【ライブレポート】Lenny code fictionの“原点回帰”「一生懸命に肯定していきます、この世界を、あなたたちを!」

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今年8月にデビュー5周年を迎えたLenny code fictionが、バンドの“原点回帰”を掲げたワンマンライブ<KIDS>を東京と彼らのホームである滋賀で開催した。本稿では、東京・Shibuya eggman公演の模様をレポートする。

◆ライブ画像(11枚)

黒電話が鳴り響く音や英語の台詞で構成した映画のワンシーンっぽいSEに、KANDAI(Dr)、kazu(B)、ソラ(G)、片桐航(Vo&G)が順に登場して演奏を重ねる洒落たインストセッションを経て、颯爽とライブの幕が開けた。オープニングナンバーは前身バンドとなるCROMARTY時代からの「Rebellious」。“時に現実は残酷で 這い上がっていくには丁度いい”と不敵に歌う片桐、フルスロットルで飛ばす4人のグルーヴがいきなり痛快だ。大勢のファンで埋め尽くされたフロアも沸く中、間髪入れずダンサブルな「KISS」へ繋ぐと、4つ打ちのイントロに合わせてハンドクラップが巻き起こる。kazuのジャジーなベースソロも決まったあとは、3rdシングル曲の「Colors」を投下するなど、これまでの楽曲を走馬灯のように轟かせつつ、デビュー5周年のキャリアを感じさせるタフなサウンドで圧倒していく。


観客のいいリアクションに「ええやん、めちゃめちゃええやん」と嬉しそうな表情を浮かべる片桐。最初のMCでは「eggmanでワンマンをするのは、CROMARTY以来になるのかな。この(ステージからの)景色は何回も何回も見てきてんけど、とてもひさしぶりです。でも、たぶん東京でいちばんライブをしてる場所やし、ホーム感がすごい!」と話したり、eggmanの入口で当時まだ別のバンドをやっていたKANDAIに自分のライブの出来を聞いた日のこと、後輩だったソラに声をかけられた日のことを懐かしんで語ったりと、縁が深い会場ならではのエピソードを届け、「いろんなものを詰めてここまで来たので、最後まで全力で行きます!」と誓う。

そんな言葉からの“きっといつか泣きそうな日は来る”と歌う「Make my story」はエモすぎた。バンドの軌跡が詰まった特別なハコでこんなに精悍なパフォーマンスが観られるのも、ファンにとっては本当に嬉しいことだろう。さらに「培ってきたものを全部このロックサウンドにぶつけていきます!」と熱気ムンムンの「Enter the Void」が放たれ、ヘドバンせずにはいられないオーディエンスが続出。真っ赤に染まったステージで片桐がラップを挟むという、ライブならではのアレンジも光る。「ヴィランズ」は拡声器を使って歌ったりと、獰猛なテンションでeggmanを大いに揺らした。


初ワンマンをやったときは4曲目くらいで感極まって泣いてしまい、声が出ずにめちゃくちゃ悔しくて打ち上げの席でも泣いた。また、別の日にはドラムの表面が破れるアクシデントで曲数を削るハメになった。語り足りないeggmanでの記憶を回想しながら、「昔は子供っぽかったな」と笑う片桐。そして「今日はすごく幸せな気持ちでやれてます。成長した姿を見せていきたいです。今しかできない曲を」と話し、最近のライブで披露している新曲「Memento」へ。これまでになかった甘美なシンセサウンドの導入が印象深く、従来のロック路線との折衷ぶりやkazuのメロディアスなベースライン、KANDAIのヘヴィなドラムも映えるナンバーで新機軸を打ち出してみせた。

「最近好きになってくれた人もいるだろうし、5年くらい通ってくれてる人もいるだろうけど、とにかく今がいちばん脂のってます。すごく自信があります」と話したあとは、「正直になれるまでやらないと決めていた曲」だという「影になる」を演奏。続けて2ndシングルの「Flower」と、お次はポップな側面をグッと前に出す。オーディエンス1人1人の目を見ながらいい表情で歌う片桐のボーカル、優雅に天を舞うようなソラのギタープレイがよりいっそうキラキラと輝きを増し、バンドのライブパフォーマンスが頼もしく進化したことをあらためて実感させられる。


ファーストフード店にいるかのような雑踏音を挿し込んだのちに始まったのは、こちらも新曲の「Sleepless Night」。KANDAIが電子ドラムで編むヒップホップ的なビートやゆったりしたテンポ、アーバンな空気感と人肌の温もりを孕んだライムにサウンドがまた新鮮で、心地よさのあまりフロアの観客は手を左右に振りながら酔いしれていた。「ずっとこんな曲を書きたかった」と話す片桐だが、これからもいっしょに居たい友達を想って生まれた「Sleepless Night」は、コロナ禍の日々を経てこその稀有な楽曲だろう。

中盤では、片桐がいったんステージから捌けてソラ、kazu、KANDAIの3人でMCをする時間も。再びeggmanでの思い出話に花を咲かせたほか、来年1月29日(土)に渋谷CLUB CRAWLでファンクラブ(TEATER02)会員限定での初ワンマン公演<先行試写会>を行なうことがアナウンスされた。セットリストは未発表の新曲のみという激レアなライブなので、気になる方はこちらもぜひチェックしてみてほしい。


片桐がステージに戻り、「最後まで楽しむ準備はできてますか?」というKANDAIの盛り上げからライブは後半へ。アニメ『炎炎ノ消防隊』のエンディングテーマになった「脳内」、疾走感たっぷりに駆け抜けるロックンロール「Alabama」、ソラとKANDAIも熱く叫んだファストチューン「Vale tudo【MAKE MY DAY】」と、ラウドにパワフルにギラギラとしたバンドサウンドを叩きつける展開は、これぞLenny code fictionと言うべき凄まじい爆発力だった。


そんな猛ラッシュのあと、片桐は静かに語り始める。「昨日ふと考えてたんですけど、Lenny code fictionを聴いてくれる人たちはどんな人なんやろうって。たぶん“イエー!”って感じでもないやん。俺もそうやから、きっと似てる部分があるのかなと。自分はすごいあまのじゃくで、“好き”とか言えないし、メンバーに“ありがとう”もうまく言えない。“悲しい”も“つらい”も言えへん、みたいなさ。そういう人が多いと思うねんな。でも、それでもいいやと思ってもらえるような、いつか大きいスクリーンでいっしょに(歌詞を)見たときに自分を肯定できるような、本当に大切にしたい曲を書きました」。


ファンに想いを馳せた言葉に続けて披露した新曲「ストレージ」は、この日のハイライトとなった。壮大かつドラマティックなサウンドに“夢はまだ語るほど叶えてない”“僕にしかわからない感動も もらった愛も含めて その全てその全部が僕のものです”と片桐らしいフレーズがめいっぱい乗った、不器用ながらも実直なバラード。今抱える葛藤を偽りなくさらけ出したこの「ストレージ」の歌詞を、多くの観客とともに大画面で見られる日が来ることを楽しみに待ちたいと思う。

「あの頃から変わったこと、成長したこと、全部見せたつもりです。新曲のリリースもできていないのにずっと曲を聴いていてくれて、本当にどうもありがとう。その恩返しをこれからはしていきます。一生懸命に肯定していきます、この世界を、あなたたちを!」。


最後はミラーボールが回る中、彼らの光り輝くアンセム「世界について」が届けられ、原点回帰ワンマン『KIDS』東京編は幕を閉じた。新型コロナウイルス感染拡大の影響でツアーがたびたび頓挫するなど悔しい経験をしてきたLenny code fictionだが、背水の陣から蘇る未来が十分にイメージできるライブを見せてくれたと思う。バンドの活動がこうして続いていることは奇跡なのかもしれない。けれど、こんなに最高のライブができるのであれば、きっとまだまだ行けるはず。6年目、新たなスタートを切ったレニーの今後に期待している。

なお、Lenny code fictionは2022年2月25日(金)より、<Lenny code fiction Presents ONE MAN Tour「?」>を開催することも決定している。

取材・文◎田山雄士

セットリスト

1.SE
2.Rebellious
3.KISS
4.Colors
5.Make my story
6.Enter the Void
7.ヴィランズ
8.Memento
9.影になる
10.Flower
11.Sleepless Night
12.脳内
13.Alabama
14.Vale tudo【MAKE MY DAY】
15.ストレージ
16.世界について

<Lenny code fiction Presents ONE MAN Tour「?」>○

2022年2月25日(金)名古屋ELL SIZE
OPEN 18:30 / START 19:00

2022年2月26日(土)大阪心梅田Shangri-La
OPEN 17:00 / START 17:30

2022年2月27日(日)福岡LIVE HOUSE OP's
OPEN 17:00 / START 17:30

2022年3月5日(土)渋谷WWW
OPEN 17:00 / START 18:00

前売り ¥4,000- / 当日 ¥4,500-

詳細は、下記へ
https://www.lennycodefiction.com/live/

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