をイメージしています。「家族のような 恋人みたいな」って、ファンのみんなにも向けているし、音楽自体にも当てはまるんですよね。結構前に作っていた曲なんですけど、MACOは音楽なんだって気づかせてくれたのは、ファンのみんながいたからなので。この曲は次ライヴでみんなに会えた時に絶対歌いたいと思っている曲です。
──壮大なバラードの「End Love?」も印象に残りますが、この曲ができた時の感想はいかがでしたか?
MACO:「End Love?」はすごく時間をかけて作った曲ですね。プロデューサーの島田(昌典)さんにアレンジしていただく前とあとで楽曲の色を大きく変えてくださったんですけど、それを受けて歌詞も変わりました。レコーディングの時は、どれだけ自分の全力を歌に乗せられるかということに挑戦して。「Promised.」もそうだったんですけど、もっといけるんじゃないかと思いながら、何回もレコーディングしました。だから、すごく魂がこもっている楽曲です。
──歌詞には、友達である人に恋をしてしまった切ない気持ちが描かれていますが、このテーマはどこから?
MACO:自分が書いていた歌詞の中に、私の知り合いの方から聞いた失恋の話も織り込ませて書きました。その話が切なすぎて、MACOまですっごく悲しくなってしまって。「End Love?」にはその切なさを思いっきり詰め込みたかったので、歌詞を何回も書き直したんです。曲と、その失恋の話の切なさが共鳴して、自分の中からたくさん言葉が出てきて、最後の最後までスタジオでもずっと微調整していましたね。それだけに、みんながすごくあの曲をいいって言ってくれていて。なので、先行配信を「Promised.」と「End Love?」にしたんです。
──そういう切ない楽曲や熱い想いがこもった楽曲がある一方、アルバムのラストはクラップなどが入った軽やかなアレンジの「これは君への最初のラブレター」でポップに締め括られるのが素敵ですね。
MACO:ありがとうございます。この曲は、逆に肩の力を抜いて歌えた1曲ですね。一緒に楽曲を作ったSUNNY(BOY)くんは、前作のアルバム『交換日記』でも一緒に制作しているんですけど、SUNNYくんの曲は本当に魔法みたいで、自分の中の想いを呼び起こしてくれるんです。今回も、曲を聴いた瞬間に歌詞とメロディがすぐ浮かびました。1曲目の「Promised.」へのアンサーソングというか、完結させてくれる温かい曲というイメージだったので、これはアルバムのクライマックスとして最後の曲になるだろうなと思いながら書きました。「約束を交わしてからずっと待っていてくれてありがとう、会えなかった時間の分もこれから一緒にいようね」って、新しい約束のような詞になっています。SUNNYくんの曲のおかげで、このアルバムがすごく幸せなかたちで終われたと思います。
──確かに、幸せな気持ちになれる楽曲ですよね。切ないバラードで締め括る選択肢もあったと思いますけど、こういうエンディングにしたのは?
MACO:それが自分の今のマインドにぴったりだったんです。この曲ができて「こういうことが歌いたかったんだな」って心から思えたというか。だから、アルバムで一番この曲が好きですね。今までのどの曲よりも一番好きかも。
──一時期は音楽から離れていたという去年のお話から考えると、音楽や歌に対する気持ちが本当に大きく変わったんですね。
MACO:そうですね。歌うことが楽しいのはずっと変わらないんですけど、寂しく感じる時期があったので。でも、そうやって悩んだり、ちょっと距離を置いたりすることがなかったら、逆に「Promised.」という言葉は思いついていなかっただろうなと思います。
──MACOさんといえばラブソングという軸があるわけですが、改めてニューアルバムに向けて何を歌いたいか考えた時にも、ラブソングを大事にしたい気持ちは変わらずにありましたか。
MACO:ありました。歌詞を書きためていたメモを見返しても、やっぱり恋や愛にまつわることばっかりだったりするので。MACOが伝えたいことは、今までもこれからもラブソングだなと思います。
──コロナの影響もあると思うんですが、最近は個人主義とか多様性が語られるようになって、孤独を表現する歌が増えた印象があって。今の時代だからこそ、ラブソングを歌う意味を考えたりしますか?
MACO:うーん…ひとりでも全然いいと思うし、ひとりでいるのも幸せだなってすごく思います。人それぞれ幸せのかたちがあると思うし、もちろん誰かと一緒にいることが幸せだとか決めつけているわけじゃないので。恋したり、失恋したり、出会えたのは約束だねって思ったり…恋っていうテーマは、表現するものが狭まってしまうように感じるかもしれないんですけど。でも、その狭い世界で感じることがたくさんあるので、それを歌にしたいと思うんです。
──MACOさんが、恋愛について書きたいことは尽きないんですね。
MACO:そうですね。これからもずっとそうだと思います。ひとりの時でも恋愛のことを考えたりしますし、人が人に惹かれる瞬間ってなんなんだろう?ということに興味があるんですよ。今回のアルバムでは、それに対して「ずっと前から交わしていた約束だから」というふうな答えが出たんですけど、これから先、また違う答えが出ることもあるだろうし。最初から「この人好きだな」って思うこともあれば、「なんで恋に落ちたんだろう」って悩むこともあるし、人が人に惹かれる瞬間って人によってそれぞれ全然違うじゃないですか。そういう意味のわからないもの、人間らしいところを曲にしていきたいんです。
──5月からは2年ぶりの全国ツアーが開催されるとのことで、意気込みはいかがですか。
MACO:すごく楽しみです。こうやってインタビューでアルバムのことを話していると「アルバム制作は終わってしまったんだな」と実感して寂しい気持ちがあるんですけど、ツアーがあると思うとわくわくできますね。
──制作が終わってしまって寂しいんですか。
MACO:はい。スタジオに入っていたのが懐かしく感じちゃうくらいです。自分で音楽から離れていたくせに、今制作終わってみると寂しくて。去年の夏まではこういうふうに感じなかったと思うとおもしろいなと思います。
──それほどレコーディング自体を楽しめたんですね。
MACO:そうですね。久々だったのでちょっと緊張したんですけど、久しぶりにエンジニアさんに会って、昔のこともいろいろ思い出したりして。今回のレコーディングは、いろんなことが自分にとって大切な経験になりました。
──音楽愛が高まった状態でライヴに挑むとなると、気持ちも変わりそうですか。
MACO:すごく変わると思います。アルバムの曲もそうだし、今までの曲も大切になったので。1曲1曲ライヴで大事に歌いたいと思います。特に「愛」という曲は生で伝えたいと思っていて、作りながらライヴのステージで歌っている映像が浮かんでいたので。それがツアーで実現できるのは嬉しいですね。
──アルバムの楽曲が、これからリリースやライヴを通してファンの方々に届いていくわけですが、どういうふうに届いてほしいという想いはありますか。
MACO:曲順どおりに聴いてほしいみたいなこだわりはないので。みんなが好きなように、気になった曲を思いっきり擦り切れるまで聴いてほしいなと思います。昔は、それこそMACOのラブソングを聴いて恋をしたいと思ってほしい、恋をしてほしいと思って曲を作っていたんですよ。今振り返ると、結構強引なことを言ってたなと思うんですけど(笑)。今はそうではなくて、恋人がいてもいなくても、サウンドが気持ちいいだけでもいいですし、MACOの曲に触れて、曲を聴いて、何かを思ってくれたらそれだけで嬉しいです。
取材・文◎後藤寛子
MACO『We Promised.』
通常:CD ¥3,500- SRCL-12116※ランダム直筆メッセージカード(数量限定)
1.Promised.
2.運命共同体
3.愛
4.春一番
5.lonely
6.桜の木の下
7.End Love?
8.恋蛍
9.運命
10.これは君への最初のラブレター
Disc2(初回生産限定)
1.タイムリミット
2.3月9日
3.夏風邪
4.再恋愛
5.アマオト
6.LOVE MYSELF
DVD(初回生産限定)
・LOVE
・恋の道
・出逢い
・交換日記
・タイムリミット
・桜の木の下
・夏風邪
・アマオト
・LOVE MYSELF
・充電※bonus video
・人間活動の80%※bonus video
・夢見る私を笑わないで※bonus video
◆楽曲リンク
初回生産限定盤
通常盤
◆MACOオフィシャルサイト
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