【インタビュー】下村亮介(the chef cooks me)「この音いいね!って言ってもらえたら僕の勝ち」

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2022年1月より放送中のテレビアニメ『東京24区』。タイトルどおり東京の24番目の区を舞台とした独特な世界観を持つストーリーは、アニメファンたちから支持を受けている。そのエンディングテーマ「255,255,255」を手がけたのが、the chef cooks meの下村亮介だ。『僕のヒーローアカデミア THE MOVIE ワールド ヒーローズ ミッション』(2021年8月公開)では、ASIAN KANG-FU GENERATION による主題歌と挿入歌の共同プロデュースを行った下村だが、今回の作品の制作はどのようなものになったのか? 普段からNATIVE INSTRUMENTSの製品を愛用し楽曲を作り上げているという彼に、その使用法なども交えて語ってもらった。

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■声を楽しむという意味では
■こういう楽曲は理にかなっているんじゃないか

──アニメ『東京24区』のエンディングテーマ「255,255,255」は下村さんが作詞、作曲、サウンドプロデュースすべてを手がけられていますが、楽曲制作にあたってどんなリクエストがあったのでしょうか?

下村:“こういう音楽にしてほしい”というような、直接的なリファレンスとなるものは明確にはありませんでした。3人の主人公のCV(声優)の方々が歌うけれど、いわゆるキャラソン的なものではなく、巷で流れていても1つのポップソングとして伝わるような普遍性を持たせてほしいと言われて。あと、『東京24区』の舞台となっている東京の24区目が、ちょっとアンダーグラウンドな場所なので、ヒップホップのようなカウンターカルチャーの匂いがしていたら嬉しい、と。the chef cooks meの楽曲も聴いていただいていたようで、それ以外はお任せしますという感じでしたね。

──楽曲にはthe chef cooks meのテイストが取り入れられていると感じましたが、アニメの世界観とのすり合わせはどのようにしたのでしょうか?

下村:ミーティングの後に、台本や絵コンテ、あとは3~4話くらいのアフレコデータをもらいました。ラップっぽい要素がほしいとおっしゃっていたので、声優さんたちがどんなテンションで演じられているかをキャッチした上で、キャラクターを分析しながら、声優さんの声を活かすにはどんなふうに韻を踏んで詞を作ったらいいかを考えて。こんな言葉を言いそうだなとか想像したり。作中のセリフや描写から、言葉を引用したりイメージをつなげてリリックにしていきましたね。サウンドに関しては……好き勝手にやらせていただきました(笑)。都会的だけど、物語自体はハッピーなヒーローものというわけではなく、陰鬱な展開も多いので、そんなシーンにも対応できるようなバースを作ったりしました。

──主人公3人の歌やラップをうまく絡ませるのに苦労したりは?

下村:主人公は1人ではないので、3人をなるべく均等に扱ってほしいという要望があって。アニメのエンディングで使用される尺は89秒ですが、その中で3人のマイクリレーを均等に、それぞれの個性がうまく出てくるようにするのが一番難しかったかな。もうちょっと尺がほしいなって思いました(笑)。


──ピアノのイントロから始まる曲ですが、それは都会的な雰囲気を出すためだったんでしょうか?

下村:当初のデモではギターのバージョンも作ったりしたんですけど、僕はもともとキーボードを扱うのが最も得意なのと、アニメの雰囲気からもローファイなピアノが“呼んでいる”なって思っていたんです。それで、最終的にピアノスタートでいこうって決めましたね。

──ちょっと歪んだ感じ、いわゆるピアノのきらびやかな感じとは違うところが、アニメの世界観と合っているなと感じました。それ以外に使った楽器の音色はどのように決めたのですか?

下村:昨今のヒップホップトラックとかソウルトラックみたいなものは、大抵生ドラムやドラムマシンからサンプリングしたものでビートを構築していると思うんですけど、制作側からできれば生楽器を使ってほしいというリクエストがあったので、僕の周りのミュージシャンにお願いする前提で、イチから構築していったんです。ドラムの音もどちらかというと綺麗なものというよりは、歪んでいるというかザラザラしているような感じで出せたらいいなと思って、レコーディングで叩くドラマーに意図が伝わりやすいように、NATIVE INSTRUMENTS(以下、NI)のプラグインを使って歪ませたりしました。



ギターも入っていた方がアクセントになると思ったので、ずっと鳴っているわけではなく、たまに登場させたり。シンセに関しては、音を重ねて同じ旋律を弾いているんですけど、いろいろなシンセをレイヤーしている部分が多くて。その中で多用した音源が、Play SeriesのLO-FI GLOWです。背景の幕になるような音として、同じくPlay SeriesのCLOUD SUPPLYのパッドを使ったりしました。ピアノはNOIREを使っていますね。リバーブとかもRAUMを使っていて……もうほぼすべてNIですね。

──『僕のヒーローアカデミア THE MOVIE ワールド ヒーローズ ミッション』では、ASIAN KANG-FU GENERATION(以下、アジカン)が担当した主題歌「エンパシー」と挿入歌「フラワーズ」を共同プロデュースされていましたが、今回の『東京24区』の「255,255,255」の制作は、それとはまた違いましたか?

下村:「255,255,255」に関しては、作詞、作曲、サウンドプロデュースのすべてを引き受けているという意味で、大きく違うところはありますね。『僕のヒーローアカデミア〜』のアジカンの楽曲に関しては、第二のメンバーというか、長年サポートしているのでバンドとのコンセンサスもある程度取れている上で、客観視できる役割として呼ばれたのかなと思うんです。そこでは編曲、プロデュースとしての立場だったので、バンドがこうしたいっていうことと、映画制作サイドがアジカンに望んでいるものとの間でバランス取って立ち回ったような感じで、どちらかというとなるべく俯瞰的に見ていた部分があります。

アジカンは、1人のファンとして彼らを見れたりもしますし、プロデューサーとして関わったのは初めてだったので、そういう楽しさはありました。自分が好きなアジカンのメンバーの個性をピックアップするのは、自信があるというか。「255,255,255」については、アニメ制作側からほとんど指定もなかったですし、デモを提出した時もあまり修正がなく、“いい感じです、お任せします!”って言っていただいて。自由にやらせていただきましたが、逆のプレッシャーもありましたね。

──アニメファンの方からは「255,255,255」は、アニメの曲としてはお洒落だっていう感想が届いているそうですね。

下村:僕自身、音楽がお洒落と言われることをどうとらえていいかわかってない部分はあるんですけど(笑)。確かにアニメのCVの方が歌うキャラソンというものには、わりとアイドル風な楽曲、きらびやかな楽曲が多いと思うので、「255,255,255」は斬新なのかなとは思います。アニメの主題歌やエンディングテーマは、最近いろんなアーティストさんが歌うようになりましたよね。昔は速い8ビートのロックな曲が多かったと思うんですけど、それこそ『呪術廻戦』とか『鬼滅の刃』とか、さまざまなパターンの楽曲が出てきているという印象があります。そういう昨今の流れを考えると、ヒップホップのような音楽がアニメに親和性がないとも思わないので。ヒップホップやソウル、R&Bのような音楽って、ギター・サウンドで飾ってない分、曲が音で埋まってないんですよね。なので、声優さんの声にフォーカスしやすいのではないかと。

──確かに「255,255,255」では、それぞれのキャラクターの声がよくわかります。

下村:実は声を楽しむという意味では、こういった楽曲って理にかなっているんじゃないかなって思ったりします。

■ライブでもレコーディングでも
■NOIREには必ず反応されます

──下村さんの制作環境としては、基本はラップトップとNIのKOMPLETE KONTROL S61 MK2とお聞きしました。

下村:そうです。それは変わりません。DAWは主にAVID Pro Toolsですね。ビートを組む時はNIのMASCHINEを使ったりしています。

──音源としては、KOMPLETE 13 ULTIMATE Collector’s Editionをお持ちだそうですね。

下村:KOMPLETE 13がほぼ主力ですね。KOMPLETE 10から使っているんですが、年を重ねるごとに仲良くなれている気がします。NIがこういうプリセットネームを付けた時はこういう音にする傾向があるな、とか(笑)。僕自身幅広く音楽を聴いているんですが、アーティストを模した名前や楽曲を感じさせるようなものを見ると、NIの製作の方々も音楽を好きなんだなぁと。あと、その名前に年代感をうまく合わせてくれているんですよね。その辺は親和性をすごく感じるというか、僕が聴いてきた音楽と近いところがあるんじゃないかなって。


──KOMPLETE 13の収録音源でよく使うものというと? 

下村:先ほども挙げましたが、ピアノ音源のNOIREですね。今回の「255,255,255」もそうだし、アジカンの楽曲にしても大活躍しています。

──NOIREのどんなところが魅力的なのでしょうか?

下村:ドイツの作曲家でピアニストのニルス・フラームが監修しているんですが、いわゆる綺麗なピアノを鳴らす音源というよりは、プリペアドピアノみたいな感じで、遊び心があって現代音楽にも通用するようなピアノの使い方できるんです。クリアすぎるピアノっていうのは、僕自身そこまで扱うのが得意ではなくて。NOIREは、ちょうどよく後ろにいってくれたり、汚れてくれたり、ここ一番って時にキャラクターを発揮してくれるんですよ。そういう音を出すためにエフェクトをどう設定すればいいか悩むところを、NOIREはツマミひとつで簡単に出してくれる。ライブでも使っているんですが、耳のいいローディーさんだと、なんのピアノ?って聞いてきますね。


──他によく使うものはありますか?

下村:これも先ほど挙げましたが、Play Seriesのものはいっぱい使います。LO-FI GLOWはアジカンでも使ってますし、LiSAさんの「Letters to ME」の編曲にも使った気がします。CLOUD SUPPLYもそうですね。あと、ドラムのアクセントとして使うのが、BUTCH VIG DRUMS。これが相当クレイジーな音がしているんです。ニルヴァーナの『ネヴァーマインド』のプロデューサーで、ガービッジのドラマーのブッチ・ヴィグさんが監修したものなんですが、NIの方に面白いですよって薦められたんですね。それで使ってみたら、めちゃくちゃアクセントになるなって。結構暴力的な歪みがかかっていたりするんですけど。




──では、シンセでよく使うのは?

下村:SUPER 8っていう、ビンテージシンセをイメージしたような音源ですね。この音はROLAND Jupiter-8に近いのかな?とか、SH-101を模してるのかな?と思うような、いろいろな音色が入ってるんです。SUPER 8はデモの時によく使うかな。汎用性が高い気がします。僕は、MOOG Minimoog Voyager、SEQUENTIAL Prophet、Jupiter-8、YAMAHA DX7などを使ったりもするんですけど、必ずしもハードウェアのシンセがその楽曲に対して最高かというと、そうでもないと思っていて。デモでなんとなくいじって作ったシンセの音がハマりすぎちゃって、最終的にハードウェアのシンセでリプレイスしてもなんか違うってなったりすることもあるんです。ソフトウェアのシンセでは、そういうマジックが起きやすい気がしますね。あと、MONARKもよく使います。Minimoogのエミュレーションのような音源なんですけど、Minimoog Voyagerを持っているにもかかわらず、最終的にMONARKのシンセベースに落ち着くということもよくあります。それからシンセではないですが、MALLET FLUXやCLOUD SUPPLYも最近よく使ってますね。

──iZotope社のVocalSynth 2もよく使われるそうですね。 

下村:これはお世話になってます! 2019年にリリースされたthe chef cooks meのスタジオ・アルバム『Feeling』に入っているボーカルシンセものとか、オートチューン的なボコーダーっぽい音源などには、ほぼすべてで使っていると思います。去年出したシングル「Ticket is a Love」でも使ってますし、「255,255,255」やアジカンの楽曲でも使ってます。ただ、結構エグく使おうと思えば、すごく主張させて、いかにも“ボーカルシンセです”って感じにできるんですけど、他の使い方もあるような気がしていて。例えば、ささやかに使って、後ろに回したい声にかけたり。あと、声優さんは忙しい方々が多くて、レコーディングに時間をかけられないとかということもあるので、そういう時に何本か録らせてもらったボーカルデータのピッチを変えて重ねて使用したりとか。

VocalSynth 2はフィルターやエフェクターも充実しているんです。そういったものを使って、声を後ろに回したり、横に広げたり、違うラインを生成したりもします。あと、デモでハーモニーの積みを作る時にも、鍵盤にアサインしてボコーダーを話声で弾いてみて、このハモ気持ちいいなとなったら採用したり。昨今、スタジオを使って豪勢にレコーディングできるプロジェクトってそんなに多くないと思うんですけど、そんな場合でも、ボーカルデータを増やしたい時や広がり出したい時にはものすごく重宝すると思います。もしかしたら、そういう使い方しているのは僕だけかもしれないですけど。

──アレンジの過程で、NI製品をはじめとした音源のチョイスはどのように行うのでしょうか?

下村:僕のやり方としては、まずドラムでビートを作ってから、ベースラインやコード楽器を入れていくんです。最初のドラムの音がおおよそ決まったら、 “ドラムはこういう音だからシンセはもうちょっとフワっとしていたいな”といったような感じでイメージしていきますね。まぐれで引き当てるパターンもあります(笑)。行き詰まった時に、どんな音だっけ?と試してみたら、それが良かったり。最初からキャラがつかめているものに関しては、絶対こういう音が出せるっていうプラグインを選んで使っていくっていうパターンもあります。そこら辺は臨機応変ですね。

──そういった音色を選ぶ時に、やはりKOMPLETE KONTROLは使いやすいですか?

下村:間違いなく使いやすいです。KOMPLETEの音源を使う上では、KOMPLETE KONTROLがあった方がいいですね。音色を選びやすいだけでなく、アナログシンセみたいに使えるんですよ。ツマミにパラメーターがアサインされているので、何小節かかけて音をジワっと変化させていきたい時などに、ツマミをいじりながら録音したりします。僕はもともとアナログシンセから入っているので、手動でやった方が気持ち良くできるんですよね。イメージが一番反映できるというか。

──ところで、NI製品はいつ頃から愛用されているのでしょうか?

下村:2015年にアジカンの『Wonder Future』っていうアルバムが出た時のツアーで、思い切って制作よりもライブでソフトシンセを使おうと思ったんですよ。それでKOMPLETE 10を買ったのかな。その後、NIの方に出会って、11にアップグレードしていただいたんです。

──NI製品の気に入っている部分というと?

下村:ソフトシンセに大々的に手を出したのがそのタイミングだったので、それ以外のものをあまり使ってはいないんですけど、NIの製品はプリセットの段階で良い音がするんですよね。プリセットって可能性を提示してくれるものだと思うんですよ。この音源はこういうことができます、こういう音を持っています、こういうキャラクターですっていうのを教えてくれる。先ほども言いましたが、音楽を純粋に好きな人が作っているプロダクトって、その音を聴いているだけで、音楽が好きな人はテンション上がったりするので。楽しく作業ができるんですよね。お仕事としてやらなくて済むというか。どんどんバージョンアップされたり、新しいものも出てくるんですけど、全部楽しくて、すごくポジティブにやれるっていうのがNIの一番好きなところですね。楽しくなければ音楽は作れないですから。

──人には教えたくないけれど、下村さんが絶対使ってしまうNIの必殺音源、機材はありますか?

下村:教えたくないって思うことは全然なくて、僕は周りにどんどん言ってしまうタイプですね。というのも、曲のボイシングが違えば音の印象は変わりますし、ツマミの微細な動かし方で音のアプローチも変わるので、その人の個性っていうのはものすごく反映されやすいと思うんですよ。今、自分にとって必須なのは、MASCHINEですね。リズム作る上で絶対に手離せない機材になってます。KOMPLETEでいえば、ピアノ音源のNOIREは使った方がいいんじゃないかなって思う音が多い。ピアノってよく使う音色だと思うし、耳を引くような音が必要な時でも、歌の後ろにささやかにいてほしい時でも、幅広く使えると思います。

あとPlay Seriesは、プリセットの音を含めてすごく構造がわかりやすいんですよ。シンセサイザーに明るくない人は、カットオフとかLFOとかいう名前に戸惑ったりして断念しちゃうこともあると思うんですけど、そういう名前がツマミにあまり使われてないんですよね。ここをヒネったらこうなるんだっていうのがすごくわかりやすく作られていて。鍵盤楽器やシンセに詳しくない人でもPlay Seriesは使いやすいし、階層を深く進んでいくとすごく細かくいじることができるので、逆にシンセ好きな人も楽しい。どっちもうならせるような仕様になっています。

──下村さんは、ハード/ソフト問わず、新しい機材はどんどん試したいタイプでしょうか?

下村:試したいタイプですね。やっぱりいろいろ使っていくことで、こういう製品があったらいいなって、皆さん感じると思うんですよね。その“あったらいいな”っていう製品を実現してくれるスピードが、NIはすごく速い気がしていて。細かいところに手がとどくなって思っていますね。

──近年の機材の進化は、ご自身の制作にどんな影響を与えていますか?

下村:ものすごく影響がありますね。1つ気に入った音に出会えたら、そこから曲が作れたりしますし。それぐらいのレベルで絶大な影響を及ぼすと思います。


──最近の曲で、そうやって影響を受けて作ったものはありますか?

下村:まだ曲として完璧に出来上がっているわけでないんですけど、最近NIの方に勧めてもらったSESSION BASSIST - PRIME BASS。これは可能性がすごくありますね。サンプルパターンを弾いてくれるんですよ。僕自身、結構自分でベースを弾いちゃったりするんですけど、そこまで上手なわけではないので、このニュアンスが出したいけど出せない、でも誰かに頼むのもちょっと大変だなって思った時に、PRIME BASSで弾いてもらったスラップのワンパートだけを使ってトラックに貼り付けたりしています。つい先週の話なんですけど(笑)。8ビートのダウンピッキングとかもニュアンス出して弾いてもらって、4小節だけ使ったりとか。僕はどんどん音色を変えていくのが好きなので、シンセベースとエレキベースのサンプル音源をうまく使いこなすと、それによって面白い効果が得られるっていうのが最近わかりました。

──アジカンはじめ他のアーティストに関わることと、アニメのテーマソングを作ること、それにご自身のthe chef cooks meの活動で、それぞれ特徴的な機材などありますか? 

下村:そこはなんとなく分けますね。その人たちがどういうアプローチをしてほしいのか、どういう立ち位置で自分にいてほしいのかで使う楽器は選んだりはします。どんな音楽を聴いているのかっていうのをなんとなくリサーチして、だったらこの音がいいとか、このプラグインが好きだろうって想像して、現場に持っていきます。昔、カセットテープとかMDとかに好きな曲を録音して友達とかに渡すっていうやりとりがあったと思うんですけど、まさにそんな感覚に近いですね、機材や音を選ぶのは。この音いいね!って言ってもらえたら僕の勝ち、みたいな(笑)。

──周りから評判のいいNIの音源や音色は?

下村:ライブでもレコーディングでも、NOIREには必ず反応されますね。DAWやソフトシンセのことをそんなに知らない人でも、鳴った瞬間に、この音めっちゃいいですね!ってなるパターンが多いです。他にも、ここまで名前を挙げた製品は、みんな好きって言いますね。あと、SESSION HORNS PROなどもライブで使いますが、ピッチベンドでフォールができるんですよ。それ、どうやってやるの?って言われましたね。これまでハードウェアのシンセだと、基本的にはピッチで下げるかグリッサンドで下げるしか奏法はなかったと思うんですけど、SESSION HORNS PROはキースイッチを使ってかなり細かく操れるので。びっくりされましたね。

──では、これから制作を始めたいという初心者にはどんな機材を勧めますか? 

下村:DAWに関しては、いろんなチュートリアル動画を見て好みのものを選んでもらうとして、ソフトシンセに関しては、やっぱり自分がすごく使っているということもあるので、KOMPLETEシリーズを勧めますね。ただ、本当に初めて使うっていう人にとってはチョイスが多いのは障害にもなりかねないんですけど、ベース、ギター、ドラムを全部弾ける人はなかなかいないと思うので、それを全部カバーしてくれるのはKOMPLETEシリーズかなって思います。KOMPLETEと出会って面白かったのは、使ったことないハードウェアのシンセの音がプリセットで入っていたりするので、“このシンセってこういう音が出るんだ”っていうように、昔のビンテージシンセを学べる機会になったこと。ドラムマシンにしても、ROLAND TR-808は有名ですけど、TR-909やTR-707の音はよく知らなかったりします。そういったサンプリグ元をうまく明かしてくれるようにプリセットネームが付いているので、昔のハードウェアに対して橋渡しとなる役割もしているなって思いますね。導入としてもいいですし、即戦力にもなるし。のちのちいろんな音楽知識が身に付いていって、例えば、ストリングス使いたいなってなった時に、いろんな種類の音源がそろっている。そういう意味で、買って損はないと思うんですよ。さっきも言いましたが、ポンと音を出してかっこよければ、それだけで楽しいはず。そういう機会を与えてくれる会社のプロダクトは買いたいですよね。

──下村さんの今後の活動について教えてください。

下村:今、the chef cooks meの楽曲をひたすら作り続けているんですけど、この時勢もあり、いつ発表するかを悩んでいて。でも、コロナ禍になってから編曲やプロデュースの仕事をさせてもらうようになって、その楽しさを感じてきているので、2022年はしっかり自分のアルバムをリリースしたいなって思います。ミュージシャンなので、キャリア自体は60歳になっても70歳になっても自分が健在であれば続きますが、誰かと一緒に音楽を作る時間というのは生きている中でなかなか限られていると思うんです。だから今、自分が好きだなっていう人もそうだし、自分を選んでくれる人もいいですし、より多くの人たちと音楽を作りたいんです。今年は去年よりもっといろんな人と一緒に音楽を作りたいなって思っています。

   ◆   ◆   ◆


下村亮介も愛用しているNATIVE INSTRUMENTS KOMPLETE 13と、iZotope のMUSIC PRODUCTION SUITE 4.1を組み合わせた、プロデューサーと作曲家のための制作ツールキットが期間限定でリリース。このオールインワンのスタジオ向けバンドルでは、オーケストラのスコアリングやシンセの演奏などが、オーディオ修復、ミキシング、マスタリングという1つのワークフローに統合されている。2022年3月22日まで大幅割引セールが開催中だ。

取材・文:山本奈緒


「255,255,255」

2022年2月23日(水)
SVWC-70580 ¥1,320(税込)
※キャラクター原案FiFS描き下ろしチェンジングジャケット付き
蒼生シュウタ(CV.榎木淳弥)、朱城ラン(CV.内田雄馬)、翠堂コウキ(CV.石川界人)
Produced by the chef cooks me(Aniplex)

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