【インタビュー】人間椅子、鈴木研一が語る『苦楽』と尿路結石「痛めつけないとダメなんですね」

ポスト

■結局はハードロックを世の中に広めよう
■ということなんじゃないですか

──今回も聞き応えたっぷりのアルバムができましたよね。2曲目「神々の行進」ではギターメロがハモってて、思いっきりプレイング・マンティスを感じました。

鈴木研一:おお、そこでプレイング・マンティス出しますか。「恍惚の蟷螂」っていう曲があるから思ったのかなあ? ギターがハモる曲ってスタジオで聞くとすごくカッコいいけど、ライブではどうやって弾くのかなっていうのが聴き所ですよね。

──そうですそうです。

鈴木研一:あのディープ・パープルの「ハイウェイ・スター」のギターソロだって思いっきりハモってて、あれを一体どうやってライブで弾くのかなってみんな思ってたけど、『ライブ・イン・ジャパン』でこうやってやんのかーって。

──全然違和感なかったですね。

鈴木研一:いやもう、あの曲に関してはライブ盤のほうが全然いいじゃないですか。


──…えと、また脱線してしまいました。

鈴木研一:何の話だったっけな…結局は、ハードロックを世の中に広めようということなんじゃないですか? 自分たちのやってる音楽だけじゃなくね。J-POPとかK-POPばかり聞いててユーライア・ヒープ『対自核』とか聞かないで死んだらもったいないじゃないですか。すごく損でしょ。若い人にも「聞けて良かった」って思ってもらいたいんだよね。

──若い時に受ける衝撃は、その時にしか得られない貴重なものですからね。私も当時お金がなくて聴けなかった作品を大人になってからやっと聴いたんですけど、期待通りの内容ではあったものの感動はなかった。「あの時に聴きたかった」とつくづく思いました。

鈴木研一:それは何ですか?

──キング・クリムゾンの『ポセイドンのめざめ』とか。

鈴木研一:ああ~、持っていればよかったですね。「デヴィルズ・トライアングル」とか中高生で聴いてたらどんだけ感動したことか。

──そうなんです。あのときじゃないとダメなんです。

鈴木研一:ほんとそうなんですよね。KISSも僕は中学生だったけど、あのときあれほど感動したものも大人になってから聞いたら、それほどではないかもしれませんよね。だから人間椅子も中学生に聞かせないとダメなんだな。

──そうそう。人間椅子にはたくさんの楽曲があるから、紐解いていったらすごく面白いと思います。

鈴木研一:どうやったら中学生の子に聞いてもらえるんだろう。やっぱりYouTubeかな…。

──あとはサブスクですよね。ユーライア・ヒープとブラックサバスの間でひょっこり出てくるかな。

鈴木研一:いいですね。そういう手が一番お金がかからなくていいですかね。ラジオで聞いて気に入ることもよくあったから。


──ラジオって流れていってしまうから「お、これ何?」と思うとものすごい集中力が働くんですよね。今聴かないと二度と聴けないかもしれないから。

鈴木研一:僕もラジオで初めてクイーン「ブライトン・ロック」を聞いたときの衝撃は大きかったですよ。この裏声はなんなんだってね。「エモーショナル・レスキュー」も「ブライトン・ロック」も何の声だから分からなかった。「エモーショナル・レスキュー」はびっくりしたなあ。あれがミック・ジャガーだと思わなかった。

──そういう衝撃を中高生に。

鈴木研一:うん。中学生をなんとかキャッチしたい。「中学校でタダでライブします」とか言えば、課外授業で人間椅子鑑賞を取り入れてくれないかな。石が出て激痛が来ても、担架に乗ってでもやりますよ。

──老若男女、世界中のみんなに人間椅子が届くよう、応援を続けます。ありがとうございました。

取材・文◎烏丸哲也 (JMN統括編集長)
撮影◎佐藤哲朗


■22ndアルバム『苦楽』

2021年8月4日(水)発売
TKCA-74961 ¥2,900 (税込)
01. 杜子春
02. 神々の行進
03. 悪魔の処方箋
04. 暗黒王
05. 人間ロボット
06. 宇宙海賊
07. 疾れGT
08. 世紀末ジンタ
09. 悩みをつき抜けて歓喜に到れ
10. 恍惚の蟷螂
11. 至上の唇
12. 肉体の亡霊
13. 夜明け前

▲『苦楽』ジャケット


「昭和の子供たちが漠然と未来に思い描いていたのは、バラ色の二十一世紀、みんながニコニコと快適に暮らす明るい社会でした。さて、果たしてやって来た二十一世紀はどうでしょうか。快適にはなったかもしれません。しかしバラ色かといえば、どうもそうとは思えません。無邪気に個性を出すこと、突出した行動を取ることは半ば悪と見なされ、個人的には息が詰まりそうな空気を感じています。昨年来からは、これはいちおう突発性の事象なのでしょうが、笑顔をお互いに見せあうことも叶わなくなりました。まるでジョージ・オーウェルの予見したディストピアのようです。この度の災害が数年後に何らかの終結を見たとして、その時にいったいどんな未来が待ち受けているのか、想像するだに戦慄を禁じ得ません。
 我々は豊か、快適という名前の楽な道を選んできました。しかし、思うのです。苦しみがあってこその人生なのではないかと。実りを得るためには、苦労して畑を耕さなくてはなりません。人は生まれ、死に、その間に多くの別れを経験し、愛情を覚えます。悲しみと苦しみから他人を許すことを知り、お互いに尊重し合えるようになります。いってみれば、苦しみこそが幸せなのかもしれません。昨今の息苦しさは、苦労を片隅に追いやった(あるいはそのように仕向けられた)結果のように思えてなりません。
 おそらく、苦と楽は表裏一体です。苦しみがあってこそ楽が輝き、幸せを感じるのです。今回のアルバムでは、人生における悲しみと苦しみ、最悪の未来図、人間らしくという意味では間違った選択、などをハードなサウンドで描きたく思っています。もちろん、いたずらに批判的にならぬよう、特定の事象をあげつらわないよう、細心の注意を払うつもりです。現代の視点から、普遍的な事柄を歌うことが出来たなら、大いに成功といえるでしょう。
 ちなみに『苦楽』とは、戦前〜戦後の大衆文芸誌の名前でもあります。江戸川乱歩の「人間椅子」は、この雑誌に発表されました。前アルバム『新青年』の次作として面白く、またふさわしいとも思えましたので、このタイトルを提案させていただきました」──和嶋慎治

■<苦楽 〜リリース記念ワンマンツアー〜>

▼2021年
8月20日(金) 長野・長野CLUB JUNK BOX
8月27日(金) 石川・金沢GOLD CREEK
8月29日(日) 大阪・umeda TRAD
9月01日(水) 兵庫・神戸CHICKEN GEORGE
9月03日(金) 香川・高松OLIVE HALL
9月05日(日) 愛知・名古屋Electric Lady Land
9月09日(木) 福岡・DRUM Be-1
9月11日(土) 沖縄・桜坂Central
9月16日(木) 福島・いわきclub SONIC iwaki
9月18日(土) 青森・KEEP THE BEAT
9月20日(月・祝) 青森・青森Quarter
9月22日(水) 北海道・札幌PENNY LANE 24
9月25日(土) 宮城・仙台CLUB JUNK BOX
9月27日(月) 東京・Zepp DiverCity(TOKYO)


◆インタビュー【3】へ戻る
◆インタビュー【1】へ戻る
この記事をポスト

この記事の関連情報