【プロミュージシャンのスペシャル楽器が見たい】saji ヨシダタクミの異色のルックスのレスポールカスタム“この軽さなら振り回せる”

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sajiでボーカルとギター、そしてすべての作詞作曲を手がけ、バンドのサウンドをリードしているヨシダタクミ。今回彼が見せてくれたのは、独特の雰囲気を持つユニークなデザインのレスポールカスタムだ。なんとこのギター、以前手放したものと同じギターを探し出して最近入手したものだという。彼はこのギターにどんな想いを持っていたのか、そしてこの異色のギターはいったいどんな楽器なのか、ヨシダタクミに語ってもらった。

――これはとてもユニークなルックスのレスポールですね。

ヨシダタクミ(以下、ヨシダ):1年くらい前に中古で買ったものです。実は高校生のときにこれと同じギターを持っていて、一度手放してしまったんですが、また同じモデルのものを買ったのがこれです。

――どういうギターですか?

ヨシダ:Harmanという、80年代から90年代に京都にあった楽器屋さんのオリジナルのブランドのギターです。今でいうジャパンビンテージみたいな感じで、当時たくさんあったフェンダーやギブソンのコピーモデルの中の一つだと思います。これはギブソンのレスポールカスタムのコピーモデルなんですが、かなり色々な部分が違っています。まずボディが薄いのが特徴です。



――ホントに薄いですね。厚みが普通のレスポールの半分くらい。

ヨシダ:そうなんです。最初にこれに驚いたし、気に入ったところです。それと、チェンバー加工といって内部にも穴があけられていて、ちょっとしたホロウボディみたいになっているんです。だから普通のレスポールより各段に軽いです。


――表面の仕上げもインパクトがありますね。

ヨシダ:つや消し、マット加工ですね。ただこれは中古で買ったものなので、オリジナルでこれだったのか、後から誰かが加工したのかはわからないんですが、よく見ても粗いところがないので、たぶん元からこうだったんだと思います。ロゴのまわりとかも、ちょしてないし。あ、「ちょす」は北海道の方言で、いじるという意味です(笑)。

――高校生のときに持っていたというのは?

ヨシダ:高校2年生くらいのときに、Harmanのこれと同じギターを買ったことがあったんです。それはつや消しではなくて、普通の黒でゴールドパーツのレスポールカスタムなんですが、ボディが薄くてチェンバー加工というのがこれと同じでした。たしか、リアピックアップがディマジオに替えられていました。だから家にあったHughes&KettnerのEdition Blueという30Wのアンプにつなぐと、もう全部の音がザーッという感じになってしまって、僕らの音楽とはもう全然違う音(笑)。だからこのギターが良いギターなのかどうかもわからなくて(笑)。ほかにも欲しいギターがあったので手放してしまったんです。

――当時は音が気に入らなかった?

ヨシダ:音の良し悪しもわからず、見た目だけで買いましたから(笑)。そのころ僕はリアにP-90が一発載ったレスポール・ジュニアか、Sonicというブランドのオーダーで作ったストラトでバキッとしたソリッドサウンドを出していたんですが、それとは違う音だったし、ユタニが当時からフライングVを使っていて、それと音がカブってしまうという問題もあったので、結局あまり使わなかったんです。

――チェンバー加工されていたことも知っていたんですか?

ヨシダ:知ってはいましたが、チェンバー加工にどういう効果があるかは知らなくて、軽いからいいなと思って買ったんです。もともとは、レスポールカスタムってカッコいいけど重いし、コンター加工とかもないから嫌いだったんです。あばらに刺さるから(笑)。でもこれは薄いしコンター加工もあるからいいなと。

――そのギターに、最近また出会ったんですね?

ヨシダ:惜しいことをしたと思って、20歳くらいのときにHarmanを探してみたんですが、安いストラトはあってもレスポールカスタムはまったくなかった。特殊なギターだからないだろうなと思っていたんですが、去年ネットショップで見つけて、写真をよく見たらこの薄いボディ。急にエモーショナルな気持ちになって即決で(笑)。


――見つけて即決ということは、実はかなり気に入っていた?

ヨシダ:そうですね。見た目がすごく好きでした。基本的に、黒にゴールドパーツというギターが好きなんです。いつもメインで使っているジャズマスターも黒です。ちなみにそれはADDICTONE CUSTOM GUITARSというカスタムギターのブランドのもので、そこの社長に試作品のジャズマスターを弾いてみてほしいと言われたのが使うきっかけでした。最初は、ジャズマスターなんてあんなハイ上がりのキャインキャインするギターはイヤですって言ったんですが(笑)、弾いてみたらめちゃくちゃブリブリですごくいい音だったので。

――再び手に入れて、当時の感触がよみがえりましたか?

ヨシダ:覚えてなかった(笑)。あまり使っていなかったので、ああ、これこれ、っていう感触はなかったですね。でも今回、持ったときの雰囲気がいいな、持ってしっくり来るな、と思いました。あばらに刺さらないというのは僕の中でとても重要だし(笑)。あと、最近は少なくなりましたけど、以前はライブ中にテンションが上がってくるとギターを振り回したり、ギターをぶっ叩いたりしていたんです。そんなこと、普通のレスポールではとてもできないけど、この軽さなら振り回せるな、と(笑)。


――チェンバー加工にもいくつかの種類がありますが、これはどんなタイプですか?

ヨシダ:中を見たことがないし、調べても情報が出てこないのでわからないんですが、おそらくもっとも一般的な、丸い穴がいくつかあけられているタイプだと思います。ただセミアコみたいな大きな空洞があるわけではないので、鳴りは普通のものとあまり変わらないです。チェンバー加工のレスポールというのはそれなりにありますけど、それでボディもここまで薄いというのは珍しいですよね。スペックも謎だし、どうして作られたのかも謎です。



――ではピックアップなどについても謎?

ヨシダ:そうですね。買ったままの状態ですが、前のオーナーさんもとくにどこを替えたとは言っていなかったので、売っていたときのままだと思います。

――3つのつまみは2ボリューム、1トーンですね。ではそこにあるスイッチは?

ヨシダ:これもよくわからないんですが、2点のスイッチなのでおそらくコイルタップですね。普通ならここにトーンのつまみがある位置ですが、つまみを外して付け替えたわけでもなさそうです。よく見ても加工した跡がないので、最初からこういう仕様だったんだと思います。

――サウンドの特徴は?

ヨシダ:普通のレスポールに比べると軽めで、SGに近いような音ですね。真ん中が鳴っていて、低いほうがあまり鳴ってこない感じです。といっても、安っぽいハムバッカーみたいにモコモコのミッドではなくて(笑)、ちゃんと程よく抜けて歪みの乗りも良いです。

――今後はライブでもこのギターを使っていく?

ヨシダ:見た目がカッコいいですからライブ向きですね。チューニング精度とか使い勝手に問題がなければ、ライブでもガンガン使おうと思っています。軽いから振り回しやすいし、言ってしまえば壊れてもそんなに悲しくない値段だったから(笑)。僕の知り合いに、50年代の本物のレスポール・スペシャルを鍵付きのハードケースで慎重に持ち運んでいる人がいますけど、僕だったら怖くてとてもライブでは使えませんね。ライブで使うなら壊れて当たり前だと思っていますから。実際、ライブでギブソンのギターを投げて折ったこともありますし(笑)。

――レコーディングでも使えそうですか?

ヨシダ:そうですね。sajiに名前を変えてからミディアムの曲がすごく増えたのもあって、メインだったジャズマスターをレコーディングでほとんど使っていないんです。単体だといい音なんですが、元気すぎてアンサンブルにうまく混ざらないことがあるので、今後はミディアムの曲にはこれを使うことになるかもしれません。歌の邪魔をしてほしくないときに合いそうですから。

――どんなアンプと組み合わせて使いますか?

ヨシダ:僕がメインで使っているのはフェンダーのSuper SonicかマッチレスのDC-30なんですが、シミュレーターで試した感じだとSuper Sonicが合いそうですね。DC-30はシングルのギターのほうがカッコいいと思います。

――ではエフェクターを紹介してください。

ヨシダ:まず見てほしいのがこのケース。バンド公式キャラクターの“pasくん”のイラストを描いてもらったんです。このイラストを入れたかったので白のケースを探したんですが、白ってあまりないんですよね。知り合いが働いている楽器屋さんに中古で入ったというのですぐに買って、すぐにデザイナーに連絡しました。


――では中身を。この黄色い、脚がいくつもあるのは……?

ヨシダ:パワーサプライです。


――とてもそうは見えない(笑)。

ヨシダ:世界中で僕しか使っていないはずですから(笑)。これは僕の大好きな『攻殻機動隊』というアニメに登場するタチコマというキャラクターです。もともとはただのフィギュアなんですが、その中に配線を入れてパワーサプライにしてあります。パワーはあまりないので、エフェクターはせいぜい2~3個しかつなげないですね。

――どうやって入手したんですか?

ヨシダ:ぴ工房さんというエフェクター製作をされている方が、タチコマのパワーサプライをSNSにアップしていたのを見つけて、僕にも1台作ってくれませんかとお願いしたんです。アニメの中で、タチコマはもともと青色の兵器だったんですが、武装解除されて民間企業で土建作業とかに使われているのが黄色いカラーのタチコマなんです。そのほうがすごく好きだったので、お願いして黄色のバージョンで作ってもらいました。


――機能や性能でこれを使っているわけではないんですね。

ヨシダ:まったく関係ないです(笑)。パワーサプライとしては正直言ってジャマだし電力もない。普通の人ならまず使わないでしょうけど、これがあるとテンションが上がりますね。あと、ライブで使うエフェクターの中にこれがあると、お客さんがすごく興味を持って見てくれるんです。プロの機材って、見たときに“なにこれ?”って思うようなものがあるのも大事かなと。

――このオレンジ色のエフェクターは、レトロな雰囲気ですね。

ヨシダ:最近手に入れたんですが、80年代くらいにあったエフェクターです。PMP(Professional Music Products)というブランドのE868というモデルです。フェイズエキサイターといって、普通のエキサイターとは少し違って位相をいじるエフェクターですね。ギターの倍音をちょっとこもらせたり、逆に立ち上がらせたりできます。


――これはレスポールと組み合わせて使う?

ヨシダ:そうですね。ライブでレスポールに使おうと思います。もともとは、ジャズマスターで抜けが良すぎてじゃまになっている倍音を削るために使おうかと思っていたんですが、ちょっとモコッとしそうなこのレスポールに使えば、抜けを良くしてブリッとさせられるかなと。コンプレッサーを試そうと思って楽器屋さんに行ったんですが、これが4000円くらいで売っていて、面白そうだったので買っちゃいました。

――実際の音はどうですか?

ヨシダ:少し音ヤセする気もしますし、古い機種なのでノイズも乗りますね。でもビンテージのエフェクターって、使わないかもしれなくても買うのが好きなんです(笑)。買ってみんなで試しては、いらねえ、って言って捨てちゃう(笑)。OD-1とかも、みんなが良いって言ってるから買ったんですが、ユタニといっしょにOD-3と弾き比べてみたら、やはり進化してるOD-3のほうがいいや、って(笑)。音の粗さはOD-1の良いところなんだと思いますが、僕はそこがちょっと気になりましたね。

――そのOD-3のモディファイモデルは、ユタニさんのものと同じですね。

ヨシダ:そうです。9overdrive9というブランドで、もともとのBOSSのOD-3の中身をグレードアップさせたモデル。ハイ上がりというか抜けが良くなっています。最初に僕が試作機を送ってもらって使っていたら、ユタニもすごく気に入って、同じものを作ってもらったんです。


――これはどのように使っていますか?

ヨシダ:僕はアンプでまずクランチトーンを作ってしまうので、これは基本的にDRIVEを全然上げないで使っていますね。ブースターとして使う感じです。ピッキングのニュアンスで歪み具合をコントロールしたいので、エフェクターではあまり歪ませないですね。でもサビとかでズバッといきたい、というときにこれを踏んで持ち上げたりしています。

――ヨシダさんが楽器を選ぶときに重視していることは?

ヨシダ:二つありますね。一つはルックスで、もう一つはプレイヤビリティ。弾きやすさですね。だからギターを買う前には必ず試奏するんです。僕は手の平が小さくてカマボコ型の太めのネックは弾きにくいので、それを確かめますね。握ってバーンと鳴らせば、良さそうかダメか、だいたいわかります。このレスポールは試奏はしていないんですけど、弾きやすくて良かったです。


――今後はどんな音を出していきたい?

ヨシダ:僕がバンドを始めたころ、布袋寅泰さんの「BAD FEELING」のイントロのギターが好きだったんです。それも普通の音源ではなくて、本人が試奏で弾いてみた、みたいな音源のカッティングの音。それが好きになって、あの音はどうなってるんだろう、と思ったところから僕はクランチトーンを研究し始めたんです。音の好みって、そういう最初のところで決まるところがあると思うんです。だからそれと同じように、後続の10代のプレイヤーたちが“あの音を出したいな”と思うようなサウンドを目指していきたいと思っています。

取材・文:田澤仁

New Single「星のオーケストラ」


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品番:KICM-2095
定価:¥1,320 (税抜価格 ¥1,200)
形態:CD Only

[収録内容]
M1:星のオーケストラ
M2:アンチロックミー
M3:ネモフィラ

<saji Live 2021~夜の兎は眠らない~>配信情報


配信日時:2021年8月15日(日)開場17:00 / 開演18:00
アーカイブ期間:2021年8月15日(日)終演後~2021年8月22日(日)23:59まで
※ライブ配信後に再配信処理を行いますのでご覧いただけない時間がございます。あらかじめご了承ください。
配信チケット料金:3,000円(税込)
配信チケット販売期間:~2021年8月22日(日)21:00

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