【インタビュー】健康、悠介(lynch.) × 松本明人(真空ホロウ)が語る新ユニットの行方「ここからは発展しか見えない」

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■音楽と映画を大好きになった瞬間
■それを今、形にしてみようって

──覆面ユニット案や1オクターヴ上げて歌う案のほかにも試行錯誤が?

悠介:アレンジも、最初はあとから生ドラムを入れる予定で作ってたんですけど、「とりあえず今は、ふたりなりの音にしたほうがいいんじゃないか」っていうアイデアが出てきて。

松本:「あえて打ち込みって感じにしよう」って全部戻したんです。曲名に“Chapter0”っていうナンバーがついているのは、それが理由。ここからどう変化していくかだよね。

悠介:そうだね。制作自体は楽しかったですよ。とにかくレスポンスがよくて、歌詞も早く上がってくるんですよ。そこはlynch.と比べちゃうとすごいスピードだなと……あ、悪口じゃないです(笑)。とにかく作ってきた曲数もハンパない。真空ホロウって今年は、ほぼ毎月リリースしてるんです。毎月何十曲と作って、その中から選んでリリースしている人なので、そういうところは勉強になるし、刺激を受けます。


▲松本明人

──おふたりの間でデータをやりとりして楽曲を作り上げていく制作方法ですか?

松本:そうですね、ポンとデータを送って。納得いかない時は「納得いかない」ってちゃんと言ってくれるんですけど。結構打率は高いよね。

悠介:うん。曲の構成だったり雰囲気は、ガラっと変えたりしますけどね。その変化の速度が毎回早いので、ついていくのに必死(笑)。頑張ってます。

──まず1曲目の「健康 (chapter #0 ver.)」は、ユニット自体のコンセプトが込められた曲ですよね。“健康ってなんぞや”っていう疑問に答えてくれる曲で、明るく元気とかじゃなくて、自由で健康的な空間を作るんだっていうメッセージが伝わってきました。

松本:よかったです。まさにこのユニットのテーマ曲ですね。もともとの構成は、健康を組むきっかけになった日から今までみたいな、ドキュメンタリーチックだったんですけど。ちょっと恥ずかしくなっちゃって(笑)、健康とはなんぞやっていう内容に落とし込みました。

──真空ホロウでの歌詞は、生きることに密着した生っぽさがあるので、ちょっとまた違う印象があります。

松本:たしかに。曲もそうなんですけど、歌詞にも、僕の原体験みたいなものが盛り込まれてることが多いかもしれない。僕が誰に憧れて音楽を始めたのかとか、どういうサウンドや歌詞、歌を聴いて、どういう映画を見て……みたいなことをすごく楽曲に入れています。


▲悠介

──なるほど。

松本:「健康」って曲以外は全部、僕が学生時代に見た一本の映画がコンセプトになっていて、その登場人物の気持ちとか情景について書いてるんです。その映画は、僕が映画とかバンドを好きになるきっかけになった作品なんですよ。だから、コンセプトと言っても、自分の今と意外に結びつくんですね。歌詞を書いていても、今の自分にも響く感じがあった。やっぱり、その当時に観た映画とか、その時に聴いていた音楽って、むちゃくちゃ今の自分に影響してるんだなって改めて思いました。

──差し支えなければ、その映画とは?

松本:黒沢清監督の映画『アカルイミライ』です。主題歌を担当していたTHE BACK HORNの「未来」を聴いて、バンドに興味をもったので。

──歌詞には、悠介さんからの意見も?

松本:ちゃんと入ってます。「1曲1曲に、誰もが自分に置き換えられるパワーワードみたいなものを絶対に入れてほしい」ってリクエストがあって。何パターン目かの歌詞の時に、「前のほうがよかったのに」みたいなことを言われて、「お、何だ?」となって、もう1回頑張ったり(笑)。

悠介:いい言葉を紡いで、いい歌詞を書いてくれる人だと思ってるので、任せてるところもあるんですけどね。僕は歌詞を見た時に、ちょっと考えさせられる部分がありつつ、スッと入ってくるようなものが好きなんです。ありきたりな言葉でも、聴く人の精神状態によって刺さることってあるじゃないですか。そういう時に感じる力はすごいと思うし、そういうものをしっかりと届けられる声を持っている人なので、そうオーダーしましたね。最初、英語詞が入ってたりもしたんですよ。

松本:そう。めちゃめちゃ意味のない言葉を並べたバージョンもあって。


▲健康

悠介:だから、「それはどうなんだろう?」みたいな話もしたし。結果的に、さっき言った“一本の映画の登場人物について”というテーマが決まってからは、わりとポンポンと決まっていったよね。

松本:そうだね。やっぱりテーマが決まって落ち着いたというか。プロジェクトとして形になったと思います。僕が音楽と映画っていうものが大好きになった瞬間を、今、形にしてみようっていう。

悠介:映画というテーマを通して、そういう部分を歌詞に起こすことによって、共感できる想いを伝えられるんじゃないかと思います。

──1本の映画から受けた松本さんの感情が原点にあるということなんですね。いわゆる映画っぽい世界観を描くということではなくて。

松本:そうです。そんなチャラくないです(笑)。その感情をそのまま書いたり、僕だけで作っても曲にはなると思うんですけど、それだけじゃつまらないから。悠介くんの曲をもらってメロディをつけたり、編曲することで、さらに意味のあるものになると思います。せっかくふたりのプロジェクトなので、僕の中で、ここからここは任せちゃうっていうところを作ってるんです。それが、僕にはすごく健康的なんだよな。ヴィジュアル面とか、投影してる写真とかは全部悠ちゃんが撮影したものだし。悠ちゃんのファンの人にも喜んでほしかったから。僕は健康っていう中の人を演じれればいいんです。

悠介:それはお互い様で。私もそうですよ。

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