【インタビュー】空想委員会、復活「3人揃って初心に戻れた」

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2年間の活動休止を経て、空想委員会が僕らの元に帰って来た。あの頃よりも確かな自信を胸に、大人の深みを増した楽曲と、バンドキッズのままの遊び心を携えて──。

◆撮り下ろし写真(10枚)

再始動第一弾の最新アルバム『世渡り下手の愛し方』は、インディーズデビュー盤『恋愛下手の作り方』から10年後のバンドの等身大を映し出す鏡のような、愛すべき作品に仕上がった。2年間の休止の間に何があったのか、そして再び始まる3人の旅はどこを目指すのか? 三浦隆一(Vo,G)、佐々木直也(G)、岡田典之(B)に話を聞こう。

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■やっぱり音楽は面白いなと思えたので、戻れた

──何はともあれ、「おかえりなさい」ということで。まずは復活に至る経緯を聞いてみたいです。

佐々木直也:やっぱり、コロナでいろいろあったことがすごく大きいですね。もともと「活動休止」について、解散なのか再始動なのかのけじめをつけないと、待ってるファンに申し訳ないという気持ちがあったので。どっちにしろ、いつか発表しないといけないと思いながら2年間を過ごしていたんですけど、コロナが流行って、いつ音楽をやれるかわからない状況になったじゃないですか。「やりたいと思った時にできなくなったらどうしよう」と思ったし、空想委員会は僕のホームなので、やれる時にやりたいと思ってまず岡田くんに声をかけたら、「おう、いつでもやりたいよ」と。

岡田典之:休止したちょっとあとは、「まだできないな」と思っていたんですよ。結局何も変わらないかなと思って、だったら今は一人でやれることをやろうと思って、音楽活動を続けてきたんですけど、2年後に復活の話をもらった時に、ある程度自分の中に自信もできたし、それでOKと言ったんです。


──今思うと、あの2年間は必要だったと。

岡田:大正解でしたね。(佐々木に)ナイス判断でした。

佐々木:僕も 2年間でいろんな現場を経験して、やっぱり音楽って素晴らしいなと再確認できたし、あらためて空想委員会には独特な力があるというか、ここでしかできないことはあるよねと思いながら、2年間活動していましたね。

──SNSを見ていても、ファンの思い入れがすごいんですよ。「空想は私の青春です」とか。

岡田:確かに、その言葉はよく目にします。こっちから言わせてもらえば、空想委員会が僕らの青春なんですよ。青春が戻って来たみたいな感じです。

──いい話。ねぇ三浦さん。

三浦隆一:終わった気でいましたけど、終わってなかったということですね。僕はもう、活動をストップした時には、音楽を続けるかどうかという感じだったので。本当に音楽をやってるのがきつくて、足を洗ってサラリーマンになろうかなって。

佐々木:悪いことしてたみたいじゃない(笑)。

三浦:そう思ってたんですけど、お世話になってるディレクターさんに「ソロの音源出そうよ」と言ってもらったり、いろんなライブに呼んでもらったりしてるうちに、やっぱり音楽は面白いなと思えたので、戻れたという感じです。本当に周りの方のおかげです。周りに引っ張ってもらわなかったら、たぶんやってないです。


──ニューアルバム『世渡り下手の愛し方』を聴くと、歌詞の世界はいい意味で変わったと思いますし、ものの見方は同じでも、見える景色が変わったと思います。もう、幼い恋愛の空想ではないというか。

三浦:年を取りましたね、さすがに。ただ、ずーっと歌ってきた「あぁ、恋愛うまくいかねぇな」という感じが解決したわけでもなく、まだ残ってる部分があるので、根深いです。それを全部ひっくるめて、「恋愛下手」だと言っていたのが、結局「世渡り下手」だったんだなと。全般的に下手だったということですね(笑)。

──10年前のファーストアルバムが『恋愛下手の作り方』で、今回が『世渡り下手の愛し方』。つまり、そういうことだったと。

三浦:だから古い曲も未だに歌えるし、新しい曲も歌えるんだと思います。

──三浦さん、2年の間にソロアルバムも出しましたけれども。ソロ曲と空想委員会の曲って、作る時から違うものですか。

三浦:ソロの場合は「僕がどう思うか」が多いんですけど、空想委員会は「僕と誰か」「僕と何か」という関係性の歌詞が多いので、今回もそうなりましたね。ただ「君」という対象が、今までは女の子だったんですけど、たとえば「大河の一滴」という曲だったら、これは岡田くんのことを歌った曲で、岡田くんの人生を僕から見るとどうなるか?というふうに、対象が変わりました。この曲は完全に、岡田くんのおめでたいニュースのあとに書いたので(※2019年に結婚を発表)。

──ああー。なるほど。

三浦:僕は結婚してないので、自分の一生は自分で終わるかもしれないですけど、岡田くんの立場になったとして、もしも子供が出来たら、バトンを渡す係になるんだなということを歌った曲です。

──岡田さん。それっていつ知ったんですか。自分のことが歌われてるって。

岡田:最近ですね。アルバムが完成して、試聴会をやった時に、曲の説明をする際に「実は…」みたいに話し始めて、「えっ!」て。

三浦:しかも、直接言ってないから。ファンの人に言ってたからね。

岡田:そうそう。ファンの人に説明してるのを、一緒に聞いていたという(笑)。

三浦:「大河の一滴」は岡田くんの作曲なので、そういう歌詞にしたんですね。逆に「1783」は佐々木の曲なので、佐々木から見た先輩というストーリーにしています。相手はB’zの稲葉さんなんですけど、佐々木に乗り移った三浦から見た稲葉さんみたいな(※佐々木はB’zの大ファンとして有名/「1783」=稲葉さん)。

佐々木:タイトルが「いなばさん」ですからね(笑)。わかりやすい。 

三浦:逆に、今まではそんなことができなかったんですよ。ふざけすぎじゃね?って言われたと思うし。
佐々木:そうだね。今は自由に書けてると思うので、共感する人もすごくいると思います。


──「1783」は本当にありそうな、会社の上司と部下のストーリーになってますからね。

三浦:今は、インディーズデビューする前の感覚に近いです。遊んでる感じ。軽音部でバンドやってて、「曲できたんだけど聴いて」みたいな、そこまで戻った気がする。楽しいです。

岡田:いろんな経験をさせてもらって、ビシッと決めてやってきたんですけど、そういうことを経験できたからこそ、3人揃って今は初心に戻れたのかな?と思います。ほんと、楽しくてしょうがない。

──いいですねぇ。じゃあ新曲はさほど悩まずに、すいすいと。

三浦:僕はそうですけど、佐々木は吐くほど悩んでました。

佐々木:アルバムは3年振りなので、ここでショボイ音源を出したらヤバいぞというプレッシャーと、2年間一人で活動してきたので、二人に「あれっ?」と思われたら嫌だなというプレッシャーもあったし。アレンジにはすごく悩みました。

──では、個人的ベストアレンジ賞は?

佐々木:えー!? 何だろう。どれもうまくいったかなと思うんですけど、一番「これは空想委員会だな」というふうにできたのは「全速力ガール」ですね。ザ・空想委員会のアレンジができたなと思います。長年やってると、「ザ・」を出すのがすごく難しいんですよ。また同じじゃんって思っちゃうんですけど、それが自然にできたのが「全速力ガール」だったので。この間、ツアー初日(12月28日、渋谷GUILTY)でやったけど、すごい力があったよね。



岡田:あったね。曲の生命力がすごかった。自分が客席にいたら、ぽかーんとしたと思う。やってやった感がありました。

──岡田さんのお気に入り曲は?

岡田:僕も、やっぱり「全速力ガール」ですね。2曲目の「縋る蜃気楼」も好きで、リード曲にしたいなとちょっと思ってたんですけど、空想委員会らしさを見せるには「全速力ガール」がいいと思ったので。でも今回は、本当に全曲ハマりました。自分の中で。

──三浦さん。二人のミュージシャンとしての成長を、どんなふうに感じてますか。

三浦:いやもう、頼もしくてしょうがないですよ。僕は全然変わらないというか、2年間ユーチューバーをやってたので(笑)。歌える場所がないので、動画の配信を勉強して、そっちばかりやっていたので、(ミュージシャンとしては)あんまり前と変わってないんですけど、二人はすごいです。アレンジも、前は佐々木だけがやってたんですけど、岡田くんもアレンジするようになったし。

岡田:「大河の一滴」「ラブソングゾンビ」「積み木遊び」と、自分の曲は自分でアレンジしてます。あと「コイアイ」も。2年間で楽曲提供もやっていたので、そういう経験も含めて、自然と自分でやる流れになったのかな。

佐々木:岡田くんとは、空想が休止していた間も仕事はしていて、そこでアレンジもしていたので、「もちろんやるでしょ?」っていう感じ。実際やってみたら、僕にはできないなというアレンジが出てくるし、自分の曲を自分でアレンジすることで、岡田カラーがより出たと思います。アルバム全体のバランスも良くなったし、飽きずに聴けるようになったので、すごく良かったですね。

──休止期間のスキルアップをバンドに持ち込む。理想的な展開じゃないですか。

佐々木:それは、ずっと考えていたんですよ。2年休んでいる間に、「これを全部空想に生かせるようにしよう」と思って活動していたので。どこの現場に行っても、「空想委員会の佐々木」という名前を絶対に出していたし。それがやっと2年経ってできたという感じです。

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