【インタビュー+楽器紹介】生形真一(Nothing's Caved In Stone)、東阪ワンマン開幕直前に語る新曲と「“2つの初”がおもしろい」
Nothing's Caved In Stoneが2022年第一弾となる「Fuel」を配信リリースした。同作は4月9日に開催される自身初の大阪城野外音楽堂公演および、自身初のホールワンマンとなる4月20日のLINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)公演といった東阪ワンマンライブ<Bring the Future>直前にリリースされた新曲だ。「大阪野音ライブに合う曲を作ろうと思っていた」という新曲「Fuel」は結果、攻撃的なNothing's Caved In Stoneサウンドと呼べる仕上がり。技術力の高さを凝縮して、その中核に旋律を置いたここ最近のアプローチを踏襲しつつ、突進力の高いリズムがライブの盛り上がりを約束する。
◆生形真一(Nothing's Caved In Stone) 画像
BARKSは、作曲者のひとりでありギタリストの生形真一に、先ごろ大盛況のうちに終了した<ANSWER TOUR 2021-22>の手応え、ライブやツアーならではのマル秘裏話、新曲「Fuel」、そして東阪ワンマンライブ<Bring the Future>への意気込みについてじっくりと話を訊いた。また、<ANSWER TOUR 2021-22>のギターサウンドシステムの全貌も生形自身に解説してもらった盛りだくさんのロングインタビューをお届けしたい。
◆ ◆ ◆
■すごく大事なことを思い出しました
■久しぶりの場所にも行くことができたから
──まずは昨年12月から今年2月にかけて行った<ANSWER TOUR 2021-22>の手応えから聞かせてください。
生形:オリジナルアルバムを携えたツアーは2年ぶりかな、すごく久しぶりだったんです。コロナ禍のツアーということでキャパが制限されて、歓声を禁止するとかいろいろな規制があったけど、なんにせよ無事完走できたということが、すごくよかったと思っています。得られるものもあったし、ライブを重ねることでバンドがどんどん洗練されていくというツアーならではの感覚をメンバー全員が実感できたから。もちろん初日には初日のテンション感があるし、毎回俺らは全力で。その結果、途中で一回完成された感覚もあって、ちょっと慣れてしまったなと思えばセットリストを変えたり。そこからまた完成させていくということもできた。そういう楽しみ方を久々に味わえました。
──やはり本数の多いツアーはいいですね。
生形:地方に行ってお客さんの顔を見れたことがよかったですね。この2年間、どういう気持ちでいたかということもステージに立てばわかるんですよ。すごく大事なことを思い出しました。俺らはそれでも、このコロナ禍でライブをしているほうなんですよ。去年3月に「Wonderer」をリリースして、大都市を廻ったし。でも、今回は本当に久しぶりの場所にも行くことができたから。
──では、最新アルバム『ANSWER』の楽曲をライブで演奏した印象はいかがでしたか?
生形:反応がすごく良くて手応えを感じたし、自分達もやりやすかったです。『ANSWER』というアルバムはNothing's Caved In Stoneにしては結構シンプルな演奏が多いんですよ。そういう中で演奏の深さ……タイム感だったり、音色だったり、そういうものを追求できたかなというのはありますね。たとえば「Walk」は、今までのNothing's Caved In Stoneになかったタイプの曲ですけど、すごく入り込めるんです。制作中にもアルバムのキーになる曲だなと思ったし、ライブで演奏して確信しました。
──「Walk」に限らず『ANSWER』では新しい顔を見せましたが、セットリストの中で以前の曲と混ざったときに違和感などもありませんでしたか?
生形:なかったです。俺らはこれまで11枚アルバムを出していて、もう100曲以上の既発曲あるんです。今回のアルバム以外で100曲以上あるわけだから、セットリストに関してはどうにでもできるというか。『ANSWER』収録曲に似た既発曲を入れるのもいいし、真逆の曲を入れるのもいい。手段はいくらでもあるんです。だから、新曲を馴染ませるという部分では全く悩まなかったですね。今までやってきたことが実っているなと思いました。
▲<ANSWER TOUR 2021-22>
──いいツアーになりましたね。ツアーといえば生形さんは、これまで何度もツアーを経験されています。ツアー中の出来事で強く印象に残っていることや、特に忘れがたい土地などを教えていただけますか。
生形:好きな土地はたくさんあるんですけど、一番行くことができてないのは沖縄ですね。ELLEGARDENでは何度も行ったけど、Nothing's Caved In Stoneのツアーでは一回だけなんですよ。2017年だったかな。沖縄は少し異国みたいなムードもあって面白い。それに熱い人が多いという印象があって、「来てください」という声もいっぱいもらっているんです。今は時期的になかなか行けないけど、ぜひまたライブしたい。あと、印象に残っている出来事と言えば……めちゃくちゃいっぱいあって逆に浮かんでこない(笑)。
──今、ふと思い出したんですが、Nothing's Caved In Stoneの初ツアーのときに、メンバー4人でケンカになったとおっしゃっていませんでしたっけ?
生形:ケンカというか(笑)。バンドに取り組むスタンスとか、ライブに対する姿勢が原因で言い合いになったりはしましたね。ただ、めちゃくちゃ揉めたわけじゃなくて、率直に意見を言い合ったという感じでしたね。でも実は、それはわりと定期的なんです。腹を割って話すことを1年に一回とか、ツアー終了後にしてます。<ANSWER TOUR 2021-22>終了後もメンバー4人にスタッフを交えて、今後のことをいろいろ話しました。
──バンドを続けていくうえで、風通しを良くしておくのは大切ですよね。
生形:そういうことをやらなくなってしまうとバンドはダメになっていくから。
──たとえば、「あの曲のキメ、いつもちょっと突っ込み気味じゃない?」というようなシンプルなことすら言えなくなってしまうようになってはいけないし。
生形:そう。意見交換し合う場を作ろうという空気が自然とあるんです。
▲<ANSWER TOUR 2021-22>
──ではツアー先に限らず、ライブ中のアクシデントなどで印象に残っていることは?
生形:ギタリストがライブ中に、うわぁー!ってなることといえば、弦が切れたとか、音が出ないとかだと思うけど、俺はNothing's Caved In Stoneでも、ELLEGARDENでも、弦を切ったことは一回もないんですよ。
──えっ!?
生形:運がいいのかよくわからないけど、10代の頃から一回もない。でも、音が出なくなったことはあるんです。それも、よりによって吉川晃司さんのライブで、去年(苦笑)。
──……それはシビれますね。
生形:自分のバンドならまだいいんですよ。演奏を止めて「ゴメン」と言えばいいから。でも、サポートの現場ではそういうわけにはいかないじゃないですか。
──原因は?
生形:俺はライブのとき、すごく強くエフェクターのスイッチを踏むクセがあるんです。そのときはエフェクターをバコーン!と踏んだら、そのまま壊れちゃったようで、全く音が出なくなったんです。ただ、ギターテックもいるし、すぐ直ると思ってたんですよ。でも直らなくて、EMMA (THE YELLOW MONKEY / G)さんのテックさんも下手側に来てくれて、俺の前で3人くらいの人がトラブル処理してるという(笑)。結局、1曲丸々音が出なかったですね。吉川さんは、それを笑って見ていて、音が出るようになるまでMCでつないでくれたんです。 “長くかかるなー”と絶対に思ったはず。ライブ終了後、すぐに吉川さんに「すみませんでした」と謝ったら、「久しぶりに長い時間喋れてよかったよ」と言ってくれました。それが、ここ数年で一番辛い思い出です(笑)。
▲デジタルシングル「Fuel」
──サポートのときは、そういうプレッシャーもありますね。では続いて、3月30日にリリースされた新曲「Fuel」について訊かせてください。
生形:「Fuel」は去年末から今年頭にかけて作った曲です。4月の東阪ワンマンライブ<Bring the Future>に向けて新曲が1曲ほしいということもあって。最初に俺とひなっち(日向秀和 / B)とマニュピレーターの3人でスタジオに入って、デモを作ることから始めました。
──生形さんと日向さんで原形を作るという『ANSWER』制作から始めたスタイルを今回も採られたんですね。
生形:そう。以前はアイデアの断片だけとか、全くなにもない状態で、メンバー4人でスタジオに入ってプリプロをしていたけど、『ANSWER』制作から俺とひなっちで最初に形にするようになったんです。今回も2人で作りながら、メロディーはひなっちが全部作ったり。この曲はわりとひなっち主導で作った感じですね。
◆インタビュー【2】へ
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