【ライブレポート】EOW、現体制初ワンマンで届けた“壁をぶち壊す”新アンセム
Laco「日常的に踊ってる? 日常的にリズムとってる? 人生なんて踊るために生まれてきたようなもんやろ!」
11月3日(祝・水)、渋谷duo MUSIC EXCHANGEにて<EOW ONE-MAN SHOW 「BREAK THRU」>を開催したEOW。今年に入ってからは7曲を配信リリースし、コロナ禍でも積極的に自分達の音楽を届け続けてきた5人だが、このライヴは、そんな2021年の集大成といえるものであり、現体制になってからは初となるワンマンライヴでもある。また、このワンマンに向けて書き下ろされた新曲も披露。WEEKENDER(EOWファンの呼称)と共に音を楽しみ、バンドの想いをしっかりと届けた120分のステージになった。
◆ライブ写真
場内が暗転すると、まずmamushi(Key)がステージに現れて、SEがスタート。期待を煽るような、穏やかでありながらも力強い音が流れる中、Otake(Dr)、Yutaro(Ba)、Tomoaki(Gt)がひとりずつステージに現れて持ち場につくと、最後に登場したLaco(Vo)がフロアに向かって深く一礼。「バックミラー」からライヴをスタートさせた。出だしのワンフレーズを力強く歌い上げると、両腕を横に大きく広げて、感慨深そうな笑顔を浮かべるLaco。丸1年ぶりの有観客ワンマンに感激しているようだ。久々の再会を噛み締めるように5人は音を奏でると、その喜びを増幅させるように「(this is the)DAY」へ。多幸感のあるサウンドにフロアの手拍子が重なり合うと、場内のハッピーな空気が一気に膨れ上がった。
それにしても、バンドが生み出すグルーヴが抜群に心地よい。EOWの楽曲や各メンバーのルーツにはR&B、ソウル、ファンク、ゴスペルなどが土台にあり、それらは音源でも存分に発揮されているのだが、現場で体感すると格別だ。メンバーのソロ回しからなだれ込んでいった「YOLO」や、ダンサブルな「Green Back」、流麗な鍵盤の音色から幕を開ける「yonde」といった、アップテンポなものはもちろん、Lacoの艶っぽい歌声が映える「totonoi」といったミディアム〜スロウナンバーが、とにかく秀逸。
また、ライヴではバンド然とした形にアレンジされているところも、大きなポイントのひとつだ。一撃一撃が強烈な高揚を生むOtakeのドラムにしろ、印象的なフレーズを差し込みながらうねりをあげるYutaroのベースにしろ、軽やかに跳ね上がりながら彩りを与えていくmamushiの鍵盤にしろ、心地よいカッティングから突如歪んだ音を轟かせるTomoakiのギターにしろ、かなり骨太かつパワフルで、音源とはまた違った表情で楽しませてくれる。そして、「誰も置いていかへんからな!」と、フロアの隅から隅まで見渡しながら、心の奥までズドンと飛び込んでくる歌を投げかけていくLacoも逞しい。気づけば「blue fudge」まで、7曲連続休みなしで披露するという状況になったのだが、その間、足でリズムを刻んでいたり、頭を前後に振っていたり、上半身を左右に揺らしていたり、気付けば自分の身体のどこか一部が常に動いていた。こんなサウンドを浴びていたら、ずっと止まって観ているのなんてどう考えたって無理な話だ。
ライヴ中盤では「ちょっとゆるっと音楽を楽しんでもらいたい」ということで、アコースティックセットで曲を届ける場面も。Lacoがアコースティックギター、Otakeがカホン、mamushiはキーボードという3人編成で「オーバーサイズ」を、続けてYutaroとTomoakiを呼び込み「SoFa」を披露。「普段はバンドでかき消されている私の声も聴いていただけると……」とLacoが言うと、「むしろ(Lacoの声が)一番デカい」とメンバーからツッコミが入っていたが、生々しいブレスや、伸びやかなハイトーン、ときに消え入りそうに、ときに強く張り上げて届けられるセンチメンタルな歌が、最高に心地よかった。
極上のアコースティックタイムだったのだが、それゆえに場内の空気がかなりしっとりとした雰囲気に。ここから再び熱をあげていくのはかなり難しいのではと思ったのだが、その心配は一切無用だった。再びバンドセットに戻し、「女性の気持ちを歌いたくて歌詞を書いたら、なぜかウチのメンズ達にぶっ刺さった」という「RED」ではYutaroがメロウなベースソロを届ければ、「27」では理想と現実に悩みながらも、それでもゆっくりと顔をあげる主人公の心境に寄り添うように、歌と演奏の熱量をゆっくりとあげていく。そこから間髪入れずに楽器隊のジャムセッションに移ったのだが、演奏し始めたのが、なんと「めざせポケモンマスター」! 先日行なったインタビューでも、いかに自分達が『ポケットモンスター』を愛しているかを熱っぽく語っていたのもあって、この人たちどれだけ好きなんだよ……とさすがに笑ってしまったが(しかも、セッションが終わった後、衣装チェンジして戻ってきたLacoも「進化してきました!」と一言)、楽曲のチョイスにネタっぽさはあるものの、各メンバーのスキルフルなソロパートを交えた演奏はとにかく絶品。そんなギャップもEOWらしいところだ。
「もう一段階ギアあげていきます!」と突入した後半戦。リズム体が繰り出す強烈なアンサンブルに耳を奪われた「ON」では、mamushiがエアギターをしていると、続く「Lyfe」では、Tomoakiがマイケル・ジャクソンをオマージュしたダンスでも魅せる。オーディエンスと一緒にステップを刻んだ「EVER」や、「なんで夢ってええところで醒めるんやろな?」とLacoが投げかけて始まった「yumenara」と、5人が楽しみながらプレイしている姿と熱が、フロアにどんどん伝播していった。
そんなパーティーモードを切り替えたのが、フィードバックノイズと共に「最大級のエネルギーを込めていきます!」とLacoが叫んでなだれ込んだ「ライト」。音源では、サビ頭にEDMライクなシンセや、トラップ風のビートが印象的に飛び出してくる形になっていたが、それらをそぎ落とし、バンドが一個体になって音を叩きつける形になっていたこともあり、どん底でも光を放てというメッセージが、よりダイナミックに、より力強く胸に響いてきた。それは、「心の中で〈愛してるよ〉って叫び返してくれたら嬉しいです」と、続けて披露された「百花」も同じ。曲に入る前に「どんな容姿でも、どんな思想でも、私は絶対的にあなたを愛しているから。そして、絶対に誰かに愛されているから」と話していたLaco。先のインタビューで、EOWは「楽しくて嬉しいんだけど、涙が出てきて、もう泣きながら踊っちゃう」音楽であり、「エモーショナルでハッピーな空間」を作りたいと話していたが、まさにそんな感情のリミッターを思いっきり外せるような幸せな光景が広がっていた。
「日ノ出」から始まったアンコールでは、このライヴに向けて書き下ろされた新曲「Passage」が披露された。この曲は、ライヴタイトルに「BREAK THRU」と掲げているように、「全員で壁をぶち壊すような、次のステージに駆け上がれるようなアンセムを作りたい」という想いから制作されたもの。歌詞に関しては、メンバー全員でEOWに対する想いを話し合い、そこで出てきたものをLacoが抽出してまとめたそうで、この曲を作った後、彼女はあることを改めて思ったと話す。
Laco「私、本当は全然ネガティヴで、強い人間じゃなかったけど、みんながいるから“なんか無敵かもしれへん!”って真ん中で歌えていたんやな、ひとりじゃなかったんやなって、今回の曲を作って改めてすごく思いました。みんなもね、同じように“ひとりやな”って思うときがあると思うんですけど、この曲を聴いて、一緒に一歩踏み出す勇気を持ってもらえたら嬉しいなと思っていて。私は、ここに来てくれた人をお客さんなんて思ってないです。一緒に地球をサバイブしていく仲間やと思ってます。だから、この曲がみんなにとってのお守りみたいな応援歌になったらいいなと思ってます」
EOWの楽曲は、サウンドはスタイリッシュだが、言葉に目を向けると、泥臭さや苦悩が垣間見えるものも多い。「Passage」もまた、そんな部分が強く表れている。理想と現実の狭間でうごめく失意、迷い、不安、嫉妬、葛藤といったネガティブな感情と、それでも諦めたくない、少しずつでも前に進んでいきたいという信念が入り混ざった言葉達、そして、しなやかで、優しくて、光に満ちたアンサンブルは、いまを懸命に生きる人たちの心を明るく照らす輝きに満ちていた。この曲は11月10日から各サブスクリプションサービスで配信がスタートするが、いつの日か、一歩を踏み出すためのアンセムを多くのオーディエンスと共に歌える日が来ることを願っている。
「2022年も期待してくれていたら嬉しいです! すべての人たちに最大級の愛と感謝を込めて送ります」と、最後に「anata」を披露。どこまでも遠くまで届きそうなほどに伸びやかで、それでいてすべてを優しく包み込んでいく歌声と、一際情熱的に繰り広げられる音を全身で浴びながら、EOWの2022年であり、その先に繋がっていく輝かしい未来を想像せずにはいられなかった。
取材・文◎山口哲生
Photo:芹井詩帆
会場:duo MUSIC EXCHANGE
セットリスト<EOW ONE-MAN SHOW BREAK THRU>
1.バックミラー
2.(this is the)DAY
3.YOLO
4.Green Back
5.yonde
6.totonoi
7.blue fudge
8.オーバーサイズ
9.SoFa
10.RED
11.27
12.ON
13.Lyfe
14.EVER
15.yumenara
16.ライト
17.百花
EN1.日ノ出
EN2.Passage(新曲)
EN3.anata
リリース情報
2021年11月10日(水)Release
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