【レポート】BAROQUEの圭、1日2公演の異なるライヴで「ここからより一層攻めて」
BAROQUE(無期限活動休止)のギタリスト圭が自身の誕生日でもある8月12日(木)、東京・渋谷ストリームホールにて<THE ELEGY -夜明けの明星->と題した1日2公演のライブを開催した。1st STAGE<TRANSPARENT UTOPIA.>と2nd STAGE<WITH LOTS OF LOVE.>はコンセプトの異なるステージとなるもの。両公演のオフィシャルレポートをお届けしたい。
◆圭 画像
圭がステージの中央に立って本格的なソロへ踏み出したのが今年4月。そこから約4ヵ月。<THE ELEGY -夜明けの明星->の1st STAGE<TRANSPARENT UTOPIA.>ではギタリストとしてインストメインのアクトに挑み、2nd STAGE<WITH LOTS OF LOVE.>ではギターやピアノを弾きながらボーカリストとして自身のソロ曲やBAROQUE曲を歌う、という2ステージ制が同公演の目玉となる。
ギターインストでも歌ものでも、ソングライターとして美メロ至上主義を貫く圭にとっては、この二刀流のステージがまさにピッタリ。本格的にソロへ踏み出して以降、驚くようなスピードで成長を遂げ、ギタリストだろうが、ボーカリストだろうが、表現者としてどちらも温度差ない気高さと、華のあるスタイリッシュなスターオーラを放ちながらパフォーマンスを魅せられるようになったからこそ、実現できたのが今回ステージである。圭というアーティストが放つ音楽、その独自のライブのあり方が見える2公演となった。
▲1st STAGE<TRANSPARENT UTOPIA.>
1st STAGEの<TRANSPARENT UTOPIA.>では、山口大吾(Dr / People In The Box)、高松浩史(B / THE NOVEMBERS)、hico(Key&Mani)といういつものサポートメンバーが白シャツにネクタイ、黒いパンツで統一した衣装で姿を現した。そしてスペーシーなSEに波の音が重なり、ギタリスト圭がオンステージ。ライブは新曲「spirit in heaven.」で幕を開けた。
まるで1st STAGEのアートワークをトレースしたようなメロディーが立ち昇っていくかのごときオープニングのギターからして、あまりにも美しい。薄らと空が白んでいく夜明け前の時間帯を幻視しているような気分に浸らせるサウンドとライティング。そこから立て続けに新曲が披露された。
新曲はどれも、脳内宇宙でダークエナジーが激しく渦巻いているような『4deus.』の風景とは別世界にあるものばかり。果てしなく広がる白い静かな空間を一人ぼっちで浮遊していくような景色が、曲を重ねるごとに現れては消えていく。目の前では圭が、彼のステージでは定番の花道を使って華麗なパフォーマンスを次々と決めていく。
▲1st STAGE<TRANSPARENT UTOPIA.>
「“歌わねぇじゃん! 金返せ”とか言わないでよ。その代わりこっちはギターで歌うんで。インストで音楽の深いところまでいって、全身で音を浴びてください」──圭
フロアをリラックスさせながら1st STAGEの趣旨をこう伝えた。迎えた中盤では、往年のジャズスタンダード「my fanny valentine」をカバーしたほか、about tessのtakuto(G)をゲストに迎えてジャムセッションを繰り広げ、親友DURAN(G)とは彼の楽曲「Echo (Electric Gospel)」をカバーするなど、普段とはひと味異なるプレイを披露して、ギタリストとしての懐の深さをアピールした。
ライブ後半では再び新曲を交えて、白い静かな世界へと。本編ラストの「in the light.」では澄みきったギターの旋律が、夜が明けて光に溢れていく世界を表現してみせた。圭のギタースタイルは、正確無比なコードカッティングや、テクニカルな速弾きや、実験的なエフェクトサウンドや、長尺のソロをメインに据える類いのものではない。やはり美しいメロディーがその中核にあるのだ。彼のインストでは声の代わりにギターが美しい旋律を奏でてくれる。だからこそ、歌ものと変わらぬ音楽として、一般リスナーも楽しめる。そんな特異性を知らしめた1st STAGEだった。
▲2nd STAGE<WITH LOTS OF LOVE.>
2nd STAGEの<WITH LOTS OF LOVE.>では1st STAGEのサポート陣に結生(G / メリー)が加わり、今度は黒い衣装でサポートメンバーがステージに登場。舞台上に真っ白いスモークが吹き出し、点滅を繰り返す光のなかで、雷音に雨音が重なると、ハンドマイクの圭が姿を現した。白いロングタキシードジャケットに加え、足先まで白でトータルコーディネイトされた圭が歌い出したオープニングナンバーは新曲「PANDORA.」だった。
続いて、躍動感たっぷりにステップしながら花道で「17.」を披露し、歌唱中にウインクを決めた圭。白一色のファッションを着こなせるボディラインや整った容貌、フロントマンとしての自然な仕草。キャリア20年目にしてこの日、37歳を迎えたとは思えない端麗な王子っぷりで、歌に込めたメッセージ通り、冒頭からみんなを“自由な世界”へと連れ出して見せた。
▲2nd STAGE<WITH LOTS OF LOVE.>
しかし、BAROQUEの楽曲「LAST SCENE」から徐々に変貌。楽曲が進むにつれて歌、ギター、表情を歪ませて、無垢で繊細で自由だった自分が、邪悪な自分に飲み込まれていく様を表現していった。白一色のファッションもいつの間にかレオパード柄のコートと黒いパンツに変わり、そのコートのポケットに片手を突っ込みながら花道で観客を見下ろして薄笑いを浮かべる圭。その表情がどんどん危うくなり、歌い方も挑発的になっていったところで放たれたのが「I LUCIFER」だった。
「I LUCIFER」はもともとBAROQUEの楽曲ではあるものの、圭のボーカルに素早く馴染んでソロライブのクライマックスに欠かせぬナンバーとなっていった。この日も汗だくで剥き出しの圭が、邪悪な自分を振りきるように叫ぶ。その高ぶるテンションは激しくエモーショナルで、胸に響くものがあった。間髪入れずに、コートからビックシルエットの白シャツに着替え、キレキレの演奏と歌で「the primary.」、パンキッシュな「4letter word.」とアッパーなサウンドを続けて投下するとMCへ。
「2nd STAGE。ボーカル&ギターでやるのは、今回で3回目。みんな楽しんでる?」と挨拶した圭が、「20年前の今日、17歳の誕生日に、バロックとして、新宿ロフトで1日2公演の無料初ライブを行なった」ことを感慨深そうに振り返った。「でも、そのとき……ロフトに向かったときの気持ちは20年経った今も、なにも変わっていません」とファンに伝えた。
▲2nd STAGE<WITH LOTS OF LOVE.>
ピアノの伴奏に続いて、新たな幕開けを告げるようなギターフレーズから「BIRTH OF VICTORY」、「PUER ET PUELLA」をプレイ。ファルセットを使った繊細な歌唱を交えながら、壮大な祝祭空間を生み出して本編の幕を閉じた。アンコールはメンバー紹介からスタート。ここでは結生が、前述の20年前のバロック新宿ロフト公演に居たことを打ち明けて驚かせた。
「終演後に楽屋挨拶に行ったら子供が出てきて(笑)。しかも、ちょっと生意気だった」と圭に会ったときのことを語ると、思わぬ形で過去を暴露された圭が大照れ。場内に和やかなムードが広がった。アンコールは、コロナ禍が続く世の中に向けてメッセージを込めた「STAY」、自らピアノを弾きながら「ring clef.」を弾き語ると観客を優しく包み込んでフィニッシュした。すべてを終えた圭は、笑顔で手を振りながら決意を伝えた。
「37歳になりましたけど、ここからより一層攻めて。たくさんの愛に守られ、今日までやってこれたと思うので、それをエネルギーに替えて、みんなを幸せにできたらいいなと思ってます」──圭
▲2nd STAGE<WITH LOTS OF LOVE.>
取材・文◎東條祥恵
撮影◎上溝恭香(TAMARUYA)
■圭<THE ELEGY -夜明けの明星-」>セットリスト
【1st STAGE_TRANSPARENT UTOPIA.】
open15:30 / start16:00
▼Support Members
・Bass:高松浩史(THE NOVEMBERS)
・Drums:山口大吾(People In The Box)
・Keyboard&Manipulator:hico
▼スペシャルゲスト
・Guitarist:takuto (about tess)
・Guitarist:DURAN
【2nd STAGE_WITH LOTS OF LOVE.】
open18:30 / start19:00
▼Support Members
・Guitar:結生(メリー)
・Bass:高松浩史(THE NOVEMBERS)
・Drums:山口大吾(People In The Box)
・Keyboard&Manipulator:hico
■サブスク配信情報
・Apple Music:https://music.apple.com/us/artist/kei/1465709836
・Spotify:https://open.spotify.com/artist/0maFrI7WiLIRflewebbNeF?si=W_ypbJb9SVujxq-HpkMU6Q
・LINE MUSIC:https://music.line.me/artist/mi0000000012988b5f
・AWA:https://mf.awa.fm/2WI5gxn
・KKBOX:https://kkbox.fm/Lr18Rt
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