【インタビュー】JIRO、「GLAYは逃げない」
不安と迷いに揺れる時代だからこそ、すべてを超えて心震わす素晴らしい音楽を届けたい──。
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GLAYの16枚目のオリジナルアルバム『FREEDOM ONLY』のテーマはただ一つ、「いい曲」を詰め込んだアルバムであること。全曲の作詞作曲をTAKUROが手掛け、90年代に作られた曲から最新曲まで、GLAYらしさ満開のポップ&キャッチーな曲から最先端のエレクトロニクスを駆使したモダンなサウンドまで、まさに百花繚乱の全12曲。今の時代にこそ必要なメッセージを音に込めた最新傑作について、JIROがじっくりと語ってくれた。
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■今回のアルバムは本当に純粋にスッと聴ける
──アルバム『FREEDOM ONLY』が完成しました。今、どんな手ごたえを感じていますか。
JIRO:そうですね、まあ、“引っかかりがないアルバム”という感じですね。悪い意味ではなく(笑)。
──というと?
JIRO:何と言うか、前作の『NO DEMOCRACY』には、メッセージ性の強い曲もあったので、時間が経って聴いてみると、引っかかりがあるものという感じがするんですね。それは良くも悪くもなんですけど、エンターテイメントということにおいては、それが果たしてベストなのか、そうじゃないのか、それもすごく重要だとわかっている上での、引っかかりがあるということなんですけど。そういった意味で言うと、今回のアルバムは本当に純粋に、そういった引っかかりみたいなものがなく、スッと聴けるなという感じがあります。
──なるほど。
JIRO:自分のレギュラーラジオでも言ってきたのは、「たぶんみんなが好きなGLAYだよ」と。「みんなが待ってるGLAYのアルバムになっていると思うよ」という話はしているので、それがすべてかなと思います。「うん? 待てよ?」「この曲は、理解するのにちょっと時間がかかりそうだぞ」という曲は、2曲目ぐらいじゃないですか(笑)。
──2曲目「Hypersonic」ですね(笑)。その話はまたあとで聞きたいと思います。そもそも今回のアルバムは、TAKUROさんの「こういうアルバムを作りたい」という、強い意志で主導していったと聞いてます。それはいつ、どんな言葉でメンバーに伝えられたんですか。
JIRO:今回は、TAKUROに「こういう感じで行きたいです」という明確なビジョンがあって、最初に14曲ぐらいのデモを渡されて、「これをまず聴いてみてくれないか」と。「そこからミーティングしよう」ということでしたね。TAKUROが言っていたのは、コロナとかそういったことは置いといて、「いい曲をやりたい」ということで、それっていうのは、過去に出した『BELOVED』というアルバムを作る前に言っていたことと一緒だったんですよ。なのでイメージしやすかったというか、TAKUROの言ってることにブレは生じないだろうなということはあったので、「だったら、本当に好きなことをやったほうがいいよ」という言葉が、僕も含めてメンバーからも出てきて、TAKUROも「じゃあ、わかった」ということで、制作を始めたんです。
──その、最初のデモの14曲というのは、完成したアルバムと同じものですか。
JIRO:いえ、そこから何曲か変わったような気がしますね。最初に14曲ぐらいあったものを、もう少しタイトにしようということで、12曲に収まりました。
──TAKUROさんには、「自分の音楽のルーツみたいなものを強く出したアルバムにしたい」というテーマもあったと聞いてます。
JIRO:そうですね。でもそれは、最初の時点では聞いていなかったです。あとから、エッセンスとして「自分が聴いていた80年代のバンドのテイストをギターで入れた」とか、そういったことは言ってたんですけど、それは曲が出揃ってからのアイディアなのか、もともとそういうふうに思っていたかはわからないです。そのへんに関しては、話し合ってはいないので。
──たぶん、あったんでしょうね。「いい曲を作る」ということは、「自分のルーツに根差したものを作る」ということと重なると思うので。ちなみに、今回の制作にはリモートレコーディングの作業も入っていますか。
JIRO:結果的にアルバムに入っている曲は、リモートではなかったです。それ以外の曲でリモートでやったものもありますけど、ここには収録されていないんじゃないかな。そもそもの話をすると、2020年に予定していた東京ドーム、名古屋ドーム、最終的に札幌ドームもなくなって、活動としてはかなり止まっていたんですけど、TAKUROが「そのままだと良くない」ということで、自分の中で感触のいい曲を「とりあえずリモートでレコーディングでもしてみようか」ということで、そこからエンジンをかけ始めて、それらの曲を踏まえてTAKUROがアルバムの構想を練りだしたのが、去年の秋前ぐらい。そこから本格的なレコーディングに入ったんですね。何度かリモートでレコーディングをやってみたんですけど、うまくいくところと、そうでもないなという部分があったので、やっぱりスタジオに集まろうという感じで秋ぐらいからレコーディングが始まりましたね。
──完成したかどうかは別として、リモートレコーディングをやってみたことで、何か得るものはあったんじゃないですか。
JIRO:ありましたよ、やっぱり。バンドのレコーディングというものは、全員でスタジオに入って、プリプロして、そのあとにリズム隊を録って、ギターを録って、ボーカルを録ってという流れをルーティンワークとしてもう20何年もやってきてるんですけど、リモートレコーディングではそれの順番が違ったことによって、良い部分もたぶんあったと思います。今までは、全員がその楽曲を把握している状態でレコーディングしていくものが、たとえば「BAD APPLE」と「Holy Knight」に関しては、デモの段階で「BAD APPLE」はTomi Yoさん、「Holy Knight」はYOW-ROWさんにアレンジしてもらったものが、このまま作品として出せるんじゃないか?というレベルまで仕上がっていたので、そこにどういうふうにベースはアプローチしていこうかな?という作業になったんです。最初にリモートレコーディングを経験していたことで、今までやってきた順番とは違う順番でレコーディングすることに免疫があったというか(笑)。そういった意味で言うと、リモートレコーディングを経験していたことは、良かったのかもしれないです。
──「BAD APPLE」は、びっくりしましたね。トラックだけ聴くと、「え、これGLAY?」という感じで。自身でも、かなりチャレンジングな曲だなと思っていますか。
JIRO:過去にこういった匂いや温度感の曲はあったんですけど、どうしてもやっぱりバンド主体でやろうというふうに考えていたところがあったので。それはそれで良かったと思うんですけど、今回「BAD APPLE」を聴いて、Tomi Yoさんがすごいところに連れて行ってくれたなというか、「素晴らしいプロデュースをしてくれてありがたい」という感じです。「Holy Knight」もそうですけど。
──基本的に、作曲者がアレンジの主導を取って進めていくというこれまでのGLAYのやり方で言うと、今回のアレンジはTAKUROさんの主導が多かったわけですか。
JIRO:それは曲によりけりですね。HISASHIが主導した曲も何曲かありますし、もともとあったデモテープをそんなにいじらずに、バンドの演奏で表現するといった曲もありますし、本当にさまざまです。ただ、亀田(誠治)さんにアレンジをお願いした曲はぐっと減りましたね。最近は、「この楽曲を今のGLAYがアレンジしてもなんとなく出口は見えるだろうな」というものは、全部亀田さんに振っていたんですよ。それを今回は「バンドでやりたい」と、TAKUROが最初に意思を表明したので。
──じゃあ、これまで以上に、セルフプロデュースに近い作品かもしれない。
JIRO:そうですね。もちろん、僕らがアレンジして各個人のフレーズを入れたものを亀田さんに一回チェックしてもらって、ということはやっているんですけど。
──それも含めて、全体を通して、スムーズなレコーディングだったと。
JIRO:そうですね。もともとGLAYはそうで、流れ作業のようにみんなが全体的にスムーズに流れに乗っていくんですよ。だから亀田さんは僕らと仕事を始めた頃は、めちゃくちゃびっくりしてましたね、「仕事が早すぎる」って(笑)。「GLAYのレコーディングが終わったら、もう1本仕事を入れられる。やったー」みたいな感じでした(笑)。
──ありがたいバンドですね(笑)。
JIRO:もしも個人的に時間をかけたいことがあれば、自分の家で済ませちゃうんですよね。僕が自分のパートのレコーディングに行く時は、構成表や譜面を見ないで全部体に入れてから、一発で録れるぐらいのところまで持って行ってからレコーディングするので、時間自体はすごく必要なんです。今回のコロナで何かいいことがあったとすれば、時間をかけられたことが良かったかもしれないです。前までだったら、マネージャーに「ベースのフレーズを覚えるために時間がほしいんで、ここのスケジュールをあけてくれないか」という、そういう無理なお願いもしていた時もあったので。まあでも、レコーディングはすごく重要なものなので、本来であればそうあるべきという健全な状態に戻ったのかな?という感じはします。
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