【ライブレポート】Lenny code fiction、「ここからずっと走っていきます、君たちの感情すべてを守るバンドになるために」
Lenny code fictionのワンマンツアー<P.O.U〜Preview Of Unreleased〜>が、3月5日(土)に東京・渋谷WWWでファイナルを迎えた。
◆ライブ写真
本ツアーはそのタイトルどおり、まだ音源化されていない新曲を数多く聴けることが趣旨のひとつ。1月のファンクラブ会員限定ライブ<先行試写会>で披露した新曲20曲を、同日の来場者による人気投票を基にして、名古屋、大阪、福岡、そしてこの東京と、各地でセットリストの中軸に据え、なおかつ4公演を通してバンドがこれまでに発表してきた歴代の既存曲すべてを演奏するという、集大成感がありつつ、実験的な姿勢もふんだんに備えた試みだ。
開演時刻になると、新アーティスト写真の衣装を纏ったLenny code fictionの4人がステージに登場。SEに演奏を重ねていく流れるようなセッションを経て、彼らのアンセムと言える「世界について」が始まるなり、フロアから歓喜の手拍子が自然とあふれ出す。「P.O.Uツアーファイナル、ぶっ飛ばしていきます。よろしく!」と第一声を放った片桐航(Vo,G)をはじめ、集まったたくさんの観客を前に、ソラ(G)、kazu(B)、KANDAI(Dr)も早速いい笑顔を見せ、ハッピーな空気いっぱいでライブの幕が開けた。
「脳内」「Make my story」「Enter the Void」など、序盤はLenny code fictionの核となるライブに外せないナンバーを快調に鳴らし、会場のボルテージをみるみるうちに上げていった4人。名古屋、大阪、福岡と3日連続でワンマンを成功させてきたバンドのコンディションは最高で、約3年ぶりのツアー開催を喜びつつ、「今日も家でめっちゃ寝てきて、めっちゃ美味い弁当を食べて、体調も喉の調子もめっちゃいい!」と航も嬉しそうに話す。
王道のメニューに続けて、最初に投下された新曲は「Psycho」。うねった感じが耳を惹くソラのギターリフを筆頭に、自分たちの行く手を遮る者すべてに牙を剥くようなノリ、まくし立てるような歌が活きたレニーならではのアップチューンに、オーディエンスも既存曲と変わらぬ盛り上がりを見せる。そのリアクションを受けた航が、曲中に早くも「初めてでももう覚えたでしょ?」と自信を覗かせていたのも印象的だった。
また、映画が大好きであるだけに、元映画館だった渋谷WWWでのライブに感慨もひとしおな様子の航。「映画館ってチケットの半券を持ってたらさ、あとで(ゲームセンターの)メダルが10枚もらえたり、UFOキャッチャーが1回無料になったりするやん? あれがめっちゃ好きで」と話し、当日のチケット番号を用いたプレゼント企画を急遽行なう時間もあった。これまで演奏機会の少なかったレア曲「Time goes by」は、ステージ後方のスクリーンを使って、過去のライブやドキュメント映像とともに届けるなど、来てくれたお客さんを極力楽しませようとするバンドの姿勢もいい。
さらに「ツアーを通して今までの曲すべてを演奏してきたんですけど、ひさしぶりにやる曲もたくさんあって、コード進行をちょっと忘れてたりしてね……」と切り出し、新曲作りに注力しすぎた自分たちの有り様を悔やんだことも航は明かす。そして、過去にファンからもらった手紙を読み返し、それぞれに大切な曲がある事実に改めて気づかされたのだそう。「新曲を聴かせながら、これまでの曲も大事にやっていくので!」と放つ言葉にも、彼らの実直さがよく表れていた。
中盤では、“手の中にある寂しさに殺されて/何度夜を過ごせばいい”と全員で声を重ねるサビが美しい、ビタースウィートなミディアム曲「流動」。どうせ死ぬなら、何か作品を残して覚えてもらう人生がいい——そんな想いを乗せた、メロウに響くシンセなどアバンギャルドなアレンジが光る「Memento」と、2曲の新曲を披露。加えて、拡声器で歌うパフォーマンスありの「Colors」、幸せな日々を振り返る歌詞がツアーファイナルの雰囲気にハマっていた「Twice」と、ポップでメロディアスな側面も打ち出してみせる。
「この3年で諦められる瞬間っていうのは数多くありましたけど、まだレニーに可能性を抱いてくれるスタッフと待ってくれているみんなのおかげで、ツアーファイナルができてます」と告げるソラ。3日連続でワンマンがやれた達成感を語り合うkazuとKANDAI。そんなMCタイムを経て、ライブはいよいよ後半へ。Lenny code fictionのレパートリーにおいても最速コンボである「Showtime!!!!」「Vale tudo【MAKE MY DAY】」が繰り出されると、オーディエンスは拳を突き上げたり、ジャンプしたりとますますヒートアップ! 高速カッティングやスラップ弾きなどを駆使したロックンロールな新曲「Killer」も、フロアを大いに沸かせた。
クライマックスを前に、「苦しいことばかりでした」とこの3年の胸の内を吐露する航。リリースができない状況で、ずっと曲を書いていたこと。たくさんの人がバンドから離れていったこと。それでも強がって、悲しいとは言えなかったことなどを語り、そんな中でも残ってくれた、見つけてくれた観客たちへの感謝を伝える。そして、「正直じゃなくて、プライドが高くて、好きな人に好きと、嫌いな人に嫌いと言えない。独りよがりの俺が書いた歌詞を、いつか大きいスクリーンで流したい」という夢、自分自身の気持ちを大切にしてほしいという想いを込めた新曲「ストレージ」に続く。
“本当は胸の中こんなにもこんなに幸せたちが/多すぎて泣きそうになるけれど”——そんなドラマティックな歌詞を、「Time goes by」での演出のように、今この会場でバックに流すこともできた。けれども、それをしないのがLenny code fictionの生き方なのだろう。壮大なサウンドに乗せて、渾身の歌声が高い天井の先へ抜けていくように響きわたる。涙を拭いながらステージを見つめるファンの姿も美しい。
「いい表情を見せてくれてありがとう。ここからずっと走っていきます、君たちの感情すべてを守るバンドになるために。見ていてください!」と、ラストは「ストレージ」とともに新たなアンセムに化けそうな新曲「心から」。“この夜が明けたら/悲しみを超えたら”と、未来をその手に掴もうとする気概をしっかりと窺わせ、意義のあるツアーを大盛況のうちに締め括った。
新旧の楽曲を織り交ぜたセットリストで、オーディエンスを魅了したLenny code fiction。この日は待望の新作を6月にリリースすること、さらに全国ツアーを予定していることも発表された。ライブで味わった素晴らしい新曲がもうすぐ音源で聴けると思うと、楽しみで仕方ない。
取材・文◎田山雄士
写真◎日吉 純平
セットリスト
2.世界について
3.脳内
4.KISS
5.Make my story
6.Enter the Void
7.Psycho
8.Time goes by
9.流動
10.Memento
11.Colors
12.Twice
13.Showtime!!!!
14.Vale tudo【MAKE MY DAY】
15.Killer
16.ストレージ
17.心から
◆Lenny code fiction オフィシャルサイト
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