【インタビュー】村田隆行、凄腕18名参加の初ソロアルバムに「テクニカルながら、そうとは聴こえないポップなベース」
■確実にベースが真ん中にありつつ
■ベーシストしか楽しめない音楽ではないもの
──4弦ベースが持っているポテンシャルを引き出した1曲と言えますね。さらに、T.M.スティーブンスの饒舌なベースと日野“JINO”賢二さんのフレットレスベースをフィーチャーした「Lion & Cats -TM's Jam-」も聴き逃せません。
村田:僕がギターを弾いていた中学生時代のヒーローの1人がスティーヴィー・サラスで。そうなるとベースはT.M.スティーブンスじゃないですか。高校生くらいのときに僕は彼を知って、あの爆発的なスタイルに衝撃を受けたんです。それ以降、僕のベースヒーローはラリー・グラハムとルイス・ジョンソン、そしてT.M.スティーブンス。僕がワーウィックを長く弾いていた一番の理由は、T.M.スティーブンスがワーウィックを弾いていたから、というのもあったくらいで。
──村田さんはT.M.スティーブンスとも親交があるんですよね。
村田:10年くらい前にT.M.スティーブンスさんと仲よくなれるきっかけを作ってもらって、それからしょっちゅうメールのやり取りをしているんです。彼と僕は誕生日が一緒なので、誕生日やクリスマスには必ず連絡をくれるし、普段から写真とかメールを送り合ったり、彼はすごく繊細で気遣いのできる方なんです。そういうご縁があって、実はチョパレボの1stアルバムのときに少しベースを弾いてもらったんですよ。そのときに全部を使い切れないくらい、結構な量のベースを弾いてくれたことがあったんです。
──T.M.スティーブンスとは継続して友好関係を築かれているんですね。
村田:ありがたいことに。でも、6年前くらいかな。ある日を境にパッタリとメールが来なくなったんです。そうしたら、どうも体調を崩されたようで。それがずっと気がかりになっていて。
──そうだったんですか。
村田:実は日野賢二さんもT.M.スティーブンスさんと深い関りがあって。賢二さんも僕にとってすごく重要な人なので、今回のアルバムに参加してもらいたいと思っていたんです。だけど、そもそも賢二さん一人でもエネルギー量は凄いし、どうしたら最高のバランスが図れるかなと考えているときに、T.M.スティーブンスさんのことが思い浮かんで。だったら、T.M.スティーブンスさんと日野賢二さんと僕の3人が揃えば、3人のストーリーを楽曲にできると思ったんです。と同時に、T.M.スティーブンスさんのトラックがまだあることを思い出したんです。
──それが、チョパレボの1stアルバムのアウトテイクなんですね。
村田:まさに。その中から一部だけ使わせてもらったんです。まず、10年前のトラックを引っ張り出して、そのフレーズをもとに曲を作っていきました。T.M.スティーブンスさんによるフレーズを編集したトラックに僕が色をつけて、ビートをつけて。僕ごときが恐縮ですけど、賢二さんには「賢二さんは凄すぎるから、スキャットとかギターシンセとかのソロは一切やらないでください」とオーダーを出したんです(笑)。僕は元々、賢二さんがニューヨークでR&Bのサポートとしてボトムを弾いていたときのグルーヴの大ファンなんですよ。だから、「その感じを入れてほしい」と。そうしたら、さすがです。めちゃめちゃカッコいいファンキーなボトムグルーヴを入れてくれて、さらに「フレットレスベースのソロはどう?」と聞かれたので、「ぜひ、お願いします!」と答えました。
──パーカッシブなT.M.スティーブンスとウネリのある日野賢二さんのコントラストが絶妙です。
村田:そういうふたりに対して僕は、自分自身のアルバムだからしっかり主張を入れることをテーマに構築しました。この音源をきっかけに、賢二さんがT.M.スティーブンスさんと今も交流されてる人に接触してくれて。T.M.スティーブンスさんは全然元気らしいです。本当によかったです。
──元気でよかったです。そして、『The Smiling Music』を締め括るのは鳴瀬さんとIKUOさんが参加された「Home Bass」というアッパーなフュージョンチューンです。
村田:去年の自粛期間のとき、「チョパレボはすごくエンターテイメント性の高いグループですし、ベースで遊んでもらえる動画を作りませんか?」という提案したんですね。僕が曲の基礎を作って、「ここに乗っかってください」とスペースを空けて。それを動画サイトにアップしたところ、ベース以外のいろんな方々がいろんなことをしてくれたんです。
──YouTubeチャンネルに公開されている「HOME BASS」ですね。
村田:はい。そういう成り立ちの曲なので、チョパレボの新作のほうで使おうと思っていたんですね。だけど、『The Smiling Music』は、僕の音楽キャリアの集大成がコンセプトなので、もちろんチョパレボにも参加してもらいたいと。だったらこの曲を完成させるのがベストだろうと思ったんです。で、今回音源化するにあたってサビパートを新たに作ったり。チョパレボだったら通常はサビもベースでいくんですけど、今回は自分のソロアルバムなので、敢えてギターでいくことにしたり。あと、この曲はドラムが坂東(慧)君で、オルガンがカシオペア3rdの大高清美さんなんですけど、すごいなと思ったのが大高さんとナルチョさんの音が入ると、今のカシオペアになる。これは、聴きどころのひとつだと思います(笑)。
──『The Smiling Music』は良質な楽曲とハイレベルなプレイが詰め込まれていると同時に、タイトルどおりリスナーを笑顔にする優れた作品に仕上がりました。ベーシストに限らず、全ての音楽好きに聴いてほしいと思います。
村田:僕はチョパレボを始めたということもあって、ソロアルバムを作るならベースが主役ではないものというか、コンポーザーとしての側面を押し出したアルバムを作りたいと思っていたんです。でも、それもなにか違うかなと思いながら、この約10年間、ソロアルバムについていろんなことを考えていたんですね。その結果、自分が主役でありつつ、音楽としてキャッチーなものを形にしたいというところに行き着いたんです。今回、確実にベースが真ん中にありつつ、でも、ベーシストしか楽しめないような音楽ではないものを作ることができた。それは、参加してくれたみなさんの演奏力や楽曲への察知能力の高さが大きかったことは間違いない。みんなの力を借りて、納得のいくアルバムを作ることができて本当によかったと思います。
──同感です。音も素晴らしくいいですし。
村田:『The Smiling Music』は僕が影響を受けた1990年くらいのサウンド感を意識したから、マスタリング時に音圧を上げるようなことはしてないんですよ。昨今のドンッ!と出る音もカッコいいけど、歪ませないところでのナチュラルなダイナミクス感を、いつもお願いしているエンジニアと作ったんです。ただ、CDとかハイレゾはその質感になっているんですけど、ストリーミングとなるとすごく難しい。他のストリーミングの音源と比べると、ガクンと音量が下がってしまうから。さすがにそれではマズいので、つい最近なのですがストリーミング用のリマスターに変更したんです。なので、初期にストリーミングで聴いて“他よりも音量が小さい”と思った方は、ぜひあらためて聴いてほしいです。
──そういう話からも時代の変化を感じます。最後に、ソロライブやツアーは今のところ考えていませんか?
村田:ライブに関してはこういうご時世なので、ゆっくりと進められれば。だけど、是永さんとか、ナルチョさんが、「このアルバムをきっかけに自分名義の音楽活動もしていかないとダメだよ」と言ってくれているんですね。なので今後は、ソロとしてひとつの枠組みを作りたいと思っていて。アルバム1曲目の「PUNKADEMIC」というタイトルは是永さんと電話で話しているときに作った造語なんです。パンデミックを連想させるかもしれないけど、ネガティヴな意味ではなくて、困難に打ち勝つという意味のパンデミックがもとになっているんです。勝利という意味合いなので僕はすごく気に入っていて、ソロで動くときは“村田隆行PUNKADEMIC”名義でやろうと思っています。もちろんライブもやる気満々なので、そのときはぜひ会場に足を運んでいただければと思います。
取材・文◎村上孝之
撮影◎佐藤哲郎
撮影協力◎Mzes Tokyo
■1st Solo Album『THE SMILING MUSIC』
MZJZ-00002 ¥3,300 (税込)
Mzes Recordz ※国内盤CD
▼収録曲
01. PUNKADEMIC
宮崎隆睦(Sax) / 是永巧一(G) / 白井アキト(Key) / 坂東慧(Dr) / 村田隆行(B, G, Syn, Prog)
02. Taj Mahal’s Lunar Eclipse
寺地美穂(Fl, Sax) / 村田千紘(Tp) / マサ小浜(G) / 白井アキト(Key) / 川口千里(Dr) / 村田隆行(B, G, Syn, Prog)
03. Fun Day
宮崎隆睦(Sax) / マサ小浜(G) / Nobu-K(Key) / 村田隆行(B, Prog)
04. Play Alone
村田隆行(B)
05. Life Goes on
牧山純子(Vn) / 梁邦彦(Pf) / 宮崎裕介(Syn, Strings Arrangement) / Makoto Izumitani (Dr) / 村田隆行(B, G, Syn)
06. Roots & The Style
是永巧一(G) / 白井アキト(Key) / Makoto Izumitani (Dr) / 村田隆行(B, Prog)
07. Lion & Cats -TM’s Jam-
TM Stevens (B) / 日野“JINO”賢二(B) / 村田隆行(B, Prog)
08. I’ll be Here
白井アキト(Key) / 村田隆行(B, G, Prog)
09. Interlude (Life Goes On)
梁邦彦(Pf)
10. HOME BASS
鳴瀬喜博(B) / IKUO(B) / 大高清美(Org) / 坂東慧(Dr) / 村田隆行(B, G, Prog)
http://www.inpartmaint.com/site/32338/
■The Choppers Revolution<秋の夜長のベースナイト 3人はいつも元気です。~結成10周年目前LIVE~>
・1st Stage:open14:00 / start15:00
・2nd Stage:open17:00 / start18:00
▼チケット
Service Area : ¥6,500
Casual Area : ¥6,500
▼ミュージシャン
鳴瀬喜博 (B)
IKUO (B)
村田隆行 (B)
川口千里 (Dr)
白井アキト (Key)
■I.T.R fnat, 山崎慶<Bass Life Goes On〜帰ってきた秋のパン祭り〜>
open17:45 / start18:30
▼チケット
前売4,500円 当日5,000円
※2ドリンク別途要
※予約順指定席(椅子のみでテーブルはございません)
※当日フードの提供はございません
10月28日(木) 東京汐留ブルームード
open17:30 / start18:30
▼チケット
前売4,500円 当日5,000円
※整理番号順に整列していただいてからご入場いただく関係上、当日は開場時間の15分前にお集まりいただきます様お願い致します。開場前にいらっしゃらなかったお客様につきましては整理番号通りのご入場はできません。あらかじめご了承ください。
※全席自由席となっております。
※ご購入いただいたチケットのキャンセルは可能ですが、公演自体が延期または中止となった場合のみ返金可能となりその他の場合は返金不可となっております。あらかじめご了承ください。
▼ミュージシャン
IKUO (B, Vo)
村田隆行 (B, Vo)
山崎慶 (Dr)
白井アキト (Key)
■The Choppers Revolution<ツインドラム・スペシャル 〜アンコールライブ in 横浜>
・1st Stage:open14:00 / start15:00
・2nd Stage:open17:00 / start18:00
▼チケット
Service Area : ¥6,500
Casual Area : ¥6,500
▼ミュージシャン
鳴瀬喜博 (B)
IKUO (B)
村田隆行 (B)
坂東慧 (Dr)
川口千里 (Dr)
白井アキト (Key)
■The Choppers Revolution<Bass Day Special Month チョパレボ & Bass Friends>
・1st Stage:open14:30 / start15:30
・2nd Stage:open18:00 / start19:00
▼チケット
Service Area : ¥6,500
Casual Area : ¥6,000
▼ミュージシャン
鳴瀬喜博
IKUO
村田隆行
●Support musician
川口千里(drs)
長﨑祥子(key)
and ゲストベーシスト多数
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