【インタビュー】空想委員会、復活「3人揃って初心に戻れた」

■僕らはガチっとやるよりも、自由にやっていた方が似合うバンド

──いい話ですねぇ。三浦さんは2年間で何がスキルアップしたんですか。ユーチューバー以外では。

三浦：いやぁ、遊び心ですかね。

佐々木：あはは。でも一番大事よ。

岡田：マジで大事。

三浦：いかにふざけるか？というところを取り戻せたというか。あんまり自分のバンドの音源を聴かないんですけど、たまに振り返って、「何をサラリーマンっぽくバンドやってたんだろうな」って、「真面目にやってんじゃねぇよ」って思ったんですよ。当時はそれしかできなかったし、真面目にやるのも大事なことなんですけど、でも僕らが憧れていたバンドがそうだったか？というと、それとは全然違うんですね。たとえば僕はオアシスが好きなんですけど、あの破天荒ぶりが好きでバンドを聴いてたのに、何を僕は真面目なことばかり言ってんだろう？みたいな。

──うーむ。なるほど。

三浦：それを捨てて、昔の好き勝手にやってた頃に戻れたらいいなとは、ずっと思ってました。


──背負いすぎてたんじゃないですか。バンドの責任を、一人で。

三浦：そうかもしれない。責任がないほうが、本領を発揮するタイプというか。

佐々木：だから僕らの仕事は、いかに三浦くんに背負わせないか。

岡田：いかに遊ばせるか。それがこの10年でわかったんですよ。（三浦が）ふざけて遊べてる状態が一番いいんだって。放し飼いにしておくと、本領を発揮する（笑）。

──結論出ましたね。三浦隆一を放牧せよ。でも真面目な話、何かしらの仕事を真剣にやりすぎて、悩んじゃうタイプの人には、すごく響く金言かもしれない。

佐々木：ミュージシャンに限らず、大人にはいろんな責任があって、それを全うしているとは思うんですけど、でもやっぱり音楽って自由だよね？って思うじゃないですか。そこで僕らは、ガチっとやるよりも、自由にやっていた方が似合うバンドなのかな？ということは、復活して1年も経ってないけど、すでに感じてますね。自由と手抜きとは違うし、手抜きは1ミリもしていない。自由にやってるけど、やる時はやるぜという感じかな。


──そうすると、こういう音楽ができあがる。アルバムの話に戻ると、「全速力ガール」が、歌詞もサウンドも含めて「ザ・空想委員会」だとして、さっき出た「大河の一滴」や、あと「Dodo」や「積み木遊び」とかには、新しい空想委員会が見えている気がします。家族ができたり、大人になって人生の方向が変わったり、そういう視野が歌詞にどんどん入って来ていると思うので。

三浦：「Dodo」には、自分の今をかなり投影できたなと思ってます。売れて行った同期のバンドマンとか、逆に、家族がいるからバンドを辞めた友達のこととかも入ってます。この立場にいるからこそ、今歌える歌詞ですね。「積み木遊び」は、これも試聴会で初めて言ったんですけど、二人（佐々木＆岡田）のお母さんのことを歌ってます。直接やりとりはあんまりしないんですけど、本当にバンドを支えてくれてる感じがあるんですよ。僕は、両親には直接歌えないんですよね、恥ずかしいんで。だから、二人からそれぞれのお母さんへの思いを、俺が勝手に代弁してる感じです。岡田くんの作曲なので、「岡田くんがこれから幸せを積み上げていくのを、お母さんは見ていてね」ということを、僕が勝手に歌ってます（笑）。

岡田：あはは。

三浦：余計なお世話かもしれないけど。

──そういう優しい世界とは裏腹に、道ならぬ恋を匂わせる、あやしい歌もあったりして。

三浦：「トリガー」ですね。

──そんな経験がおありですか（笑）。

三浦：いやー、現実だったらたぶん歌えないですね。でも、前は青春の中に恋愛の話があったと思うんですけど、年を取ったら恋愛しちゃ駄目なのか？というと、そうではないと思うので。年を取って、昔とは状況が違う中で、じゃあどうするの？と考えた時に、たまたま好きになった人が結婚してるかもしれないし、とか考えるんですよ。そこで諦めるのか、一歩踏み出すのか、そこは俺に権利があるぞという歌詞です。もしそうなったとしても、僕はトリガー=引き金は引かないと思いますけど、そういうことも考えるようになりました。ぜひ、そういう状況になる方に聴いてほしいですね（笑）。


──今回は、1曲1曲が深い。空想でありながらも現実的なメッセージ性を持つ曲が多くなって、ファン層がぐっと広がる予感がします。

三浦：やっぱり2年間の生活というものが、けっこうでかいので。自分がどう生きていくのか、周りの人がどう生きていくのかを見ていたから、書けた歌詞かもしれないです。前と違うのは、歌ったからには「じゃあ俺はどうするんだ？」ということがけっこうあって、「全速力ガール」は特にそうなんですけど、自分が誰かに引っ張られる歌詞でありながら、聴いてくださる方に対しては、自分が引っ張る側にならなきゃいけないという感じが今はあります。バンドの活動を見てもらって、「こいつら楽しそうに頑張ってるな、じゃあ俺も頑張ろう」みたいに思ってもらえたらいいなというのは、昔はなかったですけど、今はどの曲においても、歌った責任があると思うので、そこは見せなきゃいけないなと思ってます。

佐々木：このアルバムを持って、夏までツアーを回るので、いろんな人に来てほしいですね。アルバムは久々なので、この1枚を広められるように、まずは活動していこうと思ってます。すごい苦しんで生んだ曲たちを、もっと広めたいので。出して終わりじゃなくて、もっと広めるために頑張ろうと思います。

取材・文◎宮本英夫
撮影◎大橋祐希