【インタビュー】EOW、グルーヴィーな5人が3週連続で奏でる“光の三原色”
ボーカルのLacoをはじめ、様々なフィールドで活躍し、キャリアを重ねてきたメンバーが集結した5人組バンド・EOW。前身バンド時代を経て、2019年にEOWとして始動して以降、メンバーのルーツにあるR&B、ソウル、ファンク、ゴスペルを土台にした、ポップで、グルーヴィーで、スタイリッシュで、エモーショナルな楽曲群を目まぐるしいスピードで世に放ち続けてきた。今年に入ってからも4曲を配信リリース。そのどれもが見事なまでの佳曲だったのだが、さらに10月には「Green Back」「RED」「blue fudge」を3週連続で発表した後、11月3日には現体制での初ワンマン<BREAK THRU>を開催と、さらに勢いを増して2021年を駆け抜けようとしている。そんな新作はもちろん、“運命的”に集まっていったバンド結成の経緯や、昨年加入した新ギタリスト・Tomoakiについてのこと、そしてEOWが目指している音楽についてなど、幅広く話を聞いた。
◆ ◆ ◆
■現体制までの“運命”の道のり
■「新メンバーの人生を背負えるのか、全員で話し合ってから口説きに行ったんです」
──みなさんはどういう経緯で集まったんですか?
Laco:私はもともとシンガソングライターとして活動していたんですけど、自分の集大成だと思って受けたオーディションがあって。2万人中8人ぐらいまでは残ったんですけど、結局何にもならなかったんですよね。そこで生まれて初めて絶望みたいなものを味わいまして。もう音楽をやめようかなと少し思っていた時期に、バックバンドでサポートしてもらっていたYutaroから、一緒にバンドやらない?って声をかけてもらいました。
Yutaro:僕としては、バンドを組むつもりはもうなかったんですよ。でも、みんなが実力派で、自分もやっていて楽しいバンドだったらやりたいなと思っていて。だから、Lacoが絶望しているとは知らずに、気持ち的には軽い感じで話をしましたね。
Laco:私としても、ひとりで音楽を続けていく勇気はなかったんです。もし続けるのであれば仲間を作りたいと思っていて。そう思っていたタイミングで声をかけてもらったから、これは運命だなと思って始めたのがこのバンドですね。他のメンバーはYutaroが集めてきてくれました。
Yutaro:ジャムセッションで会った仲間だったり、ただのゲーム仲間であったり。
──ジャムセッションで会ったというのは?
Otake:僕です。僕もLacoちゃんの声がすごく好きで。YouTubeにあがっていた動画を観て、この子とバンドがやれたらいいなと思っていたんですよ。そしたら、当時のドラムが離れることになったタイミングで、僕に声がかかって。それも運命的というか。やりたいと思っていたLacoちゃんと一緒にバンドがやれると思ったので、二つ返事で了承しました。
──で、ゲーム仲間というのは……。
Yutaro:mamushiですね。ポケモンとかTRPGとかを一緒にやってて。
mamushi:楽器を弾けるのはお互い知っていたけど、どんなプレイヤーなのかはまったく知らなかったんですよ。
mamushi:「噂によると楽器が弾けるらしい」っていうぐらいで。
Yutaro:そうそう(笑)。で、たまたまサポートの現場で一緒になったときに、弾けるじゃん!って。それで誘いました。
mamushi:僕もバンドをやる気はあまりなかったんですよ。バンドとは別に、作品にBGMをつける仕事を今もやらせていただいているんですけど、そっちをメインにするつもりでいたし、そういう作家的な事務所にも入っていたので。そこをやめるか、やめないかみたいな時期に、「今度一緒にやらん?」って言われて、行ってみたら、みんなめちゃくちゃうまいじゃん!って。そこで完全に心が揺らぎました(笑)。
──そこから前身バンドでの活動を経て、2019年にEOWとしてスタート。2020年の12月にTomoakiさんが加入されたと。
Tomoaki:Yutaroさんが大学の直属の先輩にあたる方で、仲良くしてもらっていて。前身バンドの頃から何度かライヴも観に行っていて、普通にいちファンみたいなところはあったんですけど、僕としても、前のギターの方が脱退するという告知をSNSで見たときに、友達と冗談半分で「サポートでもいいから入れねえかなww」みたいなことを言っていたら、数日後に本当に連絡がきて。そこは運命だなって。
Laco:やっぱりバンドって、スキルがあるからといって一緒にやれるわけではないじゃないですか。自分達のグルーヴとか、人間性や空気感が合うのかどうかも大事なので。だからどうしようかなと思っていたときに、Yutaroが声をかけられるギタリストを4人送ってきてくれたんですけど、その2番目ぐらいにTomoakiがいたんです。それでInstagramをパっと見たときに、ビビッときたんですよね。この子だ!って。
──感じるものがあったと。
Laco:でも、これは本人にも言っているんですけど、その4人の中ではめちゃくちゃうまいという印象ではなかったんです。でも、空気感がよかったから……これっていろいろあった話とかしてもいいんですか?
──もちろんですよ。
Laco:いきなり「入ってくれ!」と言ってもびっくりしちゃうし、もう就職も決まっていると言っていたから、さすがに望み薄いやろ……とは思っていて。それで、2020年の4月に「UYAMUYA」という曲を出したんですけど、実は、ジャケットに描いているイラストの男性はTomoakiなんですよ。まずはジャケットのモデルになってもらおうっていう軽いジャブから始まっていて。
Yutaro:いや、重いよ(笑)。
Otake:わりとボディブローだね(笑)。
Laco:(笑)。とにかく接点を持ちたかったんです。一回会って話したときも、絶対にこの子や!って思いましたし。ただ、他のメンバーは、このバンドを始めた理由にも挙げていたように、スキルや音楽性をかなり重視するんですよ。本当に音楽オタクの集まりなので。だから、みんながダメだと言ったら、それはもちろん無理だし、どうしようかなって。じゃあもう制作している現場に呼びこんでしまおうと思って、「突然やねんけど、曲にギター入れてくれへん?」って電話して。
mamushi:かわいそうだよね(苦笑)。
Laco:それで私達が制作しているEOWハウスに来てもらって。じゃあちょっと弾いてみてよって軽い感じで話してるんだけど、本当はみんな目ぇギンギンにしてTomoakiのことを見るっていう裏オーディションが行わなれたんですよ。そのことを知らずにTomoakiは弾いて、帰った後にみんなで話してたんですけど、そのときにOtakeさんが言った言葉がすごく印象に残っていて。「僕らから見て今のスキルが50点だったとしても、一緒に100点にしていきたいと思える人だったね」って言ったときに、やっぱそうやんな!って。
──Tomoakiさんとしては、裏オーディションのときはどんな心境だったんですか?
Tomoaki:率直に言うと、めちゃめちゃ怖かったです(苦笑)。
Tomoaki以外:怖いよなぁ(笑)。
Tomoaki:EOWハウスの防音室って、そこまで広いわけじゃないんですよ。その部屋で、みんな年上でうまい人達が、イスに座っている僕の周りを囲んで立って見ていて。なんか動物園みたいというか(笑)。
Laco:ほんまにそんな感じやったな。一挙一動を全員が精査するみたいな。ただ、Tomoakiは就職が決まっているし、そこで声を掛けるってことは、彼の人生をねじ曲げてしまうことになるじゃないですか。だから、Tomoakiの人生を背負えるのか、全員で話し合ったんです。絶対に成功して、Tomoakiも、Tomoakiのお母さん達も喜ばせてあげられる覚悟が本当にあるか?って。それで全員一致して、私とYutaroとマネージャーでTomoakiを口説きに行ったんです。
Tomoaki:最初に「もうギターはやらないの?」って聞かれたんです。まあ、お仕事をしながら、サポートなりなんなりで楽しくできればいいと思っているんですよねって言ったら、Lacoさんが「そんな中途半端な気持ちでうまくいくわけないやろ!」って(笑)。
──人生背負う覚悟で口説きに行っていたから、ちょっとイラっとしちゃったんですね。Tomoakiさんは知る由もないけど(苦笑)。
Laco:今思うとすごく恥ずかしいですね(苦笑)。
Tomoaki:でも、その覚悟の話も聞いて、そんなに受け入れてもらえているだと思って、いま頑張っているところですね。
──EOWの楽曲は、R&B、ソウルやファンク、ゴスペルといったジャンルが土台にありますが、こういう音楽をやろうという話は結成時からいろいろされていたんですか?
Yutaro:話自体はあまりしていなかったんですけど、挙げてもらった音楽をやっていたメンバーが多いんですよ。Lacoはもともと聖歌隊で歌ってたんだよね?
Laco:うん。ゴスペルを歌ってました。
Yutaro:僕も2年ぐらいR&Bをやるためにアメリカに留学して、向こうのチャーチで弾いていたし、Otakeはクリスチャンで、日本のチャーチでやってたんですよ。
Otake:大学在学中は、マス・クワイアっていう100人ぐらいいるゴスペル隊のバックバンドでバンドマスターをやってました。
Yutaro:で、Tomoakiも昔のファンクとかR&Bが好きで、mamushiはオルガンが好きっていう(笑)。
Laco:みんな縦ノリよりは横ノリが好きっていうのは共通点ですね。
Yutaro:でも、みんなロックも好きなんですよ。僕はハードロックが好きだし、Otakeも初めてやったのはDEEP PURPLEでしょ?
Otake:うん。最初にドラムでコピーしたのがLED ZEPPELINとかDEEP PURPLEでした。わりとロックが根底にあるというのも共通点ですね。
Laco:確かに。Tomoakiも完全にライヴキッズで、UVERworldさんが好きだし。
Tomoaki:なかなかのメタルヘッズなところもあるので。
Laco:あと、全員共通して、マイケル・ジャクソンが大好きですね。せーの!でマイケルの一番好きな曲を言ってみようゲームをしたことがあったんですけど、せーの!で全員が「Man in the mirror」って。名曲がめちゃくちゃたくさんある中で、全員が同じ曲を選ぶっていうことに、また運命を感じました(笑)。
──確かに名曲ですけど、そこも一緒というのは驚きますね。
Laco:そのときに感じたことなんですけど、「Man in the mirror」って、笑顔だけど泣きながら踊れちゃうようなフィールがあるなと思っていて。それは私達がすごく好きなフィールだし、EOWで体現したいものでもあるんですよ。なんか楽しくて嬉しいんだけど、涙が出てきて、もう泣きながら踊っちゃう!っていうところを目指して音楽を作っているところはありますね。
──技巧派の方々が集まると、たまにスキルやテクニックに傾倒しすぎてしまう場面もありますが、そういうわけでもないんですね。あくまでもエモーショナルなもの、感情が激しく揺さぶられるようなものをやりたいという。
Laco:Tomoakiはどちらかというと感情寄りの人間だとは思うんですけど、それ以外のメンズ3人はかなりロジカルなんですよ。
Yutaro:そんなことないよ!(笑)
Otake:いや、たぶんね、周りからはそういうふうに見えていると思うよ。
Laco:私はものすごくパッションを大事にするから、マインドだけでいうと正反対だったんです。私はメッセージを伝えたいんだけど、みんなはもっとかっこいい音楽がしたいとか、そういうぶつかりが本当に何度もあって。でも、最近ようやくちょうどいい融合ができるようになってきて。
Otake:お互いがうまく作用するようになってきたよね。
Laco:そこはTomoakiの加入がかなり大きいと思うんです。彼もパッションでライヴをする人間なので、そこにみんなが影響されたところもあると思うし、Tomoakiのスキルが足りない部分をみんなで引っ張っていこうっていう意識が出てきたんですよね。今までは、それぞれが音楽をやっているような分裂感があったけど、Tomoakiが入ったことでよりグッとひとつになれたというか。
Yutaro:それに、ロジカルなところって、パッションと対立するものではなくて、それを後押しするものだからね。
mamushi:うん。技術的な部分って、目的ではなくて、あくまでも手段なんですよね。自分達が伝えたいことを表現するためには技術がいるし、伝えたいものをメンバーの誰かが持っていないと、その技術にも意味がなくなってしまうので。それに結局、最終的に「いい曲ができた!」って思うときって、ロジカルとパッションの両方が備わっているときなんですよ。だからやっぱり両方大事だなって、最近思うようになってきましたね。
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