【インタビュー】ザ・モアイズユー、蓄積された時間が音へ昇華する1stフルアルバム『Storage time』
■1枚目のフルアルバム。
■聴いてくれた人にとって何年経っても色あせない作品になったら
──「ブルースカイブルー」はフォーキーな心地良い曲ですね。
本多:夏をテーマにすると、キラキラした思い出や爽やかさっていうところにいきがちだと思うんですけど、その夏のキラキラ感の中に切ない成分が入っていると僕は思っていて。夏の爽やかで胸の奥がジンとくるような、あの独特の切ない空気を曲に落とし込みたいと思ってました。3人とももともとフォークソングが好きなので、よりそういうカラーをこのアルバムの1曲として出したいという気持ちもあって、そういう方向に持っていきました。
──もともと銀杏BOYZのコピバンから始まっているそうですけど、こういう甘酸っぱいところは峯田(和伸)さんからの影響がある?
本多:僕は完全にそうですね(笑)。“あの頃”を思うと胸がキュンとなるっていうか。別に“あの頃”に戻りたいわけじゃないですけど、思い出すと胸が苦しくなるっていう独特な切なさを表現したいなと思ってました。
──次の「悲しみが消える頃」は以登田さんの曲ですが、これも悲しい曲ですね。
以登田:これまた悲しい曲となっております。この曲は、初めて女性目線の歌詞になっています。友人から聴いた話を、自分なりに曲として落とし込むにはどうするかっていうチャレンジではありました。この曲がザ・モアイズユーで初めてキーボードを入れた曲になっていて、そこでも「音がぶつからないか」「このコードなら合うんじゃないか」って手探りでやっていたので、むずかしくもあり楽しくアレンジできた曲です。
──そういうチャレンジって、コロナ禍で時間ができたことも影響しているんですか?
本多:そうですね。僕らはこれまで、今回のようにデータを共有する作り方じゃなくて、みんなでスタジオに入って作る方法だったので。それが去年の配信シングルのときからリモートで作曲するようになっていたので、デジタルで曲作りをする上で、「キーボードも試しに入れてみよう」って、気軽にチャレンジできたというのはあります。
──このご時世ならではのものも反映されているんですね。そういう意味では「求め合うたび」も、冒頭に打ち込みの音が入っていたり、ヒップホップ的アプローチの曲ですよね。
オザキ:この曲はヒップホップ的なノリにしたかったんですよ。ザ・モアイズユーってリズムの変化が多いんですけど、もうちょっとシンプルなものというか、リズムをずっと回していく曲があってもいいなと思っていて。それが「求め合うたび」に上手いことハマった感じです。
本多:この曲は、他の曲よりも派手な展開を作っているわけではないんですけど、要所要所でギターがフレーズやソロをちゃんと弾くことによって、楽曲ごとのメリハリをつけたいと思っていたので、歪ませて前にグッと主張が強い感じで弾いてます。
──「movin’on」はロックバンドならではの一体感のある曲ですが、どうやって作った曲でしょうか。
本多:結構スローなテンポでカッコよさを見せて行こうっていうチャレンジだったんですけど、ギターはのっけからカッコイイ始まり方をしてるなって思っていて。ワウなんかも使って、パーティー感というか、あえて「チャラくしたかった」というのがあるんです。今までのザ・モアイズユーにない騒いでる感じというか、他の曲にはない面白さが出るんじゃないかと思って作りました。アルバムで一番最後に作った曲です。
以登田:冒頭から、だいぶ難しいなっていう印象がある曲でしたね(笑)。入りの部分で、16分の音をあの速さでベースで弾くのはだいぶ困難やなって。でも本多がデモとして最後にこの曲をやってほしいって持ってきたので、僕としても結構頑張った感じはあります。
オザキ:これはなるべく荒々しくしたかったというか、90年代のロックみたいな、音はがなっているけどそれが心地良いみたいなところを目指して、こういうアレンジのアプローチをしました。
──「19」(ナインティーン)は、本多さんがまさに19歳の自分を歌っているんですか。
本多:そうですね。19歳っていう大人でも子どもでもある真ん中の時期だと思うんですけど、だからこそどっちの心もあるというか、そういう独特の葛藤を歌詞に書きました。配信シングル第4弾としてリリースした曲なんですけど、配信した4曲の中でこういう荒ぶった疾走感のある曲を出したいというのもあって作りました。
──12曲目に「理想像」という曲があるので「19歳」との関連があるのかなと思って聴きました。そこは本多さんの中でつながってますか?
本多:直接つながっているという意図はないんですけど、自分は音楽を始めたときから、胸の内にふつふつとある葛藤みたいなものを歌にすることが多いんです。今回、他の曲に関してはチャレンジした部分も多かったんですけど、「理想像」はザ・モアイズユーの原点を詰め込んだ曲になっています。
──今、こうした世の中の状況下で、アーティスト側の意図がどうであれ、歌って自ずとメッセージ性を帯びてくると思うんです。このアルバムの中で「環状線」は、そうした部分を感じる曲でした。みなさんの中ではザ・モアイズユーの歌が持つ意味合いみたいなものは変わらないですか。
本多:意識して歌うことが変わっているということではないです。もともと自分が思っていることを歌にすることが多いので、「この歌で励まそう」とか思って書いてるわけではなくて、自分自身に向けても歌ってる部分があるんです。それがめぐりめぐって自然と人に影響を与えているのであれば、それはすごく良いことだなって思います。
以登田:僕自身、自分の曲で何かを変えてやろうみたいな思いはなくて、自分の感情を歌にして、それを聴いて共感してくれたらいいなとは思っています。なので、まずは聴いて欲しいと思ってます。
オザキ:いろんな年齢層の方が音楽を聴いている中で、いつ誰が僕たちの曲を聴いてくれるかわからないという意味で、僕たちの曲に触れた人が、5年後、10年後とかに聴き直したときに、その人にとってのカギになるような楽曲になればいいなと思っていて。それはある意味メッセージなのかなって思います、僕が曲を作るときにはいつもそういう意識はしています。
──「月明かりの夜に」は幻想的な曲で、凝った音作りをしている曲ですね。歌詞に出てくる“あなた”という言葉も聴く人によって違うんじゃないかなと思います。本多さんはこの曲にどんな思いを込めてますか。
本多:この曲が持っている世界観はすごく切ないものがあるので、その切なさをどう表現
するかを考えてました。ギターもイントロからコーラスが入っていて音作りに奥行きがあるというか、月明かりに照らされている夜にいる2人をどう幻想的に描けるかをテーマに作りました。感情の揺れ動きも途中で出てくるCメロでしっかり表現できたのかなって思います。
──曲ができて最初にメンバーのお2人に聴かせたときはどんな反応でしたか?
本多:2人とも良い反応があったので、頑張って作ろうっていう気持ちになりました。やっぱり一番最初にリアルな反応を出してくれる相手なので、メンバーがどういう反応をするかが楽しみであり、一番大事にしたいと思ってる部分です。
──最後の「Afterglow」を書いた以登田さんにも同じ思いがありますか。
以登田:曲を書いて突き詰めていくと、「これってホンマに良い曲なんかな?」って不安にあるときもあるんです。それをメンバーに聴かせたときの反応が自分の判断基準になってますね。この曲は、「ザ・モアイズユーだけどザ・モアイズユーっぽくない雰囲気がいい」みたいな反応だったので、僕としては安心して作れた曲ではあります。
──この曲によって、とても良い余韻でアルバムが終わりますね。
以登田:並び的には、めちゃくちゃ気に入ってます。この曲の前が「理想像」っていう、今までの僕らを出しつつ、エンディング感のある曲で、それが終わってさらに「Afterglow」でアルバムとして締めくくるというのは最高だなって思ってます。
▲ザ・モアイズユー/『Storage time』
──曲ごとの思いを聞かせてもらいましたが、『Storage time』はみなさんにとってどんな作品になりましたか?
オザキ:1枚目のフルアルバムですし、今は僕たちのことを知らない人の方が絶対多いはずなので、CDショップでもサブスクでもいいので、まずは聴いてみてほしいです。僕らにとって現状で一番満足のいく作品ができたので、聴いてくれた人にとって何年経っても色あせない作品になったら嬉しいです。
以登田:僕は新しいアーティストを発見して聴くときはやっぱりアルバムから聴くので、今回のフルアルバムで自分たちの名刺になる作品ができたというのは単純に嬉しいですし、色んな人に聴いて欲しいなっていう思いがあります。自分たちの名刺となるこの作品を持って、これからもどんどん突き進んでいこうと思っています。
本多:13曲も入っていて、自分たちでは持てる力を全部出せたのかなって思っています。その中で、葛藤とか悲しいことも明るいことも歌っているんですけど、最後に「Afterglow」で締めているように、結局は前向きになって進んでいきたいなと思っていて。大きい会場に立ちたいとか、バンドとして色んな欲もあるんですけど、シンプルに「ザ・モアイズユーって良い曲作るよね」って思ってもらえたら、究極をいえばそれだけで幸せなので、このアルバムを聴いてザ・モアイズユーっていうバンドを好きになってくれたらいいなと思います。ただ、このアルバムを作り終わって全部詰め込んだなって思った矢先、もう次の曲をすぐ作りたくなっているので、今後の僕たちにも期待してほしいと思います。
取材・文◎岡本貴之
■1st Full Album『Storage time』
¥2,750(税込)
[収録曲]
M1.秒針に振れて
M2.すれ違い
M3.MUSIC!!
M4.ブルースカイブルー
M5.悲しみが消える頃
M6.求め合うたび
M7.movin’on
M8.19
M9.いいことばかりじゃないけれど、
M10.環状線
M11.月明かりの夜に
M12.理想像
M13.Afterglow
【特典内容】
・タワーレコードオリジナル特典 ※タワーオンライン含む
ザ・モアイズユー「ONLINE LIVE 2021」LIVE DVD
https://tower.jp/item/5205571/Storage-time
[DVD収録曲]
M1.すれ違い
M2.何度でも
M3.悲しみが消える頃
M4.MUSIC
M5.19
M6.花火 (アコースティックセット ver)
M7.環状線 (アコースティックセット ver)
M8.秒針に振れて
M9.求め合うたび
M10.fake
M11.光の先には
配信リンク:
https://ssm.lnk.to/Storagetime
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