【インタビュー】ANABANTFULLS、生粋のロックバンドの息吹が詰まった骨太ミニAL『天国発電』

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タワーレコード限定でリリースされるミニアルバム『天国発電』は、人力で音を奏でるロックバンドの魅力に満ち溢れた1枚だ。各メンバーから放たれる音が1つになり、時には互いに挑発し合うかのようなムードも醸し出し、刺激的なエネルギーを生み出している様を、ぜひ実際に聴いて体感して欲しい。550円という異例の価格からは、「幅広い人々に届けたい!」というANABANTFULLSが抱いている強い願いと、「聴けば必ず何かを感じるはず!」という自信が伝わってくる。今作について安田コウヘイ(Vo.Gt)が語ってくれた。

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■激しい曲とメロディをじっくり聴かせる曲、静と動
■両方の良さを兼ね備えたものを1枚に


──90年代のグランジ、オルタナティブ系、80年代のUK、00年代のロックンロールリバイバルのバンドとか、海外のギターロックが大好きですよね?

安田:はい。そういうのが好きなのが、音にも出ているのかなと思います。

──どういう経緯で結成されたバンドなんですか?

安田: 2012年くらいから動き始めてはいたんですけど、その頃はほぼライブをしていなかったんです。ベースの小林とはずっと一緒にやっていたんですけど、ギターとドラムが脱退したりもして。そういう中で、俺たちが使っていたスタジオの店員だったドラムの鯉沼が加入したんです。そして、もう脱退してしまったんですけど、他のバンドでギターを弾いていた松村を引き抜いて、2013年から本格的に動き始めました。

──鯉沼さんのドラムは、音に腕の重みが表れているというか、ぶん殴る感じのニュアンスですね。日本人ではあまりいないタイプだと思います。

安田:おっしゃる通りのドラムなので楽曲にも合っていますし、ライブをしていてもすごく頼もしいです。

──安田さんは、どういう音楽を聴いてきました?

安田:00年代のロックンロール、ガレージリバイバルの時にストロークス、リバティーンズとかを聴いて、ギターがかっこよくて、歌メロも立っている洋楽に憧れていました。でも、日本でグランジ的なものをやるとキャッチーじゃなかったり、入り込みにくい印象があって。だから自分のバンドはできるだけ間口を狭くしないでいたいと思っています。

──今回のミニアルバムもそういう作品ですね。どういう1枚にしたいと思っていました?

安田:全体に関して考えていたことはないんですけど、「他のバンドがやっていないようなことやりたい」というのはずっと思っているんですよね。この3人の編成になって、より、そうなっています。激しい曲、メロディをじっくり聴かせる曲、静と動、両方の良さを兼ね備えたものを作りたいんです。そういうのが1枚になったのが、今回のアルバムですね。

──ギターは、かなり音を歪ませていますね。

安田:はい。僕自身がジャック・ホワイトが好きで、音をいろいろ研究しています。どんなにメロディが立っている曲でも、そういう要素は入れたいんですよね。今回もファズで歪ませた音をいろんなところに入れています。

──歪んでいると同時に心地いい音を作るのは、研究のしがいがありますよね?

安田:そうなんですよね。アンプで鳴らして気持ちいいのと、レコーディングしたものの違いもありますし。そういう点はエンジニアさんと一緒に探りながら見つけていきました。

──洋楽に衝撃を受けた体験がある人は、「こういう音はどうやったら出せるんだろう?」って研究し続ける印象があります。

安田:そういうの、ありますねえ。海外と日本とでは電圧が違うので、同じような音のレンジ感、音圧って結構難しいんです。そこはずっと試行錯誤してきたんですけど、今回、そういう点でも良いものができたと思っています。

──オーディオの世界もそうですけど、電圧は重要らしいですね。

安田:そうみたいです。日本のミュージシャンが海外でレコーディングをするというのも、そういうことなんだと思います。

──追求をしだすと、底なし沼のような世界らしいですよ。

安田:僕はそこまで沼にはまることはないと思いますけど(笑)。でも、気にするところはあります。今って自宅録音でも結構いい音で録れますけど、スタジオで録る良さにはこだわりたいですからね。「あそこのレコーディングスタジオで録る音が好き」とかいうこだわりはあるので。例えば、ドラムも台の上で叩くだけで音が変わったりしますし、録る空間によって変化するんですよ。そういう部分は、今使っているスタジオがすごくいいんです。ドラムのテックさんがいて、ポップスもロックもわかるエンジニアさんもいるので、アナバンがやりたい丁度いいところに収めてくれています。

──安田さんは洋楽のロックを聴いて、ずっと憧れてきた人ということですね。

安田:はい。中学ぐらいの頃からずっと大好きですからね。

──そういう憧れを大切にしながらバンドを続けていく強い気持ちが、ANABANTFULLSの様々な曲に刻まれている印象がします。

安田:そうですね。僕が好きなロックバンドって、歌詞の日本語訳を見ても意味がよくわからなかったり(笑)。でも、心に残る1フレーズとかがあったりするんですよね。僕らの歌詞は日本語ですけど、そういうのをやりたいと思っています。すごくいい歌詞を書く人はいっぱいいるので、僕らは何か気になる1フレーズがある曲にしたいんです。

▲ANABANTFULLS/『天国発電』

──例えば「消された理由」は、《バンド・デシネ》というフレーズが強烈ですし、サウンドの熱量がすごいですね。

安田:こういうショートチューンで、ずっとクレイジーな曲って、今までにあんまりなかったんです。《バンド・デシネ》は、ドレスコーズの『バンド・デシネ』っていうアルバムから来ています。

──歌詞に関しては、フィーリングの部分が大きいですか?

安田:そうですね。サウンドに対してどういうフレーズが一番合うのかを考えながら作っていく感じです。

──《ゾンビにも親がいるだろう》って、インパクトがあります。実際その通りですし。

安田:僕が好きなのって、そういうフレーズなんです。考えたことがなかったけど、はっとするような感じというか。アナバンは来年10年目。全然売れたわけではなく、今でも小さいライブハウスでやり続けているけど、そういう自分たちを、やられてもずっと生きているゾンビだと思うので。「そんな俺たちにも親がいるからな」っていう(笑)。

──(笑)。安田さんの歌声は、どことなく歪んだ感じのトーンですから、こういうサウンドにすごく合っていますね。

安田:ありがとうございます。もとからかなり歪みますね。カート・コバーン、クリス・コーネルとかみたいな、「男」っていう感じの歌声がずっと好きなんです。自分が好きなコードを弾いて好きなトーンで歌うと、こういうところに落ち着きますね。

──安田さんの世代だと、ニルヴァーナ、サウンドガーデンとか、リアルタイム世代ではないですよね?

安田:はい。90年代のロックとか、割と後追いなので。僕が10代の頃とかリアルタイムのものはポップパンク、エモ、スクリーモ、ガレージロックリバイバルとか。そういうものが一通り好きだったんですけど、好きだったバンドの誰かがジザメリ(ジーザス&メリー・チェイン)が好きだったり。そういうのをディグっていって、いろんなバンドに辿り着いていきました。

──「大人になれよ」はビートが重厚で、グランジ的なものを感じました。

安田:ありがとうございます。僕らがいるようなシーンって、「大人になったなあ」みたいな言葉はいいニュアンスでは使われないんですけど、僕は「大人ってかっこいい」ってずっと思っているんです。だから逆貼りして「大人になれよ」って言っとこうと思って。


──センスのいい大人はかっこいいですからね。

安田:そうですよね。アナバンを始めた時も「ナイスミドルになろう」「中年の時に一番映える楽曲」みたいなことを考えていたんです。だから、若さだけでやっていく感じはなくて。今、30歳になって、どんどん中年になっていくんですけど、40歳とかくらいで、もっと洗練されたバンドになるんじゃないかなという期待があります。

──そもそも10代の頃とかに好きだった音楽って年齢を重ねても好きですし、「大人になる=好きなものがどんどん増えていく」ってことですからね。

安田:そうなんですよね。守備範囲が広くなるだけなのかなと。

──バンドとしても、年齢を重ねることによってスキルや経験が増えるわけですし。さらにかっこよくなっていける自分たちに期待しているのが、ANABANTFULLSっていうことでしょうか?

安田:はい。ここからもっと楽しみだなっていう感じです。

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