【インタビュー】ACIDMAN、大木伸夫が語る『INNOCENCE』という美しさ「ここに生きてることが正しいことで、最高なこと」
■不器用なバンドと思われてたかもしれないけど
■危機が訪れたら意外に先へと動くんだって(笑)
──今回はリリース前にライブで披露した曲も多いですが、実際に演奏してみた後、何か変わった点もあったんですか?
大木:<ニューアルバム配信ライブ>の時に演奏した8曲は、すでにレコーディングが終わっていたんです。配信後に作ったのは「夜のために」。配信ライブの時点では違う曲をアルバム収録曲の候補にしていたんですけど、あの配信ライブを客観的に見て、もうちょっとシンプルなロックサウンドがほしいなと思って。さっきの話じゃないですけど、もやもやしたもののなかでギターを弾きながら、“ああ、この感じこの感じ”って作っていった曲でしたね。一番新しい曲が、非常にシンプルであり、原点的で生々しい曲になったというのは、僕自身も嬉しかったです。
──アートワークも白を基調とした非常にシンプルなものになりましたが、こだわった部分はどんなところですか?
大木:真っ白をベースに、“INNOCENCE”という文字がエンボス加工で浮かび上がっているデザインですね。紙はちょっと画用紙っぽいような、なるべく汚れやすいものにしているんです。というのも、命と一緒で、どんどん汚れていくような感じを演出したかったから。『LIFE』のときに使った手法にイメージは近いんですけどね。『LIFE』では織り重ねていくタペストリーをイメージして、布を巻いていたんです。その布が時を経て汚れていく、ほつれていくというものになっていたんですね。今回はあえて真っ白にして。デジタル時代とは逆行する意味でも、作品を手に取って楽しむということをより追求した感じです。
▲アルバム『INNOCENCE』
──充実したアルバムが完成しましたが、今また、前アルバム『Λ』が完成したときのように、大木さんの頭の中は次へと進んでいるんですか?
大木:これが不思議と、今は全然曲を作ってないんですよね。コロナ禍のイレギュラーな動きで、普段がいつもよりも忙しいからというのもあるんですけど。……ツアーがなくなったりしたのに、なんでこんなに忙しいのかわからないですけどね(笑)。たぶん日常が変わって、何かバタバタとしていて、そっちに気持ちを持っていかれてるのか。それが原因かどうかわからないけど、楽曲を作りたいとはあまり思わなくて。もうひとつは、このアルバムに向けてのエネルギーをいっぱい出し続けているからだと思っていて。これまでは作ったら終わりで、インタビューする頃にはもうそのアルバムのことはちょっと忘れているくらいだったんだけど、今回はアルバムのリリース前から曲をライブで披露したりという試みもあって、まだ次に進んでいない状態。だから、今も『INNOCENCE』の気持ちのままなんですよ。
──先にライブで楽曲を初披露して、その後に作品をリリースするというのは久しぶりだと思うんですが、こういう制作はどうでした?
大木:大正解でしたね。特にアルバム発売前にライブをやるっていうことの緊張感と楽しさが、すごくよかったので。デビュー前は、ライブでずっと曲を温め続けて、いよいよ曲がリリースされるっていうのがゴールだったんです。今回、デビュー前と同じ気持ちに戻れたし、すごくよかったから、これは次もやりたいですね。
──<ニューアルバム配信ライブ>は全面LEDの壁で囲まれたステージだったじゃないですか。ふんだんな演出と見せ方をはじめ、配信ライブならではのこだわりに溢れて、これも作品のひとつというクリエイティヴィティがあったと思います。だからこそ、観ているこちらも、よりアルバムへの期待が高まりました。
大木:そういうのが好きなんですよね。誰もやったことないことをやりたいっていう欲望が僕のなかにあって。そこに時間をかけて、たくさん悩んでという、それが楽しいんですよね。寝れない夜が好きで。
──ははは!
大木:何も思いつかないときは辛いし、地獄ですけどね(笑)。“これ、明日までに思いつかなかったらもう俺は終わりだ”みたいなところから、急に“あれ? これだ!”っていうイメージが思いついたり。去年7月の配信ライブでも、“最後に巻き戻し再生したい”っていうのを本番2日前に考えついたり。そういうのがワクワクして好きなんですよ。
──コロナ禍のようなライブができない時期に、新しいことや一歩先を打ち出していくACIDMANの動きって、ファンは心強かったと思います。
大木:僕はすごくビビリだと思うんですよ。不安だから動かないとダメっていう。こういうときにドッシリしていられる人こそ強い人だと思ってて。
──そうですかね?
大木:そうそうそう(笑)。僕はビビリで、震えちゃって、弱い人間だから(笑)。とにかくエンターテインメントの火を絶やすなみたいな感じだったんだけど。
──そうですよね。昨年9月にはLINE CUBE SHIBUYAで<ACIDMAN LIVE TOUR “This is instrumental”>というインスト曲のみの有観客ライブを実施しましたよね。デビュー以来、ACIDMANがインスト曲も大事に紡いできたからこそ出来たライブだったと思うんです。お客さんが声を出せないという規制や、歌唱による飛沫を抑えるためには?と考えた結果、“インスト曲でライブをすればいいんだ”という発想だったと思うんですが、その姿勢自体が会場はもちろん、シーン全体を熱くさせたと思います。コロナ禍で誰よりもライブの新しい形を追求してきたという自負は?
大木:楽しみましたよ、このコロナ禍ならではのライブを十分に。実直に不器用にやってるバンドだって思われていたかもしれないですけど、“危機が訪れたら意外と先へ先へと動くんだ”って(笑)。ちょっとライブをやりすぎたかもしれないっていうくらい、今、疲れてますけどね(笑)。
──周りのバンドも刺激になったんじゃないかと思います。
大木:みんないろいろと反応してくれて、そういうのも嬉しいですよね。僕たちの行動を参考にしてくれたバンドはかなり多いんじゃないかと思います。
──「弱いから」なんて言ってましたけど、やっぱりすぐに起動できるっていうのは、バンドの持つ強さだと思います。アルバムのリリース後、ここからの動きはどのような?
大木:今、ツアーを考えている最中です。まだコロナのこの先の状況が読めないし、これまで2度、ツアーを発表したもののできなくなってしまったことを経験してるんですね。ツアーのやり方はまだ明確になってないですけど、でも今度はアルバムを引っさげてツアーをやりたいと思ってます。
──配信ライブならではの面白さも追求してきたと思いますが、配信という形もこの先続けていこうかなというのはあるんですか?
大木:悩みどころですね。アルバム発表会みたいなものはやりたいんです。でも生配信はなるべくならやりたくないんですよね。受け手側の反応がわからないまま、答えがないものを表現し続けるって、本当に辛くて。たった数分の孤独でも辛いのに、それを1時間以上味わうっていうのはね。生配信よりも、作品のような形で配信ライブを届けるということはやっていきたいです。<ニューアルバム配信ライブ>で使った、BLACKBOX3のような全面LEDのステージはすごく面白かったので、ああいうのは恒例にしていったり、新たなものを楽しみながら作っていきたいなと思っています。
取材・文◎吉羽さおり
撮影◎野村雄治
■12th Album『INNOCENCE』
【初回限定盤 (CD+DVD)】TYCT-69211 ¥6.600(税込)
※紙ジャケ仕様
▼DVD
『scene of INNOCENCE』
・2021.5.21<ACIDMAN ニューアルバム配信ライブ>
・MUSIC VIDEO:灰色の街 / Rebirth / 夜のために / innocence
・Documentary2019-2021
【通常盤 (CDのみ)】TYCT-60181 ¥3,080(税込)
※紙ジャケ仕様
▼CD ※CD収録曲は初回限定盤/通常盤共通
01. introduction
02. Visitor
03. 歪んだ光
04. Rebirth
05. 灰色の街
06. Link (instrumental)
07. ALE
08. 素晴らしき世界
09. 夜のために
10. innocence
11. ファンファーレ
購入・配信リンク:https://acidman.lnk.to/innocencePR
●一般店特典:特典ステッカー
※一部特典の取扱いのない店舗・インターネット販売サイトもございます。詳しくは購入ご希望の店舗へお問い合わせください。
※購入特典は先着のプレゼントです。なくなり次第終了となります。
■<This is ACIDMAN>
Open 17:00 / Start 18:00
▼チケット
S席:¥10,000(税込)
A席:¥7,000(税込)
※ドリンク代別途必要
※全席指定
※6歳以上有料。座席が必要な場合は6歳未満も有料となります。
一般発売:9月26日(日)
(問)SOGO TOKYO 03-3405-9999
特設ページ:http://acidman.jp/tour/thisisacidman/
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